1. 先に結論
| よくある思い込み | 国の資料の記述 |
|---|---|
| お酒の量は、男女で同じに考えていい | 生活習慣病のリスクを高める量は女性1日20g以上、男性40g以上。女性は半分です |
| 1日1缶くらいなら問題ない | ビール500mL缶1本でちょうど20g。乳がんは1日14g相当からリスクが上がります |
| この量までなら安全 | 示された量は「個々人の許容量を示したものではありません」 |
| γ-GTPが少し高いだけなら様子見 | 51〜100は「生活習慣の改善を」、101以上は「医療機関の受診を」 |
| 飲まない人のγ-GTPは関係ない | γ-GTPの上昇は、飲酒習慣の有無にかかわらず将来の脳・心血管疾患や糖尿病と関連していました |
| 寝酒はよく眠れる | 不眠を解消するための飲酒は避けるべき飲酒に挙げられています |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
まず、自分が1日に飲んでいる純アルコール量(g)を一度計算してみてください。そして健診の結果票でγ-GTPを見て、101以上なら受診を。51〜100なら、飲む量を減らす工夫を始める時期です。
2. 女性は「男性の半分」で線が引かれています
厚生労働省のガイドラインは、国の計画で使われている「生活習慣病のリスクを高める量」を紹介しています。1日あたりの純アルコール量で、男性40g以上、女性20g以上です。
なぜ女性は半分なのか。ガイドラインは、女性は一般に男性より体内の水分量が少なく、分解できるアルコールの量も少ないこと、そしてエストロゲン(女性ホルモンの一種)などの働きでアルコールの影響を受けやすいことを挙げています。そのうえで、こう書いています。
「女性は、男性に比べて少ない量かつ短い期間での飲酒でアルコール関連肝硬変になる場合がある」
実際にこの量を飲んでいる人は、どれくらいいるのでしょうか。国の基本計画の関連指標によれば、令和6年の国民健康・栄養調査で、生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している女性は9.3%でした(男性13.9%)。女性のおよそ11人に1人です。
なお、この量は「ここまでなら大丈夫」という線ではありません。ガイドラインはわざわざ、「これらの量は個々人の許容量を示したものではありません」と断っています。さらに、「飲酒量(純アルコール量)が少ないほど、飲酒によるリスクが少なくなるという報告もあります」とも書いています。
3. 20gは、どのくらい?——純アルコールの計算
ガイドラインがすすめているのは、お酒の量(mL)ではなく、中に含まれる純アルコールの量(g)で考えることです。計算式は1つだけです。
「純アルコール量(g)=摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(アルコールの比重)」
ガイドラインの例:ビール500ml(5%)の場合、500×0.05×0.8=20(g)
この式に、よく飲まれるお酒を当てはめると、次のようになります。度数は製品によって違うので、缶やラベルの「アルコール分」を見て計算してください。
| お酒(度数) | 量 | 純アルコール量 |
|---|---|---|
| ビール(5%) | 500mL缶1本 | 20g |
| 日本酒(15%) | 1合(180mL) | 約22g |
| ワイン(12%) | 200mL | 約19g |
| 缶チューハイ(7%) | 350mL缶1本 | 約20g |
| 缶チューハイ(9%) | 350mL缶1本 | 約25g |
| ウイスキー(43%) | ダブル(60mL) | 約21g |
ガイドラインの計算式に当てはめた値です(小数点以下を四捨五入)。
見落としやすいのが、度数の高い缶チューハイです。350mL缶でも、9%なら1本で20gを超えます。「ビールより軽いから」と思って選んでいると、実際は多く飲んでいることがあります。
4.【核心】病気ごとに、リスクが上がる量は違います
このガイドラインでいちばん具体的なのが、表1「我が国における疾病別の発症リスクと飲酒量」です。日本人を対象にした研究から、病気ごとに「これ以上の飲酒をすると発症等のリスクが上がると考えられるもの」としての量がまとめられています。女性の欄を図にしました。
1日あたりの値は、ガイドラインが週の量を7で割って示した参考値です。肺がん・食道がんなどは、女性では「データなし」でした。
見ていただきたいのは2つです。
1つ目は、高血圧と出血性の脳卒中。表では「0g<」と書かれていて、ガイドラインの注では「少しでも飲酒をするとリスクが上がると考えられるもの」とされています。本文でも、高血圧や女性の出血性脳卒中などは「たとえ少量であっても飲酒自体が発症リスクを上げてしまう」と書かれています。
2つ目は、乳がんです。週100g、1日にすると14g相当。ビール500mL缶を毎日1本(20g)飲むと、この量を超えます。「生活習慣病のリスクを高める量」(1日20g)より少ない量で線が引かれていることになります。乳がん検診についてはバストの悩みの記事でも触れています。
ガイドラインは、個人差があることも認めたうえで、「これらよりも少ない量の飲酒を心がければ、発症しないとまでは言えませんが、当該疾患にかかる可能性を減らすことができると考えられます。」としています。
5. 健診のγ-GTP——51と101、2本の線
では、健診の結果票のどこを見ればいいのか。肝臓の数値のうち、お酒の影響が出やすいのがγ-GTP(γ-GT)です。
特定健診で使われる国の手引き「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」には、肝機能の結果を本人にどう伝えるかの文例集があり、γ-GTPは次の3つに分けられています。
ASTとALTの線はγ-GTPと違うので、図の下の帯にまとめました。
51〜100の人向けの文例には、飲酒習慣がある場合の説明として「アルコール性肝障害の疑いがあります。」とあり、続けて「この機会に減酒されることをお勧めします。」と書かれています。文例は、男性40g・女性20g以上の飲酒で脳梗塞や心筋梗塞にかかる確率が高くなることにも触れています。
一方、101以上(またはAST・ALTのどちらかが51以上)は、「この健診結果を持参して、医療機関を受診してください。」という扱いです。健診の結果票全体の読み方は健診結果の読み方ガイドにまとめています。
6. γ-GTPは「お酒の数値」だけではありません
「お酒はほとんど飲まないのに、γ-GTPが高い」という方もいます。同じ手引きの補足説明には、こう書かれています。
γ-GTの上昇は、「将来の脳・心血管疾患や糖尿病発症との関連が複数の前向き研究で確認され、飲酒習慣の有無にかかわらずこれらの関連が認められた」
つまりγ-GTPは、お酒を飲む人にとっても飲まない人にとっても、体の状態を映す数値だということです。
飲酒量が少ないのに肝臓の数値が高い場合、文例集は脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患)を疑う流れを示しています。その場合はALTがASTより高いことが多く、肥満や糖尿病・高血圧・脂質異常症を伴うことが多いとされています。脂肪肝とALTについては脂肪肝とALTの記事で詳しく書きました。ウイルス性の肝炎や、薬による肝障害で上がることもあります。
7. 顔が赤くなる人は、とくに注意
お酒を飲むと顔が赤くなる、動悸や吐き気がする。ガイドラインはこれを「フラッシング反応」と呼び、アルコールを分解する酵素の働きが弱いことが原因で、日本では約41%にみられるとしています。
大事なのは、その先の一文です。こうした人が長年飲み続けて、不快にならずに飲めるようになった場合でも、アルコールが原因の口の中のがんや食道がんなどのリスクが非常に高くなるというデータがある、と書かれています。
「最初は赤くなったけれど、今は平気」という方ほど、注意が必要だということです。また、体質的にお酒を受け付けない人の飲酒は、ガイドラインの「重要な禁止事項」に入っています。
8. 避けたい飲み方——寝酒も入っています
ガイドラインは、量とは別に「避けるべき飲酒等」を挙げています。女性に関係の深いものを中心にまとめます。
| 避けたい飲み方 | ガイドラインの説明 |
|---|---|
| 一度にたくさん飲む | 1回の飲酒で純アルコール60g以上は「一時多量飲酒」として避けるべきとされています。過去30日間にこうした飲み方をした女性は4.7%(令和6年) |
| 眠るため・不安をまぎらわすため | 依存症になる可能性を高めたり、「飲酒により眠りが浅くなり睡眠リズムを乱す等の支障をきたすことがあります」 |
| 飲酒中・飲酒後の入浴や運動 | 血圧の変動が強まり、心筋梗塞などや、転倒によるけがを起こす可能性があります |
| 病気の療養中・薬を飲んだ後 | 飲んでよいか、量や回数を減らすべきかは主治医に確認を |
| 妊娠中・授乳期 | 「重要な禁止事項」。妊娠中の飲酒は胎児性アルコール症候群などをもたらす可能性があります |
寝つきをよくするための寝酒は、ガイドラインでははっきり「避けるべき飲酒」に入っています。眠れない悩みについては睡眠の真実で整理しています。
年齢による違いにも触れておきます。ガイドラインは、高齢になると体内の水分量が減って同じ量でも酔いやすくなり、転倒・骨折や筋肉の減少(サルコペニア)の危険性が高まるとしています。骨や筋肉の話は骨粗しょう症、サルコペニアの記事もご覧ください。
9. ガイドラインが挙げる、5つの工夫
やめるか、続けるか、の二択ではありません。ガイドラインは、飲む場合の「健康に配慮した飲酒の仕方」として、次の5つを挙げています。
| 工夫 | ガイドラインの説明 |
|---|---|
| ① 自分の飲酒状況を把握する | 医師に相談したり、AUDIT(世界保健機関が作った10項目の質問)などで飲酒習慣を確かめる |
| ② あらかじめ量を決めて飲む | 自分で量を決めることで、過度な飲酒を避けることにつながる |
| ③ 飲む前・飲みながら食事をとる | 血中のアルコール濃度を上がりにくくする |
| ④ 合間に水(又は炭酸水)を飲む | 度数を低くする、少しずつ飲む、アルコールの入っていない飲み物を選ぶなども含めて、飲む量に占める純アルコールの量を減らす |
| ⑤ 1週間のうち、飲まない日を設ける | 毎日飲み続けると、アルコール依存症の発症につながる可能性がある |
このうち④は、いちばん取り入れやすい工夫だと思います。ガイドラインの原文はこうです。
「飲酒の合間に水(又は炭酸水)を飲むなど、アルコールをゆっくり分解・吸収できるようにする(水などを混ぜてアルコール度数を低くして飲酒をする、少しずつ飲酒する、アルコールの入っていない飲み物を選ぶなど)」
「飲む量に占める純アルコールの量を減らす効果があります。」
たとえば、2本飲んでいた日の1本を、アルコールの入っていないビールテイストの飲み物に替える。それだけで、その日の純アルコール量は半分になります。②の「量を決める」と組み合わせると、続けやすくなります。
この章で紹介した「アルコールの入っていない飲み物を選ぶ」ための製品です。厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」は、健康に配慮した飲酒の仕方の一つとして挙げ、飲む量に占める純アルコールの量を減らすための工夫としています。
※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。ここで紹介しているのは、サントリーのノンアルコールビールテイスト飲料「オールフリー」です。メーカーによるとアルコール0.00%で、カロリー・糖質・プリン体もゼロ(いずれも表示の基準による)、メーカー自身が「これはお酒ではありません」と表示しています。購入するときは「アルコール0.00%」の表示を確かめてください。ガイドラインが勧めているのは、お酒の一部をこうした飲み物に置き換えて純アルコール量を減らすことで、肝臓の数値をよくするための製品ではありません。γ-GTPが101以上の方、やめたくてもやめられないと感じている方は、まず医療機関にご相談ください。
この章で紹介した「飲酒の合間に水(又は炭酸水)を飲む」ための製品です。厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」は、これにより「アルコールをゆっくり分解・吸収できるようにする」としています。
※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。ここで紹介しているのは、アサヒ飲料の「ウィルキンソン タンサン」です。販売ページの表示では原材料は水と炭酸だけで、エネルギーは0kcalです。お酒の合間に飲むほか、ガイドラインの「水などを混ぜてアルコール度数を低くして飲酒をする」の割り材としても使えます。甘味の入った炭酸飲料とは別のものなので、選ぶときは原材料を確かめてください。割って飲むときも、グラスの数が増えれば純アルコール量は増えます。
10. 🚨 受診の目安と、相談のしかた
受診してほしいとき
・健診でγ-GTPが101以上、またはASTかALTが51以上
・お酒をやめたくてもやめられない、飲む量をコントロールできない
ガイドラインは、アルコール依存症を「お酒をやめたくてもやめることができない、飲む量をコントロールできない等の症状」が出る精神疾患の一つと説明しています。意思の問題ではなく、医療で相談できる病気です。
相談先は、まずかかりつけの内科で構いません。ガイドラインも「かかりつけ医等がいる場合には、飲酒についての相談をすることも有用です。」としています。受診するときは、過去数年分の健診結果票と、1週間に飲んでいるお酒の種類と量をメモして持っていってください。3章の計算をしておくと、話が早く進みます。
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 生活習慣病のリスクを高める量は女性1日20g以上。男性の半分。ビール500mL缶1本ぶん
② 量は度数×量×0.8で計算。度数の高い缶チューハイは350mLでも20gを超える
③ 乳がんは1日14g相当から、高血圧・出血性の脳卒中は少しでもリスクが上がる
④ 健診のγ-GTPは51〜100で生活の見直し、101以上で受診
⑤ 顔が赤くなる体質の人は、慣れて平気になっても口や食道のがんのリスクが高い
⑥ 合間に水や炭酸水、一部をアルコールの入っていない飲み物に。飲まない日もつくる
11. よくある質問
女性は、1日どのくらいまでなら飲んでもいいですか?
厚生労働省のガイドラインは「ここまでなら大丈夫」という量を示していません。紹介されている「生活習慣病のリスクを高める量」は女性で1日20g以上(ビール500mL缶1本ぶん)ですが、ガイドラインは「これらの量は個々人の許容量を示したものではありません」と断っています。病気ごとに見ると、乳がんは週100g(1日14g相当)から、高血圧や出血性の脳卒中は少しでも飲めばリスクが上がると整理されています。ガイドラインには、飲酒量が少ないほどリスクが少なくなるという報告もあると書かれています。飲む場合は、量をあらかじめ決める、飲まない日をつくる、などの工夫から始めてください。
健診でγ-GTPが80でした。病院に行くべきですか?
国の健診の手引きでは、γ-GTPが51〜100は「生活習慣の改善を」、101以上は「医療機関の受診を」という区分です。80であれば、まずは生活習慣を見直す段階です。お酒を飲む習慣がある場合、手引きの文例は「アルコール性肝障害の疑いがあります」として、減酒を勧めています。ただし、ASTやALTが51以上なら受診の対象です。また、飲む量を減らしても翌年に下がらない場合や、お酒をほとんど飲まないのに高い場合は、脂肪肝やほかの病気のこともあるので、かかりつけ医に相談してください。過去の結果票を並べて、推移を見せると話が早く進みます。
お酒はほとんど飲まないのに、γ-GTPが高いと言われました。
γ-GTPはお酒だけで上がる数値ではありません。国の健診の手引きは、γ-GTの上昇が「将来の脳・心血管疾患や糖尿病発症との関連が複数の前向き研究で確認され、飲酒習慣の有無にかかわらずこれらの関連が認められた」と書いています。飲酒量が少ないのに肝臓の数値が高い場合は、脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患)が疑われ、肥満や糖尿病・高血圧・脂質異常症を伴うことが多いとされています。ウイルス性の肝炎や、薬による肝障害のこともあります。服用している薬やサプリメントを含めて、かかりつけ医に相談してください。
飲むと顔が赤くなりますが、続けていれば慣れますか?
顔が赤くなる、動悸や吐き気がするのは「フラッシング反応」と呼ばれ、アルコールを分解する酵素の働きが弱い体質によるものです。ガイドラインによると、日本では約41%の人がこの体質です。ガイドラインは、こうした人が長年飲み続けて不快にならずに飲めるようになった場合でも、口の中のがんや食道がんなどのリスクが非常に高くなるというデータがあると注意しています。慣れて平気になったことは、安全になったことを意味しません。体質的にお酒を受け付けない人の飲酒は、ガイドラインの「重要な禁止事項」にも入っています。
寝つきが悪いので、寝る前に少し飲んでいます。よくないですか?
ガイドラインは、不安や不眠を解消するための飲酒を「避けるべき飲酒」に挙げています。理由として、不安をまぎらわすための飲酒を続けると依存症になる可能性を高めること、そして「飲酒により眠りが浅くなり睡眠リズムを乱す等の支障をきたすことがあります」と書かれています。寝酒で寝つきがよくなったように感じても、眠りの質は下がることがあるということです。眠れない状態が続く場合は、お酒で対処せず、かかりつけ医に相談してください。
参考にした主な資料
- 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」2024年2月(性別・年齢・体質による影響、フラッシング反応、純アルコール量の計算式、生活習慣病のリスクを高める量、表1 疾病別の発症リスクと飲酒量、健康に配慮した飲酒の仕方、重要な禁止事項と避けるべき飲酒)
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)第2編別紙5・別添資料」(健診検査項目の保健指導判定値及び受診勧奨判定値、肝機能検査に関するフィードバック文例集)
- 厚生労働省「第3期アルコール健康障害対策推進基本計画 重点課題 評価・検証のための関連指標」令和8年3月27日時点(生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の割合、一時多量飲酒者の割合)