1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| カルシウムが高いのは骨にいいこと | 原発性副甲状腺機能亢進症では、ホルモンが骨からカルシウムを奪い、骨密度が下がって骨粗鬆症・骨折の危険が高くなる |
| 症状がないから放っておいていい | 軽いうちはほとんど症状がないが、長く続くと尿路結石や腎障害を起こすことが珍しくない |
| カルシウムが高い原因はいろいろで、わからない | 高カルシウム血症の最も多い原因は原発性副甲状腺機能亢進症。血液のPTHで見分けられる |
| 副甲状腺の病気はがん | 原因の8割以上は良性の腺腫(4つある副甲状腺のうち1つが腫れる) |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
健診でカルシウムが高いと言われたら、症状がなくても、一度血液のPTH(副甲状腺ホルモン)を含めて調べてもらってください。骨粗鬆症や尿路結石の原因が、副甲状腺にあることがあります。
2. 副甲状腺と、カルシウムの調節
副甲状腺は、甲状腺の裏側にある米粒大のホルモンを出す臓器で、ふつうは左右の上下に2つずつ、合計4つあります。ここから出る副甲状腺ホルモン(PTH)は、骨や腎臓に働きかけて、体の中のカルシウムのバランスを整える、最も大切なホルモンです。
「原発性副甲状腺機能亢進症とは、何らかの原因により副甲状腺が腫大してPTHが過剰に分泌されることにより、必要以上にそのホルモンの作用が出てしまうので、血液中のカルシウムは増加します。」(日本内分泌学会「原発性副甲状腺機能亢進症」)
| 原因 | 資料の記述 |
|---|---|
| 腺腫(良性) | 8割以上。4つのうち1つが腫れる |
| 過形成 | 4つすべてが異常になる。多発性内分泌腺腫症(MEN)という遺伝的な病気に合併することがほとんど |
| がん | 副甲状腺が大きく腫れ、高カルシウム血症も高度であることが多い |
3.【核心】症状がなくても、骨と腎臓に響く
「最近は、健康診断などで血中カルシウム濃度を測定する機会が増えたため、偶然、高カルシウム血症を発見されて診断に至る例が増えています。」(日本内分泌学会「原発性副甲状腺機能亢進症」)
症状が乏しくても、長く続くことで骨と腎臓に影響が出るとされています。
- 初期症状はだるさ、食欲不振、吐き気などの消化器症状。カルシウムの上がり方が軽いときは、ほとんど自覚症状がないことが多い
- 高カルシウム血症が進むと、尿が多い、口が渇くようになって脱水になり、腎臓の機能も低下する
- 急に進んで高度の高カルシウム血症(15mg/dL以上)になると、意識障害などを伴う命に関わる状態(高カルシウムクリーゼ)になり、緊急を要することもある
そして、症状が乏しくても、この病気が長く続くと、副甲状腺ホルモンが骨からカルシウムを奪い、骨密度が下がって骨粗鬆症となり、骨折する危険性が高くなります。また、骨から出たカルシウムが腎臓に沈着して尿路結石や腎障害を起こすことが珍しくなく、学会は、実際に腎結石としてこの病気が見つかることも多いとしています。
4. 検査:PTHと、首の超音波
「血液検査で、高カルシウム血症と血中PTH濃度の高値があれば診断できます。」(日本内分泌学会「原発性副甲状腺機能亢進症」)
- 次に、副甲状腺が腫れていないか、腫瘍がないかを調べる。まずは、体への負担が少ない首の超音波検査
- さらに、CTやシンチグラムなどの画像検査で確認する。シンチグラムは、ホルモンを作りすぎている場所を探すのに役立つ
- 腫れが軽い場合は、見つからないこともある
健診の結果の見方については健康診断の記事で書いています。首の超音波で甲状腺のしこりが見つかった場合については健診で偶然見つかった「しこり」も参考にしてください。
5. 治療:腫れた副甲状腺を取る手術
学会は、治療の原則は腫れた副甲状腺を取り除く手術だとしています。
| 状況 | 資料の記述 |
|---|---|
| 腺腫の場合 | ふつうは1つの腺だけの異常なので、これを取る。最近は、以前より体への負担が少なく、傷あとが目立たない新しい手術方法も行われるようになりつつある |
| 過形成の場合 | 4つすべてが腫れているため、複数の腺を取り、一部を腕の筋肉に移植するなどの方法 |
| 手術をしない場合 | 高カルシウム血症が軽く、何らかの理由で手術をしない場合は、カルシウムの値、腎臓、骨の状態を注意深く追いながら、それぞれの症状に応じた治療を行う |
6. 急に上がる高カルシウム血症に注意
日本内分泌学会は、別のページで悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症についても説明しています。進行したがんでは比較的多い合併症で、次のような違いがあるとされています。
| 原発性副甲状腺機能亢進症 | 悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症 | |
|---|---|---|
| 血液のPTH | 高い | 低い |
| カルシウムの上がり方 | 数日間で大きく動くことはほとんどない | 急速。数日のうちに倍以上に上がることも |
高カルシウム血症は特徴的な症状に乏しく、軽いときは無症状です。12〜13mg/dL以上でだるさ、疲れ、食欲不振、さらに高度になると筋力低下、口の渇き、多飲、多尿、吐き気、嘔吐が出て、イライラ感のような精神症状から始まり、放置すると意識が低下することもあるとされています。
7.【内科医の視点】骨粗鬆症・尿路結石の陰に
内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。学会は、この病気が長く続くと骨粗鬆症になって骨折の危険が高まること、腎結石としてこの病気が見つかることも多いことを書いています。
骨粗鬆症や尿路結石と言われた方は、血液のカルシウムの値についても主治医と確認してください。骨粗鬆症については骨粗鬆症の記事、腎臓の数値については腎臓の数値の記事で書いています。
8. 相談・受診したほうがよいとき
医療機関で相談したいとき
・健診でカルシウムが高いと言われた(症状がなくても)
・骨粗鬆症や尿路結石・腎結石と言われ、カルシウムの値を調べたことがない
・カルシウムが高めで、だるさ・食欲不振・吐き気が続く
早めに受診したいとき
・カルシウムが高いと言われていて、尿が多い・口が渇く、ぼんやりする、意識がおかしい
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 高カルシウム血症の最も多い原因は原発性副甲状腺機能亢進症
② 健診で偶然見つかる例が増えている。軽いうちはほとんど症状がない
③ 長く続くと骨粗鬆症・骨折、尿路結石・腎障害につながる
④ 診断は血液のカルシウムとPTH、首の超音波など。原因の8割以上は良性の腺腫
⑤ 治療の原則は手術。手術しない場合はカルシウム・腎臓・骨を注意深く経過観察
9. よくある質問
健診でカルシウムが高いと言われました。何が原因ですか?
日本内分泌学会によると、高カルシウム血症の最も多い原因は、副甲状腺からホルモン(PTH)が出すぎる原発性副甲状腺機能亢進症です。最近は健康診断などで血液のカルシウムを測る機会が増えたため、偶然見つかって診断に至る例が増えているとされています。
症状がなければ、放っておいてもいいですか?
学会によると、カルシウムの上がり方が軽いときはほとんど自覚症状がないことが多い一方、症状が乏しくても病気が長く続くと、骨からカルシウムが奪われて骨密度が下がり、骨粗鬆症や骨折の危険が高くなります。また、尿路結石や腎障害を起こすことも珍しくないとされています。
どんな検査をしますか?
学会によると、血液検査で高カルシウム血症と血液のPTHの高値があれば診断できます。次に、副甲状腺の腫れや腫瘍を調べるため、体への負担が少ない首の超音波検査を行い、さらにCTやシンチグラムなどの画像検査で確認します。
手術が必要ですか?
学会は、治療の原則は腫れた副甲状腺を取り除く手術だとしています。原因の8割以上を占める良性の腺腫では、ふつう1つの腺だけの異常なので、これを取ります。高カルシウム血症が軽く、何らかの理由で手術をしない場合は、カルシウムの値、腎臓、骨の状態を注意深く追いながら治療を行います。
カルシウムが急に上がることはありますか?
学会によると、原発性副甲状腺機能亢進症では、カルシウムの値が数日間で大きく動くことはほとんどありません。一方、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症では、数日のうちにカルシウムの値が倍以上に上がることもあり、血液のPTHは低くなります。高度の高カルシウム血症は意識障害などを伴う命に関わる状態になることもあります。
参考にした主な資料
- 日本内分泌学会「一般の皆様へ」:「原発性副甲状腺機能亢進症」「悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症」(いずれも2019年11月4日更新)