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からだの変化

潰瘍性大腸炎とクローン病(炎症性腸疾患)
——下痢・血便・腹痛が続いたら受診を。落ち着いても治療を続け、市販の痛み止めは相談してから

下痢や血便がなかなか治まらない。お腹の痛みと体重減少が続いている。子どもや家族が潰瘍性大腸炎・クローン病と診断された——そんな方に向けた記事です。
日本消化器病学会の患者さん向けガイドによると、炎症性腸疾患(IBD)は狭い意味では潰瘍性大腸炎とクローン病のことで、若い人に発症することが多く、日本では1990年代以降に急増しています。潰瘍性大腸炎は20万人、クローン病は7万人を超えるとされています。
悪い時期(再燃期)と落ち着いている時期(寛解期)を繰り返すのが特徴ですが、有効な薬が数多く出てきて、症状をコントロールできる患者さんが多くなっています。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年10月25日 読了:約9分

1. 先に結論

よくある思い込み資料の記述
症状がなくなったら薬はやめていい寛解のときでも再燃しないように治療を続けることが大切。飲み忘れや自己判断の中断は再燃の原因になる
食事は厳しく制限しないといけない一般的に生活面で過度な制限をする必要はない。症状が落ち着いていれば、潰瘍性大腸炎には食事はほとんど影響しない
IBDだと仕事や運動は無理寛解期では就学・就労は健康な人と変わりなく可能。病状が落ち着いていれば適度な運動も行ってよい
IBDの人は妊娠・出産をあきらめるべき妊娠・出産は可能。寛解期の妊娠が望ましく、IBDの薬のほとんどは妊娠・出産・授乳の時期も続けられる

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

下痢・血便・腹痛・体重減少・発熱が続くときは、医療機関で早めに診断を受けてください。IBDと言われたら、症状が落ち着いても治療を続けること、市販の痛み止めやかぜ薬は主治医に相談してから、クローン病では禁煙が大切です。

2. 炎症性腸疾患とは

3.【核心】潰瘍性大腸炎とクローン病の違い

潰瘍性大腸炎とクローン病の違い 日本消化器病学会「患者さんとご家族のための炎症性腸疾患(IBD)ガイド2023」をもとに整理 潰瘍性大腸炎(20万人超) ・原則として大腸にだけ起こる ・血便(粘血便)や下痢が多い ・すぐトイレに行かないと  間に合わない(便意切迫感) ・軽症が60%以上 ・治療の中心は5-ASA製剤 ・長期の人は大腸がんに注意  →定期的な内視鏡検査 クローン病(7万人超) ・口から肛門まで、消化管の  どこにでも(とくに小腸と大腸) ・下痢、腹痛が多い。発熱、  体重減少、貧血も ・肛門の「痔ろう」を伴いやすい ・狭窄や瘻孔などの合併症を  できるだけ防ぐことが大切 ・喫煙は入院や手術のリスクに 出典:日本消化器病学会「患者さんとご家族のための炎症性腸疾患(IBD)ガイド2023」をもとに作図

どちらの病気でも、発熱やだるさ、口内炎、目や皮膚の炎症、関節の痛みなど、腸以外の症状が出ることがあります。

4. 検査

同じように下痢や便秘が続く病気でも、腸に炎症がない過敏性腸症候群については過敏性腸症候群(IBS)の記事で書いています。

5. 治療

病気治療(資料の記述)
潰瘍性大腸炎中心は5-ASA製剤(ほとんどの患者さんが服用)。効果が不十分ならステロイド(期間を限定)。ステロイドを減らすと悪化する場合は免疫調節薬。さらに免疫抑制薬、生物学的製剤(抗TNF-α抗体薬など)、血球成分除去療法、JAK阻害薬など。内科治療で十分に良くならなければ手術(全大腸の摘出)
クローン病栄養療法(脂質の多い食事を避ける、成分栄養剤)は補助的。中心は薬物療法(5-ASA製剤、ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤の注射など)。高度な狭窄や瘻孔があれば手術。手術後も再燃を防ぐ治療を続ける

6. 落ち着いても治療を続ける理由

「症状がない寛解期でも、きちんと治療を続けることによって再燃を予防し、長期にわたって寛解を維持することを目指します。」(日本消化器病学会「患者さんとご家族のための炎症性腸疾患(IBD)ガイド2023」Q7)

7. 食事と日常生活、仕事と運動

時期資料の記述
症状がある(活動期)十分な睡眠・休養。低脂肪・低残渣で刺激物の少ない食事。消化のよくない繊維質の多い食品、脂肪や油の多い食品、香辛料、アルコールは避けたほうがよい
落ち着いている(寛解期)ストレスや疲労をため過ぎない、暴飲暴食をしない。潰瘍性大腸炎には食事はほとんど影響しない。クローン病は脂質を制限したほうがよいが、強い制限は不要
クローン病で腸が細い不溶性食物繊維(きのこ類、ごぼう、れんこん、こんにゃく、もやしなど)が詰まることがあるので避けたほうがよい

寛解期には、就学や就労は健康な人と変わりなく行うことが可能です。学校や職場には、定期的な通院が必要なことなどを前もって伝えておくとよいとされています。働きづらさがある場合は、両立支援制度や難病相談支援センターなどに相談できます。病状が落ち着いていて、貧血や栄養状態の悪化がなければ適度な運動も行ってよく、プロスポーツ選手やオリンピックメダリストにも患者さんがいるとされています。

8. 妊娠・出産

9.【内科医の視点】市販の痛み止めとタバコに注意

内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。資料は、頭痛や生理痛の痛み止めや、解熱作用のあるかぜ薬が原因で再燃する場合もあるとし、これらを続けて飲む必要がある場合は主治医に相談するよう勧めています。診断の際にも、解熱鎮痛薬などでIBDに似た腸炎が起こることがあるとされています。痛み止めと胃の関係については胃潰瘍とピロリ菌の記事でも書いています。

もう一つはタバコです。資料によると、クローン病では喫煙が入院や手術のリスクを高めることがわかっており、また治療効果を弱め、再燃の原因になるといわれています。

「なお、クローン病では喫煙が入院や手術のリスクを高めることがわかっており、禁煙が強く勧められます。」(日本消化器病学会「患者さんとご家族のための炎症性腸疾患(IBD)ガイド2023」Q4)

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この章で扱った禁煙を手助けする市販薬です。日本消化器病学会の患者さん向けガイドは、「クローン病では喫煙が入院や手術のリスクを高めることがわかっており、禁煙が強く勧められます。」としています。この市販薬は、資料に名前の出ている製品ではありません。

※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。ここで紹介しているのは、ニコチンを皮膚から補う禁煙補助薬ニコチネル パッチ20(第1類医薬品・販売元 佐藤製薬)です。添付文書に書かれた使い道(効能)は、禁煙時のイライラ・集中困難・落ち着かないなどの症状の緩和で、炎症性腸疾患の治療薬ではありません。購入時には薬剤師による確認があります。添付文書では、妊娠中・授乳中の人、3か月以内に心筋梗塞を起こした人、重い狭心症や重い不整脈と診断された人、急性期の脳梗塞・脳出血と診断された人、うつ病と診断されたことのある人などは使用しないこととされています。使い方は、最初の6週間はパッチ20、次の2週間はパッチ10を1日1枚で、連続して8週間を超えて使用しないこととされています。使用中の喫煙はしないでください。IBDで治療中の方は、使う前に主治医または薬剤師に相談するか、禁煙外来を利用してください。

10. 受診したいとき

医療機関を受診したいとき

・下痢、血便、腹痛、体重減少、発熱などが続く

・すぐトイレに行かないと間に合わない、便が出たあとも残便感が続く

・肛門のまわりから膿が出る、痛む(痔ろう)

主治医に相談したいとき(IBDと診断されている方)

・症状が落ち着いて、薬をやめたいと思った(自己判断で中断しない)

・痛み止めやかぜ薬を続けて飲む必要がある

・薬の飲み忘れが多い

・妊娠・出産を考えている、妊娠がわかった

最後に、この記事の要点をもう一度。

① IBDは潰瘍性大腸炎(20万人超)とクローン病(7万人超)。若い人に多い

② 潰瘍性大腸炎は大腸だけで血便・下痢、クローン病は消化管のどこにでも起こり下痢・腹痛・痔ろう

③ 薬の進歩で多くの人が症状をコントロールできる。落ち着いても治療を続ける

④ 市販の痛み止めやかぜ薬で再燃することがある。クローン病は禁煙が強く勧められる

⑤ 寛解期は仕事も運動も可能。妊娠・出産もできる(寛解期が望ましい)

11. よくある質問

潰瘍性大腸炎とクローン病はどう違いますか?

日本消化器病学会の患者さん向けガイドによると、潰瘍性大腸炎は原則として大腸にだけ起こり、血便や下痢が多いのが特徴です。クローン病は口から肛門まで消化管のどこにでも起こり(とくに小腸と大腸)、下痢や腹痛が多く、肛門の痔ろうを伴うことがよくあります。

症状が落ち着いたら薬をやめてもいいですか?

日本消化器病学会の患者さん向けガイドによると、症状がない寛解期でもきちんと治療を続けることで再燃を予防し、寛解を長く維持することを目指します。薬の飲み忘れや自己判断での中断は再燃の原因になることがわかっているため、一般的に薬は長期間続けることになるとされています。

市販の痛み止めを飲んでも大丈夫ですか?

日本消化器病学会の患者さん向けガイドによると、頭痛や生理痛の痛み止めや、解熱作用のあるかぜ薬が原因で再燃する場合もあるため、これらを続けて飲む必要がある場合は主治医に相談するよう勧められています。

食事はどうすればいいですか?

日本消化器病学会の患者さん向けガイドによると、症状があるときは低脂肪・低残渣で刺激物の少ない食事を心がけ、繊維質の多い食品や脂肪の多い食品、香辛料、アルコールは避けたほうがよいとされています。症状が落ち着いていれば、潰瘍性大腸炎には食事はほとんど影響せず、一般的に過度な制限は必要ありません。

IBDでも妊娠・出産はできますか?

日本消化器病学会の患者さん向けガイドによると、IBDの治療を続けながらでも妊娠・出産は可能です。妊娠は病気が落ち着いている寛解期が望ましく、IBDの薬のほとんどは妊娠・出産・授乳の時期も続けられるため、自己判断で中断しないよう勧められています。妊娠を考えたら早めに主治医に相談してください。

参考にした主な資料

凪
なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した内容は、日本消化器病学会の患者さん向けガイドにもとづくもので、公開時点の情報です。治療薬は病状によって異なるため、自己判断でやめたり変えたりせず、主治医と相談してください。下痢や血便、腹痛が続く場合は、早めに受診してください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。