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MEDICALLY REVIEWED BEAUTY & HEALTH
からだの変化

睡眠の真実|子どもから高齢者まで、必要な時間と
「睡眠薬・睡眠サプリ」の本当の評価

小学生は9〜12時間、中高生は8〜10時間、成人は6時間以上、高齢者は布団にいる時間を8時間未満に——同じ「睡眠」でも、年代によって正解はまるで違います。
そして、いちばんお伝えしたいのはここです。「睡眠サプリ」と「市販の睡眠改善薬」には、日本の診療ガイドラインが正式に「推奨されない」という評価を下しています。一方で、それよりはるかに高い評価を受けている、薬を使わない治療法があります。あまり知られていません。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年8月7日 読了:約20分

1. 先に結論

長い記事なので、先に要点をまとめます。

論点 この記事で言えること
必要な睡眠時間 年代でまったく違います。小学生9〜12時間/中高生8〜10時間/成人6時間以上(おおよそ6〜8時間)/高齢者は床上時間8時間未満が目安
日本の実状 20歳以上で推奨範囲に収まっているのは56.0%。日本人の平均睡眠時間はOECD調査33か国中最短
高齢期の変化 短い睡眠より長い睡眠のほうがリスクが強く出ます。7時間未満で死亡リスク1.07倍、8時間以上で1.33倍
カフェイン 1日400mg(コーヒー700cc程度)を超えると影響。107mgでも就寝9時間前の摂取が夜の睡眠に影響したという系統的レビューがあります
寝酒 診療ガイドラインの推奨グレードはD(行わないよう勧められる)。原文は「百害あって一利なし
市販の睡眠改善薬 不眠症への使用は推奨グレードC2=推奨されない。「一時的な不眠」限定
睡眠サプリ 推奨グレードC2=推奨されない。「有効性が検証されているものはごく少なく、安全性の検証はほとんど行われていない」
いちばん評価が高いもの 認知行動療法(CBT-I)=推奨グレードA。「入眠困難の改善に関しては薬物療法よりも効果が高い」
この記事でいちばん伝えたいこと

眠れない夜に、ドラッグストアの棚を見て「これで少しでも楽になるなら」と手を伸ばす——その気持ちは、とてもよく分かります。
ただ、そこに払うお金と時間の一部を、別のところに回したほうが、確実に効きます。この記事では、それがどこなのかを、日本の診療ガイドラインが実際に付けた評価(推奨グレード)という共通のものさしで並べてお見せします。
宣伝ではなく、専門家集団が公式に何と書いたか。それだけを判断材料にしてください。

2. 何時間眠ればいいのか——年代別の「理想」

まず「理想」から。ここが、いちばん誤解されているところです。

厚生労働省の推奨

2024年2月に公表された厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、成人・こども・高齢者の3つに分けて推奨を示しました。年代別に分けた形は、このガイドが初めてです。

年代別の推奨睡眠時間(1日あたり) 1〜2歳 11〜14時間 3〜5歳 10〜13時間 小学生 9〜12時間 中学・高校生 8〜10時間 成人 おおよそ6〜8時間(最低6時間) 高齢者 床上時間が8時間以上にならないように ※こどもの数値は米国睡眠医学会の推奨。個人差があり、日中の眠気を目安に調整します ※高齢者は「1週間の平均睡眠時間+30分程度」が床上時間の目安
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(令和6年2月)の推奨事項より作成。

子どもは「思っているより長い」

小学生に9〜12時間。この数字を見て、驚かれた方も多いはずです。9時間ということは、朝6時半に起きるなら夜9時半には眠っている必要があります。

ガイドは、この点をわざわざ注記しています。

「成長・加齢とともに必要な睡眠時間は減少していきますが、成長期である高校生までは成人よりも長い睡眠時間を必要とすることがわかっており、一般的な認識よりも長い睡眠時間であることに驚くかもしれません。そのため、毎日十分な睡眠時間を確保するためには、成人よりも規則正しい生活習慣を保つことがより重要であることがわかります」

——健康づくりのための睡眠ガイド2023 こども版

子どもの睡眠不足については、肥満のリスクが高くなること、抑うつ傾向が強くなること、学業成績が低下すること、幸福感や生活の質が低下することが報告されています。

「勉強のために睡眠を削る」については、ガイドがQ&Aで直接答えています。良質な睡眠を適切な時間確保することで集中力が増し学習効率が向上すること、さらに睡眠は学習した内容を強固にする役割も果たすため、睡眠時間を確保するほうが学習内容が定着しやすくなる、と。削った1時間は、たいてい割に合いません。

大人は「6時間以上」、ただし個人差が大きい

成人については、おおよそ6〜8時間が適正で、少なくとも6時間以上の確保に努めることが推奨されています。

ただし、ガイドは個人差を強調しています。6時間未満でも足りる人もいれば、8時間以上必要な人もいる。米国の共同声明では7〜9時間を核としつつ、6時間から10時間までを許容範囲としています。ガイドの言葉を借りれば「日中の眠気や睡眠休養感に応じて、各個人に必要な睡眠時間を自ら探る必要があります」。

短すぎる睡眠のリスクは、はっきりしています。

一方で、長すぎる睡眠もリスクを増やします。複数の調査で、7時間前後の人が生活習慣病・うつ病の発症や死亡に至るリスクが最も低いという結果が繰り返し出ています。「長ければ長いほどよい」ではないのです。

3. では、実際はどうか——日本の「実状」

ここからが「実状」です。理想とのギャップを見てください。

日本の実状(令和6年 国民健康・栄養調査/20歳以上) 睡眠時間が推奨範囲(6時間以上9時間未満)に収まる人 56.0% ← 4割以上が範囲外 睡眠で休養がとれている人 全体 79.6% 20〜59歳 73.0% 60歳以上 86.1% ※60歳以上の推奨範囲は「6時間以上8時間未満」。健康日本21(第三次)の目標は80%
厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」より作成。全国補正値。

読み取れることを整理します。

さらに、国際比較のデータもあります。睡眠ガイド2023は「令和3年のOECD(経済協力開発機構)の調査報告でも、日本人の平均睡眠時間は調査対象33カ国の中で最も短かった」と記しています。

令和元年の調査では、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人は男性37.5%、女性40.6%。男性の30〜50歳代、女性の40〜50歳代では4割以上を占めていました。総務省の社会生活基本調査(令和3年)では、10歳以上の週全体平均は7時間54分です。

数字の読み方

ここで一つ注意です。「みんな短いのだから、自分も大丈夫」ではありません。日本人の平均が短いというのは、国全体が推奨から外れているということであって、その平均に合わせることが健康的だという意味ではありません。
比べる相手は周りの人ではなく、自分の日中の状態です。日中に強い眠気があるか、朝起きたときに休まった感じがあるか——それがいちばん確かな指標です。

4. 【核心】眠りは、年齢とともに変わっていく

ここが、この記事の芯です。

「昔と同じように眠れない」は、異常ではありません

多くの方が、20代の頃の眠りを基準にして「眠れなくなった」と悩まれます。でも、眠りは年齢とともに変わるのが正常です。

変化には、大きく2つの流れがあります。

変化何が起きているか
必要な睡眠時間が減る 成長期を過ぎると、生理的に必要な睡眠時間は少しずつ減っていきます。これは体の要求量が減るということで、悪いことではありません
体内時計のメリハリが弱まる 睡眠・覚醒リズムを司る体内時計に加齢性の変化が起こり、昼夜のメリハリが低下します。その結果、日中の活動量が減り、昼寝が増え、夜の眠りが浅くなる——という連鎖が起きます

この2つが重なると、「寝つきに時間がかかる」「途中で目が覚める」「早朝に目が覚める」が起こりやすくなります。睡眠ガイドは、長く寝ようとしても「長寝をしても、実際に身体が眠れる時間が増えるわけではなく、むしろ入眠に時間がかかり、途中で目が覚めやすくなり、睡眠の効率が低下します」と説明しています。

思春期には、逆の変化が起こります

一方、若い世代には別の変化があります。ガイドはこう記しています——思春期が始まる頃から睡眠・覚醒リズムが後退し、睡眠を導くホルモン(メラトニン)の分泌開始時刻が遅れることで、夜寝る時刻が遅くなり、朝起きるのが難しくなる傾向がみられる

つまり、中高生の「夜更かし・朝寝坊」には、生理的な裏づけがあります。怠けているわけではありません。そこに部活・勉強・友人づきあい・スマートフォンが重なるので、睡眠負債がたまりやすい。

ただし放置は危険です。この状態が長く続くと睡眠・覚醒相後退障害という睡眠障害に至ることがあり、朝起きられず登校が困難になります。ガイドによればこの障害の6割近くに起立性調節障害を合併すると報告されています。

「気合いが足りない」で片づけないでください。早めに医師に相談することが大切だと、ガイド自身が書いています。

ショートコラム:就寝時刻の先延ばし

ガイドには「就寝時刻の先延ばし」という項目があります。特段の理由がないのに、本来の就寝時刻を過ぎて夜更かししている状態のことです。動画が止められない、ゲームが終われない、SNSを見続けてしまう——心当たりのある方は多いと思います。

面白いのは、ガイドがこれを一方的に否定していないことです。

「他方で、就寝時刻の先延ばしをやめることは、余暇時間の減少をもたらす場合があります。適切な余暇活動が減ることは、ストレスの増加や抑うつにつながる可能性があるため、注意が必要です。就寝時刻付近の余暇時間を、日中に十分補えるように工夫すると良いでしょう」

——同ガイド こども版 ショートコラム

「自分の時間」を全部取り上げれば眠れる、という単純な話ではない。国のガイドがここまで書いているのは、誠実だと思います。夜に削るのではなく、昼のどこかに移す——これが現実的な着地点です。

5. 高齢期——「長く寝る」ことがリスクになる

高齢の方、そしてご家族に読んでいただきたい章です。ここは、常識がひっくり返る部分があります。

短い睡眠より、長い睡眠のほうが問題になる

睡眠ガイド2023の高齢者版は、こう始まります。

「成人では、短時間睡眠(睡眠不足)による健康への悪影響に注目されてきましたが、高齢世代においては、むしろ長時間睡眠による健康リスク(死亡リスク)の方がより強く表れることが、多くの調査結果をまとめて解析した研究で示されています。この研究では、7時間未満の短時間睡眠による将来の死亡リスクは1.07倍であるのに対し、8時間以上の長時間睡眠による将来の死亡リスクは1.33倍と著しく増加することが報告されています」

——同ガイド 高齢者版

さらに、大規模調査では9時間以上の長時間睡眠がアルツハイマー病の発症リスクを増加させることも報告されています。また、30分以上の昼寝を習慣にしている人は、昼寝習慣のない人と比べて将来の死亡リスクが1.27倍とされています。

大事なのは「睡眠時間」ではなく「床上時間」

65歳以上では、さらに重要な指摘があります。

65歳以上の高齢世代では、睡眠時間と総死亡率の関連は明確にならず、床上時間(布団の中にいる時間)が約8時間以上の場合に総死亡率が増加する——つまり、眠っている時間より、横になっている時間のほうが問題だということです。

米国の地域住民の調査では、65歳以上で床上時間が長く(8時間以上)、かつ睡眠休養感が欠如している場合に死亡リスクが増加することが示されました。しかも、2年以内に死期が迫っていてやむなく床上時間が増えた可能性のある人を除いても、同じ傾向だったとされています。

高齢の方への具体的な目安

「寝床で考えごとをするのは避けましょう」ともガイドは書いています。寝床は「眠る場所」であって「眠ろうと努力する場所」ではない——これは後述する認知行動療法の考え方そのものです。

認知症のあるご家族について

ガイドは「6〜7割の認知症患者が、睡眠の乱れで悩んでいるといわれています」と記しています。認知症では体内時計の機能変化がさらに進み、昼夜のメリハリが弱まり、活動パターンが完全に昼夜逆転してしまう人もいます。

対策として太陽光の活用、日中の運動習慣、社会的交流が挙げられていますが、「それでも困難な場合は医師に相談してください」と明記されています。ご家族だけで抱え込む問題ではありません。

6. 睡眠を妨げるもの——カフェイン・お酒・たばこ・光

ここからは実用的な話です。「日中の飲み物や習慣」について、数字で押さえます。

カフェイン——量とタイミングの両方が効く

睡眠ガイド2023のポイントは、こうです。

ここで大事なのが半減期という考え方です。日本人のカフェインの血中半減期は3〜7時間とばらつきがあります。仮に5時間として計算すると——

朝9時に400mg摂った場合、体内に残るカフェイン(半減期5時間で計算) 400mg 朝9時 200mg 14時 100mg 19時 50mg 深夜0時 ※コーヒー700cc(カップ4杯)で約400mg。半減期は個人差が大きく3〜7時間
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」睡眠と嗜好品についての記述をもとに作成。

そして、これが最も驚くところです。ガイドが引用している18〜65歳を対象とした系統的レビューによれば——

13時間前——夜11時に寝るなら、朝10時のコーヒーです。「夕方以降は控える」だけでは足りない可能性がある、ということになります。

対象注意点
こども1日1〜3mg/kg以上で睡眠に悪影響。体重30kgの児童なら30〜90mgエナジードリンクはコーヒーの5倍近いカフェインを含む製品もあるため、摂取は朝に限るなどの注意が必要
高齢者加齢に伴いカフェインの代謝能が低下するため、少量でも影響を受ける可能性
妊婦胎児への明らかな影響は確定していないが、潜在的リスクから可能な限り控えることが複数の国や学会から勧奨

置き換えの実用情報もあります。茶類のカフェインは茶葉に含まれるため、茶葉を使っていない麦茶・そば茶・黒豆茶・とうもろこし茶、カフェインを含まないハーブティーに替えるとよいとされています。

もう一点。眠気覚ましにカフェインを使い続けると、慢性的な摂取では効果が減弱し依存も生じます。日中の強い眠気は、慢性的な睡眠不足や睡眠障害のサインかもしれません。カフェインで上書きし続けるのは、原因を隠す行為になりえます。

アルコール——「寝酒」は推奨グレードD

お酒については、更年期の睡眠の記事でも扱いましたが、ここでは診療ガイドラインの評価を紹介します。

「睡眠薬より寝酒の方が安心のような気がします」という質問に対する回答です。

「アルコールには、一時的には寝付きが良くなり睡眠が取りやすくなったように感じる効果があります。しかし、実はそうした効果は一晩の前半だけにしか生じず、後半になると逆に眠りが浅くなって頻繁に目が覚めるなど睡眠の質が悪化します。(中略)また、睡眠をとるためにアルコールを毎日飲んでいると、徐々に体が慣れてしまって効かなくなり、アルコール性の不眠の原因になります(休肝日に眠れないのは要注意です)。(中略)睡眠をとるための(睡眠薬代わりの)寝酒は百害あって一利なしです。

【勧告】睡眠を改善する目的で、睡眠薬の代わりに寝酒を用いることは推奨されない。【推奨グレードD】

——睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン Q7

推奨グレードDは「行わないよう勧められる」という意味です。この記事で紹介する評価の中で、最も低い評価です。

「休肝日に眠れないのは要注意」という一文は、実際に受診のきっかけになりうる、よくできた指摘だと思います。

また、睡眠ガイド2023はアルコールが閉塞性睡眠時無呼吸をはじめとした様々な睡眠障害を増悪させることも指摘しています。

たばこ

睡眠ガイド2023のポイントは簡潔です。「喫煙(紙巻きたばこ、加熱式たばこ等のニコチンを含むもの)は、睡眠の質を悪化させる可能性がある」。ニコチンには覚醒作用があります。加熱式たばこも同じ扱いである点は、押さえておいてよいと思います。

光——寝室にスマートフォンを持ち込まない

光については目の健康の記事でも扱いました。要点を再掲します。

7. 睡眠の質を上げる——今日からできること

「質」を測る指標として、睡眠ガイド2023は睡眠休養感(睡眠で休養がとれている感覚)を採用しました。睡眠時間が「量」の指標なら、睡眠休養感は「質」の指標です。

ここでは、ガイドの記述にもとづいて、できることを時間帯順に並べます。

時間帯やること根拠
起きたらカーテンを開けて光を浴びる 朝日を浴びると体内時計がリセットされ、脳の覚醒度が上がります
朝食をとる 朝食を抜く生活習慣は、朝〜午前中に光を浴びない生活と同様に睡眠・覚醒リズムの後退を促すと報告されています
日中 できるだけ日光を浴びる 日中に光を多く浴びると夜間のメラトニン分泌量が増加。効果は1,000ルクス以上の照度で得られます
体を動かす 運動は1日のどの時間に行っても睡眠の質を改善します。ただし就寝前1時間以内の激しい運動は逆効果の可能性
就寝の約1〜2時間前に入浴 手足の血管が広がって熱が放散され、深部体温が下がり始めると入眠しやすくなります。実生活下の研究でも、この時間帯の入浴で速やかな入眠が得られたと報告
寝室を暗く、静かに 寝ている間は低い照度の光でも中途覚醒を増やし、睡眠効率を下げることが報告されています
スマホは寝室の外に 電源を切って別の部屋に置く、とガイドは明記しています

やらないほうがいいこと——休日の「寝だめ」

睡眠ガイドは、休日の寝だめを社会的時差ボケ(Social Jetlag)と呼び、「毎週末に時差地域への旅行を繰り返すことに類似している」と表現しています。肥満・糖尿病、脳血管障害や心血管疾患、うつ病の発症リスクになることが報告されています。

ただし、ここは丁寧に読む価値があります。40〜64歳を対象とした調査では——

つまり、1時間くらいなら問題なく、2時間以上は勧められない。そして、平日が足りていない人は寝だめでは取り返せないということです。

ガイドの結論は明快です。「休日に長時間の睡眠が必要な場合は、平日の睡眠時間が不足しているサインであり、平日に十分な睡眠時間を確保できるよう、睡眠習慣を見直す必要があります」

塩分にも触れておきます

意外に知られていませんが、睡眠ガイドは塩分の過剰摂取も夜間頻尿を生じ中途覚醒を増加させうるため、食塩の多い食生活に注意が必要としています。夜中にトイレで起きる方は、ここを疑ってみる価値があります。

8. 【検証】市販の睡眠改善薬は効くのか

ここからが、この記事の後半の主題です。

ドラッグストアで買える睡眠改善薬——「ドリエル」などが知られています。主成分はジフェンヒドラミンという第一世代の抗ヒスタミン薬です。かぜ薬やアレルギーの薬に入っている成分で、その「眠くなる副作用」を主作用として使っていると考えると分かりやすいと思います。

診療ガイドラインの評価

日本睡眠学会などがまとめた「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」の記述を引用します。

【患者向け解説】「市販の睡眠薬には錠剤(ドリエルなど)や漢方など種々ありますが、不眠症患者さんを対象にした臨床試験(治験)で長期的な治療効果と安全性がしっかりと確認されていません。したがって、これらの市販薬の注意書きにも記載してありますが、『一時的な不眠に使用すること』『不眠症の診断を受けた人は使用しないこと』が原則です。一時的な不眠とは旅行や心配事などで数日程度眠れないことをさします。(中略)不眠が長引く場合には市販の睡眠薬で対処することはお薦めできません。

【勧告】ジフェンヒドラミン等の第一世代抗ヒスタミン薬を不眠症(特に慢性不眠症)患者に用いることは推奨されない。短期間の使用に際しても、持ち越し効果による眠気や精神運動機能の低下に十分留意するよう説明するべきである。【推奨グレードC2】

——同ガイドライン Q28

ここを取り違えないでください

「市販薬だから安全で、処方薬は怖い」——これは、多くの方が持っている印象だと思います。ですが、少なくとも慢性の不眠に関しては、専門家の評価は逆です。

ガイドラインの言う「一時的な不眠」は数日程度です。2週間、1か月と飲み続けているなら、それは想定された使い方から外れています。市販薬にも使用期間の注意書きがありますので、購入時に必ず確認し、当てはまらなくなった時点で薬剤師か医師に相談してください。

9. 【検証】睡眠サプリは効くのか

そして、サプリメントです。ここが、いちばん率直に書くべきところだと思っています。

診療ガイドラインの評価

【勧告】「不眠症に対する効果を謳うサプリメントが多数あるが、エビデンスレベルの高い臨床試験により有効性が検証されているものはごく少なく、また安全性の検証はほとんど行われていない。したがって、サプリメントを不眠症の治療に用いることは推奨されない。不眠症患者からサプリメントに関する意見を求められた場合には、不眠症の治療効果は限定的もしくは実証されていないこと、安全性についても十分な検討がなされていないことを説明し、慎重に用いるように指導する必要がある。【推奨グレードC2】

——同ガイドライン Q29

患者向けの解説はこう続きます。「効果が得られない場合には漫然と服用するのは避けましょう」

メラトニンと漢方薬について

同じガイドラインは、メラトニンと漢方薬にも個別に答えています。

残念ながら不眠症に対する効果がしっかりと確認された漢方薬はありません。メラトニンも睡眠リズムの異常には効果がありますが、一般的な不眠症には効果が乏しいようです。(中略)しかし、慢性不眠症がある場合には、これらの市販薬ではなく、専門医に相談することをお薦めします。」

【勧告】不眠症に対するメラトニンの効果は比較的弱く、主たる治療薬として推奨することは難しい。不眠症に対する漢方薬の有効性は確認されておらず、推奨されない。【推奨グレードC2】

——同ガイドライン Q27

ここは正確に読んでください。メラトニンは「何にも効かない」のではありません。「睡眠リズムの異常には効果がある」と書かれています。米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)も、メラトニンは時差ぼけ交代勤務に関連した睡眠の問題には役立つ可能性があるとしています。

一方で、NCCIHは慢性不眠症の治療にメラトニンを使うことは臨床ガイドラインで推奨されていないとし、「短期間の使用では比較的安全と思われるが、長期的な安全性は確立されていない」としています。

時差ぼけや夜勤の調整には出番がある。一般的な不眠には期待できない。——これが正確な整理です。

これは知っておいてほしい:中身が表示どおりとは限らない

NCCIHが紹介している研究に、なかなか衝撃的なものがあります。

2023年の研究

市販のメラトニングミ25製品のうち22製品で、表示と実際の含有量が一致していませんでした。メラトニンの量は、表示量の74%〜347%の幅にわたっていたと報告されています。

また、2024年の報告では、2019年から2022年の間に、5歳以下の子どもが大人の目の届かないところでメラトニンを摂取したことによる救急外来受診が約11,000件と推計されています。19歳以下でのメラトニン摂取による入院や重篤な転帰も、2012年から2021年にかけて増加しました。

甘くて、子どもが好む形状で、家に置いてある。「サプリだから安全」という前提は、ここでは成り立ちません。お子さんのいるご家庭では、置き場所にご注意ください。

バレリアン(セイヨウカノコソウ)についても、NCCIHは「臨床試験の結果は一貫しておらず、不眠症に対する価値は実証されていない」とし、2017年の臨床ガイドラインは成人の慢性不眠症への使用を推奨していないと記しています。カモミールについても「役に立つかどうかを示す決定的な証拠は臨床試験からは得られていない」とされています。

「睡眠の質」をうたう機能性表示食品について

最近は、GABAやテアニンなどを含む「睡眠の質の向上に役立つ」と表示された商品をよく見かけます。これらの多くは機能性表示食品です。

サプリメントの記事で詳しく書きましたが、ここで最も大切な事実を再掲します。

機能性表示食品とは何か

国が有効性・安全性を審査した制度ではありません。事業者が自らの責任で科学的根拠を評価し、消費者庁に届け出る制度です。だからこそ、パッケージには「本品は、事業者の責任において特定の保健の目的が期待できる旨を表示するものとして消費者庁長官に届出されたものです。ただし、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません」という趣旨の表示が義務づけられています。

つまり「機能性表示食品だから国のお墨付き」ではない。この一点だけでも、知っているかどうかで買い物が変わります。

そして——「睡眠の質の向上」と書けることと、「不眠症に効く」ことは別です。医薬品ではないので、そもそも病気の治療をうたうことはできません。診療ガイドラインが「推奨されない」としているのは、不眠症の治療に用いることについてです。

お金の使いどころ

睡眠サプリを月に3,000円買うと、年間で36,000円になります。その一部で遮光カーテンを買う、寝室の照明を替える、寝具を見直す、あるいは一度きちんと医療機関を受診する。ガイドラインの評価にもとづけば、そちらのほうが確実です。
もちろん、飲んで安心できるならそれ自体に意味はあります。ただ、「効かないのに漫然と続ける」のはガイドライン自身が避けるよう書いていることです。1〜2週間試して変化がなければ、そこでやめて構いません。

10. 処方される睡眠薬——怖がりすぎず、油断もせず

では、医療機関で処方される睡眠薬はどうか。ここは、脅す情報も、軽く見る情報も、どちらも出回っています。ガイドラインの記述で整理します。

まず、安心してよい部分

「睡眠薬を服用していると、依存症になってやめられなくなるのではという心配を伺うことは少なくありません。しかし、あなたが睡眠薬の服用を始めたばかりなら、先々やめられなくなるかどうかを心配するより、まず医師の指示通りに服用して症状を改善させることを最優先にすべきでしょう。現在用いられている大部分の睡眠薬には強い依存性はありません。したがって、服用を始めてから短期間でやめられなくなることはありません。

【勧告】短期服用時には睡眠薬による依存形成の危険性は少ないが、高用量・長期間の服用が依存形成リスクを上昇させるので避けるべきである。【推奨グレードB】

——同ガイドライン Q34

不眠がつらいのに「薬は怖いから」と我慢し続けるのは、勧められません。不眠そのものが、生活習慣病やうつ病のリスクを高めます。

次に、油断してはいけない部分

論点ガイドラインの記述
副作用 ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬には、眠気、ふらつき、転倒、精神運動機能の低下、前向性健忘(服用後の出来事を覚えていない)、頭痛、消化器症状などがみられます
多剤併用 「睡眠薬の多剤併用は副作用の頻度を高める原因となるため推奨されない。単剤治療を原則とする」
お酒との併用 「アルコールと睡眠薬の併用は、副作用の頻度と強度を高める可能性があるため、原則禁忌」。晩酌後には服用しないのが無難。コップ1杯のビールの代謝に成人男性で約2時間かかります
翌朝の運転 ほとんどの睡眠薬の説明書に、翌朝以降への影響について記載があります。服薬した翌朝の運転は控える必要があります
高齢者 加齢で薬の代謝・排泄能が低下し、ベンゾジアゼピン系への感受性も高まるため、「高齢者では若年者に比較して睡眠薬の副作用のリスクが相対的に高い」【推奨グレードA】
自己判断の増量 効果が減ったからといって自分の判断で増やさないこと。耐性(効果の減弱)は作用時間の短い薬ほど早く出やすいとされています

認知症との関係——ここは結論が出ていません

「睡眠薬を飲むと認知症になる」という話を耳にされた方も多いと思います。ガイドラインの記述は、こうです。

「ベンゾジアゼピン系薬物の長期服用によって認知機能低下がおこりうるということについて数多くの報告が存在するが、認知症発症のリスクが上昇するかについては相反する結果が報告されている。リスクが存在する場合、数年〜十数年の長期服用時に罹患リスクが1.5倍〜3倍程度高まる可能性がある

——同ガイドライン Q35

患者向けの解説では、長期服用による一時的な認知機能の低下は「休薬することで多くの機能は回復します」とされ、同時に「不眠症自体も認知機能の低下をきたすリスクを高めるため、症状が強いときには治療を受ける必要があります」と書かれています。

怖がって飲まないことにも、リスクがある。だから、メリットとリスクを比べて決める——それが誠実な整理です。

補足:この分野は動いています

ここまで引用してきた「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」は2013年に作成されたものです(同年10月改訂)。日本の睡眠薬治療の基本的な考え方として、今も広く参照されています。
ただし、その後にオレキシン受容体拮抗薬という、従来とは作用の仕組みが異なる睡眠薬が国内で使えるようになりました。依存や耐性の面で従来薬と性質が異なるとされています。「昔もらった薬の話」と「今の選択肢」は違う可能性があるので、以前に薬が合わなかった経験のある方も、改めて相談する価値があります。

11. 薬より高く評価されている治療があります

そして、この記事でいちばんお伝えしたかったことです。

認知行動療法(CBT-I)——推奨グレードA

【勧告】「不眠症に対する認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy for Insomnia: CBT-I)の有効性は実証されている。特に、入眠困難の改善に関しては薬物療法よりも効果が高いと考えられる。また、睡眠薬の長期服用者に関しては、CBT-Iを導入することで減薬促進効果が期待できる。精神疾患や身体疾患を伴う不眠症に対しても、CBT-Iは有効性が高く、それら基礎疾患の症状の軽減効果も期待できる。【推奨グレードA】

——同ガイドライン Q30

ここまで読んでこられた方には、このAという文字の重みが分かると思います。並べてみます。

不眠症に対する評価(診療ガイドラインの推奨グレード) 認知行動療法(CBT-I) A 強く勧められる 睡眠薬の適正な使用(短期・単剤) B 勧められる 市販の睡眠改善薬(ジフェンヒドラミン等) C2 推奨されない 睡眠サプリメント C2 推奨されない メラトニン・漢方薬(一般的な不眠症に対して) C2 推奨されない 寝酒(睡眠薬代わりの飲酒) D 行わないよう勧められる
「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」(厚生労働科学研究班・日本睡眠学会ワーキンググループ、2013年)の各勧告より作成。

お金をかけている順番と、評価の順番が一致していない。これが、この記事でお伝えしたかったことです。

CBT-Iとは何をするのか

ガイドラインの説明を平易にすると、こうなります。

不眠症を長引かせているのは、①生活習慣(行動パターンや睡眠に関する考え方)②体の反応(過覚醒=目覚めすぎてしまう傾向)です。CBT-Iは、この2つに焦点を当て、カウンセリングで修正していきます。合計4〜8回で、寝つきの悪さ・中途覚醒・睡眠の質の低下が改善することが明らかになっています。

実際の中身は、たとえばこういうものです。

5章で紹介した高齢者向けの助言——「なかなか眠れないときはいったん寝床を離れる」——は、まさにこの考え方です。つまり、その一部はすでに、国のガイドが一般向けに書いている内容として手に入ります。

正直に書きます:ハードルがあります

これだけ評価が高いのに、CBT-Iはあまり広まっていません。理由はガイドライン自身が書いています。

「現在のところ不眠症に対する認知行動療法は保険適応外となっています」——費用が自己負担になり、実施できる施設も限られます。

ですから、現実的な提案としてはこうなります。

  1. まず、この記事の6〜7章(睡眠衛生)を実行する。これはCBT-Iの土台部分にあたり、無料でできます
  2. それでも改善しなければ、医療機関へ。薬物療法とあわせて、行動面の指導を受けられることがあります
  3. すでに睡眠薬を長く飲んでいる方は、減薬にCBT-Iが役立つことをガイドラインが明記しています。相談する価値があります

なお、ガイドラインは睡眠薬治療について「治療途中で薬物療法の妥当性を適宜評価することなしに、漫然とした長期処方をすることは厳に戒められるべきである」とも書いています。「ずっと同じ薬をもらい続けている」ことが気になっているなら、それを相談するのは、まったく正当なことです。

12. 🚨 この症状があれば、受診を

睡眠障害が隠れている可能性がある状態

睡眠ガイド2023は、ガイドの内容を実践しても症状が続く場合は、睡眠障害が潜んでいる可能性があるとしています。

ガイドは「50歳代より徐々に不眠症、閉塞性睡眠時無呼吸、むずむず脚症候群、周期性四肢運動障害などの睡眠障害が出現しやすくなります」と記しています。

知っておくと少し楽になること

最後にひとつ。診療ガイドラインには、こんな記述があります。

不眠症の人は、実際の睡眠時間(客観的睡眠時間)より、自覚的な睡眠時間を短く見積もることがある——これを睡眠状態誤認といいます。脳波の上では眠っているのに、本人は「一睡もできなかった」と感じる状態です。ガイドラインは「多くの慢性不眠症患者では程度の違いはあっても睡眠状態を誤認していることを理解する必要がある」と書いています。

これは、責める話ではありません。むしろ逆で、「思っているよりは眠れている可能性がある」ということです。そして重要なのは、睡眠状態誤認では、薬を増やしても不眠の訴えは消えず、高用量・多剤に陥りやすいと指摘されている点です。

「眠れないから薬を増やす」が正解とは限らない。だから、時間を数えるより、日中の状態を見るほうがいい——ここに戻ってきます。

13. よくある質問

子どもは何時間眠ればいいですか?

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、米国睡眠医学会の推奨をもとに、1〜2歳児は11〜14時間、3〜5歳児は10〜13時間、小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間を参考にすることを推奨しています。ガイドは「成長・加齢とともに必要な睡眠時間は減少していきますが、成長期である高校生までは成人よりも長い睡眠時間を必要とすることがわかっており、一般的な認識よりも長い睡眠時間であることに驚くかもしれません」と述べています。実際、多くのご家庭でこの時間は確保できていないと思います。まずは「思っているより長い」と知ることが出発点です。

睡眠サプリは効きますか?

日本睡眠学会などがまとめた「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」は、はっきりこう書いています。「不眠症に対する効果を謳うサプリメントが多数あるが、エビデンスレベルの高い臨床試験により有効性が検証されているものはごく少なく、また安全性の検証はほとんど行われていない。したがって、サプリメントを不眠症の治療に用いることは推奨されない」。推奨グレードはC2(行わないよう勧められる)です。
メラトニンについても「睡眠リズムの異常には効果がありますが、一般的な不眠症には効果が乏しい」とされています。なお市販の「睡眠の質」をうたう機能性表示食品は、国が有効性・安全性を審査したものではなく、事業者の届出制です。

ドラッグストアの睡眠改善薬は使ってもいいですか?

「一時的な不眠」に限れば選択肢になりますが、続く不眠には向きません。市販の睡眠改善薬の主成分はジフェンヒドラミンなどの第一世代抗ヒスタミン薬です。診療ガイドラインは「ジフェンヒドラミン等の第一世代抗ヒスタミン薬を不眠症(特に慢性不眠症)患者に用いることは推奨されない」(推奨グレードC2)とし、短期間の使用でも翌日への持ち越しによる眠気や精神運動機能の低下に留意するよう求めています。
製品の注意書き自体にも「一時的な不眠に使用すること」「不眠症の診断を受けた人は使用しないこと」と書かれています。一時的な不眠とは、旅行や心配事などで数日程度眠れないことを指します。

高齢になると睡眠はどう変わりますか?

加齢とともに生理的に必要な睡眠時間は減り、体内時計の変化で昼夜のメリハリが低下します。その結果、寝つきに時間がかかり、途中で目が覚めやすくなり、日中の居眠りが増えます。
重要なのは、高齢世代では長時間睡眠のほうがリスクとして強く出ることです。睡眠ガイド2023は、7時間未満の短時間睡眠による将来の死亡リスクが1.07倍であるのに対し、8時間以上の長時間睡眠では1.33倍と報告しています。また65歳以上では、睡眠時間より「床上時間」(布団にいる時間)が約8時間以上になると総死亡率が増加するとされます。目安は「1週間の平均睡眠時間+30分程度」で、8時間以上にならないようにすることです。

薬を使わずに不眠を治す方法はありますか?

不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)があります。診療ガイドラインでの推奨グレードはAで、これは市販の睡眠改善薬やサプリのC2とは対照的な、この記事で紹介する中で最も高い評価です。ガイドラインは「特に、入眠困難の改善に関しては薬物療法よりも効果が高いと考えられる」とし、睡眠薬を長く飲んでいる人には減薬を進める効果も期待できるとしています。
内容は、不眠を長引かせている行動パターンや睡眠に対する考え方を、合計4〜8回のカウンセリングで修正していくものです。ただし現在のところ保険適用外で、実施できる施設が限られるのが大きな課題です。

この記事のまとめ。必要な睡眠時間は年代でまるで違います。小学生9〜12時間、中高生8〜10時間、成人6時間以上、高齢者は床上時間8時間未満。子どもは「思っているより長い」、高齢者は「長く寝すぎないこと」——方向が正反対です。
日本の実状は、20歳以上で推奨範囲に収まるのが56.0%、OECD調査33か国中最短。しかも働き盛りの20〜59歳ほど休養がとれていません(73.0% 対 60歳以上86.1%)。
妨げるものはカフェイン(1日400mg超で影響。107mgでも就寝9時間前が影響したという報告)、寝酒(推奨グレードD=「百害あって一利なし」)、たばこ夜の光。質を上げるのは朝の光と朝食、日中の運動、就寝1〜2時間前の入浴、暗い寝室、スマホを寝室に持ち込まないこと。
そして、いちばん伝えたかったこと。睡眠サプリも市販の睡眠改善薬も、日本の診療ガイドラインの評価はC2=推奨されない。一方で認知行動療法(CBT-I)はA=強く勧められるで、「入眠困難の改善に関しては薬物療法よりも効果が高い」とされています。お金をかけている順番と、評価の順番が一致していないのです。
処方薬については、怖がりすぎないでください。「現在用いられている大部分の睡眠薬には強い依存性はありません」——ただし高用量・長期・多剤・お酒との併用は避ける。この線引きさえ守れば、過度に恐れる必要はありません。
眠りは、努力して勝ち取るものではありません。整えた条件の結果として、勝手にやってくるものです。

参考にした主な資料

なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。不眠の原因は多岐にわたり、実際に診察しなければ判断できません。現在処方されている睡眠薬を、自己判断で中止・減量・増量しないでください。急な中止で不眠が悪化することがあります。市販薬やサプリメントを使用中の方も、処方薬との飲み合わせがあるため、医師・薬剤師にお伝えください。日中の強い眠気、睡眠中の呼吸停止の指摘、朝起きられず学校や仕事に行けない状態、気分の落ち込みを伴う不眠については、早めに医療機関にご相談ください。掲載内容は公開時点の情報にもとづいており、内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。