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体型と代謝

下肢静脈瘤と脚のむくみ
——症状がなければ、手術は必要ありません。学会が「不適切治療」に声明を出しています

夕方になると脚が重い。ふくらはぎに血管が浮いてきた。——40歳を過ぎると、多くの方が一度は気にするようになります。実際、40歳以上を対象にした調査では約1割、女性では11.3%に下肢静脈瘤が見つかっています。
その一方で、日本静脈学会は2020年に「不適切治療に対する声明」を出しました。一部の医療機関で、治療の必要がない軽症の人や、正常な静脈にまで手術が行われているというのです。学会が一般向けにつくったパンフレットの題は「あなたにその手術、本当に必要ですか?」
そして2025年の圧迫療法ガイドラインは、症状のない静脈瘤には弾性ストッキングも「原則的に施行しない」と書いています。
何が必要で、何が必要ないのか。脚のむくみとの見分け方、ストッキングの選び方まで、学会の一次資料から整理します。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年9月10日 読了:約18分

1. 先に結論

よくある思い込み一次資料の記述
静脈瘤は放っておくと手遅れになる「手遅れになることはなく、重症になっても手術で治すことができます」
静脈瘤から血栓が飛んで、心臓や脳が詰まる「これは間違いです」。エコノミークラス症候群は別の病気です
血管が太いと言われたから、手術が必要手術が必要なのは弁の逆流・一定以上の太さ・症状の3つがそろったとき
症状はないけれど、悪くなる前に手術を重症化や肺血栓塞栓症の予防を目的にした手術は「不適切治療」
予防のために、とりあえずストッキング症状がなければ「圧迫療法を原則的に施行しない」
ストッキングは圧が強いほど良い低い圧(10〜20mmHg)でもむくみは有意に減り、より強い圧と差はなかった
市販の着圧スパッツでも同じこと部位によって医療用と同等以上の圧。しゃがむと膝の圧は3.1〜6.3倍
脚のむくみは、たいてい静脈のせい心不全・腎不全・薬の副作用でも起こります。「静脈の病気と決めつけない」

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

下肢静脈瘤は良性の病気です。学会は、症状が出てからの手術でも十分に間に合うと書いています。急がされたときほど、一度立ち止まってください。

そして症状があるときには、手術の前にできることがあります。その中心が圧迫療法で、強い圧は必要ありません。

2. 40歳以上の約1割——女性は男性の約3倍

日本皮膚科学会の下腿潰瘍・下肢静脈瘤診療ガイドライン(第3版)は、日本の患者数について「正確なデータはない」と断ったうえで、愛媛大学の調査を紹介しています。40歳以上の9,123人(平均年齢62.4歳)のうち8.6%に下肢静脈瘤があり、男性は3.8%、女性は11.3%でした。ここから、国内に1,000万人以上の患者がいると推計されています。

同じガイドラインは、フランスで成人2,000人を無作為に選んだ調査も引いています。何らかの静脈瘤が見つかったのは男性で30.1%、女性で50.5%。細い血管が浮く程度のものまで数えるかどうかで数字は大きく変わりますが、どちらの調査でも女性に多いことは共通しています。

「静脈瘤」には段階があります

静脈の病気は、国際的なCEAP分類で段階に分けられます。圧迫療法ガイドライン2025の一般向けの解説から引用します。

分類状態
C1毛細血管拡張、クモの巣状静脈瘤(1mmより細い)あるいは網目状静脈瘤(青く細い2〜3mmの静脈)
C2静脈瘤
C3浮腫(むくみ)
C4a色素沈着、湿疹
C4b脂肪皮膚硬化症、白色萎縮
C4c静脈拡張冠(足首周囲に細かい血管が集まったもの)
C5治癒した潰瘍
C6活動性潰瘍

血管内焼灼術のガイドライン2019は、下肢静脈瘤を「立位で3mm以上に拡張した下肢の皮下静脈」と定義し、日本では網目状やクモの巣状のものも静脈瘤と呼ぶが、国際分類ではC1とC2は区別されていると注記しています。細い血管が赤や青に透けて見える状態と、こぶのように膨らんだ静脈瘤は、別の段階だということです。

なお、この分類は順を追って悪化していくわけではありません。ガイドラインの解説にもそう書かれています。C1の人が必ずC6に進むわけではない、ということは覚えておいてください。

3. 脚の静脈は「弁」と「ふくらはぎ」で血を戻しています

脚の血液は、重力に逆らって心臓まで戻らなければなりません。圧迫療法ガイドライン2025は、脚の静脈の血を戻す仕組みとして5つを挙げています。ふくらはぎの筋肉のポンプ作用、静脈弁による逆流防止、呼吸による胸やお腹の圧の変化、流れ込む動脈の血による押し上げ、そして脚の高さ(重力)です。

このうち数字で見ると分かりやすいのが、静脈の圧です。

「立位では右心房から下肢までの血液の重量にほぼ等しい80〜100mmHgだが,仰臥位での静脈圧は約10mmHgである。歩行時は筋ポンプ作用によって静脈圧は0〜20mmHgまで急速に低下し,歩行中はこの圧が維持され,運動終了後に元の圧に戻る」

じっと立っていると、足首の静脈には体の高さぶんの血液の重さがかかります。ところが歩くと、ふくらはぎの筋肉が静脈を絞って血を押し上げ、圧は一気に下がります。静脈の中にはいくつもの弁があり、押し上げた血が逆戻りしないように支えています。

下肢静脈瘤の多くは、この弁が壊れて血液が逆流することで起こります(一次性静脈瘤)。皮膚科学会のガイドラインによれば、健康な脚では運動すると静脈圧は約30mmHg以下まで下がりますが、一次性静脈瘤では運動しても約60mmHg程度までしか下がりません。脚を下げているあいだ、血液がたまりやすくなる——これが「うっ滞」で、だるさやむくみのもとになります。

この仕組みを知っておくと、後で出てくる対策の意味がよく分かります。歩くこと、脚を上げること、外から適度に圧をかけること。どれも、静脈の圧を下げる方向に働きます。

4.【核心】学会が「不適切治療」に声明を出しました

下肢静脈瘤の手術には、静脈を引き抜くストリッピング術のほかに、血管内焼灼術があります。静脈の中に細いカテーテルを入れ、レーザーや高周波で内側から焼いてふさぐ方法です。2011年に保険適用となり、学会の追補によれば現在では下肢静脈瘤の外科治療の約9割がこの方法になっています。体への負担が小さく、治療成績も良好な、優れた治療です。

ところが2020年1月10日、日本静脈学会は理事長名で次の声明を出しました。

「一部の医療機関によるうっ滞症状を伴わない軽症例に対するETA,そればかりか正常静脈に対してまでETAを行っている不適切治療の事例が報告されています。また,それらの医療機関では疫学的に想定されている以上の両下肢同時治療や,同一下肢への計画的な繰り返し治療も行われています」

ETAは血管内焼灼術のことです。声明は続けて、こうした治療を「“医の倫理”に反する行為」と書き、厚生労働省や保険審査機関と連携して制止に努めるとしています。そして、次の5つを「不適切治療」と明記しました。

血管内焼灼術の不適切症例(声明より)どういうことか
正常静脈(弁不全を認めない伏在静脈)弁がきちんと働いている静脈を焼く
弁不全を認めない静脈径拡張「太い」だけで、逆流がない
部分的な伏在静脈の弁不全逆流が静脈の一部にとどまる
静脈うっ滞症状がない下肢静脈瘤だるさ・むくみ・皮膚炎などがない
将来の静脈瘤悪化や肺血栓塞栓症予防目的「悪くなる前に」「血栓予防に」という理由

必要のない手術の、何が問題なのか

学会のパンフレットは、率直にこう書いています。

「手術をしても“手術の効果がなく、ただ足に傷がつくだけ”だからです」

痛みがあって手術を受けた人でも、その痛みの原因が静脈瘤でなければ、痛みは取れません。そして焼いた静脈は働かなくなります。パンフレットは、多くの場合は他の静脈が補うので軽いむくみ程度で済むとしつつ、将来、心臓や足の動脈の病気でバイパス手術が必要になったときに使う静脈がなくなってしまうことを挙げています。数は少ないものの、神経のしびれや傷の化膿といった合併症もあります。

誤解のないように書いておくと、血管内焼灼術そのものが危険なのではありません。国内4万3,203例の調査では、術後の深部静脈血栓症は0.076%、肺血栓塞栓症は0.0067%でした。問題は治療法ではなく、必要のない人に行われていることです。

5. 手術が必要なのは、3つがそろったとき

では、どういう場合に手術が必要なのか。パンフレットの答えは明快です。

手術が必要な下肢静脈瘤は、3つがそろったとき 静脈弁の逆流がある 一定以上の太さ 症状がある 超音波検査で確かめる 太いだけでは不十分 だるさ・むくみ・皮膚炎 1つでも欠けていれば、手術は必要ない側です 部分的な弁の逆流は、静脈瘤のない人でも超音波で35〜43%に見つかります 出典:日本静脈学会「あなたにその手術、本当に必要ですか?」、同 ガイドライン追補

「血管が太いから」「逆流があるから」だけでは、手術の理由になりません。

「手術が必要な下肢静脈瘤は、①静脈の逆流防止弁の異常があり、②静脈の太さが一定以上あり、なおかつ③症状がある場合です。静脈弁に異常がないのに単に血管が太いから手術が必要になることはありません」

「逆流がある」だけでは足りない理由

学会の追補によると、静脈瘤を発症していない正常な人でも、超音波検査で表在静脈の弁不全が35〜43%に認められます。その多くは部分的なもので、症状はなく、年とともに逆流は進むものの、全員が慢性的な静脈の病気になるわけではありません。追補は「限局性弁不全による軽症静脈瘤の多くは無症状であり治療の必要はない」と書いています。

パンフレットは、こういう例にも注意を促しています。単なる加齢によるむくみや、赤や青の細い血管が目立つクモの巣状静脈瘤の人に、「隠れ静脈瘤」と診断して手術を勧める場合がある——と。

「症状」は静脈瘤だけのものではありません

静脈瘤の症状として追補が挙げているのは、脚の重さ、だるさ、こむら返り、かゆみ、むくみ、痛み、不快感、そして湿疹や皮膚の硬化などの皮膚症状です。ただし追補は、「下肢静脈瘤の症状は疾患特異的なものではなく,他の疾患が原因となることも多い」とも書いています。

静脈のうっ滞による症状かどうかの目安として挙げられているのは、立っているときや、朝より夕方に症状が悪くなること、弾性ストッキングを履くと症状が軽くなること、などです。パンフレットも「症状がでた原因が静脈瘤でない方は手術をしても症状は良くなりません」と念を押しています。

そして、症状がない場合については、こうです。

「下肢静脈瘤の手術は症状が出てからでも十分に間に合いますし、一生症状がない患者さんも多くいるので慌てて手術をする必要はありません」

6. 🚨「血栓が飛ぶ」は、別の病気の話です

静脈瘤の不安をいちばん大きくしているのは、おそらくこの話です。パンフレットは、はっきり否定しています。

「『下肢静脈瘤は血栓(血のかたまり)ができて心臓や脳が詰まってしまう』とテレビや雑誌などでみることがありますが、これは間違いです

いわゆるエコノミークラス症候群は、脚の深いところにある静脈(深部静脈)にできた血栓が肺の血管に流れて詰まる病気です。下肢静脈瘤は皮膚のすぐ下の浅い静脈の病気なので、パンフレットは「エコノミークラス症候群とは直接の関係はありません」と書いています。

学会の追補も、深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症を予防するために静脈瘤の侵襲的治療を行うというエビデンスはないとし、予防目的の血管内焼灼術は「施行されるべきではない」としています。むしろ、まれではあるものの、手術のあとに血栓症が合併症として起こりうることも記されています。

ただし、「静脈瘤があれば血栓は決して起きない」という意味ではありません。追補は、静脈瘤のある人に深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症が合併することはあると書いています。問題は、「血栓予防のための手術」という勧め方です。

🚨 静脈瘤とは別に、急いで受診してほしい症状

片脚だけが急に腫れて痛む、赤くなる、熱っぽい——深部静脈血栓症の可能性があります。圧迫療法ガイドラインの一般向け解説は、症状として「足の腫れ,痛み,発赤」を挙げています。

胸が痛い、息が苦しい——血栓が肺に流れた可能性があり、すぐに救急要請してください。

7. こう言われたら、セカンドオピニオンを

学会のパンフレットには、「注意したほうがいい場合」として8つが挙げられています。そのまま引用します。

#注意したほうがいい場合(パンフレット 表2)
1「すぐに手術が必要」と言われた
2「血管が太いので手術が必要」と言われた
3「隠れ静脈瘤」と言われた
4「放っておくと、取り返しがつかないことになる」と言われた
5「血栓が飛びやすい」と言われた
6超音波検査の時間が短い(通常15分以上)
7一本の足に何度も手術をすることを勧められた
8自費の手術を勧められた

「放っておくと取り返しがつかない」という言葉については、パンフレット自身が反論しています。「癌や心臓の病気と違い下肢静脈瘤は良性の病気なので、歩けなくなったり足を切断したり、死んでしまうことはありません。手遅れになることはなく、重症になっても手術で治すことができます」

そのうえで、パンフレットの助言は具体的です。

学会のパンフレットが勧めていること

できれば、診察には誰かに同行してもらう

その場で手術を決めない

診察結果に疑問があれば、かかりつけの医師や血管外科・心臓血管外科の医師に相談する

情報を集めるときは、インターネットや本にも間違った情報がたくさんあることに注意する

パンフレットは最後に、不適切治療を行っているのはごく一部の医師や医療機関であり、多くの医師は真剣に治療にあたっていると書き添えています。医療機関全体を疑う必要はありません。ただ、「急がせる」「不安をあおる」勧め方に出会ったときは、この表を思い出してください。

8.【意外】症状がなければ、ストッキングも「原則しない」

手術はしないとしても、「せめてストッキングで予防を」と考える方は多いと思います。実は、この点についても学会の答えは同じ方向です。

CQ1「下肢静脈瘤患者で無症候性の場合,圧迫療法は有用か?」
推奨:「下肢静脈瘤患者において無症候性の場合には,圧迫療法を原則的に施行しない」〔推奨クラス:Ⅱa エビデンスレベル:C(コンセンサス)〕

ガイドラインによると、2014年の学会の調査では、下肢静脈瘤の患者の約22%で圧迫療法が選ばれていて、そこには通常は症状のない網目状・クモの巣状の静脈瘤も含まれていました。それを踏まえて、根拠を検討しています。

その一方で、デメリットはあります。ガイドラインが挙げているのは、発汗、かゆみ、刺激、皮膚の乾燥、圧迫感。履きにくさや見た目の問題から続けられない人も多く、症状のない人ではさらに続かないだろうとも書いています。

だから「原則的に施行しない」。ただしガイドラインは、それでも希望する場合は十分に理解を得たうえで行うとしています。禁止ではありません。「予防になると思って、とりあえず」には根拠がないということです。

9. 症状があるなら、圧迫療法は推奨されています

話は、症状があるときに変わります。圧迫療法ガイドライン2025の推奨を並べると、次のようになります。

圧迫療法をするかどうかは、症状で分かれます 静脈疾患における圧迫療法ガイドライン2025の推奨(抜粋) CQ1 症状のない静脈瘤 原則 行わない Ⅱa・C CQ2 痛み・だるさ 行う Ⅰ・A CQ3 静脈によるむくみ 行う Ⅰ・B CQ4 うっ滞性皮膚炎 行う Ⅱa・C CQ4 脂肪皮膚硬化症 行う Ⅱa・B CQ5 静脈性潰瘍の治療 行う Ⅰ・A CQ6 潰瘍の再発予防 行う Ⅱa・B 右端は推奨クラス・エビデンスレベル。Ⅰが最も強く、Aは複数のランダム化比較試験またはメタ解析 出典:日本静脈学会「静脈疾患における圧迫療法ガイドライン2025」

同じ静脈瘤でも、症状がなければ「原則行わない」、症状があれば「行う」。分かれ目は症状です。

推奨クラスⅠは「有益・有効であることを証明するエビデンスが存在する、またはコンセンサスが形成されている」という最も強い区分です。痛み・だるさ(CQ2)と静脈性潰瘍の治療(CQ5)はⅠのA、つまり複数のランダム化比較試験やメタ解析に裏づけられています。

むくみには、強い圧は必要ありません

この記事で特に知っていただきたいのが、むくみ(CQ3)の根拠の中身です。ガイドラインが採用した、健康な人と慢性静脈不全症の患者を含む11研究・1,453人のメタ解析では、次のような結果でした。

「低圧弾性ストッキング(10-20mmHg)による圧迫療法はプラセボストッキング(≦6mmHg)あるいは圧迫を行わない症例と比較して有意に浮腫を軽減したが,弾性ストッキングの圧迫圧による差は認められなかった(10-20mmHg vs 20-40mmHg)」

低い圧でもむくみは減り、それ以上強くしても差がなかった。一方で、圧が高くなると続けられない人が増えることもガイドラインは指摘しています。そのうえでの結論は、こうです。

「CVIにおける下肢浮腫は必ずしも治療が必要な症状ではないので,患者の負担にならないように,圧迫療法の種類,圧迫圧10–50mmHgの範囲の最低圧を選択し,アドヒアランスを保つように圧迫療法を行う」

アドヒアランスとは、続けられることです。強く締めつけるより、続けられる弱めの圧を毎日。むくみの軽さと、だるさなどの自覚症状の軽さは必ずしも一致しない、とも書かれています。

もうひとつ、知っておいていただきたい事実があります。ガイドラインは「現在,わが国ではCVIの浮腫に対する圧迫療法は保険適応ではない」と明記しています。静脈によるむくみのためのストッキングは、基本的に自分で購入するものです。だからこそ、次の章の「選び方」が大切になります。

10. そのむくみ、本当に静脈ですか

ストッキングを選ぶ前に、確かめておきたいことがあります。そのむくみが、本当に静脈によるものかどうかです。

圧迫療法ガイドラインは、静脈によるむくみの特徴を「午後から夕方に増悪し就寝中に軽快する」と書いています。一般向けの解説では、足首のまわりに出やすく、朝は軽く、夕方から夜に強くなること、すねを指で強く押してへこみが深く戻りにくいかどうかを見ることが挙げられています。

そして、同じ解説はこう続けています。

「心不全や腎不全,薬の副作用など,静脈の病気以外でもむくみはおこるので,静脈の病気と決めつけないで原因を明らかにすることが重要です」

皮膚科学会のガイドラインも、慢性静脈不全症は骨盤内の腫瘍、心不全、腎不全、肥満などでも生じるため、静脈の流れに異常がない場合も的確に調べる必要があるとしています。

静脈が関わっていそうなむくみ別の原因も確かめたいむくみ
夕方に強く、朝には軽い朝になっても引かない
足首のまわりが中心顔やまぶたもむくむ
立ち仕事・座りっぱなしの日に目立つ息切れを伴う、横になると苦しい
こぶ状の静脈、だるさ、こむら返りを伴う数日で体重が増えた、尿が減った
両脚にゆっくり出てくる片脚だけが急に腫れた(急ぎます)

右の列に当てはまるむくみは、ストッキングで様子を見る前に受診してください。全身の病気が隠れていないかは血液検査や尿検査で調べられます。むくみの原因の見分け方については冷えとむくみ——「体質」で終わらせない、原因の見分け方に、甲状腺の関わりについては甲状腺と女性の疲れに詳しく書いています。

11. 医療機器と「雑品」——ストッキングの選び方

「着圧ソックス」「弾性ストッキング」「加圧タイツ」——店頭やネットには似たような名前の商品が並んでいます。圧迫療法ガイドライン2025は、ここに線を引いています。

「わが国で圧迫療法に使用する装具・機器には,関連法規である『医薬品,医療機器等の品質,有効性および安全性の確保等に関する法律(薬機法)』の『医療機器』と,薬機法に該当しない『非医療機器(雑品)』があり,医療機器は性能,安全性が製造者に担保され,使用目的,効果,使用方法,警告,禁忌が添付文書に明記されている」

そして「本ガイドラインにおける圧迫療法は,医療機器である弾性ストッキング(中略)の使用を推奨する」。同時に、現状は医療機器と雑品が混在し、「統一された定義や規格が存在しない」とも書いています。見た目が似ていても、中身の保証は同じではない、ということです。

選ぶときに確かめる4つのこと

① 「一般医療機器」と医療機器届出番号があるか
パッケージや商品ページに記載があります。番号が分かれば、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の検索ページで添付文書を確認できます。

② 足首が最も強い「段階着圧」か
医療用の弾性ストッキングは、末梢から体の中心に向かって段階的に圧を弱める構造です。国民生活センターのテストでも、医療用はこの傾向を示していました。

③ 脚を測って、サイズを選ぶ
ガイドラインの解説は「弾性ストッキングは主に足首の太さを測定しサイズを決め」るとしています。国民生活センターのテストでは、一段階小さいサイズを着ると圧が上がるケースがありました。

④ 圧は低めから
むくみの軽減には10〜20mmHgでも差がありませんでした。表示の単位は、医療ではmmHg、市販品ではhPa(1mmHg=約1.33hPa)が使われます。

圧の目安として、皮膚科学会のガイドラインは足首での圧を次のように整理しています。

足首での圧(mmHg)おもな用途(下腿潰瘍・下肢静脈瘤診療ガイドライン 表2)
20未満深部静脈血栓症の予防、下肢静脈瘤の予防、静脈瘤抜去切除術後、他の病気によるむくみ
20〜30軽度の静脈瘤、高齢者の静脈瘤
30〜40下肢静脈瘤の術後、硬化療法の術後、軽度の静脈血栓後症候群
40〜50下腿潰瘍を伴う静脈瘤、むくみの強い静脈瘤、深部静脈血栓症の後遺症、リンパ浮腫
50以上高度のリンパ浮腫

この表は圧の強さの目安です。症状のない静脈瘤に予防目的で履くことについては、より新しい圧迫療法ガイドライン2025が「原則的に施行しない」としていることは、8章で見たとおりです。

履く時間について、皮膚科学会のガイドラインは「朝起床時すぐに弾性包帯か弾性ストッキングを装着し,就寝前まで続け」ると書いています。脚が下がっている日中に履き、寝るときは脱ぐのが基本です。サイズや圧に迷うときや、むくみが強い・赤く腫れる・硬く触れる部分があるときは、ガイドラインの解説どおり専門医や弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター(圧迫療法を専門とするスタッフ)に相談してください。

12. ⚠️ 着圧スパッツ・ソックスで起きていること

「脚スッキリ」「引き締め」をうたう加圧・着圧タイプの衣類について、国民生活センターが商品テストをしたことがあります。2011年4月8日の報道発表「加圧を利用したスパッツの使い方に注意!」です。少し前の調査ですが、中身は今でも参考になります。

全国の消費生活センターには、加圧を利用した衣類について2011年1月末までに102件の相談が寄せられていました。82%が女性、年代は50代、60代、40代の順に多く、86%が通信販売での購入です。事例には、次のようなものがありました。

そして、市販のスパッツ10銘柄と、医療用の弾性ストッキング3銘柄の圧を比べたテスト結果です。

しゃがむと、圧は立っているときの何倍になったか 加圧を利用したスパッツを着用した被験者テスト(立った姿勢を1とする) 立った姿勢 ふくらはぎ 2.9〜5.2倍 3.1〜6.3倍 0 1 2 3 4 5 6 7倍 膝やふくらはぎでは、半数以上の銘柄で医療用の弾性ストッキングより圧が高くなりました 出典:国民生活センター「加圧を利用したスパッツの使い方に注意!」2011年4月8日

座る・しゃがむと、膝の裏やふくらはぎに生地が食い込み、圧が一気に上がります。

テストで分かったことを、報道発表から整理します。

報告は、30mmHg以上の圧が太ももや膝にかかると、静脈が押されて、それより先がうっ血状態になるという知見も紹介しています。脚をすっきりさせるつもりの製品が、使い方によっては逆の方向に働きうるということです。国民生活センターのアドバイスは、同じ姿勢を続けない、重ね履きをしない、まくれ上がりに注意する、サイズを慎重に選ぶこと。そして糖尿病の人や、装着部位に神経障害のある人は、使用を避けるか使用前に医師に相談することでした。

医療用でも、合わない人がいます

医療用の弾性ストッキングにも注意点があります。圧迫療法ガイドラインは、圧迫療法で最も多い神経の障害は膝の外側(腓骨頭)での腓骨神経麻痺で、弾性ストッキング、特にハイソックスタイプで報告されているとしています。上端がまくれ上がって、膝の下を局所的に締めつけることが一因です。

⚠️ 自己判断で圧迫しないでほしい方(圧迫療法ガイドライン2025 表3より)

使ってはいけない(禁忌)——重症の心不全、足の動脈の高度な病気(ABI 0.5未満)、高度の末梢神経障害、急性で広範囲の皮膚の感染症、圧迫する素材へのアレルギー など

慎重に判断が必要——心不全、足の動脈の病気(ABI 0.5以上0.9未満)、糖尿病による神経障害、弱く薄くなった皮膚、慢性の皮膚の感染症 など

ABIは足首と腕の血圧の比で、足の動脈の流れを調べる検査です。これらに当てはまる方は、必ず医師に相談してください。

履いていてしびれ、痛み、足先の冷えや色の変化、皮膚の赤みが出たら、すぐに脱いでください。国民生活センターの報告も、まくれ上がりによる局所的な締めつけが、痛み・しびれ・皮膚の発赤や腓骨神経麻痺の原因になるとしています。

13. 生活でできること——歩く・脚を上げる・同じ姿勢を続けない

3章で見たように、脚の静脈の圧は歩くと下がり、横になると下がり、じっと立っていると高いままです。生活の工夫は、すべてこの仕組みに沿っています。圧迫療法ガイドラインの一般向け解説は、症状があるときの対策をこうまとめています。

「毎日の長時間の立位・坐位を少なくし,下肢を挙上しましょう。日頃から肥満を避け,下肢の運動を心がけることも大事です」

むくみの対策としては、立ちっぱなし・座りっぱなしを減らす足首の曲げ伸ばし運動脚を上げる、マッサージが挙げられ、「短時間でよいので,時間をおいて複数回行うのがコツ」と書かれています。

寝るときは、脚を約10cm上げる

脚の上げ方について、皮膚科学会のガイドラインは具体的です。

「就寝時は下腿を約10cm挙上する(例えば,座布団のようにある程度広さのあるものを2枚程度下腿の下全体に敷く)」

ポイントは、かかとだけを高くするのではなく、ふくらはぎから足先まで全体を支えることです。一点で支えると、そこに圧が集中します。

膝の痛みで歩くのがつらい方は、変形性膝関節症——痛みと、これからの歩き方もあわせてどうぞ。歩くことは、膝にも静脈にも、ガイドラインが勧める数少ない共通の対策です。

14. 🚨 受診の目安と相談先

静脈瘤は急ぐ病気ではありません。ただし、次のようなときは受診してください。

🚨 すぐに受診・救急要請が必要な症状

片脚だけが急に腫れて痛む・赤い——深部静脈血栓症の可能性があります。当日中に受診してください。

胸の痛み、息苦しさ——肺血栓塞栓症の可能性があります。ただちに救急要請してください。

どこに相談すればいいか

静脈瘤の診断と治療は、血管外科・心臓血管外科が中心です。学会のパンフレットも、診察結果に疑問があれば、かかりつけの医師や血管外科・心臓血管外科の医師に相談するよう勧めています。皮膚の黒ずみ・湿疹・潰瘍は皮膚科でも診ます。むくみの原因がはっきりしないときは、まず内科で全身の病気がないかを確かめるのが近道です。

医療機関での説明や対応について相談したいときは、都道府県等が設置している医療安全支援センターが窓口です。着圧衣類などの商品トラブルは、消費者ホットライン「188(いやや!)」から地域の消費生活センターにつながります。

最後に、この記事の要点をもう一度。

下肢静脈瘤は良性の病気。症状が出てからの手術で十分に間に合います

手術が必要なのは弁の逆流・一定以上の太さ・症状の3つがそろったとき。「太いから」「隠れ静脈瘤だから」「血栓予防に」は理由になりません

症状がなければ、ストッキングも原則いりません

症状があるなら、医療機器の弾性ストッキングを低めの圧で。強い圧は必要ありません

むくみは静脈だけではありません。片脚だけの急な腫れ、息切れを伴うむくみは受診を

15. よくある質問

下肢静脈瘤と言われ、手術を勧められました。受けたほうがいいですか?

まず、手術が必要な条件を確認してください。日本静脈学会のパンフレットは「手術が必要な下肢静脈瘤は、①静脈の逆流防止弁の異常があり、②静脈の太さが一定以上あり、なおかつ③症状がある場合です」と書いています。3つがそろってはじめて手術の対象です。症状がなければ「下肢静脈瘤は基本的に症状がなければ手術は必要ありません」とされています。学会は、治療の必要がない人への手術を「不適切治療」とする声明を2020年に出しています。パンフレットは、次のように言われた場合にはセカンドオピニオンを求めるよう勧めています。「すぐに手術が必要」「血管が太いので手術が必要」「隠れ静脈瘤」「放っておくと、取り返しがつかないことになる」「血栓が飛びやすい」と言われた、超音波検査の時間が短い(通常15分以上)、一本の足に何度も手術を勧められた、自費の手術を勧められた——の8つです。できれば診察には誰かに同行してもらい、その場で手術を決めないこと。疑問があれば、かかりつけ医や血管外科・心臓血管外科の医師に相談してください。なお学会は、不適切治療を行っているのはごく一部の医師や医療機関だとも明記しています。

静脈瘤があると、血栓が飛んでエコノミークラス症候群になるのですか?

日本静脈学会のパンフレットは、「下肢静脈瘤は血栓(血のかたまり)ができて心臓や脳が詰まってしまう」という話について、「これは間違いです」と書いています。エコノミークラス症候群は、脚の深いところにある静脈(深部静脈)にできた血栓が肺の血管に飛ぶ病気です。下肢静脈瘤は浅いところにある静脈の病気なので、直接の関係はありません。そのため、エコノミークラス症候群を予防する目的で下肢静脈瘤の手術をすることはありません。学会のガイドライン追補も、深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症を予防するために静脈瘤の侵襲的治療を行うというエビデンスはないとしています。ただし、静脈瘤のある人に深部静脈血栓症が起きることがないわけではありません。片脚が急に腫れて痛む、赤くなる、胸が痛い、息が苦しいといった症状は、静脈瘤とは別に、急いで受診が必要なサインです。

症状はありませんが、見た目が気になります。ストッキングで悪化を防げますか?

静脈疾患における圧迫療法ガイドライン2025は、この点を正面から扱っています。結論は「下肢静脈瘤患者において無症候性の場合には、圧迫療法を原則的に施行しない」です。理由は、弾性ストッキングで症状は軽くなるものの、静脈瘤の進行を防ぐという根拠が乏しいためです。システマティックレビューでは、弾性ストッキングが静脈瘤の進行を抑制し再発を防ぐ効果は認められませんでした。妊婦を対象にした試験でも、静脈瘤の出現予防には効果がありませんでした。欧州でも、症状の乏しい静脈瘤の進行予防や、立ち仕事の人・妊婦の発症予防を目的にした着用は推奨されていません。一方で、発汗・かゆみ・皮膚の乾燥・圧迫感などの不快な面や、生活の質の低下はあります。ガイドラインは、それでも希望する場合は十分に理解したうえで行う、としています。見た目そのものが気になる場合は、そのことを血管外科などの専門医に相談してください。

夕方の脚のむくみに、市販の着圧ソックスを使っても大丈夫ですか?

まず、そのむくみが静脈によるものかを確かめることが先です。静脈によるむくみは午後から夕方に強くなり、寝ている間に軽くなるのが特徴ですが、心不全・腎不全・薬の副作用などでもむくみは起こります。そのうえで、圧迫療法ガイドライン2025は、圧迫療法には医療機器である弾性ストッキングの使用を推奨しています。医療機器は性能と安全性がメーカーによって担保され、使用目的・使用方法・警告・禁忌が添付文書に明記されているからです。国民生活センターが2011年に市販の加圧スパッツ10銘柄を調べたところ、部位によって医療用の弾性ストッキングと同等以上の圧がかかっていました。しゃがんだ姿勢では膝の圧が立った姿勢の3.1〜6.3倍になり、着用中の腓骨神経麻痺の相談も寄せられていました。むくみの軽減には強い圧は必要なく、ガイドラインが引くメタ解析では10〜20mmHgの低い圧でもむくみは有意に減り、それより強い圧と差はありませんでした。パッケージに「一般医療機器」と医療機器届出番号があるものを、足首などを測って正しいサイズで選んでください。糖尿病の方や足に感覚の障害がある方は、使う前に医師に相談してください。

ストッキングは、寝るときに履いたほうがいいのですか?

今回確認した学会のガイドラインに、就寝中の着用を勧める記載はありません。日本皮膚科学会の下腿潰瘍・下肢静脈瘤診療ガイドラインは、使い方として「朝起床時すぐに弾性包帯か弾性ストッキングを装着し,就寝前まで続け,就寝時は下腿を約10cm挙上する」と書いています。脚の静脈の圧は立っているときに高く、横になると大きく下がります。静脈によるむくみが寝ている間に軽くなるのはそのためです。圧迫は脚が下がっている日中に、そして夜は脚を少し高くする、というのが基本の考え方です。挙上の方法について、同じガイドラインは「例えば,座布団のようにある程度広さのあるものを2枚程度下腿の下全体に敷く」と具体的に書いています。医師から別の指示を受けている場合は、その指示に従ってください。

参考にした主な資料

なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した推奨・数値・注意点は、日本静脈学会「静脈疾患における圧迫療法ガイドライン2025」、同学会の「下肢静脈瘤血管内焼灼術の不適切治療に対する声明」(令和2年1月10日)とパンフレット「あなたにその手術、本当に必要ですか?」、同学会ガイドライン委員会の不適切治療症例に関する追補、日本皮膚科学会「下腿潰瘍・下肢静脈瘤診療ガイドライン(第3版)」、国民生活センターの2011年4月8日報道発表にもとづくもので、公開時点の情報です。手術の適応は、超音波検査を含む医師の診察で判断されます。むくみには静脈以外の病気が隠れていることがあります。片脚だけの急な腫れや痛み、胸の痛みや息苦しさがある場合は、ただちに医療機関を受診するか救急要請してください。弾性ストッキングは、糖尿病・足の感覚障害・足の動脈の病気・心不全のある方では使用前に医師にご相談ください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。