1. 先に結論
| 論点 | この記事で言えること |
|---|---|
| どれくらい目を使っている? | 青少年の平均ネット利用は1日5時間27分、高校生は6時間44分(こども家庭庁) |
| 老眼はいつから? | 40歳前後から自覚することが多い。ただし若い年代でも似た症状が出ることがあります |
| ドライアイは? | 画面を長く見る人に生じやすい。集中するとまばたきが減ることが背景にあります |
| 【最重要】アイフレイル | 🔑 緑内障などは40〜50代で既に始まり、見えにくくなるのは10〜20年後(日本眼科医会) |
| スマホと睡眠は? | 就寝2時間前以降の強い光はメラトニンを抑制し、入眠を妨げる(厚労省 睡眠ガイド) |
| いちばん大事なことは? | 自覚症状がない時期に検診を受けること。気づいてからでは遅い病気があります |
目の話には、「痛くも痒くもないまま進む」という特徴があります。肌のシミなら鏡で見えます。体重なら数字で分かります。けれど目の場合、片方の視野が欠け始めても、もう片方が補ってしまうため、自分ではなかなか気づけません。
日本眼科医会は、主要な視覚障害の原因となる病気について「病気そのものは40-50歳くらいから始まっているのです」と述べたうえで、見えにくくなるのはその10〜20年後だとしています。
つまり——いま何ともない40代・50代こそ、いちばん手が打てる時期だということです。これは骨の記事でお伝えしたことと、まったく同じ構造です。
2. 私たちは、いま目をどれだけ使っているか
まず、現状を数字で見ておきましょう。目の負担を考えるうえで、これが出発点になります。
青少年は1日5時間27分、高校生は6時間44分
こども家庭庁の青少年のインターネット利用環境実態調査によれば、インターネットを利用している青少年の平均利用時間は1日あたり約5時間27分で、前年度より約25分増えています。学校種別では次のとおりです。
とくに注目したいのが、注記にある数字です。高校生の38.1%が1日7時間以上、そのうち21.7%は9時間以上と回答しています。学校にいる時間を除けば、起きている時間のかなりの部分を画面に向けている計算になります。
そして——これは青少年に限った話ではありません。仕事でパソコンを使い、移動中はスマートフォンを見て、帰宅後もタブレットを開く。大人も同じか、それ以上に目を使っています。
なぜ「近くを見続ける」ことが負担なのか。遠くを見るとき、目のピント調節を担う筋肉は比較的リラックスしています。ところが近くを見るときは、その筋肉が緊張し続けます。スマートフォンは、その中でもとくに距離が近い。長時間続ければ、目が疲れるのは当然のことです。加えて、次章以降で見るように「まばたきが減る」という別の問題も重なります。
3. 老眼——40歳前後から自覚する変化
目の変化として、多くの方が最初に自覚するのが老眼(老視)です。
ピントを合わせる力が落ちる
日本眼科学会の解説によれば、老視は40歳前後から症状を自覚することが多いとされています。目の中でピントを調節する仕組みが、加齢とともに硬くなり、近くにピントを合わせにくくなる——これが老眼の正体です。
典型的なサインは次のようなものです。
- スマートフォンや本を少し離すと読みやすい
- 薄暗い場所で細かい字が読みにくい
- 近くを見た後、遠くにピントが合うまで時間がかかる
- 近くを見続けると、目の奥が疲れる・肩がこる・頭が重い
ここで大切なのは、老眼は病気ではなく、誰にでも訪れる変化だということです。「まだ老眼になる歳じゃない」と我慢して合わない見え方を続けると、かえって目の疲れや頭痛の原因になります。
若い人にも起こりうる
日本眼科医会は、スマートフォンやタブレットの普及により長時間画面を見続ける機会が増えたことで、若い年代の方でも老視のような症状が起こることがあるとしています。いわゆる「スマホ老眼」と呼ばれる状態です。
近くを長時間見続けると、ピント調節の筋肉が緊張したまま固まりやすくなり、遠くを見たときにすぐピントが合わない——という現象が起こります。10代・20代でも、目のかすみや疲れを感じたら、それは使いすぎのサインかもしれません。
4. ドライアイ——画面を見ると、まばたきが減る
老眼と並んで多いのが、ドライアイです。そしてこちらは、スマホ・パソコンの時代に急増している問題です。
集中すると、まばたきが減る
日本眼科医会は、コンピュータ作業を日常長く行う方ではドライアイが生じやすくなるとしています。同会の情報では、40歳以上の成人の17.4%がドライアイであり、オフィスワーカーを対象とした研究では全体の60%以上がドライアイもしくはその疑いという結果も紹介されています。
仕組みはシンプルです。画面を集中して見ているとき、私たちはまばたきの回数が減ります。まばたきは涙を目の表面に行き渡らせる動作ですから、その回数が減れば、目の表面は乾きやすくなる。さらに——
| 乾きやすくなる条件 | 理由 |
|---|---|
| 画面が目より上にある | 目を大きく開くことになり、涙が蒸発する面積が増えます |
| エアコンの風が当たる | 乾燥した空気が涙を奪います(→冷えとむくみでも触れた寒暖差の話とつながります) |
| コンタクトレンズ | 涙の状態に影響します |
| 加齢 | 涙の分泌量や質が変化します |
ドライアイは「乾く」だけではない
意外に思われるかもしれませんが、ドライアイの症状は乾燥感だけではありません。
- 目が疲れる・重い
- ゴロゴロする、異物感がある
- かすんで見える(涙の膜が不安定だとピントがぶれます)
- まぶしい
- 逆に涙が出る(乾燥を補おうと反射的に涙が出ることがあります)
「涙が出るからドライアイではない」とは限らない——ここは知っておく価値があります。「なんとなく目が疲れる」と思っていたものが、実はドライアイということも珍しくありません。
自分でできる工夫。意識してまばたきをする、画面を目線より下に置く、エアコンの風向きを変える、加湿する、休憩を挟む——こうした環境の調整で改善することがあります。市販の目薬を使う場合は、防腐剤の少ないタイプを選ぶ、使いすぎないといった点に注意を。症状が続く場合は、自己流で目薬を重ねるより眼科で相談したほうが近道です。
5. 【核心】アイフレイル——見えにくくなる10〜20年前から
ここが、この記事でいちばん大切な章です。老眼やドライアイは「不便」ですが、これから話すのは「視力を失うかどうか」に関わる話です。
「アイフレイル」という考え方
日本眼科医会は、アイフレイルについてこう説明しています。「40歳を過ぎると、体力が衰えるのと同じように目もだんだんと衰えてきます。こうした加齢に伴う目の機能低下を示す状態を『アイフレイル』と呼びます」——と。
そして、この記事で最もお伝えしたい一文が続きます。
日本眼科医会は、主な視覚障害の原因疾患(緑内障、糖尿病網膜症など)について、40〜50歳代で既に発症しているにもかかわらず、見えにくくなるのは10〜20年後だと指摘しています。
この意味を、少し考えてみてください。いま50歳で何の自覚もない人の目の中で、すでに病気が始まっている可能性があるということです。そして症状として現れるのは、60代・70代になってから。そのときには、失われた視野は元に戻りません。
だからこそ、自覚症状がない時期の検診に意味があるのです。「見えているから大丈夫」は、目に関しては通用しません。
なぜ気づけないのか
緑内障を例にとると、視野が少しずつ欠けていきます。ところが私たちは両目で見ているため、片方の欠けた部分を、もう片方が補ってしまうのです。さらに脳が「見えていない部分」を周囲の情報から補完するため、本人はまったく気づきません。
そして気づいたときには、かなり進行している——これが目の病気のこわさです。
セルフチェックという入口
日本眼科医会は、アイフレイルのセルフチェックとして10項目のチェックリストを公開しており、2項目以上該当する場合にはアイフレイルの疑いがあるとしています。乱視・老視、白内障、ドライアイ、眼底疾患、緑内障を想定した内容とされています。
気になる方は、同会のページで確認してみてください。そして——同会が添えている言葉が、とても大切だと思います。「年のせいとあきらめないでください」。そして「目で『気になる』があれば、まずは眼科でご相談ください」。
40歳を過ぎたら、眼底検査を。健診に眼底検査が含まれている場合は、必ず受けてください。含まれていない場合も、眼科で相談すれば受けられます。眼底は、体の中で唯一「血管を直接見られる場所」です。だから目の病気だけでなく、高血圧や糖尿病による血管の変化も分かります。健診結果の読み方ガイドとあわせてご覧ください。
6. スマホと不眠——目から入る光が、眠りを遠ざける
目の話は、実は睡眠の話でもあります。ここは、⑪の睡眠の記事と地続きの内容です。
光は、目から入って体内時計を動かす
厚生労働省の健康づくりのための睡眠ガイド2023は、こう説明しています。就寝の約2時間前から睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が始まり、それ以降に照明やスマートフォンの強い光を浴びると、催眠効果のあるメラトニンの分泌が抑制されることから、睡眠・覚醒リズムが遅れ、入眠が妨げられることが報告されている——と。
つまり、寝る前のスマホは「目が疲れる」だけでなく「眠れなくなる」という二重の影響があるのです。
ガイドが明記していること
同ガイドは、推奨事項としてはっきり書いています。「寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることが良い睡眠につながる」。
理由も述べられています。近年の照明器具やスマートフォンにはLEDが使用されており、体内時計への影響が強い短波長光(ブルーライト)が多く含まれているため——と。
睡眠ガイドは、こども向けの項目でこう指摘しています。「特に、寝そべりながらデジタル機器を使うと、ディスプレイの視聴距離が近くブルーライトを浴びやすくなるため、寝つきや睡眠の質の悪化につながります」
布団の中でスマホを見る——多くの人がやっている習慣ですが、距離が近いぶん、光の影響を強く受けます。しかも目のピント調節にとっても、至近距離を長時間見続けるのは負担です。目にも睡眠にも、いちばん条件が悪い姿勢だということになります。
同ガイドは、デジタル機器は寝室に持ち込まず、電源を切って別の部屋に置くことを勧めています。難しければ、せめて手の届かない場所に。
逆に、朝の光は味方になる
光は敵ばかりではありません。同ガイドは、起床後に朝日の強い光を浴びることで体内時計はリセットされ、睡眠・覚醒リズムが整うとし、日中に光を多く浴びることで夜間のメラトニン分泌量が増加して入眠が促進されるとしています。
つまり——朝はしっかり光を浴び、夜は光を減らす。目から入る光をこう使い分けることが、眠りの土台になります。
7. 年代別・今日からできること
ここからは実践編です。年代によって、優先すべきことが変わります。
共通してできること
| やること | ポイント |
|---|---|
| 休憩を挟む | 近くを見続けたら、時々遠くを見る。1時間に数分でも、ピント調節の筋肉が休まります |
| 意識してまばたき | 画面に集中するとまばたきが減ります。「乾いたな」と思ったら、しっかり閉じるまばたきを数回 |
| 画面は目線より下に | 見下ろす角度だと目を大きく開かずにすみ、涙が蒸発しにくくなります |
| 距離を取る | スマホは近づけすぎない。とくに寝そべって使うのは避ける |
| 環境を整える | エアコンの風が顔に当たらないように。乾燥する季節は加湿を |
| 紫外線から守る | 目も紫外線の影響を受けます。屋外ではUVカットのメガネやサングラス、帽子を(→日焼け止めの記事) |
| 禁煙・生活習慣病の管理 | 喫煙や糖尿病・高血圧は、目の病気のリスクに関わります |
年代別の優先順位
| 年代 | とくに意識したいこと |
|---|---|
| 10代・20代 | 🔑 使用時間そのものを見直す。高校生の38%が1日7時間以上という現状。寝る前のスマホをやめるだけで、目にも睡眠にも効きます。屋外で過ごす時間を持つことも大切です |
| 30代 | 仕事での画面時間が最も長くなる時期。ドライアイ対策と休憩の習慣化を。コンタクトレンズの使い方も見直しを |
| 40代 | 🔑 老眼を我慢しない。合わない見え方を続けると疲れます。そしてこの年代から眼底検査を——アイフレイルの話はここから始まります |
| 50代以降 | 定期的な眼科受診を習慣に。白内障・緑内障・加齢黄斑変性などは、早く見つけるほど選択肢があります |
いま10代・20代の方には、ぜひ知っておいてほしいことがあります。目は、使いすぎても「痛い」と教えてくれません。疲れやかすみという形で、控えめに知らせてくるだけです。
そして——このサイトでは骨は20歳がピーク、髪は自己修復しないとお伝えしてきました。目も同じで、失われた視神経は戻りません。
だからといって、スマホを捨てる必要はありません。寝る前だけやめる。1時間に一度は遠くを見る。屋外で過ごす時間をつくる。——それだけでも、20年後は変わります。
8. 🚨 この症状は、すぐ眼科へ
最後に、迷わず受診してほしいサインをお伝えします。目の症状には、時間が勝負のものがあります。
- 視野の一部が欠けている・暗く見える——片目ずつ確認してみてください
- ものがゆがんで見える(線が波打つ、中心が見えにくい)——加齢黄斑変性などで見られます
- 急に視力が落ちた
- 黒い点や糸くずのようなものが急に増えた/光が走って見える——網膜剥離の前触れのことがあります
- 強い目の痛み・充血・頭痛・吐き気を伴う——急性緑内障発作などの可能性があり、緊急を要します
- まぶしさや見えにくさが日常生活に支障をきたしている
日本眼科医会は「目で『気になる』があれば、まずは眼科でご相談ください」としています。「たかが目の疲れ」と思っていたものが、別の病気ということもあります。
片目ずつ、見え方を確かめる習慣を
簡単にできて、とても役立つ方法があります。片方の目を手で覆って、もう片方だけで壁のカレンダーや窓枠を見てみる——これだけです。左右それぞれで、見え方に差がないか、欠けている部分がないか、ゆがみがないか。
5章でお伝えしたとおり、両目で見ていると片方の異常に気づけません。月に一度でも、片目ずつ確認する習慣があれば、変化に早く気づけます。これは今日から、無料でできることです。
9. よくある質問
日本眼科学会の解説では、老視は40歳前後から症状を自覚することが多いとされています。目のピント調節の力が加齢とともに落ちることで、近くが見えにくくなります。ただし調節力の低下自体はもっと若い頃から少しずつ進んでおり、40歳前後で「自覚する」段階に達するということです。また、スマートフォンなどで近くを長時間見る機会が増えたことで、若い年代でも老視のような症状が起こることがあるとされています。
日本眼科医会は、40歳を過ぎると体力が衰えるのと同じように目も衰えてくるとし、こうした加齢に伴う目の機能低下を示す状態を「アイフレイル」と呼んでいます。重要なのは、緑内障や糖尿病網膜症といった主要な視覚障害の原因となる病気は40〜50歳代で既に始まっているのに、見えにくくなるのは10〜20年後だという点です。だから自覚がない時期からの検診に意味があります。
長時間の近業と画面注視は、目の負担になります。日本眼科医会は、コンピュータ作業を日常長く行う人ではドライアイが生じやすくなるとしています。画面を集中して見ているとまばたきが減り、涙が乾きやすくなるためです。こども家庭庁の調査では、青少年の平均ネット利用時間は1日約5時間27分、高校生では約6時間44分に達しています。時間そのものを減らすことに加え、休憩を挟む、意識してまばたきをするといった工夫が現実的です。
はい。厚生労働省の睡眠ガイド2023は、就寝の約2時間前から睡眠を促すメラトニンの分泌が始まり、それ以降に照明やスマートフォンの強い光を浴びるとメラトニンの分泌が抑制され、入眠が妨げられることが報告されているとしています。さらに、寝室にはスマートフォンやタブレットを持ち込まず暗くして寝ることが良い睡眠につながると明記しています。とくに寝そべって使うと画面が近くなり、影響を受けやすくなります。
日本眼科医会は「目で気になることがあれば、まずは眼科で相談を」としています。とくに、見え方の一部が欠ける、ゆがんで見える、急に視力が落ちた、光が飛んで見える、痛みや充血が続くといった症状は早めの受診が必要です。また自覚症状がなくても、40歳を過ぎたら眼底検査を含む目の検診を受ける価値があります。緑内障などは、自覚したときにはかなり進行していることがあるためです。
この記事のまとめ。私たちは、かつてないほど目を使う時代に生きています。青少年の平均ネット利用は1日5時間27分、高校生は6時間44分——その38%は7時間以上です。
老眼は40歳前後から自覚することが多く、スマホの使いすぎで若い人にも似た症状が出ることがあります。ドライアイは画面を長く見る人に生じやすく、集中するとまばたきが減ることが背景にあります。
そして最も大切なのがアイフレイルの考え方です。日本眼科医会は、緑内障などの病気は40〜50歳代で既に始まっているのに、見えにくくなるのは10〜20年後だとしています。だから、何ともない今こそ検診を。
さらに、寝る前のスマホは目だけでなく眠りにも影響します。睡眠ガイドは寝室に持ち込まないことを明記しています。
できることは地味です。休憩を挟む、まばたきを意識する、距離を取る、寝る前はやめる、そして片目ずつ見え方を確かめる。どれも無料で、今日からできます。目は痛いと言ってくれません。だから、こちらから気にかけてあげてください。
参考にした主な資料
- 日本眼科医会「40歳からはじめたい アイフレイル(目の老化)対策」——アイフレイルの定義、40〜50代で病気が始まり見えにくくなるのは10〜20年後、セルフチェック
- 日本眼科医会「40代で始まる目の老化」/「ドライアイに悩む方へ」/「パソコンと目」
- 日本眼科学会「老視(老眼)」
- こども家庭庁「青少年のインターネット利用環境実態調査」——平均利用時間、学校種別、7時間以上の割合
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」——就寝前の光とメラトニン、寝室にデジタル機器を持ち込まないこと