1. 先に結論
| よくある思い込み | ガイドライン2023の記述 |
|---|---|
| ニキビで病院は大げさ | 「医療機関を受診する痤瘡患者は10%に過ぎない」。保険で推奨度Aの塗り薬が処方されます |
| そのうち自然に治まる | 「軽症の症状でも瘢痕を残しうる」「早期の治療により瘢痕が予防できることを示唆するデータ」 |
| 家にあるステロイド軟膏を塗る | 推奨度C2(推奨しない)。「ステロイド外用薬が痤瘡を誘発することはよく知られており」 |
| 治まったら薬は終わり | 炎症が治まったあとの維持療法が、3つとも推奨度A |
| 洗顔を増やせばいい | 1日2回(推奨度C1)。4回群では脱落例、1回に減らして悪化した例 |
| チョコレートが原因 | 「チョコレートが痤瘡の悪化因子になることは否定されている」 |
| まずエステやレーザーへ | レーザー・ピーリング・光線療法はいずれも保険適用外で、推奨度はC1〜C2 |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
ニキビは、皮膚科で保険が使える病気です。そしてもっとも確実な「跡を残さない方法」は、跡ができる前に炎症を止めることだけです。
できてしまった凹んだ跡に対する治療は、ガイドラインではほぼすべてが「行ってもよいが、推奨はしない」+保険適用外という評価にとどまります。順番が、すべてです。
2. 【核心】90%が経験して、受診は10人に1人
まず、この記事を書こうと思った理由からお話しさせてください。
ガイドラインの序文には、こう書かれています。
「90%以上の人が経験する疾患であることから、『ニキビは青春のシンボル』と言われ、生理的現象として軽視され、皮膚疾患としての認識が十分ではなかった。そのため、医療機関を受診する痤瘡患者は10%に過ぎず、受診した患者の治療に対する満足度も十分とはいえなかった。一方で、軽症の症状でも瘢痕を残しうるが、早期の治療により瘢痕が予防できることを示唆するデータが示されている。」
——日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」より
ほとんど全員が経験するのに、受診するのは10人に1人。この差が、この病気のいちばんの問題です。
「青春のシンボル」という言い方は、悪気なく使われてきました。けれどその言葉は、「治療の対象ではない」という思い込みとセットで広まってしまいました。実際には、皮膚科の学会が47もの臨床疑問を立ててガイドラインを作り、推奨度Aの薬が並んでいる、れっきとした皮膚疾患です。
ガイドラインはさらに、患者さんの生活の質(QOL)が低下していること、中高生ではいじめの原因にもなりうることに触れ、「早期の積極的な治療と炎症軽快後の維持療法が求められている」と書いています。学会が、医学的な話としてここまで書いているのです。
日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」序文の記述より作成。
3. ニキビは「詰まり」から始まります
治療の話に入る前に、体の中で何が起きているかを共有させてください。ここが分かると、あとの推奨度が全部つながります。
ニキビは、赤いブツブツから始まるわけではありません。始まりは、毛穴の詰まりです。
ガイドラインは皮疹を段階で定義しています。整理するとこうなります。
| 段階 | ガイドラインの定義(要約) |
|---|---|
| 微小面皰 | 毛穴のなかに皮脂が貯まり始めた、目に見えない段階。この概念ができたことで「維持療法」という考え方が生まれました |
| 面皰(めんぽう) | いわゆる白ニキビ・黒ニキビ。まだ炎症はありません |
| 炎症性皮疹 | 赤いブツブツ(紅色丘疹)と膿を持ったもの(膿疱)。直径5mmを超える丘疹を結節と呼ぶことがあります |
| 囊腫・硬結 | 極めて重症な例でみられる、強い炎症を伴うしこり |
| 炎症後の紅斑 | 炎症が治まった後に一時的に残る赤み |
| 瘢痕(はんこん) | 皮膚の陥凹(凹んだ跡)、隆起(盛り上がった跡)、色素沈着。ここまで来ると元に戻すのは容易ではありません |
詰まった毛穴のなかでは、皮膚に常在しているC. acnes(アクネ菌)が増えます。ガイドラインの定義によれば、この菌は「毛包を中心とする皮膚に常在する好脂性、通性嫌気性桿菌で、面皰内で増殖した場合に起因菌となり、痤瘡の炎症性皮疹の原因となる」とされています。
つまりアクネ菌は「いるだけ」では悪者ではなく、詰まった毛穴のなかで増えたときに炎症を起こすということです。だから治療は「殺菌」だけでは足りず、詰まりそのものを作らせないことが要になります。
ガイドライン2023の皮疹の定義とCQ30〜34、CQ42の推奨度より作成。
4. 自分の重症度を、数えてみてください
ガイドラインは、日本の痤瘡患者さんに合わせた重症度の判定基準を採用しています(アクネ研究会・Hayashi Nら 2008)。数え方は驚くほど単純です。
| 重症度 | 片側の顔にある、炎症性皮疹(赤いブツブツ・膿疱)の数 |
|---|---|
| 軽症 | 5個以下 |
| 中等症 | 6個以上 20個以下 |
| 重症 | 21個以上 50個以下 |
| 最重症 | 51個以上 |
ポイントは「片顔」で数えること、そして数えるのは炎症性皮疹だけということです。白ニキビ・黒ニキビ(面皰)は、この数には入りません。
なぜ数えるのか。重症度によって、ガイドラインがすすめる薬が変わるからです。たとえば過酸化ベンゾイル2.5%ゲル単独は「軽症から中等症」に推奨度A、クリンダマイシン/過酸化ベンゾイル配合ゲルは「中等症から重症」に推奨度A、というように書き分けられています。
受診の前に一度数えておくと、診察室で「これくらいです」と具体的に伝えられます。スマートフォンで写真を撮っておくのも有効です。調子のいい日に受診してしまうと、実際より軽く見えることがあります。
5. 【重要】治療を、推奨度で並べる
ここがこの記事の中心です。ガイドライン2023は47の臨床疑問(CQ)それぞれに推奨度をつけています。推奨度の意味は次のとおりです。
| 推奨度 | 意味(ガイドラインの定義) |
|---|---|
| A | 行うよう強く推奨する(少なくとも1つの有効性を示すレベルI もしくは良質のレベルII のエビデンスがある) |
| A* | 行うよう推奨する(Aに相当するエビデンスがあるが、副作用などを考慮すると推奨度が劣る) |
| B | 行うよう推奨する |
| C1 | 行うことを選択肢の一つとして推奨する |
| C2 | 行ってもよいが、推奨はしない/推奨しない |
| D | 行わないよう推奨する |
そのうえで、主なものを並べたのが次の図です。ここだけ見ていただければ、この記事の要点はほぼ伝わります。
日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」表1(Clinical Question のまとめ 2023)より作成。
この図で気づいてほしいこと。
Aの段にあるものは、すべて保険が使えます。そしてC2の段には、費用が高くつくものが並んでいます——レーザー、ピーリング(標準治療が無効な場合を除く)、ビタミンC外用。いずれも保険適用外とガイドライン自身が明記しています。
「まずクリニックの自由診療へ」ではなく、「まず皮膚科の保険診療へ」。順番が逆になっている方が、とても多いのです。
参考までに、推奨度Aの塗り薬がどれくらいの結果を出しているか、ガイドラインが引いている数字を挙げます。
- アダパレン0.1%ゲル:5つのランダム化比較試験のメタアナリシスで、12週間の外用により炎症性皮疹が52.3%減少、面皰が58.1%減少
- 過酸化ベンゾイル2.5%ゲル:日本で行われた3か月間のランダム化比較試験で、炎症性皮疹の減少率72.7%(プラセボ41.7%)、面皰など非炎症性皮疹の減少率56.5%(プラセボ21.9%)
なお過酸化ベンゾイルの濃度について、ガイドラインは「2.5%以上であれば濃度によって有効性に差がなく、10%では副作用が強くなることから、5%以下が望ましい」としています。濃いほうがよいわけではありません。
6. 「急性炎症期」と「維持期」——3か月という区切り
ガイドラインは治療を、はっきり2つの時期に分けています。この考え方を知っているかどうかで、治療の続け方がまるで変わります。
| 時期 | ガイドラインの定義 |
|---|---|
| 急性炎症期 | 炎症性皮疹を主体とし、面皰を伴う。炎症に対する積極的な治療が求められる時期。治療期間は最大3か月間を目安として、維持期の治療へ移行する |
| 維持期 | 炎症性皮疹が軽快したあとの時期で、面皰あるいは微小面皰を主体とし、軽微な炎症を伴うことがある。軽快した状態を維持するため、面皰と微小面皰に対する治療を継続し、再発や継続する炎症性皮疹には耐性菌誘導の懸念のない薬剤を選択する |
ガイドライン2023の用語定義(急性炎症期・維持期)およびCQ27〜29より作成。
7. いちばん見落とされている、維持療法の話
47の臨床疑問のなかで、もっとも印象的なのが維持療法の3つです。
| CQ | 推奨度 | 推奨文 |
|---|---|---|
| CQ27 | A | 炎症軽快後の寛解維持に、アダパレン0.1%ゲルを強く推奨する |
| CQ28 | A | 炎症軽快後の寛解維持に、過酸化ベンゾイル2.5%ゲルを強く推奨する |
| CQ29 | A | 炎症軽快後の寛解維持に、アダパレン0.1%/過酸化ベンゾイル2.5%配合ゲルを強く推奨する |
3つ並んで、すべてA。これは「炎症が治まってからが本番です」と学会が言っているに等しい評価です。
理由は、3章でご説明した微小面皰にあります。表面の赤いブツブツが消えても、毛穴のなかの詰まりは残っています。ガイドラインの歴史を振り返る部分には、こう書かれています——「毛包内への皮脂の貯留を示す微小面皰という概念ができ、炎症軽快後の面皰あるいは微小面皰に対する治療を継続する維持療法という考えが定着した」。
「きれいになったから、もういいですね」——これがいちばん多い中断の理由です。
けれど見た目がきれいになった時点は、ゴールではなく折り返し地点です。ここでやめると、また詰まりが育ち、また赤くなり、その繰り返しのなかで跡ができていきます。
薬が余っているから続ける、という話ではありません。次の受診のときに「維持療法はどうしますか」と自分から聞いてみてください。その一言で、話が前に進みます。
なお、維持療法に使ってはいけないものもはっきり書かれています。クリンダマイシン/過酸化ベンゾイル配合ゲル(CQ21)は炎症性皮疹と混在する面皰に推奨度Aですが、「なお、炎症性皮疹軽快後の維持療法としては推奨しない」と但し書きがついています。理由は抗菌薬の長期連用による耐性菌です。維持期には「耐性菌誘導の懸念のない薬剤を選択する」——これがガイドラインの原則です。
8. 【やってはいけない】手持ちのステロイドの塗り薬
この章は、ぜひ覚えて帰ってください。
虫刺されや湿疹で処方されたステロイドの軟膏が、家に残っていることはよくあります。顔に赤いブツブツができたとき、それを塗りたくなる気持ちはとてもよく分かります。けれど、ガイドラインははっきり否定しています。
CQ10:炎症性皮疹にステロイド外用は有効か?
推奨度 C2/推奨文「炎症性皮疹に、ステロイド外用を推奨しない」
解説には、二つの理由が書かれています。
ひとつは効果の面です。海外のランダム化比較試験によると「ステロイド含有外用薬と基剤に統計学的有意差はなく、ステロイド外用により皮疹が改善したとするエビデンスはない」。つまり、薬の成分が入っていないものと差がつかなかったということです。
もうひとつが、より重要です。ガイドラインはこう書いています。
「ステロイド外用薬は、一時的に炎症を止める効果が期待されるが、ステロイド外用薬が痤瘡を誘発することはよく知られており、長期間のステロイド外用は、その他の副作用の点から明らかに好ましくない。短期間の使用の可否についても十分なエビデンスの確立までは推奨できない。」
赤みが一時的に引くことと、ニキビが良くなることは、別です。ステロイドはむしろニキビを増やす方向に働きうる——これが「ステロイドざ瘡」と呼ばれる現象で、皮膚科では古くから知られています。
ここは、アトピー性皮膚炎とは話がまったく違うところです。アトピーではステロイド外用が治療の柱ですが(→アトピー性皮膚炎の記事)、ニキビには別の薬が必要です。同じ「赤い」でも、中で起きていることが違うからです。
ちなみに、外用の非ステロイド系抗炎症薬であるイブプロフェンピコノールクリーム(CQ9)は推奨度C1で、軽症から中等症の炎症性皮疹に「選択肢の一つとして推奨する」とされています。これは市販でも医療用でも入手できるものですが、推奨度Aの薬とは位置づけが違うことは知っておいてください。
9. 飲み薬の抗菌薬は、3か月まで
中等症以上では、飲み薬の抗菌薬が使われることがあります。CQ11は推奨度Aで「炎症性皮疹に、内服抗菌薬を強く推奨する」とされ、なかでもドキシサイクリンが推奨度A、ミノサイクリンとロキシスロマイシン、ファロペネムがB、といった具合に薬ごとに評価がついています。
ただし、必ずセットで書かれていることがあります。
「多くのRCTで有効性が示され、炎症性皮疹に、内服抗菌薬を強く推奨するが、耐性菌の出現を防ぐため長期間の使用は控えた方がよい。Global Alliance は、内服抗菌薬の投与は3か月までとし、6〜8週目に再評価して継続の可否を判断することを推奨している。さらに、内服抗菌薬の単独療法や外用抗菌薬との併用は避け、過酸化ベンゾイルやアダパレンとの併用や維持療法を推奨している。」
ここで言われている耐性菌は、遠い世界の話ではありません。ガイドラインはアクネ菌の定義のなかで、「近年、抗菌薬の長期使用による薬剤耐性C. acnesの出現が懸念されており、抗菌薬の長期連用を回避することが急務となっている」と書いています。
面皰(白ニキビ・黒ニキビ)に対しては、そもそも外用抗菌薬は推奨度C2(推奨しない)です。詰まりに菌を叩く薬を使っても筋が通らないうえ、耐性菌のリスクだけが残るからです。
「抗菌薬が長く続いているな」と感じたら。
それは、責める話ではなく相談する話です。「そろそろ塗り薬中心に切り替えられますか」と聞いてみてください。ガイドラインは、抗菌薬から過酸化ベンゾイルやアダパレンへ、そして維持療法へという道筋をはっきり示しています。
10. 洗顔は1日2回。多くても少なくてもありません
ここからスキンケアの話に入ります。ガイドラインは、この領域にもきちんと推奨度をつけています。
CQ43:痤瘡に洗顔は有効か?
推奨度 C1/推奨文「痤瘡患者に1日2回の洗顔を推奨する」
数字の根拠も書かれています。Choiらの試験では、洗顔回数による皮疹数に統計学的な有意差はなかったものの、1日2回の洗顔を1日1回にしたことで悪化した症例がみられ、1日4回の洗顔を行った群では脱落例がみられたと報告されています。
洗いすぎは、続きません。これが数字に出ているということです。ガイドラインは「皮脂の除去による痤瘡予防効果は合理的な根拠があると考えられ、1日2回の洗顔を推奨する」と結論しています。
そして、よく聞かれる3つの疑問にも、ガイドラインは答えています。
| よくある疑問 | ガイドライン2023の記述 |
|---|---|
| オイルクレンジングは悪化させる? | 日本から「オイルクレンジングで痤瘡の個数は改善し、使用による悪化はなかった」という報告があり、「オイルクレンジングを悪化因子とする根拠はなく、むしろ安全に使用できるメイク落しの一つの候補となる」 |
| スクラブ入りのほうがいい? | 「洗浄剤の成分に角層を剝がす粒子(スクラブ)が入っていてもいなくても有意差はないとする報告があり、スクラブの有効性は確立されていない」 |
| 殺菌成分入りがいい? | 有効性を述べた報告はあるが「感作性や刺激についての検討が十分になされているとはいえない」。個々の製品の成分については「刺激の問題を考慮した今後の十分な検討が必要」 |
まとめると、洗顔料選びで勝負が決まるわけではないということです。回数は1日2回。オイルクレンジングは避けなくてよい。スクラブと殺菌成分に、上乗せの根拠はありません。
11. 保湿は「治療を続けるため」にあります
この章が、スキンケアの話のなかでいちばん実用的です。そして、いちばん誤解されています。
先に、正直なところから書きます。ガイドラインは「保湿剤の痤瘡に対する有効性を示すエビデンスはなく、保険適用もない」とはっきり書いています。保湿剤そのものがニキビを良くする、という根拠はありません。
では、なぜ保湿の話をするのか。理由はこちらです。
「アダパレン0.1%ゲル開始時からノンコメドジェニックな保湿剤を併用することで、アダパレン0.1%ゲルの臨床効果を妨げずに、皮膚刺激感、鱗屑、紅斑などの皮膚刺激症状が軽減し、結果的に副作用による治療脱落者が減少することを示すエビデンスが、日本で得られている。」
——ガイドライン2023 CQ18の解説より(文献130〜133)
「治療脱落者が減少する」。ここが要点です。
推奨度Aのアダパレンには、使い始めに刺激症状が出ます。ガイドラインが引く海外データでは、落屑(皮むけ)・紅斑・乾燥が80%程度、灼熱感・かゆみが20%程度の患者さんに認められるとされています。「多くは軽微な症状であり、使用中止に至ることはほとんどない」とも書かれていますが、8割に皮むけが出る薬だと知らずに使い始めれば、「肌に合わない」と思ってやめてしまうのは自然なことです。
実際、いちばん有効性が確かめられている薬を、いちばん最初にやめてしまう——これがニキビ治療で起こりがちな失敗です。保湿剤は、その脱落を防ぐためにあります。
CQ44:痤瘡患者のスキンケアに痤瘡用基礎化粧品の使用は有用か?
推奨度 C1/推奨文「痤瘡患者のスキンケアに痤瘡用基礎化粧品の使用を選択肢の一つとして推奨する。但し、痤瘡患者への使用試験が報告されている低刺激性でノンコメドジェニックな痤瘡用基礎化粧品を選択するなどの配慮が必要である」
解説では、有用性が確認された試験に共通していた条件が挙げられています。「低刺激性、ノンコメドジェニックテスト済み、かつ保湿性のある製品」——この3つです。そうした製品を使えば「痤瘡治療薬に併用することで、治療薬による皮膚への刺激を緩和し、効果を高めながら治療を円滑に進めることが期待できる」とされています。
| 選ぶときの条件 | 意味 |
|---|---|
| ノンコメドジェニック テスト済み | 面皰(コメド)を作りにくいことを試験で確認したという表示。ニキビ用の基礎化粧品ではここがいちばん大事です |
| 低刺激性 | アダパレンや過酸化ベンゾイルの刺激に、さらに刺激を重ねないため |
| 保湿性がある | 皮むけ・乾燥・ヒリつきを和らげ、治療を続けられるようにするため |
ここははっきり書いておきます。
基礎化粧品は薬の代わりにはなりません。ガイドラインの位置づけはあくまで「痤瘡治療薬に併用することで」であり、推奨度もC1(選択肢の一つ)です。推奨度Aは、あくまで塗り薬のほうです。
ですので、順番はこうなります——①皮膚科で薬をもらう ②その薬を続けられるように保湿を足す。逆にはしないでください。高価な化粧品を先に買うことは、ガイドラインのどこにも書かれていません。
なお、ガイドラインは「アダパレンと保湿剤を塗る順序に関するエビデンスはない」とも書いています。順番に神経質になる必要はありません。
12. メイクは、禁止されていません
「ニキビがあるうちは化粧をしないほうがいい」と言われた経験のある方は、少なくないと思います。ガイドラインは、そうは書いていません。
CQ45:痤瘡に化粧(メイクアップ)指導は有効か?
推奨度 C1/推奨文「女性の痤瘡患者にQOL改善を目的とした化粧(メイクアップ)指導を行うことを選択肢の一つとして推奨する。但し、低刺激性でノンコメドジェニックな化粧品を選択するなどの配慮が必要である」
解説はこう整理しています。「油性の面皰形成性のある化粧品による痤瘡の悪化は事実であり、コメドジェニックな作用のある化粧品は避けるべきである。しかし……全ての化粧を禁止する明確なエビデンスはない」。そして「化粧が治療を妨げない」「化粧はQOLを向上させる」というデータがあることから、「ノンコメドジェニックな化粧品を用いた化粧については、特に制限する理由はない」と結論しています。
ニキビが人前に出るのをつらくさせている、というのは、学会自身がQOLの問題として認めていることです。隠すことで外に出られるなら、それは治療の妨げではありません。条件は洗顔・保湿と同じで、低刺激性・ノンコメドジェニックであること。それだけです。
13. 【通説の検証】チョコレート・砂糖・牛乳
このサイトでは、広く信じられていることを一次資料で確かめる、ということを続けてきました。ニキビには、その代表格があります。
CQ46:痤瘡患者に特定の食べ物を一律に制限することは有効か?
推奨度 C2/推奨文「痤瘡患者に、特定の食べ物を一律に制限することは推奨しない。個々の患者の食事指導においては、特定の食物摂取と痤瘡の経過との関連性を十分に検討して対応することが望まれる」
解説に書かれていることを、そのまま並べます。
| 食べ物 | ガイドライン2023の記述 |
|---|---|
| チョコレート | 「痤瘡と食べ物の関係を調べた数少ないRCTでは、チョコレートが痤瘡の悪化因子になることは否定されている」 |
| 砂糖 | 「痤瘡患者で砂糖の摂取量が特に多いということはなく、砂糖とも関係しないことが示されている」 |
| 牛乳 | 高校生のコホート研究で発症因子として述べたものがあるが「反論が多く、追試や別の方法での検討が必要と考えられる」 |
| カカオ | ただし「小規模ではあるが、100%カカオパウダー負荷による二重盲検試験で痤瘡を誘発したとする報告もあり、さらなる検討が待たれる」 |
| 全体の結論:「現時点では、特定の食物が痤瘡の悪化因子であるとする明確な証拠はない」 | |
チョコレートを否定した試験は1969年のJAMA掲載のもので、半世紀以上前から検証されてきたテーマです。それでもこの通説は生き残っています。
食事指導そのものについても、CQ47が推奨度C2で「現時点では特定の食事指導を一律に行うことは推奨しない」としています。低GI食(血糖の上がりにくい食事)でニキビが改善したという報告はあるものの、低GI食と高GI食の両群とも改善して群間差がなかったという報告もあり、「食事指導そのものに効果があったと考えられる」という解釈まで書かれています。現時点では一定の見解が得られていない、というのが正確なところです。
では、食事はどう考えればいいのか。
ガイドラインの結論は「極端な偏食は避け、バランスの良い食事を摂取することを推奨する」です。特別なことは書かれていません。
ただし、こうも書かれています——「個々の患者の食事指導においては、食物摂取と痤瘡の経過との関連性を十分に検討した上で対応することが望まれる」。
つまり「一律に禁止しない」と「あなた個人の傾向を無視する」は違うということです。「これを食べると翌日出る」と感じているなら、それは診察室で伝える価値のある情報です。
血糖と肌の関係については、別の角度から書いた記事もあります(→糖化(AGEs)と見た目年齢)。
14. ニキビだと思っていたら「酒皶」かもしれません
ガイドライン2023には、もうひとつの病気が同居しています。酒皶(しゅさ)です。タイトルが「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン」となっているのは、そのためです。
ガイドラインは、酒皶を扱う理由を「痤瘡類似疾患として鑑別が必要で、かつ治療方針が異なる」からだと説明しています。つまり間違えると、治療の方向がずれるということです。
| 尋常性痤瘡(ニキビ) | 酒皶(赤ら顔) | |
|---|---|---|
| 面皰(白・黒ニキビ) | あります。ここから始まります | 「痤瘡とは異なり、面皰を伴わない」 |
| 主な年代 | 思春期から成人まで幅広く | 「主として中高年の顔面に生じる」 |
| 主な症状 | 面皰・赤いブツブツ・膿疱 | 紅斑と毛細血管拡張、火照り感(第1度)、面皰を伴わない丘疹・膿疱(第2度)、鼻部の腫瘤(第3度) |
| 増悪因子 | 詰まり・皮脂・アクネ菌の増殖 | 紫外線、外気温の急激な変化、刺激のある食べ物やアルコールの摂取 |
| 第一選択の外用 | アダパレン/過酸化ベンゾイル(推奨度A) | 丘疹膿疱型に0.75%メトロニダゾールゲル(推奨度A) |
見分けるうえで決定的なのは、面皰があるかどうかです。白ニキビ・黒ニキビがまったくないのに、頬に赤い丘疹や膿疱が出る。温度差で顔が火照る。お酒や辛いもので赤くなる。中年以降になって急に「ニキビ」ができた——こうした場合は、酒皶の可能性を考える価値があります。
治療がまったく違うことにも注目してください。丘疹膿疱型酒皶にはメトロニダゾールゲルの外用が推奨度Aで、こちらも保険で使えます。ニキビの薬を塗り続けても赤みが引かない場合、薬が効かないのではなく、病気が違うのかもしれません。
なお、酒皶についてもスキンケアには推奨度がついていて(CQ S4、推奨度C1)、「酒皶に、適切な遮光と、低刺激性の洗顔料や保湿剤の適切な使用についての指導を選択肢の一つとして推奨する」とされています。紫外線が増悪因子である以上、日焼け止めは治療の一部です(→日焼け止めの選び方・塗り方)。
15. 跡(瘢痕)の話——予防だけが確実な方法です
ここが、この記事を書いたいちばんの動機です。
ニキビの跡に対する治療を、ガイドラインの推奨度でそのまま並べてみます。
| CQ | 推奨度 | 内容 |
|---|---|---|
| CQ30 | C2 | 肥厚性瘢痕にトラニラスト内服を行ってもよいが、推奨はしない |
| CQ31 | C1 | 肥厚性瘢痕にステロイド局所注射を選択肢の一つとして推奨する |
| CQ32 | C2 | 萎縮性瘢痕(凹んだ跡)に充填剤注射を行ってもよいが、推奨はしない。保険適用外 |
| CQ33 | C2 | 萎縮性瘢痕にケミカルピーリングを行ってもよいが、推奨はしない。保険適用外 |
| CQ34 | C2 | 肥厚性瘢痕・ケロイドに外科的切除や冷凍凝固療法を行ってもよいが、推奨はしない |
| CQ42 | C2 | 痤瘡あるいは痤瘡瘢痕にレーザー治療を行ってもよいが、設備の問題、本邦での検討が不十分であり、保険適用もないことから推奨はしない |
C2が5つ、C1が1つ。そして保険適用外という但し書きが並びます。
これは「跡は絶望的だ」という意味ではありません。実際、フラクショナルレーザーやフラクショナルRFの試験では改善が報告されており、ガイドラインもそれらのデータを紹介しています。ただし「機器や治療方法の違いが大きく、結果比較は困難で副作用も報告されている」「短期試験で認められた効果の維持について、長期的な観察が必要である」という留保がついています。
お伝えしたいのは、こういうことです。
跡ができる前の治療には、推奨度Aの選択肢が並んでいます。
跡ができた後の治療は、推奨度C2と保険適用外が並びます。
ガイドライン序文の「軽症の症状でも瘢痕を残しうるが、早期の治療により瘢痕が予防できることを示唆するデータが示されている」という一文は、この非対称のことを言っています。
もうひとつ、跡を防ぐために知っておいてほしいことがあります。自分で潰さないでください。
ただし——「潰す」こと自体が全否定されているわけではありません。CQ41は推奨度C1で「面皰、炎症性皮疹に、面皰圧出を選択肢の一つとして推奨する」としています。面皰圧出は、面皰では毛穴に貯まった皮脂を、炎症性皮疹では膿を排出する理学的治療で、ガイドラインは「保険適用も有している」と明記しています。
つまり「潰すなら、保険で、医療機関で」ということです。清潔な器具で、適切な深さで行うのと、指や針で自己流に押し出すのとでは、跡の残り方が変わります。無料でできてしまうことが、いちばん高くつくことがあります。
16. 🚨 受診の目安と、上手なかかり方
最後に、実際にどうするかをまとめます。
| こんなとき | おすすめの行動 |
|---|---|
| 片顔に赤いブツブツが6個以上(中等症以上) | 皮膚科へ。推奨度Aの外用薬が保険で処方されます |
| 市販薬を1か月続けても変わらない | 皮膚科へ。市販薬と処方薬は、選択肢の幅がまったく違います |
| しこりのような硬いニキビ、痛みが強い | 早めに皮膚科へ。囊腫・硬結は跡を残しやすい段階です |
| 治まっては出る、を繰り返している | 皮膚科で維持療法を相談してください。それが繰り返しを断つ方法です |
| 中高生で、学校生活がつらい | 受診してください。ガイドライン自身がQOLの低下といじめに触れています。我慢する種類の症状ではありません |
| 抗菌薬の飲み薬が3か月以上続いている | 次の受診で塗り薬中心への切り替えを相談してください |
| 面皰がないのに顔が赤い、火照る | 酒皶の可能性を含めて相談を。治療がまったく違います |
診察室で伝えると話が早いこと、5つ。
- 片顔の炎症性皮疹の数(4章の数え方で。調子の悪い日の写真があれば理想的です)
- いつから、どんな周期で出るか(生理周期との関係も含めて)
- これまで使ったもの(市販薬・化粧品・エステ。効かなかったものも重要な情報です)
- 今使っている薬(特に、他科で処方されたステロイド外用薬があれば必ず伝えてください)
- いちばん困っていること(跡が心配なのか、今の見た目なのか、痛みなのか。優先順位で治療が変わります)
そして、この記事でくり返しお伝えしてきたことを、もう一度だけ。
ニキビは、保険で治療できる皮膚の病気です。
10人に9人が受診していないのは、病気が軽いからではなく、「受診するものだと知られていない」からです。
もし今、鏡の前で悩んでいる方がこれを読んでいるなら——まず皮膚科です。高い化粧品でも、エステでもありません。順番だけ、間違えないでください。
17. よくある質問
ニキビで皮膚科を受診してもいいのでしょうか。大げさではありませんか?
大げさではありません。ガイドライン2023は、ニキビについて「90%以上の人が経験する疾患であることから『ニキビは青春のシンボル』と言われ、生理的現象として軽視され、皮膚疾患としての認識が十分ではなかった」と書き、その結果「医療機関を受診する痤瘡患者は10%に過ぎない」と記しています。つまり10人に9人が受診していません。
同じ文章のなかでガイドラインは「軽症の症状でも瘢痕を残しうるが、早期の治療により瘢痕が予防できることを示唆するデータが示されている」とも書いています。跡が残ってしまってからでは、治療の選択肢が大きく狭まります。
さらにガイドラインは、患者さんの生活の質が低下していること、中高生ではいじめの原因にもなりうることに触れ、早期の積極的な治療と、炎症が治まったあとの維持療法を求めています。ニキビは保険診療の対象で、推奨度Aの塗り薬が複数あります。
手持ちのステロイドの塗り薬を、ニキビに塗ってもいいですか?
すすめられません。CQ10は推奨度C2で、推奨文は「炎症性皮疹に、ステロイド外用を推奨しない」です。
理由は二つ書かれています。ひとつは効果の面で、海外のランダム化比較試験によると「ステロイド含有外用薬と基剤に統計学的有意差はなく、ステロイド外用により皮疹が改善したとするエビデンスはない」とされています。もうひとつがより重要で、ガイドラインは「ステロイド外用薬が痤瘡を誘発することはよく知られており」と明記しています。つまり赤みは一時的に引いても、ニキビそのものを増やす方向に働きうるということです。
虫刺されや湿疹用に処方されたステロイド軟膏が家にあると、つい顔の赤いブツブツにも塗りたくなりますが、ニキビには別の薬が必要です。皮膚科では過酸化ベンゾイルやアダパレンといった推奨度Aの外用薬が保険で処方されます。
ニキビが治まったら、薬はやめていいですか?
やめないほうがよい、というのがガイドラインの立場です。ガイドライン2023は治療を「急性炎症期」と「維持期」に分け、急性炎症期の治療期間は最大3か月間を目安として維持期の治療へ移行するとしています。
そして炎症が治まったあとの寛解維持について、アダパレン0.1%ゲル(CQ27)、過酸化ベンゾイル2.5%ゲル(CQ28)、アダパレン0.1%/過酸化ベンゾイル2.5%配合ゲル(CQ29)の3つすべてが推奨度A、つまり「強く推奨する」と評価されています。47ある臨床疑問のなかで、維持療法だけで推奨度Aが3つ並ぶのは異例です。
背景には、目に見えない微小面皰という段階の存在があります。表面の赤いブツブツが消えても、毛穴のなかの詰まりは残っていて、そこから次のニキビが生まれます。維持療法はその詰まりを作らせないための治療です。自己判断でやめず、主治医と続ける期間を相談してください。
チョコレートや揚げ物を食べるとニキビができる、というのは本当ですか?
少なくとも「特定の食べ物を一律に禁止する」根拠はありません。CQ46は推奨度C2で、推奨文は「痤瘡患者に、特定の食べ物を一律に制限することは推奨しない」です。
解説にはこう書かれています。システマティックレビューでは特定の食物と痤瘡の関係は明確ではないと結論されている。数少ないランダム化比較試験では「チョコレートが痤瘡の悪化因子になることは否定されている」。砂糖についても「痤瘡患者で砂糖の摂取量が特に多いということはなく、砂糖とも関係しないことが示されている」。牛乳を発症因子として挙げた高校生のコホート研究はあるものの「反論が多く、追試や別の方法での検討が必要」とされています。
ただし完全な自由というわけでもありません。100%カカオパウダーを負荷した小規模な二重盲検試験でニキビが誘発されたという報告があり、さらなる検討が待たれるとされています。
ガイドラインの結論は「極端な偏食は避け、バランスの良い食事を摂取することを推奨する」です。そして個人差については、個々の患者さんで食物摂取と経過の関連を十分に検討したうえで対応することが望まれる、としています。あなた自身が「これを食べると出る」と感じているなら、それは主治医に伝える価値のある情報です。
ニキビだと思っていたのに、薬を塗っても赤みが引きません。何が違うのでしょうか?
酒皶(しゅさ、いわゆる赤ら顔)の可能性があります。ガイドライン2023は、ニキビと鑑別が必要でかつ治療方針が異なる疾患として、酒皶を同じガイドラインのなかで扱っています。
酒皶は「主として中高年の顔面に生じる原因不明の慢性炎症性疾患」で、紅斑と毛細血管拡張、火照り感が主な症状です。見分けるうえで決定的なのが面皰、いわゆる白ニキビ・黒ニキビの有無で、ガイドラインは酒皶について「痤瘡とは異なり、面皰を伴わない」と明記しています。丘疹膿疱型の酒皶はニキビによく似た丘疹と膿疱が出ますが、詰まりから始まっていないという点が違います。
治療も別で、丘疹膿疱型酒皶には0.75%メトロニダゾールゲルの外用が推奨度A、つまり強く推奨されています。増悪因子として紫外線、外気温の急激な変化、刺激のある食べ物やアルコールの摂取が知られています。
ニキビの治療を続けても赤みが引かない、頬の中心が火照る、温度差で赤くなる、といった場合は、一度その視点で皮膚科に相談してみてください。
参考資料
- 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」日本皮膚科学会雑誌 133(3): 407-450, 2023(本記事の推奨度・推奨文・定義・数値は、すべてこの資料にもとづいています)
- 公益社団法人日本皮膚科学会「一般公開ガイドライン」