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MEDICALLY REVIEWED BEAUTY & HEALTH
髪と頭皮

AGA・女性の薄毛の治療
——ミノキシジル内服は「行うべきではない」。推奨度Dに並ぶもの

薄毛の治療ほど、広告の量と、根拠の量が釣り合っていない分野はないと思います。
日本皮膚科学会のガイドラインは、その状況をこう書いています。「皮膚科医の立場からは無効といえる科学的根拠に基づかない民間療法が社会的に横行し,無効な治療法を漫然と続ける患者も少なくなかった.」
このガイドラインは14の治療すべてに推奨度をつけていて、15ページ全文が無料で読めます。開いてみると——推奨度A(行うよう強く勧める)は3つだけ。そしていま、オンライン診療でいちばん処方されている薬のひとつが、推奨度D(行うべきではない)に並んでいます。
さらに国民生活センターが2026年6月23日に、AGAのオンライン診療について注意喚起を出しました。1年分7万円を払い、やめたはずなのに、また1年分が届いた——という相談です。順に見ていきます。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年9月28日 読了:約18分

1. 先に結論

ガイドラインから読み取れることを、先にまとめます。

よく聞く話ガイドラインが書いていること
飲むミノキシジルが効く推奨度D。「ミノキシジル内服の有用性に関して臨床試験は実施されていない.」
海外では普通に使われている「男性型脱毛症に対する治療薬としても認可されている国はない.」
塗るより飲むほうが効く塗り薬は推奨度A、飲み薬は推奨度D。同じ成分でも評価は正反対です
女性も同じ薬でいいフィナステリド・デュタステリドは女性に推奨度D。ミノキシジル外用も濃度が違います
植毛なら確実自毛植毛はBですが、人工毛植毛はD。米国FDAは人工毛を有害器具に指定
再生医療なら最先端成長因子導入・細胞移植療法はC2(行わないほうがよい)
効かなければやめればいい1年分の定期購入になっていて解約できない、という相談が国民生活センターに寄せられています

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

薄毛の治療は、選択肢が多いのではなく、根拠のある選択肢が少ない分野です。推奨度Aは3つだけ。その3つを知っていれば、残りの提案を落ち着いて聞けるようになります。とくに「飲むミノキシジル」を勧められたときは、いったん立ち止まってください。

2. 14の治療を、推奨度で並べる

このガイドラインの優れているところは、14の治療すべてに推奨度をつけ、1枚の表にまとめていることです。まずその表を見てください。

14の治療は、こう並んでいます 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」表1より ミノキシジルの外用 A フィナステリドの内服(男性型) A デュタステリドの内服(男性型) A LEDおよび低出力レーザー照射 B アデノシンの外用(男性型) B 自毛植毛術(男性型) B カルプロニウム塩化物の外用 C1 t-フラバノンの外用 C1 サイトプリン・ペンタデカンの外用 C1 ケトコナゾールの外用 C1 かつらの着用 C1 ビマトプロスト・ラタノプロストの外用 C2 成長因子導入および細胞移植療法 C2 ミノキシジルの内服 D 人工毛植毛術 D

A=行うよう強く勧める/B=行うよう勧める/C1=行ってもよい/C2=行わないほうがよい/D=行うべきではない

推奨度の意味も、ガイドラインが定義しています。

推奨度意味根拠の水準
A行うよう強く勧める有効性を示すレベルIまたは良質のレベルIIのエビデンスがある
B行うよう勧める質の劣るレベルII、良質のレベルIII、非常に良質のIVがある
C1行ってもよい質の劣るIII〜IV、良質な複数のV、委員会が認めるVI
C2行わないほうがよい有効のエビデンスがない、あるいは無効であるエビデンスがある
D行うべきではない無効あるいは有害であることを示す良質のエビデンスがある

ここで大事なのは、C1「行ってもよい」は、積極的な推奨ではないということです。「質の劣る根拠しかないが、副作用が軽く、日本で長く使われてきたから否定はしない」——おおむね、そういう位置づけです。広告で「学会のガイドラインにも掲載」と書かれていても、それがAなのかC1なのかで、意味はまったく違います。

そして、そもそもこのガイドラインが作られた理由が、冒頭に書かれています。

「それでもなお皮膚科医の立場からは無効といえる科学的根拠に基づかない民間療法が社会的に横行し,無効な治療法を漫然と続ける患者も少なくなかった.」

3.【核心】推奨度Dに並ぶ、2つのもの

いちばん下から見ていきます。推奨度D=「行うべきではない」に並んでいるのは2つです。

推奨度Dのものガイドラインの推奨文
ミノキシジルの内服「ミノキシジルの内服を行うべきではない.」
人工毛植毛術「男性型脱毛症・女性型脱毛症ともに人工毛植毛術を行うべきでない.」

さらに、女性に限ると2つ増えます。フィナステリドとデュタステリドの内服です。どちらも男性には推奨度Aですが、女性型脱毛症には推奨度D。同じ薬で、評価が正反対になります。

この「D」という評価は、単に効果が確かめられていないという意味ではありません。定義は「無効あるいは有害であることを示す良質のエビデンスがある」です。C2の「行わないほうがよい」より、さらに一段強い否定です。

そして問題は、このDのひとつが、いま最も広く処方されていることです。

4. ミノキシジル内服——「臨床試験は実施されていない」

CQ14の解説は、たった数百字です。短いのは、書くべきデータがないからです。

ミノキシジルの「飲み薬」について 同じ成分でも、塗り薬は推奨度A、飲み薬は推奨度Dです ないもの ・有用性を確かめた臨床試験 ・薄毛の薬として認可した国 ・日本での降圧剤としての認可 ガイドラインは、未承認薬の使用には 同意が前提になるとしています。 報告されているもの ・全身の多毛 ・胸痛、心拍数増加、動悸 ・息切れ、呼吸困難 ・うっ血性心不全 ・むくみ、体重増加 (内服用製剤の市販後調査欄より) ガイドラインの結論:「行わないよう強く勧められる」 一方、塗り薬のミノキシジルは推奨度A。同じ名前でも、評価は正反対です。

「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」CQ14の記述をもとに作成

一文目から、こうです。

「ミノキシジル内服の有用性に関して臨床試験は実施されていない.」

効くかどうかを調べた臨床試験が、ない。次にこう続きます。

「ミノキシジルは降圧剤として開発されたが本邦では認可されていない.また,男性型脱毛症に対する治療薬としても認可されている国はない.」

もともとは血圧を下げる薬です。その血圧の薬としてすら、日本では承認されていません。そして薄毛の薬として承認している国は、世界のどこにもない——ガイドラインはそう書いています。

では、なぜ使われているのか。ガイドラインはその経緯まで書いています。

「それにもかかわらず,全身の多毛症を起こす副作用があることを根拠に,医師が安易に処方したり,一般人が個人輸入で入手し服用することがあるので,医薬品医療機器等法の観点から問題視されている.」

「全身の毛が濃くなるという副作用があるのだから、髪にも効くはずだ」——この推測が根拠だということです。副作用を根拠にした処方が、法律の観点から問題視されている、とまで書かれています。

副作用についても記載があります。「胸痛,心拍数増加,動悸,息切れ,呼吸困難,うっ血性心不全,むくみや体重増加などの重大な心血管系障害が生じるとの記載がある.」。もともと血管を広げて血圧を下げる薬ですから、心臓への負担は成分の性質そのものです。

結論はこうです。「ミノキシジルの内服療法は,利益と危険性が十分に検証されていないため,男性型脱毛症・女性型脱毛症ともに行わないよう強く勧められる.」

もうひとつ、知っておいてよい点があります。このガイドラインは免責事項のなかで、承認されていない薬を使う場合の前提をこう書いています。「保険適応外治療や未承認薬の使用にあたっては,各医療機関の承認や,患者あるいは家族のインフォームド・コンセントが前提となる.」。未承認の薬を使うのであれば、それが未承認であることの説明を受け、納得したうえで、が前提だということです。説明がないまま処方されているなら、その前提が満たされていません。

なお——塗り薬のミノキシジルは推奨度Aです。同じ成分でも、飲むか塗るかで評価は正反対になります。8章で扱います。

5. 1年分7万円が、勝手に届く

ガイドラインは2017年のものです。では、いま何が起きているのか。国民生活センターが2026年6月23日に公表した注意喚起に、その答えがあります。

タイトルは「ニキビ、AGA治療や痩身目的等のオンライン診療のトラブルにご注意-処方薬の定期購入にかかるトラブルが目立ちます-」。掲載されている相談事例の一つが、これです。

「1年前、スマートフォンでAGAのオンライン診療を受け、1年分の治療薬の処方をサイトの画面上で選択し、代金約7万円はクレジットカードで支払った。思うような効果が得られず途中で服用を止めて、これ以上継続するつもりはなかった。」

「ところが先日、医師の問診もしていないのに突然1年分の治療薬が届いた。頼んだ覚えがなかったのでメールで返品を求めたら「1年ごとの定期購入に申し込んでいるので返品できない」と返信があった。」

(2025年6月受付・40歳代・男性)

構造が3つ重なっています。①1年分をまとめて契約させる ②気づかないうちに定期購入になっている ③医師の問診なしに薬が届く。

国民生活センターのリーフレットは、注意点として「意図せず薬が定期購入になっていた」「解約が難しい」「処方薬の副作用の説明がされない」「長期間の薬が処方されるケースも」の4つを挙げています。

そして助言は、こうです。

「オンライン診療の受診後に処方薬を購入する場合、定期購入になっているケースが多くみられます。なかには、1年分など、長期間の薬が処方されるケースもあります。」

「解約できる場合でも条件が付されていることが多いため、内容や解約条件、とくに長期間の処方については事前によく確認しましょう。」

ここで、4章の話とつながります。効果を確かめる前に1年分を払うという契約が成り立つのは、効くかどうかが分からない薬でも売れてしまうからです。ガイドラインが推奨度Aとしている治療なら、まず数か月試して判断すればいい。1年分を先に買う理由はありません。

🚨 契約の前に、確認してください

① 処方されるのは、国内で承認された薬か

② 定期購入になっていないか。なっている場合、解約の条件は何か

③ 副作用の説明を受けたか

④ 次回以降も、医師の診察があるのか

不安を感じたときや解約でもめたときの相談先も示されています。「不安を感じたり、解約時にトラブルになったりした場合には、一人で悩まず最寄りの消費生活センター等に相談しましょう。」消費者ホットラインは188(いやや)です。「もし副作用等の症状が出た場合には、速やかに医療機関を直接受診してください。」

6. 推奨度Aは、3つだけです

ここからは、勧められている側を見ます。推奨度A(行うよう強く勧める)は3つ。しかも、うち2つは男性型脱毛症に限られます。

推奨度Aの治療対象入手
ミノキシジルの外用男性(5%)・女性(1%)薬局で買えます(第1類医薬品)
フィナステリドの内服男性型脱毛症のみ医師の処方(自由診療)
デュタステリドの内服男性型脱毛症のみ医師の処方(自由診療)

数字も出ています。フィナステリドについては、801名の日本人男性を対象にした観察研究で、1mg/日を5年間続けたところ、写真評価で99.4%の症例に効果が得られたと報告されています。また「40歳未満の症例,重症度の低い症例でより高い効果を示した」とも書かれています。早いほうが有利という点は、覚えておいてよいと思います。

ただし、飲み薬には知っておくべき点がいくつもあります。

① やめると戻ります。ガイドラインは「なお,内服を中止すると効果は消失する.」と一文で書いています。

② 判定には時間がかかります。「少なくとも6カ月程度は内服を継続し効果を確認すべきである」。1か月で判断するものではありません。

③ 性機能への影響が報告されています。デュタステリドの国内試験(120例・52週)では、リビドー減少8.3%、インポテンツ11.7%、射精障害5.0%と報告されており、ガイドラインは「投与にあたっては添付文書の記載をよく読んだ上で,性機能障害を含めた副作用についても十分な説明と同意が必要である.」としています。

④ 前立腺がんの検査値が変わります。フィナステリドでは血清PSA濃度が約50%低下すると報告されていて、ガイドラインは「2倍した値を目安として評価すべきである」としています。健診でPSAを測る年代の方は、服用していることを必ず伝えてください。伝えないと、異常が見逃される可能性があります。

⑤ 20歳未満の安全性は確立していません。国内の臨床試験は20歳以上を対象に行われました。

7. 男性と女性で、答えが真逆になる

このガイドラインは、2010年版から改訂される際に病名そのものを変えました。「現在では男性型脱毛症より「女性型脱毛症(female pattern hair loss)」という病名を用いることが国際的にも多くなってきている.」——女性の薄毛を「女性の男性型脱毛症」と呼ぶのをやめた、ということです。

理由は病態です。女性では「男性ホルモン依存性では病態が説明できない場合も有り」とされています。出方も違い、男性が前頭部と頭頂部から進むのに対し、女性は「頭頂部の比較的広い範囲の頭髪が薄くなるパターン」で、更年期に多発します。

仕組みが違えば、治療の答えも変わります。

同じ治療でも、男女で答えが違います 「男性に効くから女性にも」とは、ガイドラインは書いていません 男性型脱毛症 女性型脱毛症 フィナステリドの内服 A D デュタステリドの内服 A D アデノシンの外用 B C1 自毛植毛術 B C1 ミノキシジルの外用(濃度が違います) A / 5% A / 1% 飲み薬の2つは、女性ではいちばん強い否定(D)になります。

フィナステリド・デュタステリドは、妊娠の可能性のある女性・妊婦・授乳中の女性への投与が禁忌とされています

いちばん重要なのが、飲み薬の2つです。フィナステリドとデュタステリドは、男性には推奨度A、女性には推奨度D。

効かないというデータがあります。137名の女性を対象とした1年間のランダム化比較試験で、1cm²あたりの硬毛数はフィナステリド群で−8.7、プラセボ群で−6.6と、どちらも減少し、両群に有意差はありませんでした。薬を飲んでも、飲まなくても、同じように減った——という結果です。

加えて安全性の問題があります。「妊婦に投与するとDHTの低下により男子胎児の生殖器官等の正常発育に影響を及ぼす恐れがあり,妊婦または妊娠している可能性のある女性,授乳中の女性への投与は禁忌である.」

男性の薄毛の仕組みと女性の仕組みの違いについては髪はなぜ抜けるのかで、女性の薄毛のタイプの見分け方については女性の薄毛・白髪で整理しました。

8. ミノキシジル外用——男性は5%、女性は1%

薬局で買えて、しかも推奨度Aという、唯一の選択肢です。推奨文はこうです。

「ミノキシジル外用を行うよう強く勧める(男性型脱毛症:5%ミノキシジル,女性型脱毛症:1%ミノキシジル).」

推奨文のなかに濃度が書き込まれているところが重要です。男性用と女性用は、はじめから別物として扱われています。

根拠となった数字を挙げます。男性では、393名を対象とした48週の試験で、1cm²あたりの毛数の増加がプラセボ群3.9本、2%群12.7本、5%群18.6本。国内の300名の試験でも、1%群21.2本に対し5%群26.4本と、5%のほうが有意に多い結果でした。

女性では、1,242名を統合したシステマティック・レビューで、ミノキシジル群はプラセボ群に比べ1cm²あたり平均13.18本増えました。ただし濃度による差は出ていません。631名を統合した解析では、2%群と5%群で総毛髪数に有意差はなく、有害事象にも差はありませんでした。

一方で、皮膚症状は濃度が高いほうで増えています。381名の女性を対象とした48週の試験では、皮膚症状の出現率が5%群14%、2%群6%、プラセボ群4%でした。効果が変わらず、副作用だけ増えるなら、高い濃度を選ぶ理由はありません。

そして、使い始めに必ず知っておくべきことがあります。

「男女ともにミノキシジル外用初期に休止期脱毛がみられることがあり,これが外用中止につながる恐れがあるため,患者への説明が必要である.」

使い始めに、かえって抜け毛が増えることがあります。そしてそれでやめてしまう人が多いので、あらかじめ説明が必要だ——とガイドラインが書いています。

そのほかの有害事象として「瘙痒,紅斑,落屑,毛包炎,接触皮膚炎,顔面の多毛」が挙げられています。ただしガイドラインは、「ミノキシジル外用による有害事象は必ずしもミノキシジルだけの作用によるとは言えない.」とも書いています。5%製剤で皮膚症状が出た10名のうちパッチテストを行った3名では、2名が溶媒のプロピレングリコールにも陽性でした。かぶれについては接触皮膚炎(かぶれ)の記事もあわせてご覧ください。

9. もうひとつの推奨度B——アデノシン

推奨度Bには3つあります。LEDおよび低出力レーザー照射、アデノシンの外用、自毛植毛術です。

このうち、日本で製品として手に入るのがアデノシンの外用です。男性型脱毛症に推奨度B(行うよう勧める)、女性型脱毛症にC1(行ってもよい)とされています。

根拠として3つのランダム化比較試験が挙げられています。101名の男性を対象とした6か月の試験では、中等度以上の改善率がアデノシン群80.4%に対し対照群32.0%。そして注目すべきなのが、ミノキシジルと直接比べた試験です。

「0.75%アデノシン配合ローションは男性型脱毛症の治療薬として市販されている5%ミノキシジルローションと同等の有用性があることが示唆された」

94名の男性を対象とした6か月のランダム化比較試験で、病変部の太毛率に両剤で有意差がなかった、という結果です。

ただし推奨度はミノキシジル外用(A)より一段下のBです。「同等だと示唆された」試験が1件あることと、推奨度が同じになることは別の話です。

女性についてはさらに慎重です。「女性に対する有効性を示す根拠はまだ不足しているが,副作用が軽微な点や女性用の製品が販売されている点も考慮し,外用療法を行ってもよいことにする.」。「製品が売られているから」という理由がC1の根拠に含まれている——この正直さは、読んでおく価値があると思います。

なお、同じ推奨度BでもLEDおよび低出力レーザー照射には、見過ごせない注記があります。「ただし,上記の機器は国内ではまだ認可されておらず,用いられる光源の種類,波長,出力は報告によって様々ある.」。海外の研究で使われた機器と、国内で売られている家庭用の機器が同じものとは限りません。推奨度Bという数字だけを見て買うのは、勧められません。

10.「行ってもよい」に並ぶもの

C1には5つ並んでいます。カルプロニウム塩化物、t-フラバノン、サイトプリン・ペンタデカン、ケトコナゾール、かつらです。ドラッグストアでよく見かける成分が、ここに集まっています。

C1のものガイドラインの評価
カルプロニウム塩化物の外用「現段階では十分に実証されていない.」ただし長年の保険適用と国内での診療実績を考慮してC1
t-フラバノンの外用男性型に「有効性を示す弱い根拠が存在する」。女性型の臨床試験は実施されていない
サイトプリン・ペンタデカンの外用「有効性を示す弱い根拠があるので,副作用が軽微な点も考慮し」C1
ケトコナゾールの外用「国内ではケトコナゾールは育毛剤として認可されていない.」
かつらの着用「かつら着用は脱毛症状を改善するものではないが」、生活の質は有意に向上した

キーワードは「弱い根拠」です。C1の多くは、効果が示されたというより、副作用が軽いから否定はしないという理由で並んでいます。

かつらについては、少し性質が違います。脱毛そのものは変わりませんが、26名の男性と20名の女性を対象とした調査で、生活の質を測る指標が使用後に有意に向上し、「かつらの着用による副作用は特に報告されなかった」とされています。ガイドラインは「通常の治療により改善しない場合や,QOLが低下している場合に,行ってもよい」としています。なお円形脱毛症のガイドラインでは、かつらはもっと強く推奨されています。同じかつらでも、病気によって位置づけが違うということです。

そして、この表にすら載っていないものがあります。育毛シャンプー、育毛サプリメント、ノコギリヤシ、頭皮マッサージ器——これらはガイドラインの14のCQに含まれていません。C1ですらなく、評価の対象にもなっていないということです。

11. 植毛——自毛はB、人工毛はD

「植毛」とひとくくりにされますが、中身は別物です。推奨文を読んでください。

「男性型脱毛症には自毛植毛術を行うよう勧める.女性型脱毛症には自毛植毛術を行ってもよい.一方,男性型脱毛症・女性型脱毛症ともに人工毛植毛術を行うべきでない.」

自毛植毛はB(男性)とC1(女性)、人工毛植毛はD。推奨度でいえば、いちばん上に近いところと、いちばん下です。

人工毛について、ガイドラインはこう書いています。「人工毛植毛術については,過去に多くの有害事象の報告があるため,米国の食品医薬品局(Food and Drug Administration)は人工毛自体を有害器具として指定し,人工毛の使用を事実上禁じている.」

日本では法律で禁じられてはいません。ガイドラインもその点は認めたうえで、「日本国内で人工毛植毛術を施行することに医療法上の問題はないが,有害事象の発生を看過できないため,安全性に関する高い水準の根拠が得られるまでは,原則として人工毛植毛術を行うべきではない.」としています。合法であることと、勧められることは別です。

自毛植毛にも条件がついています。「フィナステリド及びデュタステリド内服やミノキシジル外用による効果が十分でない症例に対して,他に手段がない状況において,十分な経験と技術を有する医師が施術する場合に限り」勧める、という書き方です。まず推奨度Aの治療を試してから、という順番が明記されています。

もうひとつ、よく広告で見る「毛髪再生医療」についても書かれています。成長因子の導入や、脂肪組織由来幹細胞の培養上清、多血小板血漿(PRP)を頭皮に注入する治療です。推奨度はC2(行わないほうがよい)。

「これらの臨床試験の多くは,限られた施設における,倫理委員会の承認を必要とする先進医療の段階にあり,安全性なども含め,その有効性は決して十分に検証されているとはいえない.」。そのうえで「今後が期待される治療法ではあるものの(中略)現時点では広く一般に実施できるとは言い難いため,行わない方がよいことにする.」と結んでいます。

12. 🚨 その薄毛、AGAではないかもしれません

最後に、いちばん見落とされやすい話をします。薄毛の原因がAGAだとは限りません。

ガイドラインは診断の項で、除外すべきものを具体的に並べています。

「ゆっくりと頭髪が抜け,頭部全体が疎になる円形脱毛症の亜型,女性型脱毛症においては,慢性休止期脱毛,膠原病や慢性甲状腺炎などの全身性疾患に伴う脱毛,貧血,急激なダイエット,その他の消耗性疾患などに伴う脱毛,治療としてのホルモン補充療法や薬剤による脱毛などを除外することが大切である.」

整理すると、こうなります。

除外すべきもの確かめ方
円形脱毛症の亜型全体が薄くなるタイプもあります → 円形脱毛症
慢性甲状腺炎などの全身性疾患血液検査(TSHなど)→ その疲れ、甲状腺かも
貧血血液検査 → 鉄不足(フェリチン)
急激なダイエット・消耗性疾患体重の変化を振り返る
ホルモン補充療法や薬剤による脱毛飲んでいる薬を医師に伝える
慢性休止期脱毛出産・手術・発熱などの2〜3か月後に始まっていないか

これが大事なのは、原因が違えば、AGAの薬をいくら使っても変わらないからです。しかもオンライン診療では、血液検査も、頭皮を直接見ることも、多くの場合行われません。「薄毛=AGA」として薬だけが処方される構造になっています。

とくに女性は、甲状腺、鉄不足、出産後の休止期脱毛が重なりやすい年代と、薄毛が気になり始める年代が近いところにあります。女性の薄毛で自費の治療を始める前に、一度は血液検査を——これが、この記事でお伝えしたいもうひとつのことです。

皮膚科の受診をおすすめしたい状態

① 円形に、境目がはっきりした形で抜けている

② 数週間のうちに、急に大量に抜けた

③ 頭皮に赤み、かさぶた、うろこ状のものがある

④ 抜けた場所の皮膚がつるつるして、毛穴が見えない

⑤ 強いだるさ、体重の変化、月経の乱れなど、髪以外の不調を伴う

⑥ 市販の外用薬を6か月続けても、変化がない

ちなみに、AGAは決して珍しいものではありません。日本人男性の発症頻度は全年齢平均で約30%、20代で約10%、30代で20%、40代で30%、50代以降で40数%と報告されています。年齢とともに、誰にでも起こりうる変化です。だからこそ、焦って高額な契約をする前に、推奨度の表を一度見てほしいと思います。

この記事のまとめ

① 14の治療のうち推奨度Aは3つだけ。ミノキシジル外用、フィナステリド内服、デュタステリド内服

② ミノキシジル内服は推奨度D。「臨床試験は実施されていない」「認可されている国はない」

③ 人工毛植毛もD。米国FDAは人工毛を有害器具に指定しています

④ 女性にはフィナステリド・デュタステリドがD。外用も1%です

⑤ 塗り始めの抜け毛の増加は、ガイドラインに書かれた既知の反応です

⑥ 1年分の定期購入で解約できない相談が、国民生活センターに寄せられています

⑦ その薄毛はAGAではないかもしれません。甲状腺・貧血・薬剤は、血液検査と問診で分かります

13. よくある質問

オンライン診療でミノキシジルの飲み薬を勧められました。飲んでも大丈夫ですか?

日本皮膚科学会のガイドラインは、ミノキシジルの内服について推奨度Dとし、「ミノキシジルの内服を行うべきではない.」としています。推奨度Dは「行うべきではない(無効あるいは有害であることを示す良質のエビデンスがある)」という、いちばん強い否定です。理由もはっきり書かれています。「ミノキシジル内服の有用性に関して臨床試験は実施されていない.」。効くというデータがない、ということです。さらに「ミノキシジルは降圧剤として開発されたが本邦では認可されていない.また,男性型脱毛症に対する治療薬としても認可されている国はない.」。副作用については「胸痛,心拍数増加,動悸,息切れ,呼吸困難,うっ血性心不全,むくみや体重増加などの重大な心血管系障害が生じるとの記載がある.」とされています。結論は「利益と危険性が十分に検証されていないため,男性型脱毛症・女性型脱毛症ともに行わないよう強く勧められる.」。処方されそうになったら、まず「これは国内で承認された薬ですか」と聞いてください。そして塗り薬のミノキシジルは推奨度Aで、まったく別の評価だということも知っておいてください。

女性ですが、夫が使っているミノキシジルの塗り薬を借りてもいいですか?

やめてください。濃度が違います。ガイドラインの推奨文は「ミノキシジル外用を行うよう強く勧める(男性型脱毛症:5%ミノキシジル,女性型脱毛症:1%ミノキシジル).」となっていて、男性用と女性用ははじめから別の濃度で書き分けられています。日本で女性向けに承認されているのは1%のものです。濃度が高いほうが効くのでは、と思われるかもしれませんが、女性を対象にした研究では、2%と5%を比べても毛髪数に有意な差はありませんでした。一方で副作用は増えます。ある試験では皮膚症状の出現率が5%群で14%、2%群で6%、プラセボ群で4%でした。女性で注意すべき副作用として、顔の多毛も報告されています。効果が変わらないのに副作用だけ増えるなら、選ぶ理由がありません。なお飲み薬のフィナステリドとデュタステリドは、女性には推奨度Dです。妊娠の可能性のある方への投与は禁忌とされています。

塗り始めたら、かえって抜け毛が増えました。合わないのでしょうか?

その可能性もありますが、よく知られた一時的な反応かもしれません。ガイドラインにはこう書かれています。「男女ともにミノキシジル外用初期に休止期脱毛がみられることがあり,これが外用中止につながる恐れがあるため,患者への説明が必要である.」。つまり、使い始めに抜け毛が増えることがあり、それで多くの人がやめてしまうので、あらかじめ説明しておく必要がある——と、ガイドラインが医師に向けて書いているのです。この説明を受けないまま使い始めると、「悪化した」と感じてやめてしまいます。ただし、かゆみ・赤み・フケのような症状が出ている場合は接触皮膚炎かもしれません。ミノキシジル外用の有害事象として「瘙痒,紅斑,落屑,毛包炎,接触皮膚炎,顔面の多毛」が挙げられています。抜け毛だけなのか、皮膚の症状を伴っているのか。そこを見分けて、迷うときは皮膚科にご相談ください。

植毛を考えています。どう選べばいいですか?

自分の髪を移す自毛植毛と、人工の毛を植える人工毛植毛は、評価がまったく違います。ガイドラインの推奨文はこうです。「男性型脱毛症には自毛植毛術を行うよう勧める.女性型脱毛症には自毛植毛術を行ってもよい.一方,男性型脱毛症・女性型脱毛症ともに人工毛植毛術を行うべきでない.」。自毛はB(男性)とC1(女性)、人工毛はDです。人工毛について、ガイドラインは「過去に多くの有害事象の報告があるため,米国の食品医薬品局(Food and Drug Administration)は人工毛自体を有害器具として指定し,人工毛の使用を事実上禁じている.」と書いています。日本では法律上禁じられていませんが、ガイドラインは「有害事象の発生を看過できないため,安全性に関する高い水準の根拠が得られるまでは,原則として人工毛植毛術を行うべきではない.」としています。そして自毛植毛にも前提があります。「フィナステリド及びデュタステリド内服やミノキシジル外用による効果が十分でない症例に対して,他に手段がない状況において,十分な経験と技術を有する医師が施術する場合に限り」勧める、という書き方です。まず薬を試してから、という順番です。

クリニックのサイトに「毛髪再生医療」とありました。新しい治療ですか?

新しい治療ではありますが、ガイドラインの評価は推奨度C2、つまり「行わないほうがよい」です。対象になっているのは、成長因子の導入や、脂肪組織由来幹細胞の培養上清、多血小板血漿(PRP)などを頭皮に注入する治療です。ガイドラインは「これらの臨床試験の多くは,限られた施設における,倫理委員会の承認を必要とする先進医療の段階にあり,安全性なども含め,その有効性は決して十分に検証されているとはいえない.」としています。そのうえで「今後が期待される治療法ではあるものの,「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」などの法規に則って施術する必要のあるものも多く,現時点では広く一般に実施できるとは言い難いため,行わない方がよいことにする.」と結論しています。「期待はできるが、いまは勧めない」という位置づけです。高額な自由診療として案内されることが多い領域なので、契約の前に、推奨度Aの治療を先に試したかどうかを確認してください。

参考にした主な資料

凪
なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した推奨度・エビデンスレベル・試験結果は、日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」にもとづくもので、公開時点の情報です。同ガイドラインは2017年に公表された第2版であり、今後改訂される可能性があります。推奨度は集団に対する評価であり、個々の患者さんにとっての最適な治療と一致するとは限りません。フィナステリド・デュタステリドは医師の処方が必要な医薬品で、女性型脱毛症には推奨されておらず、妊婦または妊娠している可能性のある女性・授乳中の女性への投与は禁忌です。フィナステリド・デュタステリドの服用中は血清PSA濃度が低下するため、前立腺の検査を受ける際は必ず服用を申し出てください。ミノキシジル外用薬は第1類医薬品です。購入時に薬剤師から情報提供を受け、添付文書を必ずお読みください。国内で承認されていない医薬品を使用する場合は、未承認であることの説明を受け、納得されたうえでご判断ください。円形に抜ける、急激に大量に抜ける、頭皮に赤みや鱗屑がある、髪以外の全身症状を伴うといった場合は、男性型・女性型脱毛症以外の病気の可能性があります。自己判断で市販薬を続けず、皮膚科を受診してください。オンライン診療の契約や解約でお困りの際は、消費者ホットライン188にご相談ください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。