1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 健診で毎年採血しているから大丈夫 | 肝炎ウイルス検査が入っているかは健診によって違う。職場の健診の検査項目に入っている場合もあるので結果票で確認を |
| 症状がないから感染していない | 肝炎ウイルスは感染しても自覚症状に乏しい。B型のキャリアの85〜90%は症状のないまま経過する |
| 検査はお金がかかる | 保健所や自治体が委託する医療機関で原則無料 |
| 出産のときの検査は覚えていない | 妊婦健診で検査されていて、母子健康手帳に記録欄がある |
| 陽性なら治らない | C型は飲み薬で95%以上ウイルス排除が期待できる。B型も飲み薬で病気の勢いを抑えられる |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
まず、受けたかどうかを確かめてください。母子健康手帳の検査の記録、手術前にもらった書類、職場の健診結果。どこにも見つからなければ、保健所に電話を1本。それで一生分の安心が手に入る検査です。
2. なぜ「一生に一度」なのか
この記事で使う資料は、厚生労働省の「肝炎ウイルス検査について」のページ、第38回肝炎対策推進協議会(2026年10月1日)の参考資料、妊婦健診の検査についてのリーフレット(国立成育医療研究センター監修)、手術前の検査に関する厚生労働省の通知です。
厚生労働省は、検査が必要な理由をこう説明しています。
「肝炎ウイルスは、感染しても自覚症状に乏しいことから、感染に気付きにくく、適切な治療を行わないまま放置すると慢性化し、肝硬変や肝がんといったより重篤な病態に進行するおそれがあります。」
協議会の資料によれば、肝炎ウイルスに持続的に感染している人(キャリア)は、2020年の推計でB型が約92万〜94万人、C型が約18万〜48万人。感染から肝硬変・肝がんまでは10〜40年かかるとされています。長い時間、症状のないまま進むので、症状が出る前に検査で見つけるしかありません。
そして、感染しているかどうかは一度の採血で分かります。厚生労働省が「少なくとも一回は」と呼びかけているのはそのためです。
3. 約8割は受けている。残りの2割と「分からない」人へ
協議会の資料は、2024年の国民調査の結果をこう伝えています。
B型肝炎の受検率は2020年の85.5%から2024年の88.2%へ、C型肝炎は76.4%から79.2%へ。「国民の約8割が少なくとも一度はウイルス性肝炎の検査を受けていると推定されている。」
受検率が上がった理由として、資料は自治体での検査のほか、妊婦健診、手術前の検査、啓発活動を挙げています。つまり、受けた人の多くは、自分から検査を申し込んだのではなく、妊婦健診や手術の前に「いつの間にか」受けていた可能性があるということです。
ここに落とし穴があります。厚生労働省の通知は、検査の結果が陽性であるにもかかわらず、「精密検査や肝炎医療を適切に受診していない者が多数に上る」と課題を挙げています。受けたけれど結果を知らない、知っていても受診していない——そうした人が少なくないのです。
4.【核心】受けたかどうかを確かめる3つの場所
陽性(+)の意味:HBs抗原が陽性ならB型肝炎ウイルスに、HCV抗体が陽性ならC型肝炎ウイルスに感染しています(厚生労働省)。
① 母子健康手帳——出産経験のある方は、まずここ
B型・C型肝炎ウイルスの検査は、妊婦健診でも実施されています。厚生労働省によれば、母子健康手帳の「検査の記録」のページに、HBs抗原とHCV抗体の検査年月日の記載欄と備考欄が設けられています。
そして、結果の読み方はこうです。「HBs抗原が陽性(+)であった場合は、B型肝炎ウイルスに感染しています。」HCV抗体が陽性(+)であった場合は、C型肝炎ウイルスに感染しています。陽性だった場合は、必ず受診して精密検査を受けるよう呼びかけられています。
リーフレットには、こんな一文もあります。「自分は大丈夫と思っていても、検査を受けてみると、実は肝炎ウイルスに感染しているということもあります。」何人かお子さんがいる方は、それぞれの手帳を見てみてください。
② 手術前にもらった書類
手術の前の検査にも、肝炎ウイルスの検査が含まれていることがあります。厚生労働省の通知によれば、2018年度の診療報酬改定で、全身麻酔などの手術の前にこの検査を行った場合は、「当該検査の結果が陰性であった場合も含め、当該検査の結果について患者に適切な説明を行い、文書により提供する」ことが定められました。2022年度からは日帰り手術などにも広がっています。
手術の前にもらった書類の中に、結果が入っているかもしれません。見当たらなければ、手術を受けた医療機関に問い合わせることもできます。
③ 職場の健診・自治体の検診
リーフレットは、職場の健康診断の検査項目に肝炎ウイルス検査が入っている場合もあること、40歳以上の方は市町村で受検できる場合があることを紹介しています。健診の結果票に「HBs抗原」「HCV抗体」の欄がないか確認してください。健診結果の全体の読み方は健診結果の読み方の記事で書いています。
5. まだなら——保健所や市町村で、原則無料
3つのどこにも見つからなければ、受けましょう。厚生労働省は、保健所や自治体が委託する医療機関での無料検査を実施しています。日程・場所・手続きは自治体によって違うので、お住まいの保健所や市町村に問い合わせてください。厚生労働省は、検査ができる病院を探せる「肝炎医療ナビゲーションシステム(肝ナビ)」も案内しています。
検査は採血だけです。2025年度の保健所・委託医療機関での検査の実績は次のとおりでした。
- B型:277,236人が受検し、HBs抗原が陽性だったのは1,102人(0.4%)
- C型:266,804人が受検し、現在感染している可能性が高いと判定されたのは422人(0.2%)
陽性になる人は数百人に1人です。ほとんどの人は「陰性」という安心を得るための検査ですが、陽性だった数百人に1人にとっては、人生を変える検査になります。
6. B型とC型は、ここが違う
キャリア数は2020年の推計です。C型の飲み薬の内服期間は、再治療などでは24週間になることがあります。
とくに大きく変わったのがC型です。協議会の資料は、こう書いています。
「C型肝炎については、インターフェロンフリー治療により95%以上でウイルス排除が期待できるようになり、実質的に治癒可能な感染症となった。」
注射ではなく飲み薬を8〜12週間。検査で見つかりさえすれば、治せる時代になっています。
B型は、飲み薬(核酸アナログ製剤)でウイルスの増殖を抑えられますが、排除まではできず、「原則として、一生飲み続ける」治療です。ただ、協議会の資料によれば、2026年8月に、一定の患者でウイルスの量を検出できないほどに下げる「機能的治癒」をめざす新しい薬(核酸医薬品)が承認され、B型の治療も前に進んでいます。
こうした対策の結果、肝がんの年齢調整死亡率(人口10万人あたり)は2019年の4.0から2024年の3.2へと下がっています。お酒による肝臓の数値の変化はお酒とγ-GTP、脂肪肝は脂肪肝とALTの記事で書いています。ALTが高いときの原因の一つとしても、肝炎ウイルスは確認しておきたいものです。
7. 陽性だったら——初回の精密検査は無料
もし陽性だったら、どうなるのか。国は、検査から治療まで、各段階で費用の助成を用意しています。
助成の対象となる治療は、B型・C型のインターフェロン治療、B型の核酸アナログ製剤治療、C型のインターフェロンフリー治療などです。
協議会の資料によれば、初回精密検査は無料で、「職域、妊婦健診、手術前の肝炎ウイルス検査で陽性の場合も含む」とされています。何年も前に陽性と言われたまま受診していない方も、対象になりうるということです。
リーフレットは、陽性だった場合や、分からないこと・不安があるときは、かかりつけ医、市町村・都道府県の窓口、肝疾患相談・支援センターに相談するよう勧めています。肝疾患相談・支援センターは、各都道府県の肝疾患診療連携拠点病院に置かれています。
8. 日常生活では、うつりません
検査をためらう理由の一つに、「もし陽性だったら、家族や職場にどう思われるか」という不安があるかもしれません。リーフレットは、はっきり書いています。
「会話や食事、トイレ、お風呂などの日常生活では感染しません。」
感染の理由として挙げられているのは、陽性の人との性交渉や、血液が付いたカミソリ・歯ブラシの共有などです。国の人権教育・啓発の計画(2025年6月閣議決定)にも、血液や体液が付いた器具を共用しないことなどを除けば、ふだんの生活の中でB型やC型肝炎に感染することはないと書かれ、肝炎ウイルス感染者への偏見・差別をなくす取り組みが進められています。
家族のことが心配な場合、リーフレットは、パートナーや同居の家族も保健所や委託医療機関で検査を受けられると案内しています。B型は、ワクチンで防ぐこともできます。
9. 🚨 陽性と分かっている人へ
次に当てはまる方は、肝臓の専門医の受診を(資料の記述から)
・母子健康手帳や手術前の書類で、HBs抗原またはHCV抗体が陽性(+)だった
・以前「肝炎ウイルスが陽性」と言われたが、精密検査を受けていない(初回精密検査は無料です)
・以前C型と言われたが、治療を受けていない、またはインターフェロンの時代に治療をあきらめた
・B型のキャリアと言われ、定期検査が途切れている
症状がないから大丈夫、ではありません。肝炎は症状のないまま10〜40年かけて進むことがあります。どこに行けばよいか分からない場合は、お住まいの都道府県の肝疾患相談・支援センターに相談してください。
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 肝炎ウイルスは自覚症状に乏しい。だから一生に一度は検査を
② 国民の約8割は一度は受けている。多くは妊婦健診や手術前の検査
③ まず母子健康手帳・手術前の書類・職場の健診結果で確かめる
④ 見つからなければ保健所・委託医療機関で原則無料
⑤ C型は飲み薬8〜12週間で95%以上ウイルス排除。B型も飲み薬で抑えられる
⑥ 陽性なら初回精密検査は無料。日常生活ではうつらない
10. よくある質問
肝炎ウイルス検査は、毎年受けたほうがいいですか?
厚生労働省は、全ての国民が少なくとも一回は肝炎ウイルス検査を受ける必要があるとしています。感染しているかどうかは採血で分かるため、毎年受ける必要はありません。B型・C型の肝炎ウイルスは感染しても自覚症状に乏しく、気づかないまま慢性化し、肝硬変や肝がんに進むおそれがあるため、一度は確認しておくことが大切です。
自分が検査を受けたことがあるか分かりません。どう調べればいいですか?
出産経験のある方は、母子健康手帳の検査の記録のページを見てください。妊婦健診でB型・C型肝炎ウイルスの検査が行われていて、HBs抗原とHCV抗体の記載欄があります。手術を受けたことがある方は、手術前の検査に含まれていた可能性があり、陰性の場合も含めて結果を文書で渡すことになっています。職場の健康診断の項目に入っている場合もあります。どこにも見つからなければ、保健所や委託医療機関で原則無料で受けられます。
検査はどこで、いくらで受けられますか?
保健所や、自治体が委託する医療機関で原則無料で受けられます。40歳以上の方は市町村の検診で受けられる場合もあります。日程や場所、手続きは自治体によって異なるため、お住まいの保健所や市町村にお問い合わせください。厚生労働省は、検査ができる病院を探せる肝炎医療ナビゲーションシステム(肝ナビ)も案内しています。
陽性だったら、治りますか?
C型肝炎は、インターフェロンを使わない飲み薬の治療(8〜12週間)で95%以上でウイルス排除が期待できるようになり、厚生労働省の肝炎対策推進協議会の資料は実質的に治癒可能な感染症になったとしています。B型肝炎は、飲み薬(核酸アナログ製剤)でウイルスの増殖を抑えて病気の勢いをコントロールでき、原則として飲み続ける治療です。2026年8月には、一定の患者で機能的治癒をめざす新しい薬も承認されました。陽性の場合、初回精密検査は無料で、治療にも医療費の助成があります。
家族にうつしてしまいませんか?
会話や食事、トイレ、お風呂などの日常生活では感染しません。感染の理由として挙げられているのは、陽性の人との性交渉や、血液が付いたカミソリや歯ブラシの共有などです。こうしたものを共用しないようにしてください。パートナーや同居の家族が心配な場合は、保健所や委託医療機関で検査を受けられます。B型はワクチンで予防することもできます。
参考にした主な資料
- 厚生労働省「肝炎ウイルス検査について」(令和7年度 特定感染症検査等事業における肝炎ウイルス検査等の実績を含む)
- 厚生労働省「肝炎対策基本指針の見直し方針(案)に係る参考資料」第38回肝炎対策推進協議会 資料3、2026年10月1日
- 国立成育医療研究センター監修「赤ちゃん・ママ・家族の健康のために 肝炎ウイルス検査の結果を確認しましょう」(厚生労働省掲載のリーフレット)
- 厚生労働省健康局がん・疾病対策課長通知「手術前等に行われる肝炎ウイルス検査の結果を踏まえた受診・受療・フォローアップの推進等の医療機関管理者への協力依頼」2023年3月9日