1. 先に結論
| よくある対応 | ガイドライン2025の記述 |
|---|---|
| 湿疹だと思ってステロイドを塗る | 化膿して痛む形になった症例は「初期に湿疹の診断を受けステロイド治療を受けていることが多い」 |
| 水虫の塗り薬を塗る | 「外用抗真菌薬による頭部白癬の治療は〔…〕現時点においてわが国では推奨されていない」 |
| 市販薬で様子を見る | 飲み薬が推奨度A(強く勧める)。テルビナフィンで4〜8週の内服 |
| 症状がなければ問題ない | 無症候性キャリア——「症状は認めなくとも他人への感染源となる」 |
| 大人には関係ない | 10代以下が約40%と若年に多い一方、自分の足白癬から頭に及ぶ経路もあります |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
頭の湿疹が、塗り薬で良くなったり悪くなったりを繰り返しているなら、一度「白癬の検査」をしてもらってください。
検査はその場でできます。そして診断が変われば、治療は正反対になります。
2. 頭部白癬とは——2つの顔があります
頭部白癬は、足の水虫と同じ「白癬菌」が頭皮と髪に感染したものです。昔から「しらくも」と呼ばれてきました。
ガイドラインは、日本では伝統的に3つの病型に分類するとしています。このうち現在よく見るのは2つです。
| 病型 | ガイドラインの記述 |
|---|---|
| 頭部浅在性白癬 (軽いほう) | 落屑をともなう脱毛斑、あるいは脱毛後の毛包に黒点(ブラックドット)を認める。ときに毛包一致性に膿疱を認め、軽度の痒みを伴うことがある |
| ケルスス禿瘡 (重いほう・皮膚深在性白癬) | 化膿性炎症が強く、侵された毛包から排膿がみられる。同部の毛髪は容易に抜毛可能になる。痛みを伴い、所属リンパ節の腫大を認める |
ここで注目していただきたいのが「ブラックドット」です。毛が頭皮の表面で折れて、毛穴に黒い点として残る。これが白癬らしいサインのひとつです。
そして重要なのが、この一文です。
しばしば、頭部脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎〔などと診断される〕。
——皮膚真菌症診療ガイドライン2025
フケが出て、少しかゆくて、髪が抜ける。この見た目は、ありふれた頭の湿疹とよく似ています。だから間違われる。
円形脱毛症とも間違われます。境界のはっきりした脱毛斑ができるので、見た目が似ることがあります。実際、円形脱毛症の記事で紹介した円形脱毛症診療ガイドラインも、区別すべき病気として頭部白癬を挙げています。
そして両者の治療は正反対です。円形脱毛症ではステロイド外用が推奨度1(強い推奨)。頭部白癬では、そのステロイドが事態を悪くします。「円形に抜けている=円形脱毛症」とは限らないのは、このためです。
3. 【核心】なぜ「ステロイドを塗る」がまずいのか
ガイドラインの、T. tonsurans という菌による頭部白癬についての記述です。
ときにケルスス禿瘡になることもあるが、この場合は初期に湿疹の診断を受けステロイド治療を受けていることが多い。
この一文が、この記事を書いた理由です。
何が起きているのか
ステロイドは炎症を抑える薬です。菌を殺す薬ではありません。
だから塗ると、赤みやかゆみは一時的に軽くなります。効いたように見えます。けれど菌そのものは残っていて、その間に増えられる。やめれば戻ってくる。そしてまた塗る——。
いま塗っている方へ。
やめる必要はありません。やめるかどうかを決めるのは、検査のあとです。
お伝えしたいのは、こう言ってみてください、ということだけです——「白癬の検査をしてもらえますか」。それで結果が変われば、治療は入れ替わります。
この記事で書かないこと。ケルスス禿瘡について「治療が遅れると二度と髪が生えなくなる」といった説明を目にすることがあります。ただ今回もとにしたガイドライン2025には、瘢痕や永久的な脱毛についての記載はありませんでした。
ですのでこの記事では、ガイドラインが実際に書いていること——化膿性の強い炎症が毛包に及び、痛みとリンパ節の腫れを伴う——にとどめます。
それでも早く正しい診断にたどり着く意味は十分にあります。痛む前に、化膿する前に、飲み薬を始められるからです。
4. 【重要】塗り薬では治りません——理由は「深さ」です
「白癬なら、水虫の塗り薬を塗ればいいのでは」と思われるかもしれません。ここが、この病気のもうひとつの落とし穴です。
治療:原則的に経口抗真菌薬テルビナフィンまたはイトラコナゾールによる(CQ10、推奨度A/CQ11、推奨度A)。外用抗真菌薬による頭部白癬の治療は、悪化する可能性があるとのことで現時点においてわが国では推奨されていない。
推奨度Aは「行うよう強く勧める」。そして塗り薬は推奨されていない——はっきりしています。
なぜ届かないのか
足の水虫は、皮膚の表面の角層にいます。だから塗り薬が届く。
ところが頭では、菌は毛の中や毛包の奥に入り込みます。ガイドラインは、T. tonsurans についてこう書いています。
本菌は毛への親和性が高く、体部白癬でも生毛への感染がみられる。また、外用療法で軽快しても毛包内に菌が残存するため抗真菌薬内服療法を優先することを勧める。
さらに——体に出た白癬だけと診断された場合でも、T. tonsurans であれば「体部白癬のみでも抗真菌薬の内服療法を併用することを勧める」とされています。それだけ毛の中に潜みやすい菌だということです。
抗真菌薬入りのシャンプーは?ガイドラインは、これを治療そのものではなく補助として位置づけています。「抗真菌薬含有シャンプー等の使用はキャリアへの対策、軽微な症状の改善、および治療後の再発予防において有用と考えられ、使用を考慮してもよい」。
ただし日本で使えるのはミコナゾール硝酸塩を含むものだけで、「現時点で有効といえるエビデンスはない」とも書かれています。シャンプーで治そうとしないでください。
5. 誰がかかるのか——10代以下が約40%
まず頻度から。日本臨床皮膚科医会の調査では、皮膚糸状菌症(白癬など)の内訳はこうでした。
| 病型 | 割合 |
|---|---|
| 足白癬(足の水虫) | 51.5% |
| 爪白癬(爪水虫) | 33.3% |
| 体部白癬 | 8.3% |
| 股部白癬(いんきんたむし) | 4.9% |
| 手白癬 | 1.5% |
| 頭部白癬・ケルスス禿瘡 | 0.6% |
頻度は足白癬の1%未満で、たしかに珍しい病型です。だからこそ最初に疑われにくいとも言えます。
そして年齢に特徴があります。
頭部白癬・ケルスス禿瘡は若年者が多く、約40%を10代以下の患者が占めていた。
子どもの病気という顔を持っています。ただし大人でも起こり、その場合はルートが違います(8章)。
6. 感染ルート① 柔道・レスリング
日本での頭部白癬を語るとき、外せないのが T. tonsurans(トリコフィトン・トンズランス) という菌です。
本邦では2000年頃より柔道、レスリングなどの格闘技選手間での集団発生が多発したのを機に日本全国へ広がった。
近年報告症例は減少しているものの、格闘技者間ではまだまだ流行は見られており、その原因としては〔…〕無症候性キャリアの存在が関与していると思われる。
組み合う競技なので、頭と頭、頭と体が直接触れます。道着やマットを介することもあります。
やっかいなのは、この菌の性質です。
本感染症の特徴は、炎症が弱く臨床症状や自覚症状が乏しいことである。
あまり症状が出ない。だから気づかれないまま、チーム内に広がります。
体に出た場合も紛らわしく、ガイドラインは「白癬に特徴的な皮疹を示さないことも多く、湿疹との鑑別が難しい」とし、競技者では「相手やユニフォームで擦れる部位に好発しやすい」としています。
柔道・レスリングをするお子さんの親御さんへ。
覚えておいていただきたいのは、この一点です——チームに白癬と診断された人が出たら、症状がなくても検査を考える。
ガイドラインもこう書いています。「所属する集団に本感染症と診断されている人がいる場合、本感染症であることを疑い真菌培養を行うことを推奨する」。
7. 感染ルート② ネコ
もうひとつが M. canis(ミクロスポルム・カニス) です。ガイドラインは「主にペット、特にネコから感染」と明記しています。
そして、こう書かれています——体部白癬と頭部白癬では1990年代からのペットブームにより台頭してきた。
ネコ(とくに子ネコ)は、症状がはっきりしないまま菌を持っていることがあります。だから「うちの猫はきれいだから」では判断できません。
動物由来の菌には、特徴があります。ガイドラインは「好獣性菌による例は治療開始後に炎症が強まることがあり、あらかじめ患者に説明しておくことが望まれる」としています。
飲み薬を始めてから赤みや腫れが強くなることがある。それは効いていないという意味ではありません。知らないと不安になって自己判断で中止してしまうので、先にお伝えしておきます。
また好獣性菌による例では「炎症が強い割には直接鏡検では菌量が少なく、多形紅斑や貨幣状湿疹などと誤診されやすい」とも書かれています。ここでも培養検査が効いてきます。
ペットに脱毛やかさぶたがあるなら、動物病院にも相談してください。人だけ治しても、感染源が残っていれば戻ってきます。
8. 感染ルート③ 自分の足
大人の方に関係が深いのが、このルートです。
日本でいちばん多い白癬菌は T. rubrum で、ガイドラインは頭部白癬の原因菌としてこう説明しています——「ヒト由来、多くは他部位の白癬から拡大」。
つまり自分の足の水虫や爪水虫から、頭に及ぶということです。
そして足白癬は、決して珍しくありません。
| 調査 | 結果 |
|---|---|
| 2007年の大規模調査(34,730人) | 足白癬ないし爪白癬の潜在罹患率24.7%。日本人の5人に1人が足白癬、10人に1人が爪白癬と推測された |
| 2023年の調査(FootCheck2023) | 足白癬13.7%(男性18.9%・女性9.6%)、爪白癬7.9%(男性11.6%) |
| 年齢の傾向 | 足白癬・爪白癬とも患者数は70歳代にピーク。80代以上が増加している |
高齢の方で、足に水虫があり、頭にフケと脱毛がある——この組み合わせのときは、頭も白癬かもしれないと考える理由があります。
逆に言えば、足の水虫をきちんと治すことは、頭を守ることでもあるということです(足白癬は塗り薬が推奨度A。こちらは塗り薬で治せます)。
9. 症状がないのに、うつす——無症候性キャリア
ガイドラインが独立して説明している、重要な状態です。
その他、特徴的な病型として、無症候性キャリアがある。これは、頭皮の自覚症状がなく、臨床所見が非常にわずかで確認困難で、頭皮の検査で菌が陽性になる保菌者を指す。無症候性キャリアは、症状は認めなくとも他人への感染源となる。
本人はまったく困っていない。見た目もほぼ正常。けれど菌を持っていて、人にうつす。
これが、格闘技の場で流行が終わらない理由だとされています。1人を治しても、周りに無症候性キャリアがいれば、また戻ってくる。
そして見つけ方にもコツがあります。
無症候性キャリアは、直接顕微鏡検査ではなく、ヘアブラシなどで頭皮を複数回擦過して培地に押し付ける真菌培養法で診断に至ることが多い。
10. どう調べるのか——ヘアブラシでできます
検査は難しくありません。むしろ驚くほど簡単です。
| 検査 | 内容とガイドラインの記述 |
|---|---|
| 直接鏡検(KOH法) | 毛や落屑を採って顕微鏡で見る。その場で分かるが、「感度が高いとはいえず、偽陰性となりやすいため注意が必要」 |
| 真菌培養 | 菌を育てて種類まで決める。「直接鏡検に比べて感度が高く、かつ、原因菌も多彩であるため、頭部真菌症を疑う場合には真菌培養を実施することが強く推奨される」 |
| ヘアブラシ法 | 簡易検査法として「プラスチック製で無菌の使い捨て歯ブラシ、ヘアブラシなどで軽く複数回擦過する」。痛みはありません |
| Wood灯検査 | 特殊な光を当てて、蛍光を発する部位から採取する |
ここで押さえていただきたいのは2点です。
- 顕微鏡だけでは見逃されることがある。「陰性でした」と言われても、疑わしければ培養の相談を
- 培養は強く推奨されている。菌の種類が分かると、感染源(格闘技なのかネコなのか自分の足なのか)まで見えてきます
採る場所にもコツがあり、ガイドラインは「ブラックドット、断裂毛、落屑の強い部位」など「なるべく病的な皮疹、病毛を呈する部位から」採るとしています。
11. 治療の実際——数週間から数か月の内服
日本で頭部白癬に保険適用がある飲み薬は、テルビナフィンとイトラコナゾールの2つです。
期間の目安として、ガイドラインはテルビナフィンで4〜8週の内服を勧めています。そして日本の実情について、こう書いています——欧米より少ない量で治療するため投与期間が長くなる傾向があり、イトラコナゾールで平均7.7週、テルビナフィンで平均6.9週。
数日で終わる治療ではありません。足の水虫の塗り薬とは、まったく感覚が違います。
途中でやめないでください。
見た目が良くなっても、毛包の中に菌が残っていれば再発します。ガイドラインが「外用療法で軽快しても毛包内に菌が残存する」と書いているのは、そういう意味です。
そして飲み薬なので、定期的な血液検査が必要になることがあります。面倒に感じられるかもしれませんが、それも治療の一部です。
12. 家族・チームで気をつけること
この病気はうつるので、本人だけの問題では終わりません。
| 場面 | 考えること |
|---|---|
| 格闘技のチーム | 診断された人が出たら、症状がなくても検査を検討(ガイドラインが真菌培養を推奨)。無症候性キャリアが流行を続かせます |
| ペットがいる家庭 | ネコに脱毛やかさぶたがないか。動物病院にも相談を。人だけ治しても戻ってきます |
| 家族に足白癬の人がいる | 足白癬・爪白癬は塗り薬や飲み薬で治せます。足を治すことが、頭を守ることになります |
| 共有するもの | タオル、枕カバー、帽子、ヘアブラシ、寝具。分ける・こまめに洗う |
| 診断がついたら | 学校や部活の指導者に伝えるかどうかは、主治医と相談してください。集団での対策が必要な場合があります |
過剰に恐れる必要はありません。これは日常の接触で簡単に全員にうつるような病気ではなく、頻度も足白癬の1%未満です。
大事なのは、感染源を一緒に断つという視点を持つことです。本人の治療と、周りの確認を、セットで考える。それだけで再発は減ります。
13. 🚨 受診の目安と、上手なかかり方
こんなときは皮膚科へ
| サイン | 理由 |
|---|---|
| 頭のフケ・かゆみに、脱毛を伴う | 単なる湿疹ではない可能性 |
| 毛穴に黒い点が見える | ブラックドット。白癬らしいサインです |
| 塗り薬でよくなり、やめると戻るを繰り返す | 3章の経過そのものです |
| 🚨 頭が腫れて痛い・膿が出る・押すと痛い | ケルスス禿瘡の可能性。早めに |
| 🚨 首や耳の後ろのリンパ節が腫れている | 同上。炎症が深く及んでいるサイン |
| 柔道・レスリングをしている/チームに白癬の人がいる | 症状がなくても検査の対象になりえます |
| ネコを飼っている/子ネコを迎えた | M. canisの感染ルート |
| 自分に足の水虫・爪水虫がある | そこから頭に及ぶ経路があります |
診察で伝えること
- いつから、どこに、どんなふうに出ているか
- 今使っている塗り薬(市販薬も)と、その効き方——「塗ると良くなるがやめると戻る」は重要な情報です
- 格闘技をしているか。チームに白癬と言われた人がいるか
- ペットを飼っているか。ペットに脱毛やかさぶたがないか
- 自分や家族に足の水虫・爪水虫があるか
聞いてよい質問
- 「白癬の検査をしてもらえますか」——これが最重要の一言です
- 「培養もしていただけますか」(顕微鏡だけでは偽陰性がありえます)
- 「飲み薬での治療になりますか。どのくらいの期間ですか」
- 「家族やチームメイトも調べたほうがいいですか」
- (ペットがいる方)「動物病院にも相談したほうがいいですか」
最後に。
頭部白癬は、白癬全体の0.6%という珍しい病型です。だから最初から疑われるとは限りません。ここまで読んでくださった方は、その珍しい可能性を知っているということになります。
この病気の怖さは、重さではなく「診断が違うと、治療が正反対になる」ところにあります。湿疹ならステロイド、白癬なら抗真菌薬の飲み薬。逆をやると、時間だけが過ぎていきます。
だから必要なのは、たった一言です。「白癬の検査をしてもらえますか」
14. よくある質問
頭部白癬は、水虫の塗り薬で治せますか?
治せません。皮膚真菌症診療ガイドライン2025は、頭部白癬の治療について「原則的に経口抗真菌薬テルビナフィンまたはイトラコナゾールによる」とし、飲み薬を推奨度A(強く勧める)としています。そのうえで「外用抗真菌薬による頭部白癬の治療は、悪化する可能性があるとのことで現時点においてわが国では推奨されていない」と明記しています。
理由は、白癬菌が毛の中や毛包の奥にいるためです。ガイドラインはT. tonsurans感染症についても「外用療法で軽快しても毛包内に菌が残存するため抗真菌薬内服療法を優先することを勧める」と書いています。足の水虫は塗り薬で治せますが、頭は構造が違います。
なお抗真菌薬入りのシャンプーは、菌を保有している人への対策や再発予防として考慮してもよいとされていますが、治療そのものではありません。
湿疹だと言われてステロイドを塗っています。大丈夫でしょうか?
頭部白癬は、頭部脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎などと診断されやすい病気です。ガイドラインには、化膿して痛むケルスス禿瘡という重い形について「この場合は初期に湿疹の診断を受けステロイド治療を受けていることが多い」という記述があります。
ステロイドは炎症を抑える薬なので、一時的にかゆみや赤みは軽くなることがあります。しかし菌そのものには効かないため、その間に菌は増えられます。だから、塗って一時的によくなり、やめると悪化し、また塗る、という経過をたどりやすいのです。
ステロイドを塗っていて良くならない頭の湿疹があるなら、自己判断でやめるのではなく「白癬の検査をしてもらえますか」と相談してください。真菌の検査は、その場でできます。
どんな人がかかるのですか?
3つの感染ルートがあり、それぞれ年代が違います。
第一に柔道やレスリングなどの格闘技です。T. tonsuransという菌が「2000年頃より柔道、レスリングなどの格闘技選手間での集団発生が多発したのを機に日本全国へ広がった」とガイドラインは書いています。近年は報告が減っているものの、まだ流行は見られるとされています。
第二にペット、特にネコです。M. canisという菌が主にネコから感染し、1990年代からのペットブームにより台頭してきたとされています。
第三に自分の足です。日本でいちばん多い白癬菌T. rubrumは「多くは他部位の白癬から拡大」するとされ、足の水虫や爪水虫から頭に及ぶ経路があります。日本人の5人に1人が足白癬という推計もあるので、高齢の方ではこのルートが問題になります。
なお統計上は若い方が多く、頭部白癬・ケルスス禿瘡の約40%を10代以下が占めていたという調査があります。
症状がなくても、人にうつすことがありますか?
あります。ガイドラインは無症候性キャリアという状態を説明しています。「頭皮の自覚症状がなく、臨床所見が非常にわずかで確認困難で、頭皮の検査で菌が陽性になる保菌者」のことで、「症状は認めなくとも他人への感染源となる」と明記されています。格闘技の場で流行が続く原因のひとつが、この存在だと考えられています。
見つけ方にも工夫があり、無症候性キャリアは顕微鏡で見る検査では分からず「ヘアブラシなどで頭皮を複数回擦過して培地に押し付ける真菌培養法で診断に至ることが多い」とされています。使い捨ての歯ブラシやヘアブラシで頭皮をこするだけの簡単な検査です。
ですからガイドラインは「所属する集団に本感染症と診断されている人がいる場合、本感染症であることを疑い真菌培養を行うことを推奨する」としています。部活の仲間や家族に診断された人がいるなら、症状がなくても調べる価値があります。
治療にはどのくらいかかりますか?
数週間から数か月の内服が必要です。ガイドラインは、テルビナフィンについて4〜8週の内服を勧めるとしています。日本の実情では欧米より少ない量で治療するため投与期間が長くなる傾向があり、イトラコナゾールで平均7.7週、テルビナフィンで平均6.9週というデータも紹介されています。
足の水虫の塗り薬のように数日で楽になる、という治り方ではありません。途中でやめると菌が毛包に残って再発します。
もうひとつ知っておいていただきたいことがあります。ペットなど動物由来の菌による場合、ガイドラインは「治療開始後に炎症が強まることがあり、あらかじめ患者に説明しておくことが望まれる」としています。飲み始めて一時的に赤みや腫れが強くなっても、それは効いていないという意味ではありません。自己判断で中止せず、主治医に相談してください。
同じガイドラインは、足と爪の白癬もカバーしています。
皮膚真菌症診療ガイドライン2025によれば、皮膚糸状菌症のうち頭部白癬は0.6%にすぎず、足白癬51.5%・爪白癬33.3%で全体の85%弱を占めます。日本人の7人に1人が足白癬、13人に1人が爪白癬という調査結果もあります。
そしてかゆみのない「角化型」は乾燥肌と間違われ、爪には市販薬が届きません(→足白癬・爪白癬の記事)。
参考資料
- 日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」日本皮膚科学会雑誌 135(13): 2511-2566, 2025(本記事の推奨度・推奨文・疫学・数値は、すべてこの資料にもとづいています)
- 公益社団法人日本皮膚科学会「一般公開ガイドライン」