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MEDICALLY REVIEWED BEAUTY & HEALTH

足白癬・爪白癬(水虫)
——日本人の7人に1人。かゆくない水虫があります

2023年に16年ぶりに行われた全国調査(Foot Check 2023)では、足白癬が13.7%、爪白癬が7.9%——日本人の7人に1人が足白癬、13人に1人が爪白癬という結果でした。
これは「水虫で受診した人」の数字ではありません。足とは関係のない理由で皮膚科を受診した人の足を、片っ端から調べた結果です。つまり、そのほとんどが自覚していなかった人です。
そして皮膚真菌症診療ガイドライン2025には、こんな一文があります——「直接鏡検を怠ったために診断を誤り、患者に迷惑をかけている事例は枚挙にいとまがない」
かゆくないから水虫ではない、とは限りません。そして爪には、市販薬は届きません。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年8月25日 読了:約17分

1. 先に結論

よくある思い込みガイドライン2025の記述
かゆくないから水虫ではない角化型は「炎症が軽微で…痒みはほとんどみられない」
見ればだいたい分かる「直接鏡検を怠ったために診断を誤り、患者に迷惑をかけている事例は枚挙にいとまがない」
症状が消えたら治った「菌が死滅していなくても臨床症状が消失する」ため、中断による再発が非常に多い
2週間塗れば十分目安は指の間で2か月以上、水疱型で3か月以上、角化型で6か月以上
爪にも市販薬を塗る爪用の外用液はいずれも処方薬。しかも完全治癒率は15〜18%
爪は塗り薬で対応する飲み薬の完全治癒率は59.4%。推奨度も飲み薬A・爪外用液B
かかとは軽石で削る角化型では「軽石を含む」機械的刺激の「中止や軽減」が指導内容

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

水虫の治療でつまずく理由は、たいてい「薬が弱いから」ではなく「診断がついていない」か「早くやめてしまう」のどちらかです。

皮膚科ではその場で顕微鏡をのぞいて、菌がいるかどうかを確認できます。数分で終わり、保険が使えます。まずそこからです。

2. 【核心】7人に1人。しかも、気づいていません

まず、この病気の広がり方から。

日本臨床皮膚科医会が2023年に、16年ぶりの全国調査「Foot Check 2023」を行いました。調べ方に特徴があります——足とは関係のない理由で皮膚科を受診した患者さんの足を、検診として調べるという方法です。だから「水虫を自覚して受診した人」ではなく、自分では気づいていなかった人が数字に入ります。

足白癬・爪白癬の潜在罹患率(全国調査) 足白癬 2007年 21.6%(5人に1人) 2023年 13.7%(7人に1人) 爪白癬 2007年 10.0%(10人に1人) 2023年 7.9%(13人に1人) ※足以外の理由で皮膚科を受診した人の足を調べた結果。自覚のない人が多く含まれます ※2023年は男性18.9%・女性9.6%(足白癬)、男性11.6%・女性5.8%(爪白癬)

日本皮膚科学会・日本医真菌学会「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」記載のFoot Check 2007/Foot Check 2023より作成。

16年で減っています。ガイドラインはその理由として「新規抗真菌薬の治療効果により、治癒した患者が増え、潜在罹患率が減少した可能性」を挙げています。治療が届いた分だけ、確かに減ったということです。

ただし、もうひとつの見方も併記されています。2023年の調査は確定診断の条件が厳しく(直接鏡検の施行率が2007年の79.2%に対し、2023年は98.8%)、そのぶん「白癬あり」と確定した人が減った可能性もある、と。減ったとはいえ7人に1人です。

皮膚科の外来では、もっと身近な病気です。

日本医真菌学会の2021年全国調査によれば、皮膚真菌症の患者さんは皮膚科を受診した新規外来患者の10.0%にのぼります。そのうち皮膚糸状菌症(白癬)の内訳は、足白癬51.5%、爪白癬33.3%、体部白癬8.3%、股部白癬4.9%、手白癬1.5%、頭部白癬0.6%——足と爪だけで85%弱を占めます。

そして注目すべき変化があります。前回(2016年)調査と比べ、足白癬は57.4%から51.5%に減った一方、爪白癬は28.3%から33.3%に増えています。足の皮膚は良くなり、爪は取り残されている——この記事の後半は、そこに割きます。

3. 3つの型——そして「かゆくない水虫」があります

ガイドラインは、手・足白癬を3つの臨床型に分けています。ここを知らないと、自分の足を正しく疑えません。

症状(ガイドラインの記述)かゆみ
1. 指(趾)間型紅斑、浸軟、鱗屑が指の間に限局。白癬菌は「湿度が高く皮膚が柔らかい指趾間から角層に侵入する」あり
2. 小水疱汗疱型菌が指趾腹や掌蹠に広がると、水疱や汗疱状の鱗屑がみられる。「この時期は急性炎症により痒みが強く、id反応による白癬疹が起こりやすい」強い
3. 角化型病変が踵や母指球に及ぶ。「炎症が軽微で掌蹠全体に及ぶ角質増殖が主症状となり、痒みはほとんどみられないほとんどなし

3番目の「角化型」が、この記事でいちばん知ってほしい型です。

かかとがガサガサする。粉をふく。皮が厚い。ひび割れる。——それだけで、かゆくない

だから多くの方が「乾燥肌」だと思って保湿剤を塗っています。けれど角質が厚くなっているのは、そこに菌がいるからかもしれません。角化型は治療にいちばん時間がかかる型でもあり、外用の目安は6か月以上です。

足白癬の3つの型と、塗る期間の目安 1. 指(趾)間型 指の間の赤み・ふやけ 皮むけ かゆみ:あり 2か月以上 2. 小水疱汗疱型 水ぶくれ・皮むけが 足の裏まで広がる かゆみ:強い 3か月以上 3. 角化型 かかとの角質が厚く なる・粉をふく かゆみ:ほとんどなし 6か月以上 「かゆくないから水虫ではない」とは言えません 角化型は乾燥肌と間違われやすく、爪白癬を合併していることも多い型です。 ※期間は外用薬を塗り続ける目安。菌が消えたことを確認してから、さらに1か月続けます ※爪白癬を合併する場合は、飲み薬が第一選択とされています

「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」第1章1.1 手・足白癬の記述より作成。

4. 【重要】学会が「枚挙にいとまがない」と書いたこと

ガイドラインの真菌検査の章に、めずらしく強い調子の一文があります。そのまま引用します。

「皮膚真菌症には貨幣状湿疹や接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、汗疱あるいは異汗性湿疹、紅色陰癬など鑑別すべき疾患が多く、直接鏡検を怠ったために診断を誤り、患者に迷惑をかけている事例は枚挙にいとまがない。」

——日本皮膚科学会・日本医真菌学会「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」第2章 真菌検査法より

学会が、自分たちの領域についてここまで書くのは異例です。それだけ、見た目だけの判断で間違いが起きているということです。

間違えられやすい相手を並べると、こうなります。

水虫と間違われやすい病気どんなもの
汗疱・異汗性湿疹手足に小さな水疱が出る湿疹。小水疱汗疱型の足白癬とよく似ます
貨幣状湿疹コイン状の湿疹。かゆみを伴い、赤くじくじくします
接触皮膚炎いわゆるかぶれ。水虫薬そのものでかぶれていることもあります
脂漏性皮膚炎皮脂の多い部位の皮膚炎
紅色陰癬細菌(コリネバクテリウム)による、指の間などの病変

方向を間違えると何が起こるか。湿疹に抗真菌薬を塗り続けても良くならず、逆に白癬にステロイドを塗ると菌が広がります。そして厄介なことに、抗真菌薬でかぶれることもあります。「塗っているのに悪くなる」の正体が、薬そのものというケースです。

だから最初の一歩が決定的に大事になります。顕微鏡で、菌がいるかどうかを見ること。

5. 診断は、その場で顕微鏡を見れば分かります

「検査」と聞くと大がかりに思えますが、白癬の基本の検査(直接鏡検・KOH法)は驚くほど簡単です。ガイドラインが示す手順は、こうです。

手順内容
1病変部から検体を採取(鱗屑、水疱の蓋、爪の小片など)
2スライドガラスに置き、カバーガラスをのせる
3すき間にKOH(水酸化カリウム)溶液を1〜2滴たらし、穏やかに加温して角質を溶かす
4顕微鏡で観察する。白癬なら菌糸や分節胞子が見えます

ガイドラインはこの検査の意義を「迅速かつ確実な診断法であり、これにより直ちに治療が開始できる」と書いています。痛みはなく、その日のうちに答えが出ます。保険が使えます。

受診のコツ:検査の前に、薬を塗らないでください。

抗真菌薬を塗ったあとだと菌が見つかりにくくなり、正しい診断が難しくなります。市販薬を使っている方は、受診の数日前から中止していくのが理想です。使っている薬は捨てずに持参して、そのまま医師に見せてください。

また、検体を採る場所も結果を左右します。ガイドラインは爪について「爪切りで爪甲剝離部位や爪の先端部を除去し、とくに爪床に」近い部分から採ることが重要だとしています。切って捨てている先端ではなく、その奥に菌がいます。

なお、爪白癬に限ってはイムノクロマト法の検査キット(白癬菌抗原定性)も使えるようになりました。ただし日本皮膚科学会は2021年のステートメントで、位置づけをはっきりさせています——「爪白癬の診断においてはKOH直接鏡検が標準的な検査法であり、本キットはあくまで」補助である、と。保険で算定できるのも「KOH直接鏡検が陰性であったものの臨床所見等から爪白癬が疑われる場合」「KOH直接鏡検が実施できない場合」に限られます。主役は、あくまで顕微鏡です。

6. 【核心】なぜ再発するのか——菌は死んでいません

ここが、水虫という病気のいちばん意地の悪いところです。ガイドラインの説明を読んでください。

「菌の発育が止まり、炎症反応が止むと、菌が死滅していなくても臨床症状が消失するため、治療中断による再発が非常に多いことが手足白癬治療の問題点である。」

——ガイドライン2025 第1章 1.1 手・足白癬より

症状が消えること菌がいなくなることは、まったく別です。

かゆみが引いて、皮むけが治まる。見た目はすっかりきれいになる。——その時点で菌はまだ生きています。ただ、暴れるのをやめただけです。そこで薬をやめると、また増えて、また症状が出ます。「毎年夏になると再発する」という方の多くは、実際には一度も終わっていないのだと思います。

ガイドラインは、この問題の背景にある事情まで書いています——「治験データは治療期間を2週間または1か月と設定しており、完全治癒までの塗布期間が臨床医の判断に委ねられている現状がある」

つまり、薬の箱に書いてある期間は「試験でそう設定した期間」であって、「菌が消えるまでの期間」ではないということです。ここが、市販薬を使う多くの方が誤解している点だと思います。

7. 塗る期間の目安は、2か月・3か月・6か月

では、どれくらい塗るのか。ガイドラインは型ごとに「一応の目安」を示しています。

外用を続ける期間の目安
指(趾)間型2か月以上
小水疱汗疱型3か月以上
角化型6か月以上

市販薬のパッケージから受ける印象より、はるかに長いはずです。「2週間で良くならないから効かない」ではなく、「2週間ではまだ途中」というのが実際のところです。

そして、外用では足りない場合の記述もあります。

2つ目が特に重要です。足の皮膚と爪の両方に菌がいる場合、塗り薬だけでは足りません。爪が菌の「基地」として残り、そこから足の皮膚に再感染が続くからです。

8. ガイドラインが挙げる、塗り方の2つのコツ

ガイドラインは「治癒に導くコツ」として、2つだけ挙げています。この2つは覚えて帰る価値があります。

コツ1:病巣より一回り広く塗ること

症状が出ている場所だけが、菌のいる範囲ではありません。見えている縁の外側にも菌は広がっています。指の間だけでなく足裏全体に、というのが実際の指導になることが多いです。

コツ2:鏡検で菌陰性を確認後、さらに1か月塗布を追加すること

ここが決定的です。「顕微鏡で菌がいないことを確認してから、さらに1か月」——つまり自分の目や感覚では、やめどきは決められません

そして、このコツは市販薬だけでは実行できません。顕微鏡は皮膚科にしかないからです。

この2つを見ると、なぜ水虫が「何年も治らない病気」になりがちなのかが分かります。やめどきを決める道具を持たないまま、自己判断で始めて自己判断でやめている——それが繰り返しの正体です。

9. 【重要】爪には、市販薬が届きません

ここから後半、爪の話です。前半よりさらに、知られていないことが多い領域です。

まず、はっきりさせておきます。ドラッグストアで買える水虫薬に、爪白癬に使えるものはありません。

爪に使う外用液は現在2つあり、いずれも医療機関で処方される薬です。

ガイドラインの記述
エフィナコナゾール
爪外用液10%
2014年発売のトリアゾール系。「ケラチン親和性が低く爪床まで薬剤が浸透して」効果を発揮
ルリコナゾール
爪外用液5%
2016年発売のイミダゾール系。「ケラチン親和性が高く爪床まで高い薬剤濃度を保って」効果を発揮

そして両方について、ガイドラインはこう書いています——「ともに直接鏡検または培養などにより爪白癬と確定診断された患者に保険適用を有する」診断がついてはじめて使える薬だということです。

なぜ普通の水虫薬が爪に届かないのか。

爪は、皮膚とは構造がまったく違います。硬く密なケラチンの板であり、その下(爪床)に菌がいます。上の2剤がわざわざ「爪床まで浸透する/爪床まで高い濃度を保つ」と説明されているのは、それが爪用の薬に求められる特別な性質だからです。

足の皮膚用のクリームを爪の表面に塗っても、菌のいる場所に届きません。「毎日きちんと塗っているのに変わらない」のは、根気の問題ではありません。

10. 爪白癬の治療を、推奨度で並べる

ガイドライン2025は、爪白癬の治療に5つの臨床疑問(CQ3〜CQ7)を立てています。推奨度と数字を並べます。

爪白癬:飲み薬と塗り薬で、結果がこれだけ違います 飲み薬(推奨度A / 強く勧める) ホスラブコナゾール 12週内服 59.4% テルビナフィン 12週内服(臨床的治癒率) 48% 爪に塗る外用液(推奨度B / 勧める) エフィナコナゾール爪外用液10% 48週外用 17.8% ルリコナゾール爪外用液5% 48週外用 14.9% ※いずれも完全治癒率(臨床的治癒かつ菌学的治癒)。試験の対象や条件は薬ごとに異なります ※飲み薬には肝機能への影響があり、適する人・適さない人が分かれます

「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」CQ3〜CQ7の記載データより作成。

CQ推奨度推奨文
CQ5Aテルビナフィン内服を行うよう強く勧める
CQ7A爪白癬にホスラブコナゾールの内服を行うよう強く勧める
CQ6Bイトラコナゾールのパルス療法(1週間投与後3週間休薬)を行うように勧める
CQ3B肝機能障害等で内服が困難、あるいは内服薬を希望しない中等症以下の爪白癬患者にエフィナコナゾール爪外用液10%を用いた外用療法を行うよう勧める
CQ4B同上の条件でルリコナゾール爪外用液5%を用いた外用療法を行うよう勧める

読み取れることは、はっきりしています。

爪白癬の第一選択は飲み薬です。爪外用液が「勧める(B)」にとどまり、しかも「内服が困難、あるいは内服薬を希望しない中等症以下の患者に」という条件つきなのは、そういう意味です。

ガイドライン自身も、ルリコナゾール爪外用液について「経口抗真菌薬に比べると治癒率が低く、再発に関するデータがないので…推奨度をBとした」と理由を書いています。

ただし飲み薬なら誰でもよい、という話ではありません。ガイドラインは副作用にも触れています。ホスラブコナゾールでは「薬剤による酵素誘導とされるγ-GTPの上昇は10%以上の患者で認められ、一部の患者ではAST、ALTの上昇等、肝機能障害が生じるため、適宜肝機能検査を行うことが推奨されている」とされ、「頻度は低いが、薬剤投与早期の薬疹にも注意を払う必要がある」とも書かれています。

飲み合わせの問題もあります。だからこそ「飲み薬か塗り薬か」は、健診結果や普段の薬を見たうえで医師と決めることです。この記事でお伝えしたいのは、「その選択肢が存在することを知らないまま、市販薬を塗り続けないでほしい」ということだけです。

再発率にも差があります。

ガイドラインが紹介する治癒後5〜7年の長期追跡では、テルビナフィン内服群の菌学的再発率22.8〜32%・臨床的再発率20.5〜40%に対し、イトラコナゾールパルス療法群は菌学的53.1〜59.1%・臨床的48.2〜50%と、テルビナフィン群がおよそ半分でした。費用対効果を検討した報告でも、いずれもテルビナフィンが勝っていたとされています。

11. 爪が白いのは、全部が水虫ではありません

4章と同じ話が、爪でも起きます。ガイドラインは書いています——「爪変形には爪真菌症のほか、掌蹠膿疱症、尋常性乾癬、扁平苔癬、厚硬爪甲、爪下腫瘍など多くの疾患があり、確定診断のために真菌検査を行う」

爪の変化を起こす病気備考
掌蹠膿疱症手のひら・足の裏に膿疱が出る病気。爪も変形します
尋常性乾癬爪に点状のくぼみや、爪が浮く変化が出ます
扁平苔癬爪が薄くなる、縦の線が入るなど
厚硬爪甲爪が厚く硬くなる状態。加齢や圧迫でも起こります
爪下腫瘍爪の下にできる腫瘍。1本だけの変化が続く場合は必ず受診を

高齢の方の分厚く白い爪は、水虫のこともあれば、長年の靴の圧迫による変化のこともあります。見た目で決めず、顕微鏡で確かめる。これが繰り返しの結論になります。

特に1本の爪だけに、色や形の変化が続いている場合は、真菌以外の可能性も含めて早めに皮膚科を受診してください。爪の下の色素性の変化には、注意を要するものが含まれます。

12. 【やってはいけない】軽石でこする

ガイドラインの生活指導は、たった2行です。短いので、そのまま引用します。

「生活指導としては、指(趾)間型、小水疱型では局所が蒸れないようにすること、角化型では過角化をもたらす機械的刺激(健康サンダルや軽石を含む)の中止や軽減をアドバイスする。」

——ガイドライン2025 第1章 1.1 手・足白癬より

「軽石」と「健康サンダル」が、名指しで挙げられています。

かかとがガサガサしていると、削りたくなります。角質ケアのグッズもたくさん売られています。けれど角化型の足白癬では、それが逆方向です。理由は3つ考えられます。

そして、型によって指導が正反対であることにも注目してください。指の間・水疱のタイプは「蒸れないように」、角化型は「こすらないように」。自分がどの型かを知らないままでは、良かれと思ったケアが裏目に出ます。

このサイトが広告を載せないもの、に1つ追加します。

当サイトは編集方針で、記事のなかで根拠をもって推奨できないものは広告として掲載しない、と公開しています。今回、かかと用の角質削り・軽石・角質除去グッズをそこに加えました。ガイドラインが名指しで「中止や軽減」を指導している以上、当サイトが勧めることはありません。

13. 増えている、薬が効きにくい白癬菌

ガイドライン2025で、前の版から大きく記述が増えたのが薬剤耐性です。

ガイドラインは「スクアレンエポキシダーゼ(SQLE)遺伝子の変異が主な原因とされるテルビナフィン耐性株が増加しており、これによる白癬治療の課題が増加している」と書いています。テルビナフィンは、市販薬にも医療用にも広く使われている代表的な成分です。

さらに、新しい菌の名前が出てきます。

T. indotineae(トリコフィトン・インドチネエ)

2019年に加納らが、日本国内に在留していたインド人およびネパール人の体部白癬から分離した菌です。ガイドラインは「ヒトからヒトへ感染する好人性菌であり、多くはテルビナフィンに耐性を示す」とし、臨床的な特徴として「広範囲に炎症の強い皮疹が認められ、経過も長い例が多い」と記しています。

ただし、これは「もう手がない」という話ではありません。ガイドラインは、テルビナフィン耐性株に対してルリコナゾールが代替治療として有望であり、28日間の局所治療で完全除菌を達成したという報告を紹介しています。最小発育阻止濃度の比較でも、ルリコナゾールのほうが高い抗真菌活性を示したとされています。

お伝えしたいのは、薬を漫然と使い続けないことです。ガイドラインも「抗真菌薬内服で菌が陰性化しない症例では、近年みられる薬剤耐性株による感染を考慮する必要がある」としています。塗っても飲んでも変わらないときは、菌の種類まで調べられる皮膚科に相談してください。培養検査で菌種を特定すれば、薬を選び直せます。

14. 70代がピーク——高齢者と爪白癬

年齢の話をします。日本医真菌学会の2021年全国調査によれば、足白癬・爪白癬の患者数はともに70歳代にピークがあり、高齢化に伴って80代以上が増えています。

80代以上が占める割合2016年2021年
足白癬の患者のうち12.1%16.7%
爪白癬の患者のうち17.6%21.9%

爪白癬は皮膚糸状菌症全体のなかでも28.3%から33.3%へと割合が増えています。足の皮膚の水虫は減り、爪の水虫は増えている。これが今の日本の姿です。

ご高齢のご家族の足を、見たことがありますか。

足の爪は、自分では見えにくく、手も届きにくい場所です。腰や膝が痛ければなおさらで、本人が気づいていないことがよくあります。

そして厚く変形した爪は、靴の中で痛みの原因になり、歩き方に影響します。膝や腰の負担、外出のおっくうさにつながることもあります(→変形性膝関節症の記事)。

爪切りが難しいほど厚くなっている場合、皮膚科では爪を削る処置も行われます。ご本人が「歳のせい」と思っていることの一部は、治療の対象かもしれません。

なお、性別の傾向にも触れておきます。ガイドラインは「本邦では欧米に比べ足白癬・爪白癬の性差が少なく、ともに男女比は1.3:1であった」としています。Foot Check 2023でも足白癬は男性18.9%・女性9.6%、爪白癬は男性11.6%・女性5.8%で、男性に多いものの、女性も1割前後です。「水虫は男性の病気」ではありません。

15. 🚨 受診の目安と、上手なかかり方

こんなときおすすめの行動
市販薬を1か月使って変わらない皮膚科へ。そもそも白癬でない可能性と、薬でかぶれている可能性の両方があります
かかとがガサガサ・粉をふく(かゆくない)角化型の可能性。保湿を続ける前に一度、顕微鏡検査を
爪が白く濁る・厚くなる・ボロボロになる皮膚科へ。市販薬では届きません。飲み薬という選択肢があります
足の皮膚と爪の両方に症状があるガイドラインは「爪白癬合併例では、抗真菌薬内服を第一選択とすべきである」としています
毎年同じ季節に繰り返している治っていない可能性。やめどきを顕微鏡で確認してもらってください
飲み薬を使っても菌が消えない薬剤耐性株の可能性。培養検査で菌種を調べられます
1本の爪だけ、色や形の変化が続く真菌以外の病気の可能性も含めて、早めに受診してください
糖尿病などで足の傷が心配な方自己判断のケアは避け、主治医または皮膚科に相談を

受診のときの、5つのコツ。

  1. 受診の数日前から、抗真菌薬を塗らない(菌が見つかりにくくなります)
  2. 使っている市販薬を持参する(成分でかぶれている可能性を判断できます)
  3. 爪を短く切りすぎない(検体は爪の先端ではなく、その奥から採ります)
  4. 足の爪も見せる(皮膚だけの相談のつもりでも、爪に菌がいれば方針が変わります)
  5. いつからか、どう変化したかを伝える(季節性の有無は重要な情報です)

この記事で、あえて書かなかったこと。

「バスマットを分ける」「スリッパを共用しない」「24時間以内に足を洗えば感染しない」——水虫の予防としてよく語られる話です。

ただ、皮膚真菌症診療ガイドライン2025には、これらの家庭内予防に関する具体的な指導は書かれていません。生活指導として明記されているのは、12章で引用した2行(蒸れないように/こすらないように)だけです。家族内感染については「培養で調べれば由来の推定が可能で、感染拡大防止に有用な情報となり得る」と触れられている程度でした。

当サイトは、一次資料に書かれていないことを書かない方針です(→編集方針)。足を清潔にして乾かすことは、それ自体が理にかなった習慣です。ただ「これをやれば防げる」と数字で言えるだけの根拠を、今回のガイドラインからは示せませんでした。

最後に、この記事の要点を3つだけ。

1. かゆくない水虫があります。かかとの角化型は、乾燥肌と間違われ続けています。

2. やめどきは、自分では分かりません。症状が消えても菌は生きています。顕微鏡で確認してから、さらに1か月です。

3. 爪には、市販薬が届きません。爪用の薬はすべて処方薬で、しかも第一選択は飲み薬です。

16. よくある質問

かゆくないのですが、水虫の可能性はありますか?

あります。むしろ、かゆくないタイプこそ見逃されています。

ガイドライン2025は足白癬を3つの型に分けています。指(趾)間型は指の間に紅斑・浸軟・鱗屑が出るタイプ、小水疱汗疱型は水疱が出て「急性炎症により痒みが強く」なるタイプ、そして角化型です。角化型についてガイドラインは「炎症が軽微で掌蹠全体に及ぶ角質増殖が主症状となり、痒みはほとんどみられない」と明記しています。

かかとがガサガサする、粉をふく、皮が厚くなる——それが唯一の症状で、かゆみがないため、乾燥肌だと思って保湿剤を塗り続けている方が少なくありません。

角化型は治療にいちばん時間がかかる型でもあり、外用の目安は6か月以上とされています。また角化型は爪白癬を合併していることが多く、その場合ガイドラインは「爪白癬合併例では、抗真菌薬内服を第一選択とすべきである」としています。かゆみの有無で判断せず、皮膚科で顕微鏡検査を受けてください。

市販の水虫薬でよくなりますか。どのくらい塗ればいいですか?

まず、それが本当に白癬かどうかを確かめることが先です。ガイドライン2025は「皮膚真菌症には貨幣状湿疹や接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、汗疱あるいは異汗性湿疹、紅色陰癬など鑑別すべき疾患が多く、直接鏡検を怠ったために診断を誤り、患者に迷惑をかけている事例は枚挙にいとまがない」と書いています。学会自身がここまで踏み込んで書くのは異例です。

そのうえで、白癬と確定した場合の外用期間の目安が示されています。指(趾)間型では2か月以上、小水疱汗疱型では3か月以上、角化型では6か月以上です。市販薬のパッケージにある使用期間よりも、かなり長い期間が想定されています。

理由も明快で、ガイドラインは「菌の発育が止まり、炎症反応が止むと、菌が死滅していなくても臨床症状が消失するため、治療中断による再発が非常に多いことが手足白癬治療の問題点である」と書いています。見た目が良くなった時点では、菌はまだ残っています。

ガイドラインが挙げる塗り方のコツは2つ、「病巣より一回り広く塗ること」「鏡検で菌陰性を確認後さらに1か月塗布を追加すること」です。2つ目は、皮膚科で顕微鏡を見てもらわないと実行できません。

爪が白く濁っています。市販の水虫薬を塗っていますが変わりません。

爪白癬に対して、市販の水虫薬では届きません。爪に使う外用液(エフィナコナゾール爪外用液10%、ルリコナゾール爪外用液5%)は、いずれも医療機関で処方される薬で、直接鏡検または培養などにより爪白癬と確定診断された患者に保険適用があります。

さらに数字を知っておいてください。ガイドライン2025によれば、エフィナコナゾール爪外用液10%を48週まで外用した後の52週での完全治癒率は17.8%と15.2%、ルリコナゾール爪外用液5%の48週後の完全治癒率は14.9%です。

一方、飲み薬のホスラブコナゾールは12週間の内服とその後36週間の経過観察で完全治癒率59.4%(対照群5.8%)、テルビナフィン内服は12週間投与で臨床的治癒率48%(プラセボ6%)でした。推奨度も、テルビナフィン内服とホスラブコナゾール内服がA(行うよう強く勧める)、爪外用液の2つがB(行うよう勧める)です。

ガイドラインは爪外用液について「肝機能障害等で内服が困難、あるいは内服薬を希望しない中等症以下の爪白癬患者に」という条件をつけています。つまり第一選択は飲み薬です。市販薬を塗り続けるより、皮膚科で選択肢を確認してください。

かかとの角質を軽石でこすってもいいですか?

角化型の足白癬であれば、すすめられません。ガイドライン2025の生活指導には、はっきりこう書かれています。

「指(趾)間型、小水疱型では局所が蒸れないようにすること、角化型では過角化をもたらす機械的刺激(健康サンダルや軽石を含む)の中止や軽減をアドバイスする」軽石が名指しで挙げられています。

角質が厚くなるのは菌がそこにいるからで、こすって削っても菌はいなくなりません。むしろ機械的な刺激そのものが角質を厚くする方向に働き、さらに削った角質片には菌が含まれているため、周囲に撒くことにもなります。健康サンダル(足つぼサンダル)も同じ理由で挙げられています。

角化型に必要なのは削ることではなく、抗真菌薬を6か月以上続けること、そして爪白癬を合併していれば飲み薬を検討することです。

なお、指の間や水疱のタイプでは指導の中身が逆で、こちらは蒸れないようにすることが挙げられています。同じ水虫でも、型によって生活の注意点が違います。

水虫の薬が効きにくくなっている、という話を聞きました。本当ですか?

薬剤耐性の白癬菌は、実際にガイドライン2025が繰り返し取り上げている問題です。ガイドラインは「スクアレンエポキシダーゼ(SQLE)遺伝子の変異が主な原因とされるテルビナフィン耐性株が増加しており、これによる白癬治療の課題が増加している」と書いています。テルビナフィンは市販薬にも医療用にも広く使われている代表的な抗真菌成分です。

さらに新しい菌も報告されています。T. indotineae は2019年に加納らが日本国内に在留していたインド人およびネパール人の体部白癬から分離した菌で、ガイドラインは「ヒトからヒトへ感染する好人性菌であり、多くはテルビナフィンに耐性を示す」「広範囲に炎症の強い皮疹が認められ、経過も長い例が多い」と記しています。

ただし、これは治療の手がないという話ではありません。ガイドラインは、テルビナフィン耐性株に対してルリコナゾールが代替治療として有効であり、28日間の局所治療で完全除菌を達成したという報告を紹介しています。

大切なのは、自己判断で市販薬を漫然と続けないことです。ガイドラインも「抗真菌薬内服で菌が陰性化しない症例では、近年みられる薬剤耐性株による感染を考慮する必要がある」としています。塗っても飲んでも良くならないときは、菌の種類まで調べられる皮膚科に相談してください。

足の汗が多い方へ。

皮膚真菌症診療ガイドライン2025は、白癬菌が「湿度が高く皮膚が柔らかい指趾間から角層に侵入する」としています。汗が多いほど、条件がそろいます。
実際、多汗症のガイドラインにも「汗で長時間湿潤した皮膚は…真菌や細菌、そしてウイルスの感染を起こしやすいため、足白癬や尋常性疣贅を認めることがある」と書かれています。足の汗そのものにも診断基準と治療があります(→多汗症の記事)。

手が荒れている方へ——それは湿疹ですか、水虫ですか。

手湿疹診療ガイドラインは、鑑別を要する疾患の筆頭に手白癬を挙げ、その手がかりを「片側性のことが多い」としています。両手ではなく片手だけなら、疑う理由になります。
間違えると方向が逆になります——湿疹だと思ってステロイドを塗れば真菌は広がり、水虫に保湿だけしても良くなりません。足に水虫がある方は、そこから手に移ることもあります(→手湿疹(手荒れ)の記事)。

参考資料

なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で述べたとおり、足や爪の症状には白癬以外の疾患が多く含まれ、確定診断には医師による顕微鏡検査(直接鏡検)などが必要です。本文で紹介した推奨度・推奨文・数値は日本皮膚科学会・日本医真菌学会「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」にもとづくもので、個々の患者さんに適した治療は診察のうえで決まります。抗真菌薬の内服には肝機能障害などの副作用や、他の薬との飲み合わせの問題があり、すべての方に適するわけではありません。処方されている薬を自己判断で中止・変更しないでください。糖尿病などで足の血流や神経に問題がある方は、自己判断でのフットケアを避け、主治医にご相談ください。掲載内容は公開時点の情報にもとづいており、内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。