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体型と代謝

骨は20歳がピーク
——骨密度の減り方と、一生歩くための骨活ガイド

骨の量は、20歳頃に人生の最大値を迎えます。そこから先は、増やすのではなく「どれだけゆるやかに減らすか」の勝負になります。——この事実を、若いうちに知っている人はほとんどいません。そして骨は、折れるまで何も言いません。この記事は、10代の方にも、40代の方にも、ご高齢のご家族がいる方にも読んでいただきたい内容です。骨折してから知るのでは、遅すぎるからです。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年8月2日 読了:約14分

1. 先に結論

論点 この記事で言えること
骨はいつまで増える? 20歳頃が最大。成長期に増え、そこがピーク。以降は「減らさない」戦いになります。
減り始めるのはいつ? ピーク後は比較的安定し、加齢とともに減少。女性は閉経を境に加速します。
骨折は大ごと? 🚨 要介護の主な原因の上位です。「骨折・転倒」は総数で第3位(13.9%)、要支援2では第2位(19.6%)。
治療は手術だけ? いいえ。薬物療法、装具、リハビリ、痛みへの対処——選択肢は複数あります。
何をすればいい? 体重がかかる運動(片脚立ち・スクワット)と栄養。どちらも今日から、無料で始められます。

この記事は、このサイトでは珍しくすべての年代に向けて書いています。20代の方には「今が貯めどき」だと、40〜50代の方には「減り方を変えられる」と、そしてご高齢の方やそのご家族には「折れたあとにもできることがある」と——それぞれにお伝えしたいことがあるからです。

2. 骨は20歳がピーク——グラフで見る一生

まず、いちばん大事な事実から。

骨は、一度できたら一生そのまま——ではありません。実は毎日少しずつ壊され、また作られています。古い骨を溶かす細胞と、新しい骨を作る細胞が、絶えず入れ替え作業をしている。この収支のバランスで、骨の量は決まります。

20歳で最大、そこからは「減らさない」勝負

厚生労働省の解説によれば、骨量は成長期に増加し、20歳頃に最大骨量に達します。その後比較的安定に推移した後、加齢に伴い減少します。とくに女性においては、閉経に伴い骨量が減少しやすくなるとされています。

骨折しやすくなる目安の水準 20歳ごろ=最大骨量 閉経 0歳 20歳 40歳 55歳 75歳 骨量 — 女性 --- 男性(参考) ※変化の「かたち」を示す概念図です
骨量の一生の推移イメージ。20歳頃のピークが高いほど、その後の余裕が生まれます。女性は閉経を境に減少が加速しやすいことが知られています。数値は正確な測定値ではなく、変化の傾向を示す概念図です。

このグラフから、大切なことが2つ読み取れます。

グラフが教えてくれる2つのこと

① 若いうちは「貯金」の時期。20歳頃までにどれだけ骨を蓄えられたかが、その後の一生を左右します。10代・20代の極端なダイエット、運動不足、栄養不足は、このピークを低くしてしまいます。若い方にこそ知ってほしい事実です。

② ピークを過ぎたら「減り方」の勝負。同じ年齢でも、減るスピードは生活によって変わります。すでにピークを過ぎた方も、これから何をするかで曲線の傾きは変えられます。だから何歳からでも意味があります。

女性が不利な理由

女性ホルモン(エストロゲン)には、骨を壊しすぎないようブレーキをかける働きがあります。ですから閉経でエストロゲンが減ると、そのブレーキが弱まり、骨量の減少が加速しやすくなります

これは、このサイトが繰り返し扱ってきた「更年期に起きる体の変化」の一部です(→40代からの体の変化 完全ガイド)。肌のハリや体型の変化と同じ根っこから、骨の変化も起きている。ただし骨だけは、鏡に映らないという点で決定的に違います。

3. 骨折のリスクは、いつでもそこにある

「骨折なんて、転ばなければ大丈夫」——そう思われるかもしれません。ですが、骨がもろくなると、話が変わってきます。

「転んで折れる」だけではない

骨がもろくなった状態では、日常のささいな動作でも骨折が起こり得ます。

とくに背骨の骨折は、はっきりした痛みがなく気づかれないことがあります。「最近、身長が縮んだ」「背中が丸くなってきた」——これらが、実は背骨が少しずつつぶれているサインであることがあります。そして一度骨折すると、次の骨折が起こりやすくなることも知られています。

年齢に関係なく注意したい人。骨がもろくなる背景には加齢のほかにも、極端なダイエットや無月経の既往、痩せすぎ、喫煙、過度の飲酒、ステロイド薬の長期使用、一部の病気などがあります。若くてもリスクを抱えている場合があるということです。心当たりのある方は、年齢を理由に安心しないでください。

4. 骨折が変えてしまうもの

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい章です。少し重い話になりますが、知っておくことに意味があると考えています。

要介護の原因、上位に「骨折・転倒」

厚生労働省の2022年 国民生活基礎調査によれば、介護が必要となった主な原因は次のようになっています。

区分 第1位 第2位 第3位
総数 認知症 16.6% 脳血管疾患 16.1% 骨折・転倒 13.9%
要支援者 関節疾患 19.3% 高齢による衰弱 17.4% 骨折・転倒 16.1%
要支援2 関節疾患 19.8% 骨折・転倒 19.6% 高齢による衰弱 15.5%
要介護4 脳血管疾患 28.0% 骨折・転倒 18.7% 認知症 14.4%

認知症や脳卒中と並んで、「骨折・転倒」が介護が必要になる主な原因の上位に入っている——この事実は、もっと知られていいと思います。しかも認知症や脳卒中と違い、骨折は予防の手立てがはっきりしているのです。

なぜ、骨折が生活を変えるのか

骨折そのものは、多くの場合治ります。問題はその後です。

骨折 転倒・しりもち 入院・安静 動けない期間 筋力が落ちる 数日でも進む 歩きにくくなる 外出が減る 転ぶのが怖い さらに弱る 骨も筋肉も 生活の質が下がる・介護が必要に 再び骨折しやすい状態へ
骨折後に起こりやすい連鎖。骨折そのものより、その後の「動かない期間」が生活を変えてしまうことがあります。

とくに高齢の方では、数日寝ているだけでも筋力は落ちます。そして退院しても、以前のように歩けない。転ぶのが怖くて外出が減る。人と会わなくなる。食事も細くなる——こうして、骨折をきっかけに生活全体が縮んでいくことがあります。

私が診察室で見てきた中でも、「あの骨折の前と後で、生活が変わってしまった」という方は少なくありません。骨折は、単なる「骨が折れた出来事」では終わらないのです。

だからこそ、この記事を書いています

認知症や脳卒中は、完全に防ぐことが難しい面があります。けれど骨折は、骨を守り、転ばない工夫をすることで、リスクを下げられるのです。しかもその方法は、お金のかからないものがほとんどです。

そして——もし今、ご家族に高齢の方がいらっしゃるなら、この記事を一緒に読んでいただけたらと思います。「転ばないでね」と言うより、なぜ大切なのかを共有するほうが、行動は変わりやすいものです。

5. 骨密度を測る——見えないものを見る

骨は、折れるまで何も言いません。血圧のように自覚症状で気づくこともなければ、体重のように毎日目にすることもない。だからこそ、測る意味があります

どこで測れるか

測定方法にはいくつかの種類があり、腰や太ももの付け根で測る精密な方法、かかとや手首で簡易に測る方法などがあります。方法によって精度や意味合いが異なるため、結果は必ず医療機関で説明を受けてください

いつ測るか。女性は閉経前後が一つの目安です。ただし、①以前に骨折したことがある、②家族に骨粗鬆症や大腿骨骨折の人がいる、③ステロイド薬を長く使っている、④極端なダイエットや無月経の経験がある、⑤痩せている——こうした方は、年齢にかかわらず一度相談する価値があります。健診に標準では含まれない項目なので、自分から「測りたい」と伝えることが大切です(→健診結果の読み方ガイド)。

6. 治療は手術だけではない

「骨粗鬆症と言われたら手術?」——そんなことはありません。むしろ手術は、骨折してしまった場合の選択肢の一つです。ここでは、治療の全体像を整理します。

段階 行われること
予防・骨を守る 食事・運動・日光。危険因子(喫煙・過度の飲酒・極端な痩せ)の見直し
薬物療法 骨が壊れるのを抑える薬、骨を作るのを助ける薬など複数の種類があり、状態に応じて選ばれます。カルシウムやビタミンDの補充が併用されることも
骨折した場合 手術のほか、部位や状態によってはコルセットなどの装具や安静で治す方法(保存療法)も選ばれます
痛みへの対処 痛みを我慢すると動けなくなり、かえって回復が遅れます。痛みを抑えることも治療の一部です
リハビリテーション 骨折後の回復にも、予防にも重要。歩く力を取り戻す・維持するための専門的な支援

リハビリを「おまけ」だと思わないでください

ここは強調しておきたい点です。骨折の治療というと手術に目が行きがちですが、その後どれだけ動けるようになるかは、リハビリが大きく左右します

前章で見たとおり、骨折後の連鎖を止めるカギは「動かない期間を短くすること」にあります。だから多くの場合、可能な範囲でできるだけ早くから体を動かし始めます。痛みを抑えながら、少しずつ。これは根性の話ではなく、筋力と生活を守るための医学的な戦略です。

また、リハビリは骨折後だけのものではありません。転倒を防ぐためのバランス訓練や筋力強化も、立派なリハビリです。「まだ折れていないうちに鍛える」——これが最も賢い使い方です。

ご家族の方へ。高齢の方が骨折されたとき、「無理をさせたくない」という気持ちから安静を勧めたくなることがあります。けれど、医師やリハビリ専門職が「動きましょう」と言うときは、動かないことのほうが害になるという判断です。心配な点は遠慮なく質問しつつ、方針を共有していただけたらと思います。

7. 今日からできる「骨体操」

お待たせしました。実践編です。

骨には、おもしろい性質があります。刺激が加わると強くなろうとするのです。逆に、使わなければ弱くなる。宇宙飛行士が無重力で骨量を失うのは、この性質のためです。つまり——体重をかける運動が、骨には効くということです。

基本は2つ:片脚立ちとスクワット

日本整形外科学会は、移動する力を守るための運動として「ロコトレ」を推奨しています。内容は「片脚立ち」と「スクワット」の2つだけ。道具もジムも要りません。

運動 やり方の目安
片脚立ち 床につかない程度に片脚を上げ、左右各1分間、1日3回を目安に。必ずつかまるものがある場所で。転倒防止が最優先です
スクワット 肩幅より少し広めに足を開き、お尻を後ろに引くように2〜3秒かけてゆっくり膝を曲げ、ゆっくり戻す。5〜6回を1日3セットが目安。膝がつま先より前に出ないように
安全がいちばん大切です

日本整形外科学会も、立位や歩行が不安定な人は、イスの背もたれなどに手をついて行うよう案内しています。また「ロコモといっても程度は人それぞれ。ご自身に合った安全な方法で、無理せず行いましょう」とされています。

骨がもろいと言われている方、痛みがある方、持病のある方は、始める前に必ず医師に相談してください。とくに背骨に骨折の既往がある方は、前かがみになる動作や体をひねる動作が負担になることがあります。転んでしまっては元も子もありません。

生活の中に埋め込む「ながら骨活」

続けるコツは、運動の時間を作ろうとしないことです。すでにある習慣にくっつけてしまいましょう。

そして、日光を浴びることも忘れずに。皮膚では日光を浴びるとビタミンDが作られ、これがカルシウムの吸収を助けます。ただし紫外線の浴びすぎは肌に別の影響があるので、顔は守りつつ、腕や手のひらに短時間——というバランスが現実的です(→日焼け止めの選び方・塗り方)。

そして「転ばない」工夫

骨を強くすることと同じくらい、転ばないことが大切です。とくにご高齢の方の場合、家の中の環境を変えるだけでリスクは下がります。

意外に思われるかもしれませんが、転倒の多くは家の中で起きています。「うちは大丈夫」と思わず、一度歩いてみて、つまずきそうな場所を探してみてください。

8. 食事で骨を守る

骨の材料を、体の外から入れる話です。ポイントは「カルシウムだけではない」ということ。

栄養素 役割 多く含む食品の例
カルシウム 骨の主成分 牛乳・ヨーグルト・チーズ、小魚、豆腐、小松菜
ビタミンD カルシウムの吸収を助ける 鮭・さんまなどの魚、きのこ類(+日光)
たんぱく質 骨の土台をつくる 肉・魚・卵・大豆製品・乳製品
ビタミンK 骨の形成に関わる 納豆、青菜類

気づかれたでしょうか。たんぱく質が入っていることに。「骨=カルシウム」というイメージが強いですが、骨はコンクリートのように、鉄筋(たんぱく質)とセメント(カルシウム)でできています。鉄筋なしでは、丈夫な骨にはなりません。

だからこそ、極端な食事制限は骨にとって二重の打撃になります。カルシウムも減り、たんぱく質も減り、さらに体重が減ることで骨への刺激も減る。40代からの「痩せにくい」の正体でお伝えした「極端な制限は筋肉を削る」という話は、骨にもそのまま当てはまります

サプリメントについて。食事で足りない場合の補助として使われることはありますが、自己判断で大量にとるのは避けてください。カルシウムもビタミンDも、摂りすぎには別の問題が生じ得ます。また、すでに治療を受けている方は、処方との兼ね合いがあります。必要かどうかを含めて、医師・薬剤師に相談するのが安全です。まずは食事全体を整えることが先です。

9. よくある質問

骨密度は何歳から気にすればいいですか?

「気にする」だけなら10代からです。骨の量は成長期に増えて20歳頃に最大骨量に達し、その後は比較的安定に推移したのち加齢とともに減っていきます。つまり若いうちは「貯める時期」、それ以降は「減らさない時期」です。検査という意味では、女性は閉経前後から、また骨折の経験や家族歴、極端なダイエット歴などがある方は年齢を問わず相談する価値があります。

骨折はそんなに大ごとなのでしょうか?

高齢期では、生活が大きく変わるきっかけになり得ます。2022年国民生活基礎調査によると、介護が必要となった主な原因のうち「骨折・転倒」は総数で第3位(13.9%)、要支援2では第2位(19.6%)を占めています。骨折そのものより、入院や安静で動けない期間に筋力が落ち、そのまま活動範囲が狭まっていくことが問題になります。だから予防に意味があります。

骨密度はどこで測れますか?

整形外科や、骨粗鬆症の検査を行っている医療機関で測れます。自治体の健診に骨粗鬆症検診が含まれている場合や、人間ドックのオプションで選べる場合もあります。多くの健診に標準では含まれていないため、気になる方は「骨密度を測りたい」と伝えて相談してください。測定にはいくつかの方法があり、部位や機器によって特徴が異なります。

骨のためには何を食べればいいですか?

カルシウムだけでなく、その吸収を助けるビタミンD、骨の材料になるたんぱく質、ビタミンKなどをバランスよく摂ることが基本です。乳製品・小魚・大豆製品・青菜・きのこ・魚などを組み合わせるとよいでしょう。極端な食事制限は骨にとって大きな負担になります。サプリメントで大量に補うより、まず食事全体を整えることを優先してください。

骨のための運動は、何をすればいいですか?

骨は「刺激」で強くなるため、体重がかかる運動が向いています。日本整形外科学会が推奨するロコトレは「片脚立ち」と「スクワット」の2つで、特別な道具は不要です。ウォーキングも有効です。ただし、すでに骨がもろくなっている方や、痛み・持病がある方は、始める前に医師に相談してください。転倒しない安全な方法で行うことが何より大切です。

この記事のまとめ。骨の量は20歳頃が人生のピークで、その後は「どれだけゆるやかに減らすか」の勝負になります。女性は閉経を境に減少が加速しやすく、しかも骨は折れるまで何も言いません。そして骨折は、要介護になる主な原因の上位(総数で第3位13.9%、要支援2では第2位19.6%)。骨折そのものより、動けない期間に筋力が落ちて生活が縮んでいく連鎖が問題です。
だからこそ、できることがあります。測る(骨密度は自分から申し出て)、動かす(片脚立ちとスクワット、そして転ばない工夫)、食べる(カルシウムだけでなくたんぱく質も)。治療も手術だけでなく、薬・装具・痛みの対処・リハビリと選択肢があります。
若い方は「今が貯めどき」、40代以降の方は「減り方は変えられる」、そしてご家族に高齢の方がいるなら「一緒に読んでほしい」——すべての年代に、今日からできることがある話です。

参考にした主な資料

なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。骨密度の評価や治療の要否は、症状・年齢・既往歴・骨折歴などをふまえて医師が判断します。運動は、骨がもろくなっている方、痛みのある方、持病のある方では内容の調整が必要です。開始前に医師にご相談ください。とくに背骨の骨折歴がある方は、前かがみや体をひねる動作が負担になることがあります。転倒に十分ご注意のうえ、安全な環境で行ってください。掲載内容は公開時点の情報にもとづいており、内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。