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からだの変化

冷えとむくみ
——「体質」で終わらせない、原因の見分け方と季節別の対策

手足が冷たくて眠れない。夕方には靴がきつい。——こうした悩みは、あまりにありふれているために「体質だから仕方ない」で片づけられがちです。けれど診察室では、冷えやむくみをきっかけに別の原因が見つかることが実際にあります。この記事では、冷えが体に何を起こすのか、なぜ寒暖差がこたえるのか、そして夏と冬で違う対策までを、順を追ってお伝えします。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年8月3日 読了:約13分

1. 先に結論

論点 この記事で言えること
冷えは体質? 体質で終わらせないでください。甲状腺の病気・膠原病・貧血などが原因のこともあります。
なぜ女性に多い? 筋肉量が少ない(熱を作りにくい・血を送りにくい)+女性ホルモンと自律神経の影響。
冷えると何が起きる? 血管が縮んで血流が落ちる→ さらに冷える、という悪循環に入ります。
いちばんの負担は? 🔑 寒暖差。体温を調節する自律神経が、温度差の分だけ働かされます。
むくみは? 多くは生活由来。ただし片脚だけ・息切れを伴う・急な体重増加は受診を。
対策は季節で違う? 違います。冬は「作る・逃がさない」、夏は「冷やしすぎない・温度差を減らす」。

この記事でいちばんお伝えしたいのは、「体質」という言葉で思考を止めないでほしいということです。確かめれば分かることがある。そして分かれば、手の打ちようがあります。

2. 冷えると、体に何が起きるのか

まず、「冷える」とき体の中で何が起きているのかを見ていきます。ここが分かると、対策の意味も腑に落ちます。

体は「中心」を守るために、手足を切り捨てる

私たちの体は、内臓のある中心部の温度を一定に保とうとします。心臓や脳が正常に働くには、その温度が必要だからです。

そこで寒さを感じると、体は手足の血管を縮めて、血液を中心に集めます。手足に流れる温かい血が減れば、そこから逃げる熱も減る。つまり手足が冷たくなるのは、体が中心を守るために行っている、理にかなった反応なのです。

ただし、この仕組みには代償があります。

寒さを感じる 外気・冷房 血管が縮む 中心を守るため 手足の血流が減る こわばり・だるさ 肩こり・眠りにくさ 熱が届かない 末端がさらに冷える 悪循環へ 動くのがつらくなる
冷えが冷えを呼ぶ循環。血流が落ちると、こわばりやだるさが生じ、動くのがおっくうになる。動かなければ熱も作られず、さらに冷えます。

血流が落ちると、酸素や栄養が届きにくくなり、老廃物も運び出されにくくなります。その結果として、こんな不調につながることがあります。

とくに眠りとの関係は見過ごされがちです。「手足が冷たくて眠れない」というのは気のせいではなく、体温が下がる過程が妨げられているから。睡眠については40代・50代、眠れなくなるのはなぜかで詳しく扱っています。

3. なぜ女性に多いのか——3つの理由

「同じ部屋にいるのに、自分だけ寒い」。これには理由があります。厚生労働省研究班監修のヘルスケアラボの説明をもとに整理します。

理由1:筋肉量が少ない=熱を作りにくい

同サイトは、女性は男性と比べると筋肉量が少なく、体の熱を作りにくいと説明しています。筋肉は、体の中で熱を生み出す最大の工場です。工場が小さければ、生産量も少なくなります。

そして筋肉にはもう一つ、血液を送るポンプとしての役割があります。とくにふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれ、歩くたびに下半身の血液を心臓へ押し戻しています。筋肉が少ないと、このポンプも弱くなる——つまり熱を作れないうえに、運べないという二重の不利があるのです。

ここで、40代からの「痩せにくい」の正体でお伝えした話とつながります。筋肉量は40代から減り始めます。「昔より冷えるようになった」という実感には、筋肉量の変化が関わっている可能性があるのです。

理由2:女性ホルモンと自律神経

体温の調節をしているのは自律神経です。そして女性ホルモンと自律神経は、脳の同じ領域(視床下部)で調整されています。だからホルモンの変動が大きいとき——月経周期のなか、そして更年期——には、自律神経による体温調節も揺らぎやすくなります

更年期に「ほてるのに手足は冷たい」という一見矛盾した状態が起こるのは、この調節の乱れが背景にあると考えられています。全体像は40代からの体の変化 完全ガイドで整理しています。

理由3:生活習慣

ヘルスケアラボは冷えの原因として、冷房の強い部屋と外気の温度差、薄着、運動不足、冷たい飲食物などの生活習慣を挙げています。これらは変えられる部分です。だから対策の余地がある——次章以降で具体的に見ていきます。

4. 寒暖差が、いちばんこたえる

ここは、この記事でとくに知っていただきたい部分です。「寒い」ことより「温度差」のほうが、体には負担になるのです。

自律神経は、温度差の分だけ働かされる

体温を一定に保つのは自律神経の仕事です。暑ければ血管を広げて熱を逃がし、寒ければ縮めて熱を守る。この切り替えを、私たちが意識しないところで絶えず行っています。

問題は、この切り替えが頻繁に、大きく求められるときです。

こうした状況では、自律神経は短時間で正反対の指示を出し続けることになります。そして人によっては、この繰り返しに調節が追いつかなくなる。すると——冷え、だるさ、頭痛、肩こり、眠りの浅さ、気分の落ち込みといった、はっきりしない不調として表れることがあります。

「冷房が苦手」は、わがままではありません

職場で「エアコンが寒い」と言いにくい思いをしている方は多いと思います。けれどこれは、我慢の問題ではなく体温調節の負担の問題です。とくに筋肉量が少なく、ホルモンの変動もある女性では、同じ室温でも受ける負担が違います。

温度設定を変えられないなら、自分の周りの温度差を小さくする——羽織るもの、ひざ掛け、足元の冷え対策。それは甘えではなく、自律神経の負担を減らす合理的な自衛策です。

そして大切なのは、この負担は減らせるということです。温度差そのものを小さくする工夫が、対策の中心になります(7章・8章)。

「自律神経の乱れ」という言葉について。この表現は広く使われますが、実は医学的にきっちり定義された病名ではありません。だからこそ、何でもかんでも「自律神経のせい」で片づけてしまうと、本当の原因を見逃すおそれがあります。この記事で「自律神経」に触れているのは、体温調節という具体的な働きについてです。不調が続くときは、「自律神経だから仕方ない」ではなく、6章で挙げる原因も確かめてみてください。

5. むくみは「水の滞り」——ただし注意すべきサインも

冷えと並んで多い悩みが、むくみです。両者は無関係ではありません。血流が滞ることが、どちらの背景にもあるからです。

なぜむくむのか

ヘルスケアラボのむくみのページによれば、むくみは血液やリンパの流れが悪くなり、細胞と細胞の間に水分や老廃物が溜まることで生じます。原因として挙げられているのは次のようなものです。

ここでもたんぱく質が出てくることに注目してください。極端な食事制限は、冷えにもむくみにも不利に働きます。「痩せたいから食べない」が、結果的に冷えとむくみを招く——これは診察室でもよく見る流れです。

🚨 このむくみは、受診してください

むくみの多くは生活由来ですが、病気のサインであることもあります。ヘルスケアラボは、背景に低栄養(低たんぱく)、腎疾患、心疾患、甲状腺機能低下症、リンパ流の停滞する疾患が隠れている場合があるとしています。

様子見にせず、受診してほしいむくみ

日本腎臓学会は、腎臓の病気によるむくみは左右対称で、指で10秒以上強く押すと跡がへこんだまま残ることがあると説明しています。ご自身で判断せず、こうした特徴に気づいたら医療機関に相談してください。

「むくみくらいで受診するのは大げさ」と思われるかもしれません。ですが、上のようなサインを伴う場合は別です。とくに片脚だけの腫れと、息切れを伴うむくみは、時間が大切になることがあります。

6. 「体質」の裏に隠れているかもしれないもの

ここが、このサイトらしい章です。冷えを「体質」で終わらせないために、確かめられることを整理します。

ヘルスケアラボは、冷えについて甲状腺の病気や膠原病、貧血などが原因のこともありますと明記しています。つまり——血液検査で分かる原因が隠れていることがあるということです。

隠れているかもしれないもの 冷え・むくみとの関係 確かめ方
甲状腺機能低下症 代謝の「アクセル」が落ち、寒がり・むくみ・だるさ・体重増加が出る 血液検査(TSH・FT4)
詳しくはこちら
貧血・鉄不足 酸素を運ぶ力が落ち、冷え・疲れ・立ちくらみが出る 血液検査(ヘモグロビン・フェリチン)
詳しくはこちら
膠原病など 指先の色が白→紫→赤と変化する、皮膚の変化を伴うことがある 医療機関での診察・検査
腎臓・心臓の病気 主にむくみとして表れる(5章の危険サイン参照) 尿検査・血液検査・その他
筋肉量の低下 熱を作る力とポンプ機能が落ちる 体組成計・生活の振り返り
詳しくはこちら

この表を見て、気づかれたでしょうか。甲状腺と鉄——このサイトで繰り返し扱ってきた2つが、ここでも出てきます。疲れの記事でも、髪の記事でも、そして今回の冷えでも。それは偶然ではなく、この2つが「よくある不調」の共通の背景になりやすいからです。

健診の結果を持っている方は、健診結果の読み方ガイドもあわせてご覧ください。ただし甲状腺やフェリチンは、多くの健診に標準では含まれていません。気になる場合は「調べたい」と自分から伝えることが必要です。

受診の目安。ヘルスケアラボは、長く続く冷えや強い症状がある場合は、内科や婦人科で相談することをすすめています。「冷えで病院に行っていいのかな」と迷う方もいますが、上に挙げたような原因を確かめる意味があります。とくに最近になって急に冷えるようになった場合は、何か変化が起きている可能性があるので、相談する価値があります。

7. 冬の対策——熱を作り、逃がさない

ここから実践編です。冬と夏では、対策の考え方が変わります。まず冬から。

作る:熱を生み出す

逃がさない:熱を保つ

冬に気をつけたい温度差。暖かい居間から寒い脱衣所・浴室への移動は、体に大きな負担がかかります。とくにご高齢の方や血圧の高い方では注意が必要です。脱衣所を事前に暖めておく、浴室にシャワーで湯をまいておく——それだけで温度差はかなり縮まります。ご家族にも共有していただきたい工夫です。

食べもので温める

ヘルスケアラボは温かい食事や飲み物を選ぶことを挙げています。加えて、昔から体を温めるとされてきた食材も、無理のない範囲で取り入れてよいでしょう。

取り入れたいもの ポイント
温かいスープ・汁物 水分と熱を同時に。具だくさんにすればたんぱく質も摂れます
しょうが・唐辛子など 体感的に温まりやすい。ただし刺激が強いので胃腸の弱い方は控えめに
肉・魚・卵・大豆製品 筋肉の材料。食べたあとに熱が生まれる働きも大きい食品群です
鉄を含む食品 赤身肉・魚・大豆・青菜など。貧血は冷えの背景になり得ます

ただし、「これを食べれば冷えが治る」という食材はありません。特定の食材に期待しすぎず、食事全体を整えることが基本です。この考え方は、飲むコラーゲンの記事でお伝えした姿勢と同じです。

8. 夏の対策——冷やしすぎない工夫

意外に思われるかもしれませんが、夏こそ冷え対策が必要です。実際、「夏のほうがつらい」という方は少なくありません。

なぜ夏に冷えるのか

夏の具体策

場面 できること
職場・電車 ヘルスケアラボも温度差が大きい場所では羽織れる洋服をと挙げています。カーディガンやストールを常備。ひざ掛け、足元にレッグウォーマーも有効
冷房の設定 下げすぎない。風が直接体に当たらないよう風向きを調整するだけでも違います
飲みもの 氷入りを続けない。常温や温かいものを挟むだけで内臓の負担が変わります。※ただし暑い時期の水分・塩分補給は熱中症予防に必須です。控えるのではなく、冷たさの度合いを調整してください
入浴 夏でも週に数回はぬるめの湯船に。10〜15分程度でも体は温まります
体を動かす 冷房の中で固まった体を、時々立ち上がって動かす。ふくらはぎのポンプを働かせます
夏に最も大切な一点:温度差を小さくする

4章でお伝えしたとおり、体にとっての負担は「寒さ」より「温度差」です。ですから夏の対策の核心は、屋外と室内の落差を、自分の周りで埋めることにあります。

室温そのものは変えられなくても、羽織る・かける・履くという3つで、自分の体が感じる温度差は確実に縮まります。「暑い時期に上着を持ち歩く」のは、ぜいたくでも心配性でもなく、自律神経を守る合理的な行動です。

むくみ対策も夏冬共通で。長時間の同じ姿勢を避ける(1時間に一度は立つ・足を動かす)、夕方に足を高くして休む、塩分を摂りすぎない、たんぱく質を不足させない——これらは季節を問わず有効です。着圧ソックスなどを使う場合は、締めつけが強すぎないものを選び、しびれや痛みが出たら中止してください。持病のある方は医師に相談を。

9. よくある質問

冷えは「体質」だから仕方ないのでしょうか?

体質という言葉で片づける前に、確かめられることがあります。厚生労働省研究班監修のヘルスケアラボでは、女性は男性に比べて筋肉量が少なく熱を作りにくいこと、自律神経による体温調節がうまく働かないことを冷えの背景として挙げています。さらに、甲状腺の病気や膠原病、貧血などが原因のこともあるとされています。つまり冷えには、対処できる理由が隠れていることがあるのです。

なぜ女性のほうが冷えやすいのですか?

大きな理由の一つは筋肉量です。筋肉は体内で熱を生み出す器官であり、また血液を送るポンプの役割も果たします。女性は男性より筋肉量が少ないため、熱を作りにくく、血流も滞りやすくなります。加えて、女性ホルモンの変動が自律神経に影響し、体温調節が乱れやすくなることも関係すると考えられています。

夏の冷房で体調を崩すのはなぜですか?

体温を一定に保つ自律神経は、外気温との差が大きいほど負担を強いられます。冷房の効いた室内と暑い屋外を何度も行き来すると、血管を締めたり広げたりする調節が繰り返され、その乱れが冷え・だるさ・頭痛・疲れやすさとして表れることがあります。ヘルスケアラボも、冷房の強い部屋と外気の温度差を冷えの原因として挙げています。羽織るものを常備し、温度差そのものを小さくすることが対策になります。

むくみで受診したほうがよいのはどんなときですか?

急に強くなった、片脚だけが腫れて痛みや赤みを伴う、朝でも引かない、息切れを伴う、短期間で体重が増えた——こうした場合は受診してください。むくみの背景には腎疾患、心疾患、甲状腺機能低下症、リンパの流れの停滞などが隠れていることがあります。とくに片側だけの腫れや息切れは急を要することがあるため、様子見にしないでください。

冷え対策には何を食べればいいですか?

温かい食事や飲み物を選ぶことが基本です。加えて、熱を生み出す筋肉の材料となるたんぱく質をしっかり摂ること、貧血の背景になるを不足させないことが土台になります。特定の食材だけで冷えが解消するわけではありませんが、体を作る材料が足りていない状態では、いくら温めても追いつきません。極端な食事制限は冷えを悪化させる方向に働きます。

この記事のまとめ。冷えは、体が中心を守るために手足の血流を絞る反応から始まり、血流低下がさらなる冷えを呼ぶ悪循環になります。女性に多いのは、筋肉量が少なく熱を作りにくいこと、女性ホルモンと自律神経が連動していることが背景にあります。そして体にいちばんこたえるのは寒さそのものより「寒暖差」——だから夏の冷房もつらいのです。
対策は季節で変わります。冬は「作って、逃がさない」(下半身を動かす・首まわりを温める・湯船・たんぱく質)、夏は「冷やしすぎない、温度差を埋める」(羽織るものを常備・冷たい飲み物を続けない・夏こそ湯船)。
そして何より——「体質だから」で終わらせないでください。甲状腺、貧血、そして片脚だけのむくみや息切れなど、確かめるべきサインがあります。長く続く冷えや、最近急に強くなった冷えは、相談する価値があります。

参考にした主な資料

なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。冷えやむくみの原因は人により異なり、背景に治療が必要な病気が隠れていることがあります。片脚だけの腫れ・痛み、息切れを伴うむくみ、短期間での体重増加、指先の色が変化するといった症状がある場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。持病のある方、妊娠中の方は、入浴や運動、着圧製品の使用について医師にご相談ください。掲載内容は公開時点の情報にもとづいており、内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。