1. 先に結論
| よくある思い込み | ガイドラインの記述 |
|---|---|
| 頭痛くらいで受診するのは大げさ | 片頭痛の人の7割以上が受診歴なし。病院には発作を減らす予防の薬があります |
| 効かなくなってきたから、薬を増やす | 鎮痛薬の使いすぎは頭痛そのものを増やし、慢性化させます |
| 市販薬なら、いくら飲んでも大丈夫 | 複合鎮痛薬は月10日以上、単一成分でも月15日以上で「薬剤の使用過多による頭痛」 |
| やめたら頭痛がひどくなるから、やめられない | 離脱の頭痛は通常2〜10日。治療で約70%が改善します |
| 片頭痛でも、ピルは普通に飲める | 前兆のある片頭痛では、エストロゲンを含む経口避妊薬は原則禁忌 |
| サプリで片頭痛が予防できる | 評価は「弱い推奨」。試験の量は多く、マグネシウムには上限量があります |
| 天気のせいだから、しかたない | 誘因は人によって違います。まず頭痛ダイアリーで自分の誘因を確かめる |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
カレンダーに、頭痛薬を飲んだ日に印をつけてみてください。1か月で10日に近づいていたら、それは薬を増やすタイミングではなく、受診するタイミングです。
2. 30〜40代女性の5人に1人——そして7割は受診していない
ガイドラインが引く全国調査(15歳以上)では、日本の片頭痛の年間有病率は8.4%でした。性別・年代別に見ると、最も多い30代女性では約20%、40代女性でも約18%に達します。鳥取県大山町の調査でも、30代女性17.7%、40代女性18.4%と、ほぼ同じ数字が出ています。
多いのに、医療につながっていない。これが片頭痛の現状です。
ガイドラインは、片頭痛による生活への影響も数字で示しています。「京都頭痛宣言」では、片頭痛発作によって毎日60万人の日本人が苦痛を感じ、頭痛による生産性の低下で毎年2,880億円の経済的損失があると発表されました。
それにもかかわらず、ガイドラインは「頭痛医療は十分に普及していない」と書きます。そして市販薬の指導に関する項目では、はっきりこう述べています。
「7割以上の片頭痛患者および緊張型頭痛患者は頭痛での受診歴がないとされる.半数以上の片頭痛患者および緊張型頭痛患者は受診経験もなくOTC医薬品のみで対処している」
OTC医薬品とは、市販薬のことです。「頭痛くらいで受診するのは大げさ」——その感覚が、この数字の背景にあります。ですが片頭痛は、ガイドラインがまるごと一章を割いている病気です。
3. 片頭痛か、緊張型頭痛か
頭痛の多くは、原因となる病気がない「一次性頭痛」です。その代表が片頭痛と緊張型頭痛で、日本の緊張型頭痛の年間有病率は22.4%と、一次性頭痛のなかで最も多いとされています。
見分けるうえで役に立つのが、日本のプライマリケア向けに開発された、患者さん自身が記入する4項目の簡易質問票です。評価に使われるのは次の4つです。
片頭痛を疑う4つの手がかり(日本で開発された片頭痛の簡易スクリーナーの評価項目)
① 階段の上り下りなど、日常の動作で頭痛が悪化する
② 頭痛のときに吐き気がする
③ 頭痛のときに光がまぶしく、つらい
④ 頭痛のときににおいがつらい
とくににおいは特徴的です。ガイドラインが紹介する研究では、においによって頭痛や吐き気が誘発されるのは片頭痛の患者だけで確認され、「においによる頭痛誘発は片頭痛に非常に特異的」と報告されています。
| 片頭痛 | 緊張型頭痛 | |
|---|---|---|
| 多さ | 年間有病率 8.4%。30〜40代女性に多い | 年間有病率 22.4%。一次性頭痛で最多 |
| 動くと | 悪化する(寝込みたくなる) | あまり変わらない |
| 一緒に出る症状 | 吐き気、光や音やにおいがつらい | 目立たないことが多い |
| 誘因 | ストレス、月経、空腹、天候、睡眠の乱れなど | ガイドラインは「危険因子や誘因に確定されたものはない」 |
ただし、両方をもっている人も少なくありません。どちらか迷うときほど、後で紹介する頭痛ダイアリーが役立ちます。ガイドラインも、頭痛日数が多い患者ではダイアリーによって片頭痛と緊張型頭痛の区別がつきやすくなるとしています。
4.【核心】頭痛薬で、頭痛が増える
この記事でいちばん知っていただきたいのが、この章です。
頭痛薬を頻繁に飲み続けていると、それまでの頭痛が悪化したり、新しいタイプの頭痛が出たりすることがあります。これを「薬剤の使用過多による頭痛」(以前の名前は薬物乱用頭痛)といいます。乱用という言葉が付いていますが、ほとんどは「つらいから、まじめに薬を飲んできた人」に起きるものです。
何日飲んだら「使いすぎ」なのか
市販の頭痛薬には複合剤が多いため、「月10日」を目安にしてください。
ガイドラインは、市販薬について次のように注意を促しています。
「OTC医薬品は鎮痛効果をより高めるため,カフェインなどの補剤が一緒に配合されている複合剤が多いことに留意する.複合鎮痛薬によるMOHは15日以上ではなく10日以上の服用で診断される」
MOHは、薬剤の使用過多による頭痛の略称です。そして、次の一文が重要です。
「3ヵ月を超えて頭痛が1ヵ月のうち15日以上存在する人々の半数以上はMOHである.また,片頭痛慢性化の最も一般的な原因は薬剤の使用過多であり」
毎日のように頭が痛い人の半分以上は、薬が頭痛を増やしている——ということです。
誰に起きているのか
海外の調査では、薬剤の使用過多による頭痛の有病率は人口の約1〜2%で、40〜50代に多く、女性が7割以上を占めます。日本の頭痛外来の報告では、頭痛患者2,742人のうち399人(14.6%)がこの頭痛で、そのうち332人(83.2%)が女性でした。
片頭痛そのものも、放っておくと悪化することがあります。ガイドラインによれば、反復性片頭痛の年間約3%が慢性片頭痛(月15日以上の頭痛が3か月を超えて続く状態)に移行します。慢性化の危険因子のうち、自分で変えられるものとして挙げられているのは、急性期治療薬の過剰な使用、カフェインのとりすぎ、肥満、いびき、ストレスの多い生活などです。肥満については、BMIが25〜29で慢性連日性頭痛のリスクが3倍、30以上で5倍という数字が示されています。
一方で、ガイドラインは明るい面も書いています。反復性片頭痛の多くは、年齢とともに改善していく傾向があります。米国の調査では、女性の片頭痛有病率は30代の38.1%から、60歳以降には6.4%まで下がっていました。つまり、今の時期を薬の使いすぎで慢性化させずに乗り切ることが大切なのです。
5. 市販の頭痛薬の箱を見てください
市販薬を使うこと自体は、悪いことではありません。ガイドラインは市販薬の指導について強い推奨を示しており、その内容はこうです。
「一次性頭痛で重症度,頻度および生活支障度が低いが苦痛がある場合はOTC医薬品による治療が可能である.OTC医薬品導入の際には,患者本人の頭痛に対する理解度を確認し,薬剤の選択法,薬剤量,服薬タイミングなどについて指導するとともに,MOHについて十分に説明することが必要である」
裏を返せば、重い・頻繁・生活に支障がある頭痛は、市販薬だけで対処する範囲を超えている、ということです。
ガイドラインには、市販の解熱鎮痛薬に使われている成分の一覧が載っています。解熱鎮痛成分のほかに、「鎮静催眠成分」としてアリルイソプロピルアセチル尿素、ブロモバレリル尿素(ガイドラインの表記はブロムワレリル尿素)、そして無水カフェインなどが並んでいます。一度、手元の頭痛薬の箱の成分表示を確かめてみてください。複数の成分が入っていれば複合剤で、使いすぎの目安は月10日です。
成分についての評価も書かれています。アスピリンやイブプロフェンは片頭痛・緊張型頭痛に有効と報告されている一方、アセトアミノフェン単独は2時間後の改善率が乏しく、ほかの薬が使えないときに考慮すべき、とされています。どの薬が合うかは人によって違うので、迷ったら薬剤師に相談してください。ガイドラインも、医療機関と保険薬局が連携して、市販薬の不適切な使用を防ぐ必要があると書いています。
市販薬で対処している方へ、3つの確認
① 頭痛薬を飲んだ日は、1か月に何日ありますか。10日に近づいていませんか
② 以前より効きが悪くなっていませんか。頭痛の日が増えていませんか
③ 「頭が痛くなりそう」と感じただけで、予防のつもりで飲んでいませんか
どれかに当てはまったら、薬を増やす前に受診を考えてください。
6. 抜け出し方——約70%が改善、ただし3割は再発
薬剤の使用過多による頭痛は、治療できる頭痛です。ガイドラインは治療の原則を3つにまとめています。
「MOHの治療の原則は,①原因薬剤の中止,②薬剤中止後に起こる頭痛への対処,③予防薬投与の3つである」「離脱方法は外来で,原因薬剤の中止が勧められる.単純なMOHでは適切な助言のみでも改善が見込まれるが,重症な例では入院を要する場合もある」
市販の鎮痛薬やトリプタンは重い離脱症状を起こさないため、すぐに中止するのが勧められる、とガイドラインは書いています。一方、鎮静作用のある一部の薬は少しずつ減らすのが最善とされていて、薬によってやめ方が違います。
やめた直後の数日がいちばんつらい時期です。頭痛、吐き気、睡眠障害などの離脱症状は通常2〜10日間続きます。その間の頭痛に使う別の薬を医師と相談しておくと、乗り切りやすくなります。
結果についても、はっきり書かれています。離脱療法によって1〜6か月で約70%が改善します。ただし4〜6年の経過で30%が再発し、その多くは1年以内です。だからこそ、次の章の頭痛ダイアリーで薬を飲んだ日を数え続けることが、再発を防ぐ鍵になります。
頭痛薬を急にやめるのは不安だと思います。自己判断で我慢するのではなく、頭痛外来や脳神経内科で「頭痛薬を飲む日が多くなっている」と伝えてください。それだけで、治療の入口に立てます。
7. 頭痛ダイアリー——ガイドラインの「強い推奨」
頭痛の治療で、誰でも今日から始められて、ガイドラインが強い推奨をしているものがあります。頭痛ダイアリー(頭痛日記)です。
「頭痛ダイアリーからは頭痛日数,服薬日数,治療効果など,頭痛診療を行ううえで多くの情報を得ることができる.また患者-医師間コミュニケーションの向上をはかる意味でも有用であり,問診と組み合わせて使用することが勧められる」(強い推奨・エビデンスの確実性B)
頭痛の日数や薬を飲んだ日数、月経との関係は、本人も正確には覚えていないものです。ガイドラインは記録する項目として、次のようなものを挙げています。
- 頭痛があった日と、痛みの強さ・続いた時間
- 頭痛の性質(ずきずき、締めつけられる など)
- 一緒に出た症状(吐き気、光や音がつらい など)
- 思い当たる誘因(睡眠、月経、天候、空腹 など)
- 飲んだ薬と、その日
- 生活への支障(仕事や家事ができたか)
専用の用紙がなくても、手帳やカレンダーで構いません。スマートフォンの頭痛記録アプリについても、ガイドラインは開発の報告があると触れています。2〜3か月分たまったら、それを持って受診してください。問診だけの場合よりも、診断の正確さが上がると書かれています。
8. 誘因を知る——ストレスから、空腹、天気まで
片頭痛の多くには、発作のきっかけ(誘因)があります。ガイドラインが紹介する1,207人の調査では、75.9%が何らかの誘因をもっていました。
上位2つは、ストレスと女性ホルモン。30〜40代女性に多い理由が見えてきます。
ガイドラインは誘因を5つに分類しています。
| 分類 | 誘因の例(ガイドラインより) |
|---|---|
| 精神的な因子 | ストレス、ストレスからの解放、疲れ、睡眠の過不足 |
| 体の内側の因子 | 月経周期 |
| 環境の因子 | 天候の変化、温度差、におい、音、光 |
| 生活の因子 | 運動、欠食、性的活動、旅行 |
| 食事の因子 | 空腹、脱水、アルコール、特定の食品 |
「ストレスからの解放」が入っていることに注目してください。平日は大丈夫なのに、週末や休みの初日に頭痛が来る——片頭痛ではよくある話です。寝だめ(睡眠の過剰)や、朝食を抜くこと(空腹)も重なりやすくなります。
ただし、ガイドラインは大切な注意を添えています。「集団で一般的とされる片頭痛の誘因が,必ずしも各患者個人の頭痛発作の誘因となっているわけではない」。チョコレートがだめ、天気がだめ、と一般論で自分を縛るより、ダイアリーで自分の誘因を見つけるほうが確実です。
もうひとつ、ガイドラインは甲状腺の病気と片頭痛の関連にも触れ、甲状腺機能の異常に一定の注意を払う必要があるとしています。疲れやすさや体重の変化を伴う場合は、甲状腺と女性の疲れもあわせて読んでみてください。
9.【女性へ】月経の頭痛と、低用量ピルの注意
月経の頭痛は、重くて長い
ガイドラインによれば、女性の片頭痛患者の約半数は、発作が月経周期に関係していると自覚しています。そして、この時期の発作はほかの時期より重く、長く続き、薬が効きにくいことが多いとされています。
月経との関係を確かめるには、3回の月経周期を含む頭痛ダイアリーが必要だとガイドラインは書いています(強い推奨・エビデンスの確実性A)。治療には、市販の鎮痛薬で効果がない場合にトリプタン(片頭痛の専用薬)が推奨され、月経の前後だけ予防的に薬を使う方法も選択肢に挙げられています。
「前兆のある片頭痛」の人は、ピルに注意
片頭痛には、頭痛の前に目の前にギザギザした光が見える(閃輝暗点)、視野の一部が見えにくくなるなどの「前兆」がある人と、ない人がいます。この違いが、低用量ピル(経口避妊薬)を使えるかどうかを分けます。
「前兆のある片頭痛では,エストロゲンを含有する経口避妊薬は原則禁忌である」(強い推奨・エビデンスの確実性A)
「前兆のない片頭痛では,エストロゲンを含有する経口避妊薬は禁忌ではないが,使用にあたり慎重な判断を要し,経過観察が必要である」(弱い推奨・エビデンスの確実性B)
理由は脳梗塞のリスクです。ガイドラインが引く2009年のメタアナリシスでは、脳梗塞の相対危険度は、前兆のある片頭痛で2.16、経口避妊薬を使用している女性の片頭痛患者で7.02、喫煙している片頭痛患者で9.03でした。一方、前兆のない片頭痛では、はっきりしたリスクの増加は認められていません。
ガイドラインは、45歳未満の女性の脳梗塞はもともとまれであることも付け加えています。怖がりすぎる必要はありません。ただ、ピルの処方を受けるときは、片頭痛があること、そして前兆があるかどうかを必ず医師に伝えてください。ピルは避妊だけでなく、月経痛などの治療で処方されることも多い薬です。そして片頭痛のある方にとって、喫煙は重ねてはいけないリスクです。
10. 病院の治療は、ここまで進んでいます
「病院に行っても、結局は痛み止めを出されるだけ」と思っている方もいるかもしれません。今のガイドラインが示す治療は、そうではありません。
発作を止める薬
片頭痛の発作には、アセトアミノフェンやNSAIDsのほかに、トリプタンという片頭痛専用の薬があります。ガイドラインは、日常生活に支障をきたす片頭痛発作にはトリプタンを使うことを推奨しています(弱い推奨)。複数のトリプタンがあり、1つで効果が得られなくても、別のトリプタンで効果が得られることがあります。
発作を減らす「予防の薬」
市販薬にはない選択肢が、予防療法です。毎日薬を飲むなどして、発作そのものの回数を減らします。ガイドラインは予防療法を検討する目安を次のように示しています。
「片頭痛発作が月に2回以上,あるいは生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある患者では予防療法の実施について検討してみることが勧められる」(弱い推奨・エビデンスの確実性B)
さらに、急性期治療薬の過剰な使用がある場合も予防療法が必要だとされています。薬剤の使用過多による頭痛の予防薬としては、バルプロ酸、プロプラノロール、アミトリプチリン、ロメリジンが選択肢に挙げられています。
そして近年、CGRP関連抗体薬という新しい予防薬が登場しました。片頭痛の仕組みに関わる物質を狙う注射薬で、ガイドラインは複数の大規模試験で安全性と有効性が実証されたとして強い推奨・エビデンスの確実性Aをつけています。既存の予防薬が効かなかった人にも有効性が確認されています。
月に何度も寝込んでいる方ほど、市販薬で乗り切る以外の道があることを知っておいてください。
11. サプリは「弱い推奨」——その中身
「薬ではなく、自然なもので予防したい」という方は多いと思います。ガイドラインは、この点についても評価を出しています。
「マグネシウム,ビタミンB2(リボフラビン),コエンザイムQ10,ナツシロギク,あるいはこれらの合剤は,ある程度の片頭痛予防効果を期待することができる.これらの薬剤の副作用には重篤なものはみられず,また安価であることから,片頭痛予防薬の選択肢として考慮してもよい」(弱い推奨・エビデンスの確実性C)
「期待できる」と書かれている一方で、推奨は弱く、エビデンスの確実性はCです。中身を見ておきましょう。
| 成分 | ガイドラインが紹介する試験 | 試験で使われた量 |
|---|---|---|
| マグネシウム | 成人のランダム化比較試験4報のうち3報で有効、1報で無効。バルプロ酸と同等だったという試験も | 1日500〜600mg |
| ビタミンB2 | 成人の試験は1報で有効。小児の3報は1報有効・2報無効で結果が分かれる | 1日400mg(成人) |
| コエンザイムQ10 | 単独の試験は小児・青年の2報で、1報有効・1報無効。ほかの成分との併用で有効とする試験あり | 1日100〜300mg |
| ナツシロギク | 5報のうち4報で有効 | 製剤により異なる |
| 合剤 | マグネシウム・ビタミンB2・コエンザイムQ10などの合剤で2報とも有効 | — |
使う前に知っておきたい3つのこと
① 試験の量と、市販のサプリの量は違うことが多い。効果が報告された量は、1日の推奨量よりずっと多めです。一方、日本の食事摂取基準では、サプリなど通常の食品以外からとるマグネシウムの耐容上限量は、成人で1日350mgとされています。とりすぎると下痢が起こりえ、腎臓の働きが落ちている方や高齢の方では高マグネシウム血症にも注意が必要です。
② ナツシロギク(フィーバーフュー)は、妊娠中は禁忌。ガイドラインは、子宮収縮を刺激する作用があるため妊娠中の女性には禁忌と明記しています。妊娠の可能性がある方は避けてください。
③ サプリは予防の選択肢の一つで、病院の治療の代わりではない。ガイドラインは、こうした方法を、薬物療法を望まない人や副作用で使えない人、妊娠の可能性がある人などの治療オプションと位置づけています。月に2回以上の発作がある方、市販薬を飲む日が増えている方は、まず受診を。
サプリ全般の選び方はサプリの選び方にまとめています。
12. 🚨 この頭痛は、すぐに受診を
ここまで書いてきたのは、原因となる病気のない「一次性頭痛」の話です。頭痛のなかには、くも膜下出血のように命に関わる頭痛もあります。ガイドラインは、救急外来での頭痛診断の項目で、危険な頭痛を疑うのは次のような発症や経過を示すときだとしています。
🚨 危険な頭痛を疑うサイン(頭痛の診療ガイドライン2021 CQI-3 より)
・5分以内に痛みが最も強くなる、突然の激しい頭痛
・50歳以上で初めて起きた頭痛、6か月以内に始まった頭痛
・今まで経験したことのない症状を伴う、いつもと様子が違う
・だんだん悪化している
・手足のしびれや麻痺、ろれつが回らないなど神経の症状がある
・発熱や発疹を伴う、頭をぶつけた後、血圧が高い
突然の激しい頭痛や、神経の症状を伴う場合は、ためらわず救急要請してください。
ガイドラインは、くも膜下出血の症例555人のうち76人(13.7%)で診断が24時間以上遅れていたという報告を紹介しています。「いつもの頭痛と違う」と感じたときは、その感覚を大切にしてください。
また、目の強い痛み・充血と一緒に頭痛や吐き気があるときは、急性緑内障発作の可能性があります(→目の健康ガイド)。
13. 受診のしかた——何を伝えればいいか
片頭痛は、頭痛外来や脳神経内科、脳神経外科で診てもらえます。まずはかかりつけの内科で相談しても構いません。
受診のときに、次のことを伝えられると診断と治療がぐっと早くなります。
- 頭痛が1か月に何日あるか
- 頭痛薬を1か月に何日飲んでいるか(市販薬の名前も)
- 吐き気、光・音・においへの過敏さがあるか
- 頭痛の前に前兆(目の前がちかちかするなど)があるか
- 月経との関係、低用量ピルを使っているかどうか
- 仕事や家事を休んだり、寝込んだりする日があるか
頭痛ダイアリーがあれば、それを見せるのがいちばん確実です。
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 片頭痛は30〜40代女性の5人に1人。そして7割以上が受診していない病気です
② 頭痛薬は、月10日(単一成分なら15日)を超えると、頭痛そのものを増やすことがあります
③ 使いすぎの頭痛は、治療で約70%が改善します。まず飲んだ日を数えることから
④ 前兆のある片頭痛の方は、エストロゲンを含む低用量ピルは原則禁忌。喫煙も重ねないで
⑤ 病院には発作を減らす予防の薬があります。サプリは「弱い推奨」の選択肢の一つです
頭痛のほかに、ほてりや不眠、気分の落ち込みなど40代からの体の変化が重なっている方は、40代からの体の変化 完全ガイドもあわせてどうぞ。睡眠の乱れは片頭痛の誘因にもなります(→睡眠の真実)。
14. よくある質問
市販の頭痛薬は、どのくらいまでなら飲んでいいのですか?
目安になるのは、頭痛がある日の数ではなく、薬を飲んだ日の数です。頭痛の診療ガイドライン2021によれば、薬剤の使用過多による頭痛は、単一成分の鎮痛薬なら1か月に15日以上、カフェインなどを配合した複合鎮痛薬なら1か月に10日以上の服用が3か月を超えて続いている場合に診断されます。市販の頭痛薬には複合剤が多いため、10日のほうを目安にしてください。ガイドラインは、市販薬で対処してよいのは頭痛の重症度・頻度・生活への支障が低い場合だとしています。飲む日が月10日に近づいてきた、以前より効きが悪くなった、頭痛の日が増えてきた——このどれかに当てはまれば、市販薬を増やすのではなく受診してください。片頭痛の人の7割以上は受診したことがありませんが、病院には発作を止める薬と、発作そのものを減らす予防の薬があります。
頭痛薬をやめたら、かえって頭痛がひどくなりました。
薬剤の使用過多による頭痛では、原因の薬をやめると、しばらく頭痛や吐き気などが強くなることがあります。ガイドラインによれば、こうした症状は通常2〜10日間続きます。ここが最もつらい時期ですが、治療の原則は①原因の薬をやめる、②やめた後の頭痛に対処する、③予防の薬を使う、の3つで、多くは外来で行えます。離脱療法によって1〜6か月で約70%が改善すると報告されています。ただし一人で我慢する必要はありません。やめた後の頭痛に使える別の薬や、予防の薬を組み合わせることができます。また、鎮静作用のある成分など一部の薬は急にやめずに少しずつ減らすべきものもあります。自己判断で続けたりやめたりせず、頭痛外来や脳神経内科で相談してください。なお、改善した後も約3割が1年以内に再発します。頭痛ダイアリーで薬を飲んだ日を数え続けることが再発予防になります。
片頭痛があっても、低用量ピルは飲めますか?
片頭痛のタイプによって答えが違います。頭痛の診療ガイドライン2021は、前兆のある片頭痛では、エストロゲンを含有する経口避妊薬は原則禁忌としています(強い推奨・エビデンスの確実性A)。前兆とは、頭痛の前に目の前がちかちかするなどの症状が現れるものです。理由は脳梗塞のリスクで、ガイドラインが引くメタアナリシスでは、経口避妊薬を使用している女性片頭痛患者の脳梗塞の相対危険度は7.02と報告されています。喫煙が加わると、さらにリスクが高まります。一方、前兆のない片頭痛では禁忌ではありませんが、慎重な判断と経過観察が必要とされています(弱い推奨・B)。ピルを処方される際は、片頭痛があること、そして前兆があるかどうかを必ず医師に伝えてください。すでに飲んでいて前兆に気づいた場合も、自己判断で続けずに相談してください。
マグネシウムやビタミンB2のサプリは、片頭痛の予防になりますか?
ガイドラインの評価は「ある程度の片頭痛予防効果を期待することができる」で、推奨の強さは弱い推奨・エビデンスの確実性Cです。副作用に重篤なものがなく、安価なので、選択肢として考慮してもよい、という位置づけです。ただし中身を知っておいてください。まず、試験で使われた量は多めです。マグネシウムは1日600mg、ビタミンB2は1日400mg、コエンザイムQ10は1日300mgといった量で効果が報告されています。一方、日本の食事摂取基準では、サプリなど通常の食品以外からとるマグネシウムの耐容上限量は成人で1日350mgとされ、とりすぎると下痢が起こりえます。腎臓の働きが落ちている方や高齢の方では、高マグネシウム血症にも注意が必要です。またナツシロギク(フィーバーフュー)は子宮収縮を刺激する作用があるため、妊娠中の女性には禁忌です。サプリは発作の回数を減らすかもしれない選択肢の一つであって、病院の予防薬の代わりになるものではありません。月に2回以上の発作がある方は、まず受診を。
天気が崩れると頭が痛くなります。片頭痛なのでしょうか?
天候の変化は、片頭痛の誘因としてよく知られています。1,207人の片頭痛患者の調査では、53.2%が天候を誘因に挙げていました。ガイドラインも、台風や低気圧、湿度などの気象の変化で頭痛が悪化することがあるとしています。ただし、書かれ方は「一部の片頭痛患者では」です。また、ガイドラインは誘因について「集団で一般的とされる片頭痛の誘因が、必ずしも各患者個人の頭痛発作の誘因となっているわけではない」とも注意しています。天気のせいだと思っていた頭痛が、実は睡眠不足や月経、欠食と重なっていた、ということも少なくありません。まずは頭痛ダイアリーで、頭痛の日と天気・睡眠・月経・食事を並べて記録してみてください。自分の誘因が分かると、対策が立てやすくなります。頭痛のたびに寝込む、吐き気がする、光や音がつらいといった特徴があれば、片頭痛の可能性があるので受診をおすすめします。
参考にした主な資料
- 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 監修、「頭痛の診療ガイドライン」作成委員会 編「頭痛の診療ガイドライン2021」医学書院, 2021(有病率、受診と市販薬の状況、市販薬の指導、薬剤の使用過多による頭痛の診断基準・疫学・治療と予後、誘発因子、自然史、月経時片頭痛、経口避妊薬と脳梗塞、予防療法の適応、サプリメントの評価、危険な頭痛のサイン、頭痛ダイアリー)
- 日本頭痛学会「頭痛ガイドライン」
- 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「「健康食品」の安全性・有効性情報 マグネシウム」(通常の食品以外からの摂取の耐容上限量 成人350mg/日、過剰摂取の注意。日本人の食事摂取基準にもとづく)