1. 先に結論
ガイドラインから読み取れることを、先にまとめます。
| よく聞く話 | ガイドラインが書いていること |
|---|---|
| かぶれは体質だから仕方ない | 「原因を確定し,その原因との接触を断つことができれば根治できる疾患である.」 |
| 塗り薬で抑えていればいい | 「接触皮膚炎の原因を見逃し,対症療法に終始することは(中略)行うべき診療ではない.」 |
| 化粧品でかぶれた=アレルギー | 「化粧品による副作用の90%以上が刺激性皮膚炎である.」 |
| 症状を見ればどちらか分かる | 分かりません。「パッチテストより確実かつ有用な原因を解明する検査方法はいまも存在しない.」 |
| 金属アレルギーは金なら大丈夫 | 金チオ硫酸ナトリウムの陽性率は23.2%で2位。ニッケル(24.8%)とほぼ並びます |
| ニッケルフリーにしても意味がない | 「感作率が低下する可能性が高い.」 |
| パッチテストで陰性なら原因ではない | 「パッチテストが陰性であっても,アレルギー反応ではないと判断せず」検証が必要とされています |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
かぶれは「何を塗るか」より「何をやめるか」の病気です。そして原因を探す手がかりは、出た場所にあります。耳ならピアス、まぶたなら手についたもの、首なら流れてきたシャンプー——この記事の6章の図だけでも、持ち帰っていただければと思います。
2.「かぶれ」は2種類あります
ひとくちに「かぶれ」と言いますが、中身は2つに分かれます。ガイドラインは刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎に大きく分類し、さらに光が関わる型(光接触皮膚炎)と、接触した範囲を超えて広がる型(全身性接触皮膚炎・接触皮膚炎症候群)を加えています。
| 刺激性接触皮膚炎 | アレルギー性接触皮膚炎 | |
|---|---|---|
| 仕組み | 物質が直接、皮膚を傷める | 免疫がその物質を覚えてしまう |
| 誰に起こるか | 条件がそろえば誰にでも | 覚えてしまった人だけ |
| 必要な量 | ある程度の濃度・回数が必要 | 「微量のハプテンで皮膚炎を起こしえる」 |
| 広がり方 | 触れた範囲にとどまりやすい | 「原因物質が接触した部位を超えて認められ」ることがある |
| 初回から出るか | 出る | 覚える段階(感作)が必要なので、使い始めは平気なことがある |
この5行目が、いちばん誤解されるところです。「何年も使っていたものだから原因ではない」は、成り立ちません。アレルギー性は、体が覚えた時点で始まります。10年使ってきた化粧品で、ある日から症状が出ることは普通にあります。
広がり方にも違いがあります。ガイドラインは、湿疹や水疱などの症状が「原因物質が接触した部位を超えて認められ,これは刺激反応と異なる点である.」としています。触れていない場所にまで出ているなら、アレルギー性を疑う根拠になります。
ただし——ここからが大事なのですが、見た目だけで確実に分けることはできません。だからこそ、後の章で扱うパッチテストが必要になります。
もうひとつ、まったく別の反応もあります。接触蕁麻疹です。こちらは触れた直後に膨疹(みみず腫れ)が出るもので、数日かかる湿疹反応とは時間の軸が違います。ガイドラインは、アレルギー型の接触蕁麻疹について「喘息・鼻炎などの呼吸器症状や腹痛・嘔吐といった消化器症状などを引き起こし,ついにはアナフィラキシーショックへと至る場合もある.」と書いています。触れて数分で出るものは、かぶれとは別物として急いでください。じんましんについてはじんましんの記事で詳しく整理しました。
3.【核心】原因製品の54%は、化粧品でした
「何が原因になりやすいのか」——これに、日本の実データで答えた調査があります。
SSCI-Netという団体が、パッチテストで原因が確定したアレルギー性接触皮膚炎について、原因製品の全国調査を行っています。2016年4月から2017年3月までに集まった423件の内訳は、こうでした。
| 原因となった製品の区分 | 割合 |
|---|---|
| 化粧品・薬用化粧品 | 54% |
| 医薬品 | 25% |
| 装身具・装飾品 | 9% |
半分以上が化粧品です。しかも、原因として多かった化粧品の種類まで報告されています。染毛剤、シャンプー、化粧下地、化粧水——毎日使うものばかりです。
2番目の医薬品25%も見逃せません。内訳は市販薬、点眼薬、ステロイド薬。かぶれを治すために塗った薬が、かぶれの原因になっているという状況が、現実に起きています。ここは12章でもう一度扱います。
なお、接触皮膚炎そのものの頻度も分かっています。皮膚科を受診した患者さんの全国調査では、接触皮膚炎は全患者の3.92%を占め、疾患としては上位9位でした。年齢は全年齢に分布しますが、ガイドラインは「特に,20〜30歳代,50〜75歳代に多い」としています。化粧を始める年代と、肌のバリアが落ちてくる年代の2つの山です。
4. 陽性率1位はニッケル——女性は4人に1人
次に、「どの物質に反応する人が多いか」です。
日本にはジャパニーズスタンダードアレルゲン(JSA)という標準セットがあり、パッチテストを受けた人の陽性率が毎年集計されています。2016年度・1,390件の結果がこちらです。
④はヘアカラー、⑥⑩はゴム製品の硬化剤、⑦は香料、⑨は化粧品やシャンプーの防腐剤に使われる成分です
上位5つは硫酸ニッケル、金チオ硫酸ナトリウム、ウルシオール、パラフェニレンジアミン、塩化コバルト。1位・2位・5位が金属で、4位のパラフェニレンジアミンはヘアカラーの主成分です。
そして男女差がはっきりしています。ニッケルは女性27.5%に対して男性16.2%。金は女性25.6%に対して男性15.7%。女性のおよそ4人に1人が、ニッケルにも金にも陽性という数字です。逆にウルシは男性14.7%・女性8.5%で、男性のほうが多くなっています。
ここで、多くの方の前提を一度崩しておきます。「金なら安全」ではありません。金チオ硫酸ナトリウムの陽性率23.2%は、1位のニッケル24.8%とほとんど差がありません。金属アレルギーの話になると「じゃあ金にすれば」となりがちですが、データはそう言っていません。
もうひとつ、上位に入ってきた新顔があります。イソチアゾリノンミックス(4.3%・9位)です。ガイドラインは「イソチアゾリノン系防腐剤の陽性率が高くなり,化粧品や日用品においても注目されているアレルゲンである」としています。含まれているのはシャンプー、リンス、化粧水、美容液マスク、冷却ジェル寝具など。さらに「イソチアゾリノン系防腐剤は,誘因不明の頭皮や顔面,全身の湿疹病変の原因であることがある.」とも書かれています。原因不明とされてきた湿疹の一部が、これかもしれないということです。
ヘアカラーのパラフェニレンジアミンについては、国が事故調査まで行った経緯があります。毛染めによるアレルギーの記事で、被害件数から代替手段まで詳しくまとめました。
5. ピアスをニッケルフリーにすると、どうなるか
金属が1位なら、次に知りたいのは「入り口はどこか」です。ガイドラインは、はっきり名指ししています。
「特にピアスがニッケル感作の原因になることが多い」。
そして耳に症状が出たときの読み方まで書かれています。「ピアスによってニッケルをはじめとする金属アレルギーを生じることがある.したがって,耳介の皮膚炎をみた場合は,それだけでニッケルアレルギーの可能性を示唆する.」。耳が赤くなっている、それだけで手がかりになるということです。
では、素材を替えることに意味はあるのか。ガイドラインはこれを設問として立てています。
「ピアスを代表とする装身具をニッケルフリーにすると,ニッケルの感作率は低下する可能性があるか?」
「感作率が低下する可能性が高い.」
根拠として、ニッケルフリーの装身具や日用品が普及した結果、スイスでは1990〜1994年のニッケル、コバルトのパッチテスト陽性率がむしろ低下傾向にあったこと、EU諸国でも同様の報告があることが挙げられています。
これは社会全体の数字が動いたという話です。個人の症状が消えるという意味ではありません。それでも、まだ症状が出ていない人にとっては、素材を選ぶことに意味がある——そう読める記述です。
とくにファーストピアスのように、傷のある状態で長時間ふれるものは、感作の入り口になりやすい条件がそろっています。
チタンについても触れておきます。ガイドラインは、歯科や整形外科のインプラントに使われるチタンについて、「チタンによるアレルギーは否定的で,そのパッチテスト試薬や至適濃度については今後も検討を要するとの報告もある」としています。起こりにくいと考えられているが、調べる方法自体がまだ定まっていない、というのが正確なところです。
金属は、装身具以外にも広く潜んでいます。ガイドラインは「金属はアクセサリー,コイン,時計,革製品,セメント,ステンレス,塗料など多くのものに含まれ接触皮膚炎を起こす.」としています。めがねのフレーム、ベルトのバックル、ポケットに入れた硬貨や鍵——出る場所が思い当たらないときは、こうしたものを疑ってください。
なお、食べものに含まれる金属を制限するという考え方もありますが、ガイドラインの推奨度はC1・エビデンスレベルVと低く、さらに「厳格な金属制限食は微量元素欠乏症をきたすことがあるので避けるべきである」と釘を刺しています。自己判断での食事制限は、勧められません。
6. 出た場所から、原因を絞る
ここが、この記事でいちばん実用的な部分です。ガイドラインには「部位と主な接触源」という表があり、体のどこに出たかで疑うべきものが整理されています。日常生活に関わるものを抜き出しました。
「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」表6をもとに、日常生活に関わるものを選んで作成
いくつか、言われないと気づかないものがあります。
① 首や胸に出たとき。ガイドラインは洗髪剤について「洗髪剤(シャンプー,リンス)によるものでは頭皮よりむしろ頸部,前胸部に湿疹病変が強く出ることもある.」としています。頭皮は平気なのに、首が荒れる。流れ落ちて、そこに残るからです。
② まぶたに出たとき。まぶたの皮膚はとても薄く、手についたものが移って症状が出ます。原因として挙げられているのは、点眼薬に含まれる塩化ベンザルコニウムやチメロサール、眼軟膏の硫酸フラジオマイシン、そして手についたマニキュア、まつ毛エクステの接着剤、ビューラーの金属です。まつ毛まわりについてはまつ毛美容液とまつ毛エクステの記事で、国の調査データから整理しました。
③ 左右対称に出たとき。衣類が原因の場合の特徴です。ガイドラインは「衣類による接触皮膚炎は典型的な湿疹病変を形成し左右対称に症状が誘発される.」とし、さらに「原因アレルゲンを含む衣類の装着を中止しなければ皮疹が全身へ拡大し,慢性化を促すことになる.」としています。服のタイプ別の出方まで書かれていて、ソックスなら下肢と足、ストッキングなら下腿・足・爪先、ブラウスなら背中・胸・腋窩、ワンピースなら背中・頸部・肘・前腕・手首、とされています。
④ 新しい靴を履いてから。履物について「新しい靴を使用した際に突然発症することがある.」とあります。原因はゴムの硬化剤や、靴用接着剤に含まれる樹脂です。
⑤ 顔に出たのに、化粧品を変えても治らないとき。顔は化粧品が原因のことが多い部位ですが、空気中を漂ってくるアレルゲンでも起こります。ガイドラインはエポキシ樹脂、ホルマリン、粉塵、線香を挙げ、「空気伝搬性アレルゲンとしてはスギ花粉に注意が必要.」としています。
7. 化粧品のトラブルの9割は、アレルギーではありません
3章で「原因製品の54%が化粧品」という数字を出しました。ただしこれは、パッチテストでアレルギーだと確定したケースの話です。日常で起きている化粧品トラブル全体を見ると、景色が変わります。
「化粧品による副作用の90%以上が刺激性皮膚炎である.」
9割以上は、免疫の反応ではありません。「いずれも免疫学的機序は関与しない」とも明記されています。原因になりやすいものとしてアイメイク用品や界面活性剤が挙げられています。
この違いは、対処を変えます。アレルギー性なら、その物質は二度と使えません。微量でも反応するからです。刺激性なら、濃度や使い方、肌の状態しだいで使える可能性があります。同じ「赤くなった」でも、結論がまったく違うのです。
そしてもうひとつ、知っておくと安心できる記述があります。刺激性皮膚炎には「客観的な皮膚所見を伴わず,灼熱感,ヒリヒリ感,痒みなどの不快な皮膚感覚を訴える主観的なもの」があるとされています。見た目には何も出ていないのに、しみる。気のせいではなく、ガイドラインに載っている状態です。
意外な一文もあります。「刺激性皮膚炎の感受性は年齢とともに低下する.」。年をとると肌が敏感になるという印象とは逆向きです。ただしこれは刺激性の話で、乾燥によるかゆみはまた別の問題です。そちらは乾燥肌とかゆみの記事で扱いました。
アレルギー性だった場合、原料の順位もはっきりしています。
1位は香料です。「化粧品原料の中で,化粧品皮膚炎の最も頻度の高い原料は香料で,原因の30%以上をしめる」。2位が保存料です。標準セットに含まれる香料ミックスIで香料アレルギーの70〜80%、ペルーバルサムで50%程度が検出できるとされていますが、「この両者のパッチテストを行っても,全ての香料アレルギーの患者を検出することはできず」とも書かれています。
出る場所も報告されています。化粧品によるアレルギー性接触皮膚炎の発症部位は、全体の約40%が顔、次いで13〜18%が眼瞼、11%が前腕、8%が腋窩でした。
8. 自分で確かめる方法——ROAT
「新しい化粧品を、いきなり顔に使うのが怖い」——この不安に、ガイドラインは方法を用意しています。ROAT(反復開放塗布試験)です。
特筆すべきは、ガイドラインがこれを「患者が各自で行う試験である.」と明記していることです。医療機関でしかできない検査ではありません。
「市販の製品や試薬を肘に近い前腕もしくは上腕に1日2回反応が出現するまで,あるいは反応が出現しなくても2週間は塗布する.塗布サイズは3×3〜5×5 cm2とし,反対側にコントロール物質を塗布する.」
整理すると、こうです。
| どこに | ひじに近い前腕、または上腕 |
|---|---|
| どのくらい | 3×3cmから5×5cmの範囲 |
| 何回 | 1日2回 |
| いつまで | 反応が出るまで。出なければ2週間 |
| 比べるもの | 反対の腕に、比較用のものを塗る |
よく言われる「腕の内側に1回塗って一晩おく」よりも、ずっと長く、回数も多いことに注意してください。アレルギー性の反応は、数日かけて出てきます。1回塗って翌朝なんともなかった、では確かめたことになりません。
一方で、この方法にはやってはいけない場面があります。
🚨 すでに一度でも強い症状を起こした製品では、行わないでください。
ガイドラインはパッチテストについて「パッチテストにより新たな感作を起こす可能性もある.」と書いています。確かめるつもりの行為が、感作を進めてしまうことがあります。ROATは、まだ症状を起こしていない新しい製品を試すための方法だと考えてください。
なお、ヘアカラーについては話が別です。毛染めの記事で書いたとおり、一度でも症状が出た方は、セルフテストもしてはいけません。ガイドラインでもヘアカラー剤やパーマ液は、塗って20〜30分で判定するオープンテストの対象とされていて、通常のパッチテストとは扱いが違います。
9. パッチテストで分かること、分からないこと
原因を確定する検査がパッチテストです。ガイドラインは「パッチテストより確実かつ有用な原因を解明する検査方法はいまも存在しない.」とし、英国のガイドラインに沿って推奨度Aと位置づけています。
まず、どういう検査なのかを知っておいてください。
「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」表4および判定時間の記述をもとに作成
背中に貼って48時間。はがして15〜30分後に1回目の判定。その後72時間または96時間、そして1週間後にも見ます。複数回見る理由も書かれていて、金属の試薬は刺激反応が出やすい一方、硫酸フラジオマイシン、ステロイドを含む外用薬、金などは陽性反応が4日目以降に遅れて出る傾向があるためです。2日で終わる検査ではありません。
受ける側の注意もあります。貼っているあいだは「シャワー,入浴,スポーツ,発汗の多い労働は控える」。検査前の4週間は強い日焼けを避ける。妊婦には実施しないことが推奨されており、施設によっては授乳中も行いません。プレドニゾロンを1日20mg以上飲んでいる方も実施しないことが推奨されています。
そして——ここからが、この検査のいちばん大事な話です。
陽性=原因、ではありません。
英国のガイドラインでは、パッチテストの感度と特異度は70〜80%とされています。日本のガイドラインは、こんな計算を示しています。仮に感度・特異度が90%で、10%の人が本当に感作されている物質を100人に検査すると、陽性は9人。ところが偽陽性も9人出る。つまり陽性となった18人のうち、半数が不正確な結果になります。
そのうえで「感度,特異度が80%程度であればさらに偽陽性,偽陰性が多くなる可能性があることを念頭に置いてテストを行わねばならない.」としています。
逆方向も同じです。「パッチテストが陰性であっても,アレルギー反応ではないと判断せず,アレルゲンを正しい濃度で適切に貼布したかなどを検証する.」。
だから結果は、必ず症状と突き合わせます。ガイドラインは陽性が出たときの手順として、①いま接触しているか使用歴があるかを確認し、現在の皮膚炎の原因か悪化要因かを明らかにする、②今回接触したものでなければ過去の皮膚炎の既往を問診する、③これまでの皮膚炎とは関係のない交差反応の可能性を考える、という3段階を示しています。
判定基準が2つあることも知っておいてください。図に示したとおり、日本の基準は「++」以上を陽性、国際基準(ICDRG)は「+」以上を陽性とします。同じ反応でも、どちらを使うかで結論が変わりえます。
刺激反応との見分け方にも、実用的な記述があります。「アレルギー反応はパッチテストユニット除去後も反応が持続し,刺激反応は時間の経過と共に弱まっていく傾向がある」。時間とともに強くなるか、弱くなるか。これが手がかりです。
最後に、日本での制約も書かれています。保険が使える試薬はパッチテストパネル(S)の22種と、鳥居薬品の34種で、ガイドラインは「種類が非常に少ない」としています。それ以上を調べるには、医師が個人の責任で海外の試薬を購入することになります。受けられる医療機関が限られるのは、このためです。皮膚科、なかでも接触皮膚炎やアレルギーを専門にしている施設を探してください。
10. 治療を、推奨度で並べる
治療についても、ガイドラインは推奨度をつけて整理しています。
| 治療 | 推奨度 | 保険 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ステロイドの塗り薬・飲み薬 | A | あり | エビデンスレベルII〜III |
| 抗ヒスタミン薬 | B | あり | 補助的な位置づけ |
| 免疫抑制薬の塗り薬・飲み薬 | C1 | なし | 英国では推奨度Aだが、日本では保険適用外 |
| 紫外線療法(慢性の手湿疹に) | PUVA:A/NB-UVB:B | なし | — |
柱はステロイドです。推奨度A。ここは揺れがありません。
注目していただきたいのが抗ヒスタミン薬(かゆみ止めの飲み薬)です。推奨度はBですが、ガイドラインの説明は控えめです。抗アレルギー薬の作用は「外用療法の補助療法としての効果を期待されるものであり,単独で炎症反応を抑制しうるものではない.」。かゆみ止めだけで、かぶれは治まりません。
免疫抑制薬(タクロリムス軟膏など)には、日本固有の事情があります。「英国ガイドラインにおいては推奨度Aの取り扱いとなっているが,本邦においては上述のごとく,保険適用がなく,実地経験も少ないため推奨度はC1とした.」。効果が疑わしいのではなく、日本では接触皮膚炎に保険が使えないという理由でC1になっています。同じ薬に対する評価が国で違う、その理由が書いてあるのは誠実だと思います。
そして、ガイドラインが冒頭から繰り返している最も重要な点。薬は原因を取り除く代わりにはなりません。免疫抑制薬の項には「接触皮膚炎の場合には漫然と使用することで原因除去の判断を鈍らせないことが必要である.」とあります。塗って治まると、原因を探す動機がなくなってしまう——それを警戒した一文です。
冒頭の一文に戻ります。「接触皮膚炎の原因を見逃し,対症療法に終始することは,長期ステロイド外用による皮膚萎縮などの副作用を発生させ,治療期間の長期化による医療費の不必要な支出を余儀なくする点で行うべき診療ではない.」
11. 防ぐ——手袋と、触れる前に塗るもの
原因を避けることが第一ですが、仕事や家事で避けきれないこともあります。ガイドラインは予防についても推奨度をつけています。
まず手袋。推奨度はC1・エビデンスレベルIVですが、使い方が具体的です。
「使用者ごとに適切な手袋を選択して装着すること,また,ゴム手袋の下にコットン手袋を装着することは接触皮膚炎の予防に有効な場合がある.」
「フィット感のよい手袋の使用が勧められるが,その場合は薄いコットン手袋を下に装着すると皮膚バリア機能の障害を防ぐことができる.コットン手袋が湿ってきたらすぐにコットン手袋を変更する.」
ゴム手袋の下に、綿の手袋。そして湿ってきたら替える。これがガイドラインの書いている方法です。使い分けについても「家庭ではゴム製の家事用手袋を,職場においては接触する物質により使用する手袋を選択するとよい」とされています。
ただし、同じ段落に警告もあります。「長時間の手袋の使用は逆にバリア機能を障害するため使用時間は最小限にする.」。手袋は、長くつけるほどよいものではありません。
そして忘れてはいけないのが、手袋そのものが原因になることです。図1を見返してください。6位のカルバミックス(6.3%)と10位のチウラムミックス(4.1%)は、どちらもゴム手袋に使われる硬化剤です。ガイドラインは「ゴム手袋は,慢性的な手湿疹の原因となる.」とはっきり書いています。手袋を使い始めてから悪くなったなら、手袋を疑ってください。手荒れについては手湿疹の記事で、5つの型から治療の推奨度まで整理しています。
次にバリアクリーム・保湿剤です。こちらは刺激性かアレルギー性かで評価が分かれます。
| 推奨度 | エビデンスレベル | ガイドラインの表現 | |
|---|---|---|---|
| 刺激性接触皮膚炎 | B | II | 「予防的外用は効果がある.」 |
| アレルギー性接触皮膚炎 | C1 | IV | 「予防的外用が有効な場合がある.」 |
有効性が示された具体例として、高濃度の脂質を含む保湿剤と5%尿素と5%菜種油を含む保湿クリームが挙げられています。
なお、まとめの表では「バリアクリーム手袋は予防に有効である」として、刺激性皮膚炎に対しグレードAが与えられています。手袋と保湿を組み合わせて、触れる前に備える——それがいちばん現実的な守り方です。
12. 🚨 見落とされやすい3つ——湿布、目薬、市販の塗り薬
3章で見たとおり、原因製品の25%は医薬品でした。ここが、いちばん見落とされます。
① 湿布——貼ってから、何週間も経っていても
ケトプロフェンという成分の湿布は、日光が当たって初めて症状が出る光接触皮膚炎を起こすことで知られています。ガイドラインは光接触皮膚炎の原因について「現在は,ケトプロフェンの頻度が高い.」としています。
「貼付後,数週間以上経てもUV照射により症状が誘発される.」
さらに「症状はつよく紅斑のほか水疱を生ずることもあり,接触皮膚炎症候群に移行することもある」。実際、「偶然の日光暴露で光接触過敏症が生じてからの詳細な問診でようやく1カ月以上前のケトプロフェン軟膏の外用が判明することがある」と書かれています。
もうひとつ重要なのが交差反応です。ケトプロフェンに感作されると、同じ系統の塗り薬や飲み薬でも症状が出ることがあります。光交差反応を示す物質として、スプロフェンと、日焼け止めに使われるベンゾフェノンが挙げられています。日焼け止めについては日焼け止めの記事で成分の見方を整理しました。
② 目薬・眼軟膏——まぶたが赤いとき
まぶたの接触皮膚炎で多い原因として、点眼薬に含まれる塩化ベンザルコニウム、チメロサール、眼軟膏の硫酸フラジオマイシンが挙げられています。フラジオマイシンは陽性率11位(3.7%)で、しかも女性4.8%に対して男性0.4%と極端な差があります。目薬をさすほど、まぶたが荒れる——そういうことが起こります。
③ 市販の塗り薬——治すために塗ったもので
ガイドラインは、接触皮膚炎を起こすと報告されている市販薬の成分を一覧にしています。痛み止めの塗り薬(ジクロフェナク、インドメタシンなど)、局所麻酔薬(リドカイン、ジブカインなど)、そしてかゆみ止めの塗り薬(ジフェンヒドラミン、クロタミトン、メントール、サリチル酸メチルなど)。かゆみ止めについては「頻度は多くないが,多くの鎮痒外用薬のOTCに含まれるため,注意が必要.」とされています。
そしてステロイドの塗り薬自体も原因になりえます。3章の全国調査でも、医薬品の原因製品として市販薬、点眼薬、ステロイド薬が挙がっていました。
受診をおすすめしたい状態
① 市販薬を塗っているのに、よくならない・かえって広がっている
② 触れた覚えのない場所にまで広がっている(接触皮膚炎症候群の可能性)
③ 同じ場所に、何度も繰り返している
④ 仕事に関係していそうなとき(労災の対象になることがあります。ガイドラインは、業務との関係がはっきりしている場合「必ず患者の所属している事業所の産業医ないし安全衛生担当者に連絡すべきである」としています)
🚨 触れて数分以内に、みみず腫れ・くちびるの腫れ・息苦しさ・腹痛が出たときは、かぶれではなく接触蕁麻疹です。アナフィラキシーに至ることがあります。すぐに受診してください。
受診するときは、使っているものを持っていくのがいちばん確実です。ガイドラインは、患者さんが持参した製品をそのまま貼って検査する方法まで書いています。化粧品やクリームはそのまま、シャンプーやリンスは1%の水溶液にして、衣類やゴムは切って、金属はやすりで削って——持ち込めば調べられるということです。
この記事のまとめ
① かぶれは「原因との接触を断つことができれば根治できる疾患」です
② 原因が確定した製品の54%は化粧品。次が医薬品25%、装身具9%
③ 陽性率1位はニッケル(女性27.5%)。ただし金も2位23.2%です
④ ニッケルフリーにすると「感作率が低下する可能性が高い」
⑤ 化粧品トラブルの9割以上は刺激性で、アレルギーではありません
⑥ 新しい製品はひじに近い腕に1日2回・2週間(ROAT)。ただし症状が出たものでは行わない
⑦ パッチテストの感度・特異度は70〜80%。陽性も陰性も、症状と突き合わせて判断します
13. よくある質問
アクセサリーをニッケルフリーにすれば、かぶれなくなりますか?
「かぶれなくなる」とまでは言えませんが、ガイドラインははっきりした答えを出しています。「ピアスを代表とする装身具をニッケルフリーにすると,ニッケルの感作率は低下する可能性があるか?」という設問に対し、「感作率が低下する可能性が高い.」。根拠として、ニッケルフリーの装身具や日用品が普及した結果、スイスでは1990年から1994年のニッケルとコバルトのパッチテスト陽性率がむしろ低下傾向にあったこと、EU諸国でも同様の報告があることが挙げられています。ただし2つ注意があります。1つは、これは「これから感作される人を減らす」話が中心で、すでに陽性の方の症状が消えるという意味ではないことです。もう1つは、金チオ硫酸ナトリウムの陽性率が23.2%で2位だということです。ニッケルを避けても、金なら安全とは限りません。耳に皮膚炎が出たときについて、ガイドラインは「耳介の皮膚炎をみた場合は,それだけでニッケルアレルギーの可能性を示唆する.」としています。
化粧品で赤くなったのですが、これはアレルギーですか?
多くの場合、違います。ガイドラインは「化粧品による副作用の90%以上が刺激性皮膚炎である.」と書いています。刺激性は、誰にでも起こりうる反応です。アレルギーのように免疫が特定の物質を覚えてしまったわけではないので、濃度や使い方、そのときの肌の状態によって、出たり出なかったりします。「客観的な皮膚所見を伴わず,灼熱感,ヒリヒリ感,痒みなどの不快な皮膚感覚を訴える主観的なもの」もあるとされ、見た目に何も出ていなくてもしみるという訴えは珍しくありません。一方でアレルギー性だった場合、化粧品原料のなかで最も頻度が高いのは香料で、「化粧品皮膚炎の最も頻度の高い原料は香料で,原因の30%以上をしめる」とされます。次いで保存料です。ひとつ覚えておいていただきたいのは、刺激かアレルギーかは症状の見た目では決まらないということです。同じ製品で繰り返すなら、次の質問のROATを試すか、皮膚科でパッチテストを検討してください。
新しい化粧品を、自分で試す方法はありますか?
あります。ガイドラインはROAT(反復開放塗布試験)という方法を載せていて、これは「患者が各自で行う試験である.」と明記されています。やり方はこうです。「市販の製品や試薬を肘に近い前腕もしくは上腕に1日2回反応が出現するまで,あるいは反応が出現しなくても2週間は塗布する.塗布サイズは3×3〜5×5 cm2とし,反対側にコントロール物質を塗布する.」。つまり、ひじの近くの内側に、1日2回、2週間。反対の腕には比べるものを塗ります。腕なら、もし反応が出ても顔ほど困りません。ただし注意があります。すでに一度でも強い症状が出た製品では、けっして行わないでください。ガイドラインはパッチテストについて「パッチテストにより新たな感作を起こす可能性もある.」とも書いています。確かめる目的の行為が、感作を進めてしまうことがあるということです。試すのは、まだ症状を起こしていない新しい製品に限ってください。
パッチテストで陰性なら、その物質は原因ではないと考えていいですか?
いいえ、そうは言い切れません。ガイドラインは「パッチテストが陰性であっても,アレルギー反応ではないと判断せず,アレルゲンを正しい濃度で適切に貼布したかなどを検証する.」としています。そもそも精度に限界があります。英国のガイドラインではパッチテストの感度と特異度は70〜80%とされています。日本のガイドラインは、仮に感度と特異度が90%で、10%の人が本当に感作されている物質を100人に検査した場合、陽性になる18人のうち半数は不正確な結果になる、という計算を示したうえで、「感度,特異度が80%程度であればさらに偽陽性,偽陰性が多くなる可能性があることを念頭に置いてテストを行わねばならない.」と書いています。陽性でも陰性でも、最後は症状と突き合わせて判断するものだということです。それでも「パッチテストより確実かつ有用な原因を解明する検査方法はいまも存在しない.」というのが、いまの位置づけです。
湿布でかぶれたことがあります。気をつけることはありますか?
はい、ケトプロフェンという成分の湿布であれば、とくに注意が必要です。これは普通のかぶれではなく、日光が当たって初めて症状が出る「光接触皮膚炎」を起こしやすい成分として知られています。ガイドラインは「現在は,ケトプロフェンの頻度が高い.」としたうえで、こう書いています。「貼付後,数週間以上経てもUV照射により症状が誘発される.」。つまり、湿布をはがしてから何週間も経っていても、その場所に日が当たると症状が出ることがあります。実際「偶然の日光暴露で光接触過敏症が生じてからの詳細な問診でようやく1カ月以上前のケトプロフェン軟膏の外用が判明することがある」とも書かれています。もう1つ重要なのが交差反応です。ケトプロフェンに感作されると、同じ系統の飲み薬や塗り薬でも症状が出ることがあります。ケトプロフェンと光交差反応を示す物質として、スプロフェンとベンゾフェノン(日焼け止めの紫外線吸収剤)が挙げられています。一度経験した方は、湿布の成分名を確認する習慣と、貼った場所を数週間は日に当てない配慮をおすすめします。
参考にした主な資料
- 日本皮膚科学会接触皮膚炎診療ガイドライン改定委員会「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」(日本皮膚科学会雑誌 130巻4号 523〜567ページ)。分類と病態、疫学(ジャパニーズスタンダードアレルゲン2015の陽性率、SSCI-Netによる原因製品の全国調査)、臨床症状とパッチテストの手順・判定基準・解釈、部位および問診からのアレルゲン推定(表6〜表21)、治療法のEBM(ステロイド・抗ヒスタミン薬・免疫抑制薬・紫外線療法の推奨度、バリアクリームと手袋による予防、表22)
- 日本皮膚科学会「日本皮膚科学会診療ガイドライン一覧」(主要な診療ガイドラインが全文無料で公開されています)