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検査と数値

腎臓の数値(eGFR・尿蛋白)
——成人の約8人に1人。「水をたくさん飲む」は、腎臓を守りませんでした

健診の結果票に並ぶ「クレアチニン」「eGFR」「尿蛋白」。印が付いていても、どれくらい気にすればいいのか分からない——という方は多いと思います。
日本の慢性腎臓病(CKD)の患者は成人の12.9%、約1,330万人。腎臓はかなり進むまで症状が出にくい臓器で、健診の数値が数少ない手がかりです。
そして、よく聞く「腎臓のために水をたくさん飲む」。ガイドラインが検討した試験では、水を1日1〜1.5L多く飲んでも、腎臓は守られませんでした
健診の結果票で受診が必要かどうかを確かめる方法から、血圧・食塩・たんぱく質・薬との付き合い方まで、日本腎臓学会のガイドラインから整理します。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年9月15日 読了:約17分

1. 先に結論

よくある思い込みガイドラインの記述
症状がないから、腎臓は大丈夫慢性腎臓病は成人の12.9%。症状が出にくく、健診の数値が手がかりです
尿蛋白(±)なら気にしなくていい2年連続なら医療機関への受診を勧める基準です
eGFRが基準内なら安心eGFRは筋肉量で変わります。筋肉が少ない人では高く出ることがあります
腎臓のために、水をたくさん飲む「通常よりも意図的に飲水量を増やすことは行わないよう提案する
コーヒーは腎臓に悪い「少なくともコーヒーが腎臓に害を与える可能性は低い
腎臓のためにたんぱく質を減らす制限は医療チームの管理のもとで。自己判断で減らすものではありません
市販の痛み止めなら大丈夫腎臓の働きが落ちている人では「常用しないことが望ましい

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

今年と去年の健診結果票を並べて、「尿蛋白」と「eGFR」を見てください。4章の基準に当てはまれば受診を。そして腎臓を守る生活は、水を無理に飲むことではなく、減塩と血圧です。

2. 成人の約8人に1人——症状のないまま進む病気

日本腎臓学会の「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」によれば、2005年の疫学調査で、日本のCKD患者は成人の12.9%、約1,330万人と推計されています。およそ8人に1人です。

腎臓は、血液をろ過して老廃物を尿に出す臓器です。働きがかなり落ちるまで自覚症状が出にくく、気づいたときには進んでいることが少なくありません。ガイドラインの巻頭言は、日本の透析患者が34万人を超えたことに触れ、CKDをできるだけ早期に発見し適切に対応することが重要だとしています。

そしてCKDは、腎臓だけの問題ではありません。ガイドラインは、CKDが末期腎不全の原因となるだけでなく、心血管疾患の発症や死亡のリスクになることが明らかになったと書いています。腎臓の数値は、心臓や血管の状態を映す窓でもあるのです。

3. 慢性腎臓病の定義——2つの物差し

ガイドラインの定義は、次のとおりです。

「CKDの定義は以下の通りであり,①,②のいずれか,または両方が3カ月を越えて持続することで診断する.①尿異常,画像診断,血液検査,病理診断で腎障害の存在が明らか,特に0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要 ②GFR<60mL/分/1.73m²

物差しは2つです。

大事なのは「3か月を越えて持続」という部分です。1回の検査だけでは決まりません。そしてもう一つ、ガイドラインは蛋白尿を「末期腎不全,CVD死亡,全死亡など重篤なイベントの強力なリスク因子」と書いています。eGFRが保たれていても、尿蛋白が続いていれば軽く見てはいけない、ということです。

4.【核心】健診の結果票で確かめる、受診の基準

「健診で印が付いたけれど、受診したほうがいいのか」。この問いに、ガイドラインは具体的な基準を示しています。

健診で、医療機関への受診を勧める基準 どれか1つでも当てはまれば、受診を 尿検査 尿蛋白(1+)以上 1回でも 尿検査 尿蛋白(±) 2年連続 血液検査 eGFR 45未満 40歳未満は60未満 去年の結果票と並べて見るのがコツです 出典:日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」1-4-1

eGFRの単位は mL/分/1.73m²。結果票では単位が省略されていることもあります。

「1.尿蛋白(1+)以上を医療機関への受診勧奨とする 2.尿蛋白(±)が2年連続みられた場合,医療機関への受診勧奨とする 3.eGFR45mL/分/1.73m²未満(CKDステージG3b以降)を医療機関への受診勧奨とする.40歳未満では,eGFR60mL/分/1.73m²未満(CKDステージG3a)を医療機関への受診勧奨とする」

とくに見落とされやすいのが「(±)が2年連続」です。今年だけを見ると「±だから様子見」で終わってしまいます。去年の結果票と並べてください。

一方で、尿蛋白は月経中や激しい運動の後などに一時的に出ることもあります。1回の(±)で慌てる必要はありません。健診の結果票の読み方全体については健診結果の読み方ガイドにまとめています。

5. eGFRは「筋肉」で変わります

eGFRは、血液のクレアチニンという物質の値から計算されます。ガイドラインに載っている日本人の計算式では、女性は男性の値に0.739を掛けます。そしてこのクレアチニンには、知っておきたい性質があります。

「Crは筋肉から産生され,血清Cr値は筋肉量の影響を受けるため,サルコペニア(長期臥床など),筋疾患,四肢欠損で筋肉量の減少している症例ではeGFRcrが高く推算される.逆にアスリート,運動習慣のある高齢者などの症例では筋肉量が多いため,eGFRcrが低く推算される」

つまり、筋肉量が少ない人ほど、eGFRは実際より良く見えることがあるのです。やせ型の方、筋肉が落ちてきた高齢の方は、「eGFRは基準内」でも安心しすぎないでください。反対に、よく運動して筋肉量の多い方は、実際より悪く出ることがあります。

そういう場合に使われるのが、シスタチンCという別の物質による計算です。ガイドラインは、シスタチンCは筋肉量の影響を受けない一方、甲状腺の働き、喫煙、炎症などの影響を受けると書いています。どちらも完璧ではなく、ガイドラインによれば、実測値の±30%の範囲に入るのはクレアチニンの式で75%、シスタチンCの式で78%です。

だからこそ、1回の数値より、年ごとの変化が大切です。筋肉を保つことについてはたんぱく質は足りているかもあわせてどうぞ。

6. 重症度と、専門医に紹介される基準

CKDの重症度は、eGFRの区分(G1〜G5)と、蛋白尿の区分(A1〜A3)を組み合わせて評価します。

CKDの重症度——eGFRと蛋白尿の組み合わせ 色が赤に近いほど、死亡・末期腎不全・心血管死亡のリスクが高い A1 正常 A2 軽度蛋白尿 A3 高度蛋白尿 0.15未満 0.15〜0.49 0.50以上 eGFR区分 G1 ≧90 G2 60〜89 G3a 45〜59 G3b 30〜44 G4 15〜29 G5 15未満 蛋白尿区分の数値は尿蛋白/Cr比(g/gCr)。eGFRの単位は mL/分/1.73m² 出典:「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」表2(KDIGOのガイドラインを日本人用に改変)

同じeGFRでも、蛋白尿があるとリスクは一段上がります。

かかりつけ医から腎臓専門医に紹介する基準も、ガイドラインに示されています。

eGFRの区分腎臓専門医・専門医療機関への紹介の目安
G1・G2(60以上)血尿を伴う場合は蛋白尿区分A2・A3で。血尿を伴わない場合はA3で
G3a(45〜59)40歳以上ではA2・A3で。40歳未満は蛋白尿の区分にかかわらず
G3b〜G5(45未満)蛋白尿の区分にかかわらず
どの区分でも3か月以内に30%以上腎機能が悪化した場合は、速やかに

7.【意外】水をたくさん飲んでも、腎臓は守れなかった

「腎臓のために、水を1日2L飲んでいます」——診察室でもよく聞く言葉です。ガイドラインは、この問いをクリニカルクエスチョンとして正面から検討しています。

CQ6-7「保存期CKD患者において,通常よりも意図的に飲水量を増やすことは推奨されるか?」
推奨:「保存期CKD患者では,飲水量を増やしても生命予後の改善や腎保護効果は期待できないため,通常よりも意図的に飲水量を増やすことは行わないよう提案する」〔2B〕

根拠の中心になったのは、質の高いランダム化比較試験です。

水を1日1〜1.5L多く飲んでも、変わらなかった CKDステージG3の631人を対象にした1年間のランダム化比較試験 水を多く飲んだグループ いつも通りのグループ −2.2 −1.9 1年間のeGFRの変化 1年間のeGFRの変化 差は統計的に意味のあるものではなく、死亡も減らなかった 実際に尿量が1日0.5L以上増え続けた人は、28.2%だけ 出典:「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」CQ6-7(eGFRの単位は mL/分/1.73m²/年)

飲む量を増やしても、腎臓の働きが落ちる速さは変わりませんでした。

ガイドラインは、観察研究でも、飲水量が多いほうが腎機能の低下が速い、あるいは末期腎不全のリスクが高いという結果があったことを紹介しています(エビデンスレベルは低いとしたうえで)。そして、過度な飲水は頻尿などの症状の悪化や、低ナトリウム血症など重篤な副作用のリスクも懸念されると書いています。

ただし、脱水はもちろん腎臓に良くありません。のどが渇いたら飲む、暑い日や体調を崩したときは水分をとる——ふだん通りで十分です。また、ガイドラインは尿路結石の再発予防には飲水量を増やすことが役立つとも書いており、病気によって考え方が違います。医師から飲水の指示を受けている方は、その指示に従ってください。

8. コーヒーは、むしろ良い方向でした

「腎臓が気になるならコーヒーは控えて」——これも、よく聞く話です。ガイドラインの記述は逆でした。

「最新のメタアナリシスでは,国内外12の疫学研究(505,841人)において,コーヒー摂取は新規CKDの発症抑制効果(RR0.86)を認め,コーヒー摂取量が1日2杯以上では1杯以下に比し,CKD発症抑制効果がより大きかった

同じ解析では、末期腎不全への進展(リスク比0.82)、アルブミン尿(0.81)、CKD関連の死亡(0.72)も低い傾向でした。ガイドラインは「少なくともコーヒーが腎臓に害を与える可能性は低いといえる」とまとめています。

ただし、これらは観察研究にもとづく結果で、ガイドラインも今後のランダム化比較試験を待つとしています。「腎臓のためにコーヒーを飲みましょう」ではなく、「コーヒーを我慢する根拠はない」と受け取るのが正確です。砂糖やミルクをたっぷり入れる飲み方は、別の問題になります。

9. 血圧——家で測ることに意味があります

高血圧は、CKDの発症と進行の両方に関わります。ガイドラインは、高血圧のある方がCKDになるのを防ぐために血圧を管理することの大切さを述べたうえで、こう書いています。

家庭血圧や24時間自由行動下血圧測定(ABPM),夜間睡眠時血圧も重要であり,それらの血圧測定による高血圧の診断はCKD発症抑制のために有用である.家庭血圧のみ高値である仮面高血圧に関する前向きコホート研究では,(中略)CKD発症のORが2.2であり,正常血圧者に比べて有意にリスクが高かった」

「仮面高血圧」とは、病院で測ると正常なのに、家では高い状態のことです。健診の血圧だけでは見逃されます。ガイドラインはさらに、正常血圧の範囲でも、年々血圧が上がっていく人ではCKDの発症リスクが高かったという研究も紹介しています。

すでにCKDがある方の降圧目標は、糖尿病の有無と蛋白尿の区分によって分かれます。

CKDの状態(ステージG1・G2)診察室血圧の目標(ガイドライン CQ2-2)
糖尿病あり130/80mmHg未満(推奨 1B)
糖尿病なし・蛋白尿区分A1140/90mmHg未満(推奨 1A)
糖尿病なし・蛋白尿区分A2・A3130/80mmHg未満(推奨 1C)

ステージG3以降でも同じ区分で目標が示されていますが(推奨の強さ2)、降圧を強めたことによる低血圧やめまいに注意することが添えられています。目標は人によって違うので、主治医と確認してください。

10. 食塩は1日6g未満——ガイドラインの推奨

生活のなかで、ガイドラインが推奨の強さ1(強い推奨)をつけているのが減塩です。

CQ8-4「CKD患者への食塩制限は推奨されるか?」
推奨:「CKD患者において高血圧と尿蛋白が抑制されるため,6g/日未満の食塩摂取制限を推奨する【1C】.ただし,末期腎不全,総死亡,CVDイベントに対する効果は不明である」

ガイドラインが引くメタ解析では、食塩を1日4.2g減らすごとに血圧は6.1/3.5mmHg下がり、4.8g減らすごとに尿蛋白は34%減少していました。前の章で見たように、尿蛋白と血圧は腎臓の予後に深く関わります。

一方で、書かれ方には注意も含まれています。末期腎不全や死亡を減らすかどうかはまだ分かっていないこと。そして、降圧薬を飲んでいる方では、減塩で血圧が下がりすぎることがあること(多くは軽症で、薬の調整で対応できるとされています)。降圧薬を飲んでいる方は、減塩を始めるときに主治医に伝えてください。

日本の食事は、しょうゆ・みそ・漬物・汁物・加工食品で、気づかないうちに塩分が多くなりがちです。汁物は1日1杯にする、麺類の汁は残す、減塩の調味料を使う——こうした小さな置き換えの積み重ねが現実的です。

11. たんぱく質は「自己判断で減らさない」

「腎臓が悪い人はたんぱく質を控える」という話を聞いたことがあると思います。ガイドラインは確かに、CKDの方でたんぱく質を制限することを推奨しています。ただし、その書き方に大事な条件があります。

CQ8-2「CKD患者にたんぱく質摂取量を制限することは推奨されるか?」
推奨:「CKDのステージ進行を抑制することが期待されるため,腎臓専門医と管理栄養士を含む医療チームの管理のもとで,必要とされるエネルギー摂取量を維持し,たんぱく質摂取量を制限することを推奨する」【1B】

目安として、ガイドラインは食事療法基準の数字を紹介しています。ステージG3aで1日0.8〜1.0g/kg標準体重、G3b以降で0.6〜0.8g/kg標準体重です。そして、管理栄養士が関わること自体にも推奨がついています(推奨 1C)。

ここで知っておいていただきたいのは、たんぱく質が足りないと筋肉が落ちるということです。特に高齢の方では、体の衰え(フレイル)につながります。5章で見たように、筋肉が落ちるとeGFRは見かけ上良く見えることもあります。

ですから、腎臓の病気と言われていない方が、予防のつもりでたんぱく質を減らす根拠はありません。eGFRや尿蛋白に異常がある方は、自己判断で減らしたり増やしたりせず、主治医に「私に合ったたんぱく質の量」を相談してください。たんぱく質の記事でも、腎臓の病気がある方は増やす前に相談するよう書いています。

12. 痛み止め・胃薬と腎臓

腎臓は、多くの薬が通る臓器です。ガイドラインは、腎臓の働きが落ちている方の痛み止めについて、こう書いています。

「CKD患者に対する鎮痛薬の選択・使用量や期間は,個々の患者の状態に応じて副作用の発現に注意しつつ,使用量・頻度を最小限にとどめることが望ましい」「非ステロイド性抗炎症薬:併用薬剤に注意し,常用しないことが望ましい

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、イブプロフェンやロキソプロフェンなど、市販の痛み止めや解熱薬にも含まれる成分です。さらにガイドラインは、下痢や嘔吐、発熱で脱水になっているときは、NSAIDsによって急性の腎障害のリスクが高くなるため休薬する、としています。体調を大きく崩したときは、ふだん飲んでいる薬をどうするか、医療機関に相談してください。

頭痛で痛み止めを頻繁に飲んでいる方は、片頭痛——頭痛薬の飲みすぎで、頭痛が増えることがありますもあわせて読んでみてください。痛み止めを減らすことは、頭痛にも腎臓にも関わります。

胃酸を抑える薬(PPI)についても、ガイドラインは長期的な併用はCKDの発症・進展のリスクとなる可能性があり、治療上必要な場合のみ使用することを提案しています(推奨 2C)。ただし、必要な方が自己判断でやめるのは別の危険があります。逆流性食道炎の記事で書いたとおり、「最小限の量で、定期的に見直す」が基本です。

13. そのほかの生活習慣——禁煙・運動・睡眠・便秘

ガイドラインは、生活習慣について次のようにまとめています。

生活習慣ガイドラインの記述
禁煙CKD患者に対する介入効果は明らかではないが、一般の人にも推奨されており、禁煙を強く勧める
運動肥満のないCKD患者では、日常的な運動で蛋白尿は増えず、腎機能や生活の質の改善をもたらす可能性があり、可能な範囲で行うことを提案(2C)
睡眠適度な睡眠時間を確保することを提案(2D)
便秘便秘はCKDの発症・進展のリスクになる可能性がある
口の健康口の不健康はCKDの悪化とともに増え、フレイルや死亡との関連も示されているため、口腔ケアを勧める
ワクチンB型肝炎、インフルエンザ、肺炎球菌のワクチン接種を強く推奨(1D)
飲酒CKDの進展や死亡に関するエビデンスは十分ではない

便秘と腎臓の関係は意外に思われるかもしれません。便秘については便秘の記事に、口の健康については歯と口の健康に詳しく書いています。

14. 治療は、ここまで進んでいます

「腎臓は一度悪くなったら戻らないから、何をしても無駄」——そう思っている方もいます。確かに失われた腎臓の働きを取り戻すのは難しいのですが、悪くなる速さを遅らせる治療は大きく進んでいます。

その代表がSGLT2阻害薬です。もともと糖尿病の薬ですが、ガイドラインは、糖尿病性腎臓病の方に対して腎予後の改善と心血管疾患の発症抑制が期待できるため投与を推奨しています(推奨 1A)。さらに、糖尿病のないCKDの方でも、蛋白尿があれば投与を推奨しています(推奨 1B)。

このほか、脂質異常症のある方のスタチンなどによる治療(2B)、高尿酸血症のある方の尿酸を下げる治療(2C)も、腎機能の悪化を抑える可能性があるとされています。尿酸については尿酸値と痛風の記事で詳しく書いています。

早く見つけるほど、使える手立ては多くなります。健診の数値に目を向ける意味は、そこにあります。

15. 🚨 受診の目安と、相談のしかた

受診してほしいとき

健診で尿蛋白(1+)以上、または(±)が2年連続

eGFRが45未満(40歳未満では60未満)

eGFRが年々はっきり下がっている

尿蛋白と尿潜血(血尿)の両方が出ている

むくみ、尿の泡立ちが続く、尿の量が減った

🚨 急いで受診してほしいとき

尿がほとんど出ない、急にむくみが強くなった、息苦しい——急な腎臓の悪化や心臓への負担の可能性があります。すぐに医療機関を受診してください。

受診先は、まずかかりつけの内科で構いません。そのときは、過去数年分の健診結果票を持っていってください。eGFRの推移が一目で分かり、診断が早くなります。飲んでいる薬(市販の痛み止めや胃薬、サプリも)も伝えてください。

最後に、この記事の要点をもう一度。

慢性腎臓病は成人の約8人に1人。症状が出にくく、健診の数値が手がかり

尿蛋白(±)が2年連続eGFR 45未満(40歳未満は60未満)なら受診を

eGFRは筋肉量で変わる。1回の数値より、年ごとの変化を

水を無理にたくさん飲んでも腎臓は守れない。コーヒーを我慢する根拠もない

腎臓を守る生活の中心は減塩(1日6g未満)と血圧。たんぱく質は自己判断で減らさない

痛み止めは常用しない。脱水のときは特に注意

16. よくある質問

健診でeGFRが60を下回っていました。すぐに病院へ行くべきですか?

まず、健診で医療機関への受診を勧める基準を確認してください。ガイドラインは、eGFRが45未満(40歳未満では60未満)を受診勧奨の基準としています。また、尿蛋白が(1+)以上、あるいは(±)が2年連続の場合も受診を勧めています。慢性腎臓病(CKD)の定義は「eGFRが60未満、または蛋白尿などの腎障害が、3か月を超えて続く」ことなので、一度の検査だけでは決まりません。また、eGFRは血液のクレアチニン値から計算するため、筋肉量の影響を受けます。筋肉量が少ない方では実際より高く、運動習慣があり筋肉量の多い方では低く出ることがあります。受診の基準に当てはまらなくても、年々eGFRが下がっている、尿蛋白も出ている、という場合はかかりつけ医に相談してください。

尿蛋白が(±)でした。気にしなくていいですか?

1回だけなら、再検査で確かめれば十分なことが多いです。尿蛋白は、月経中や激しい運動の後などに一時的に出ることもあります。ただしガイドラインは、尿蛋白(±)が2年連続でみられた場合は医療機関への受診を勧めるとしています。蛋白尿は、ガイドラインが「末期腎不全、CVD死亡、全死亡など重篤なイベントの強力なリスク因子」と書いている重要な所見です。去年の健診結果と並べて見てください。2年続けて(±)以上なら、一度受診をおすすめします。

腎臓のために、水をたくさん飲んだほうがいいですか?

ガイドラインは、慢性腎臓病の方について「通常よりも意図的に飲水量を増やすことは行わないよう提案する」としています(推奨の強さ2・エビデンスB)。根拠になったランダム化比較試験では、CKDステージG3の631人に1年間、水を1日1〜1.5L多く飲んでもらいましたが、死亡は減らず、腎機能の低下の速さも変わりませんでした。実際に尿量が1日0.5L以上増え続けた人は28.2%だけで、意図的に飲む量を増やし続けること自体が難しいことも分かりました。一方、過度な飲水は頻尿や低ナトリウム血症のリスクもあります。のどが渇いたら普通に飲む、脱水に気をつける、が基本です。なお、尿路結石の再発予防には飲水が勧められることがあり、病気によって考え方が違います。主治医の指示がある場合はそれに従ってください。

腎臓が悪くならないように、たんぱく質を控えたほうがいいですか?

自己判断で控えるのはおすすめしません。ガイドラインは、慢性腎臓病の方でたんぱく質を制限することを推奨していますが(推奨の強さ1・エビデンスB)、その条件として「腎臓専門医と管理栄養士を含む医療チームの管理のもとで、必要とされるエネルギー摂取量を維持し」と明記しています。必要な量は腎臓の状態によって違い、目安としてステージG3aで1日0.8〜1.0g/kg標準体重、G3b以降で0.6〜0.8g/kg標準体重という基準が示されています。一方で、たんぱく質が不足すると筋肉が落ち、特に高齢の方では体の衰えにつながります。腎臓の病気と言われていない方が予防のつもりで減らす根拠はありません。eGFRや尿蛋白に異常がある方は、まず主治医に「たんぱく質はどのくらいが適切か」を相談してください。

腎臓にいいサプリメントや健康食品はありますか?

今回確認したCKD診療ガイドライン2023に、腎臓の働きを改善するとして推奨されているサプリメントや健康食品の記載はありません。一方でガイドラインがはっきり書いているのは、減塩(1日6g未満)、禁煙、血圧の管理、そして痛み止め(NSAIDs)を常用しないことです。また、コーヒーについては、12の研究・約50万人をまとめた解析で新たにCKDになるリスクが低い傾向が示され、「少なくともコーヒーが腎臓に害を与える可能性は低い」とされています。腎臓の働きが落ちている方では、成分によってはカリウムなどが体にたまることもあります。サプリを使う前には医師か薬剤師に相談してください。

参考にした主な資料

なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した患者数・定義・受診勧奨と紹介の基準・推奨の強さは、日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」にもとづくもので、公開時点の情報です。慢性腎臓病の診断には、3か月を越えて異常が続くことの確認と医師の判断が必要です。飲水量・食塩・たんぱく質の量は病状によって異なるため、通院中の方は主治医の指示に従ってください。服用中の薬を自己判断で中止・変更せず、医師・薬剤師にご相談ください。尿がほとんど出ない、急なむくみ、息苦しさがある場合は、ただちに医療機関を受診してください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。