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MEDICALLY REVIEWED BEAUTY & HEALTH
体型と代謝

骨粗鬆症
——背骨が折れても、3分の2の人は痛くありません

『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン』が、2025年8月に10年ぶりに改訂されました。
その序文に、こう書かれています——患者数は1,590万人。それに対して「骨粗鬆症検診の受診率は全国平均5.5%といまだに著しく低い」
そして本文には、この病気の性質を言い当てた一文があります。「骨粗鬆症は骨折を発生しない限り痛みを生じない」。さらに、折れてからも痛いとは限りません——椎体骨折では「明らかな症状のない骨折が約3分の2を占める」
痛みは、この病気を教えてくれません。だから、測るしかないのです。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年8月26日 読了:約19分

1. 先に結論

よくある思い込みガイドライン2025年版の記述
痛くないから大丈夫「骨粗鬆症は骨折を発生しない限り痛みを生じない」
骨が折れたら分かるはず椎体骨折は「明らかな症状のない骨折が約3分の2を占める」
骨折しても治せばいい大腿骨近位部骨折後の生存率は1年81%・5年49%・10年26%
骨密度の数値がすべてカットオフ値は「骨折リスクの高低をもとに決められた値ではない」
まずカルシウムのサプリをカルシウム薬は骨密度に対してエビデンスD。1回500mgを超えない配慮も必要
ビタミンK2は骨に良い骨折抑制に対しては「投与しないことを提案する」(合意率100%)
歯の治療の前に薬をやめる「原則として抜歯時に骨吸収抑制薬を休薬しないことを提案する」

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

骨粗鬆症は、自覚症状で見つけることが原理的にできない病気です。痛くなったときには、すでに折れています。

だから唯一の方法は測ることです。そして測っている人は、20人に1人しかいません。

2. 【核心】1,590万人に対して、検診受診率5.5%

ガイドラインの序文から引きます。書いたのは、作成委員会委員長の折茂肇先生です。

「高齢者人口が急増するわが国では、本疾患の患者数増加は著しく、1,590万人にのぼると推定されている。(中略)骨粗鬆症による骨折の予防には、日頃から検診などにより骨折の危険性を評価しておくことが重要である。しかし、骨粗鬆症検診の受診率は全国平均5.5%といまだに著しく低い。」

——『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』序文より

患者数の推移も示されています。2005年の調査では1,280万人、2015年の調査では1,590万人(女性1,180万人、男性410万人)。増えています。

有病率(40歳以上、2015〜2016年)を部位別に見ると、こうです。

測定部位男性女性
腰椎1.4%13.9%
大腿骨頚部4.1%18.3%

40歳以上の女性の、およそ5〜7人に1人。そして、そのうち検診で調べているのは20人に1人という計算になります。

患者数と、検診を受けている人 推定される患者数(2015年の調査) 1,590万人(女性1,180万人・男性410万人) 骨粗鬆症検診の受診率(全国平均) 5.5% ガイドラインは「いまだに著しく低い」と書いています。 ※40歳以上の有病率は、大腿骨頚部で女性18.3%・男性4.1%(2015〜2016年) ※患者数は2005年の1,280万人から増加しています

『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』序文および第1章の記述より作成。

ガイドラインは、医療者側の問題にも踏み込んでいます。

序文の続きです——「骨粗鬆症により骨折が生じた例についても、骨折の急性期治療だけが行われ、その原因である骨粗鬆症自体に対する治療が継続的に行われている例が多くないのも現実である」。そして「患者のみならず医療者においても骨粗鬆症に対する理解が未だ十分でないことを示しており」とまで書かれています。

折れた骨は治療されても、折れた原因は治療されていない。この記事の14章は、その話です。

3. 骨粗鬆症は、折れるまで痛くありません

まず、この病気の定義から確認します。世界保健機関(WHO)の定義をガイドラインが引いています。

「骨粗鬆症は、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患」

ここで注目してほしいのは、定義のなかに「痛み」も「症状」も一切出てこないことです。骨粗鬆症とは、骨が折れやすくなっている状態そのものを指す病名です。

だから、ガイドラインはこう書きます。

「骨粗鬆症は骨折を発生しない限り痛みを生じない。臨床的骨折によってはじめて発見されることも多い」

——ガイドライン2025年版 第1章より

健診の数値異常なら、自覚がなくても紙に出ます(→健診結果の読み方ガイド)。けれど骨密度は、測らなければ紙にすら出ません。一般的な健康診断の項目には入っていないからです。

これが、この病気が「発見が遅れる病気」である理由のすべてです。体は何も教えてくれず、健診の紙にも載らない。

4. 【重要】背骨が折れても、3分の2は痛くない

ここが、この記事でいちばん知っていただきたい事実です。

「骨折」と聞けば、誰もが激痛を想像します。転んで、動けなくなって、救急車で運ばれる——そういう場面です。けれど背骨の骨折は、多くの場合そうではありません。

「椎体骨折では腰背部痛などの明らかな症状のない骨折が約3分の2を占める」

「痛みを伴わない形態骨折が痛みを伴う臨床骨折の約2倍存在する」

——ガイドライン2025年版 第1章・第2章より

3人に2人は、背骨が折れていることを知りません。

ガイドラインは椎体骨折について、「脆弱性骨折のなかで最も頻度が高い」とし、さらに「骨折治癒後も椎体変形が残存するため、骨折が多発すると脊柱後弯をきたす」と書いています。そして脊柱後弯——つまり背中が丸くなること——が引き起こすものが列挙されています。

そして「ADLが著しく制限される」

「歳をとって背が縮んだ」「背中が丸くなった」は、老化の描写ではありません。

それは多くの場合、背骨がすでに折れたことの記録です。ガイドラインが身体診察で見るべき項目として挙げているのも、まさにこの2つです——「身長(椎体骨折による身長低下を反映)」「脊柱変形(椎体骨折を反映)の有無」

若い頃の身長を覚えていますか。今、何cmですか。その差は、診察室で伝える価値のある情報です。

だからこそガイドラインは、脊椎X線像によるスクリーニングが重要であるとしています。骨密度だけでなく、背骨のレントゲンを撮る。すでに折れているかどうかで、次の章で見るとおり診断も治療方針も変わるからです。

5. 折れたあとに何が起こるか——数字で見る

この章は、正直に書きます。読むのがつらい数字かもしれません。けれど、この数字を知らないまま「骨粗鬆症くらい」と思っている方が多すぎると感じています。

ガイドラインは、大腿骨近位部骨折——いわゆる「足の付け根の骨折」——について、こう書いています。

大腿骨近位部骨折のあと、日本での生存率 骨折から1年後 81% 2年後 67% 5年後 49% 10年後 26% 椎体骨折(背骨)後の10年生存率は69%。骨折の数が多いほど低くなります。 大腿骨近位部骨折後の死亡率は15〜20%という報告があります。 ※高齢での骨折のため、年齢そのものの影響も含まれます。骨折だけが原因ではありません

『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』第1章 疫学的特徴の記述より作成。

ガイドラインの表現は、こうです——「大腿骨近位部骨折は、ADL低下や寝たきりの原因となり、生命予後を悪化させる」

誤解のないように添えます。これらは高齢の方に起きる骨折なので、数字には年齢そのものの影響も含まれます。骨折だけが原因でこうなる、という意味ではありません。

それでも、この病気が「歩けるかどうか」「暮らしが続くかどうか」に直結することは、この数字が示しています。ここが、他の生活習慣病と少し違うところだと思います。

そして、一度折れると次が来ます。

ガイドラインは「脆弱性骨折は一度起こすと再骨折のリスクが高い」と明記しています。折れやすい部位として挙げられているのは、椎体、大腿骨近位部、橈骨遠位端(手首)、上腕骨近位部、下腿骨、肋骨です。

手首を折ったことがある方は、それが最初の合図だったかもしれません。

6. 診断はこう決まります——YAMの70%という線

骨密度の紙を見ても、何を見ればいいのか分からない——という声をよく聞きます。診断基準を整理します。

ガイドラインの原発性骨粗鬆症の診断基準は、まず「脆弱性骨折があるかどうか」で道が分かれます。ここが大事なところで、骨密度から始まるのではありません。

原発性骨粗鬆症の診断基準 脆弱性骨折の有無を判定 脆弱性骨折あり 脆弱性骨折なし 大腿骨近位部 または 椎体骨折あり → それだけで骨粗鬆症 その他の脆弱性骨折があり 骨密度がYAMの80%未満 → 骨粗鬆症 骨密度がYAMの70%以下 または −2.5SD以下 → 骨粗鬆症 −2.5SDより大きく −1.0SD未満 → 骨量減少(骨減少) YAM=若年成人平均値。20〜40代の平均を100%としたときの割合です。 ※続発性骨粗鬆症や、低骨量をきたす他の疾患を鑑別したうえで適用します ※このカットオフ値は「骨折リスクの高低をもとに決められた値ではない」とされています

『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』図2-1・図2-10(原発性骨粗鬆症の診断基準)より作成。

用語をひとつだけ。YAM(Young Adult Mean)=若年成人平均値です。骨量がいちばん多い20〜40代の平均を100%として、いまの自分が何%かを示します。骨密度の紙には、たいていこの「%」が印刷されています。

ここで、ガイドラインが正直に書いている一文を紹介します。

脆弱性骨折がない場合のカットオフ値について——「その時点における最大の感度・特異度をもって骨粗鬆症患者をそれ以外の者と区別する方針で策定された値であり、骨折リスクの高低をもとに決められた値ではない」

つまりYAM 70%という線は「ここから急に危ない」という境界ではなく、集団を分けるために引かれた線だということです。71%なら安心、69%なら危険、という話ではありません。

だから実際の判断には、年齢、これまでの骨折、家族歴、使っている薬、他の病気が加わります。紙の数字だけで自己判断しないでください。逆に言えば、「骨量減少」と言われた方も、条件次第では治療の対象になり得ます。

7. 【前提】「推奨」と「提案」は、何が違うのか

次の章で42の薬の評価を並べます。その前に、この評価が何を意味しているのかを共有させてください。ここを知ると、8章の表がまるで違って見えます。

ガイドライン2025年版は、10年ぶりの改訂で作り方そのものが変わりました。『Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver.3.0』に準拠したGRADE方式が採用され、42の臨床疑問(CQ)が設定されています。

そして——ここがこのガイドラインの誠実なところですが——「推奨」と「提案」の使い分けが、機械的に定義されています。

評価の対象「行うことを推奨する」「行うことを提案する」
骨密度に対する効果腰椎と大腿骨の両方に有効どちらか一方に有効
骨折抑制効果椎体・大腿骨近位部・非椎体の骨折すべてに有効すべてではないが少なくとも一つに有効

そして「いずれも有効性が確認できない場合は『行わないことを提案する』」

「提案する」は、「効果が弱い」という意味ではありません。

「有効性が確認された範囲が限定的だった」という意味です。たとえば背骨の骨折は減らせたが、足の付け根の骨折までは確認できなかった——そういう薬が「提案する」になります。

だから「提案する薬だから弱い薬だ」と読まないでください。あなたにとってどこの骨折を防ぎたいかによって、意味が変わります。

もうひとつ、エビデンスの強さがA〜Dの4段階でついています。

強さ定義
A(強い)効果の推定値に強く確信がある
B(中程度)効果の推定値に中程度の確信がある
C(弱い)効果の推定値に対する確信は限定的である
D(非常に弱い)効果の推定値がほとんど確信できない

さらにこのガイドラインには、他ではあまり見ない情報が載っています。各CQに「合意率」が明記されているのです。作成委員が投票し、何%の合意でその推奨が決まったかが公開されています。

たとえば「アレンドロネートを投与することを推奨する」は16票中16票(100%)。一方で「FLSの介入を実施することを推奨する」は合意率75.0%専門家のあいだでどれくらい意見が揃っていたかまで、読者が見られるということです。

8. 【核心】薬を、推奨の強さで並べる

お待たせしました。42のCQのうち、薬に関するものを整理した図がこちらです。この記事の要点は、ここに集約されています。

骨折を抑えることに対する推奨(ガイドライン2025年版) 投与することを推奨する =椎体・大腿骨近位部・非椎体、すべての骨折で有効性が確認された ・アレンドロネート(E:A/合意100%) ・リセドロネート(E:A/合意100%) ・ゾレドロン酸(E:A/合意100%) ・デノスマブ(E:A/合意100%) ・ロモソズマブ(E:A/合意93.8%) いずれも保険適用。ゾレドロン酸とロモソズマブは2025年版で新しく加わりました。 投与することを提案する =すべてではないが、少なくとも一か所の骨折で有効性が確認された ・テリパラチド(E:A) ・テリパラチド酢酸塩(E:A) ・アバロパラチド(E:A) ・ラロキシフェン(E:A) ・バゼドキシフェン(E:A) ・ミノドロン酸(E:A) ・エルデカルシトール(E:A) ・女性ホルモン薬(E:A) ・イバンドロネート(E:C) ・エチドロネート(E:C) ・アルファカルシドール(E:C) ・カルシウム薬(E:C/椎体骨折のみ有意) 投与しないことを提案する ・メナテトレノン(ビタミンK2)(E:D/合意100%) ・カルシトニン薬(E:C/合意80.0%) ※E=エビデンスの強さ。骨密度に対する評価は別で、薬によって推奨が異なります。 ※実際の処方は診察のうえで決まります。この図は受診の判断材料としてお使いください。

『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』CQ2〜CQ42(骨折抑制に関するCQ)の推奨文・エビデンスの強さ・合意率より作成。

この図の読み方を、3つだけ。

  1. 上の段(推奨する)は、すべての部位の骨折で有効性が確認された薬です。ビスホスホネートの一部と、注射の薬が並びます。
  2. 真ん中(提案する)は、有効性が乏しい薬という意味ではありません。確認された範囲が限定的だっただけで、エビデンスAのものも多く並んでいます。
  3. 骨密度に対する評価は、別に行われています。たとえばミノドロン酸は骨密度に対しては「推奨する」、骨折抑制に対しては「提案する」です。ひとつの薬に2つの評価がついている、と考えてください。

2025年版で新しく加わった薬にも触れておきます。ゾレドロン酸、アバロパラチド、ロモソズマブの3つです。このうちゾレドロン酸(点滴・年1回)とロモソズマブ(注射)は、骨折抑制に対して「推奨する」と評価されました。10年前のガイドラインには載っていなかった選択肢です。

「昔、骨粗鬆症の薬を飲んでいたけれど合わなくてやめた」という方へ。この10年で選択肢は確実に増えています。飲み薬が合わなければ、月1回の製剤も、年1回の点滴も、注射もあります。もう一度相談する価値はあると思います。

9. 【意外】「投与しないことを提案する」が3つあります

42のCQのなかで、私がいちばん注目したのがここです。

ガイドラインが「投与しないことを提案する」と結論した項目が、3つあります。

CQ対象エビデンス合意率
CQ11メナテトレノン(ビタミンK2)/骨折抑制D(非常に弱い)100%
CQ28カルシトニン薬/骨密度上昇C(弱い)86.7%
CQ29カルシトニン薬/骨折抑制C(弱い)80.0%

とくにビタミンK2は、注目に値します。

メナテトレノン(ビタミンK2)は、日本で骨粗鬆症の治療薬として長く使われてきた薬です。「骨にはビタミンK2」「納豆は骨に良い」という話を聞いたことがある方も多いと思います。サプリメントも売られています。

その骨折抑制効果について、ガイドライン2025年版の結論は「投与しないことを提案する」、エビデンスの強さD、合意率100%でした。投票した委員全員が一致しています。

解析の対象になった4論文はすべて日本の研究で、そのうち1つは1,983例が参加した医師主導型の大規模臨床研究でした。日本のデータで、日本の薬が評価されたということです。

ただし、骨密度に対する評価は違います。

CQ10(骨密度上昇に対するメナテトレノン)は「投与することを提案する」、エビデンスB、合意率87.5%です。骨密度は上がる方向でも、肝心の骨折を減らすところでは確認できなかった——そういう結果でした。

骨粗鬆症の治療の目的は、骨密度の数字を上げることではなく骨折を防ぐことです。だから最終的な評価は骨折抑制のほうで決まります。

なお、これは薬・サプリとしての評価です。納豆や緑黄色野菜を食べることを否定するものではありません。また、ワルファリンを服用中の方はビタミンK2薬が禁忌である点にもガイドラインは触れています。

このサイトが広告を載せないもの、に1つ追加します。

当サイトは編集方針で、記事のなかで根拠をもって推奨できないものは広告として掲載しない、と公開しています。今回、骨をうたうビタミンK2のサプリメントをそこに加えました。学会が骨折抑制について「投与しないことを提案する」と合意率100%で結論している以上、当サイトが勧めることはありません。

これで、掲載しないと明言したものは8項目になりました。

10. カルシウムとビタミンD——学会が示した量

「骨といえばカルシウム」。これも、確かめておきたいところです。

ガイドラインは具体的な数字を示しています。

CQ2:骨粗鬆症患者の治療に対し、カルシウム、ビタミンDの摂取量はどの程度が推奨されるか?

▶ カルシウムを700〜800mg/日、ビタミンDを15〜20µg/日(600〜800IU/日)摂取することを提案する。

合意率 93.8%/エビデンスの強さ C

数字が出ているのは親切ですが、同じ解説のなかに、期待を冷ます記述もあります。

「これらはかつて治療薬としても用いられてきたが、近年はより有効なさまざまな骨粗鬆症治療薬が開発されており、治療薬としての意義は少なく(活性型のビタミンDは除く)、骨密度、骨折予防に対する効果は必ずしも一致していない。しかし、カルシウムとビタミンDの摂取量を同時に増やした場合には、骨密度の維持・上昇効果や骨折予防効果が報告されており、両方を適切に摂取することが推奨される。」

カルシウムそのものの評価も見ておきます。

CQ評価対象推奨エビデンス備考
CQ4骨密度上昇提案するD「骨密度上昇効果は不確実である
CQ5骨折抑制提案するC椎体骨折のみ有意。大腿骨近位部骨折・非椎体骨折では認められず

そして、安全性の注意があります。ここは必ず読んでください。

ガイドラインの表4-4の注記です——「カルシウムサプリメントの服用例は、そうでない例よりも心血管系の併発症が多いとする報告がある。その理由は判明していないが、サプリメント投与による急速な血清カルシウム濃度の上昇が考えられる。したがって、カルシウムの1回の投与量は500mgを超えないように配慮する」

1回500mgまで。この数字は、サプリメントを選ぶときに見るべき数字です。「1日分で700mg」と書かれた製品を一度に飲むより、食事で分けて摂るほうが理にかなっています。

まとめると、カルシウムとビタミンDは土台として必要だが、薬の代わりにはならない。そしてまず食事から、サプリを使うなら1回500mgを超えない形で——というのがガイドラインの立場です。サプリメント全般の考え方は、別の記事に書きました(→サプリメントの選び方)。

11. 運動は、エビデンスB・合意率100%

薬以外の項目も、きちんと評価されています。

CQ3:骨粗鬆症患者の骨折予防に運動療法は推奨されるか?

▶ 運動療法を実施することを提案する。

エビデンスの強さ B/合意率 100%

エビデンスの強さはB(中程度)——薬の多くがAであることを思えば控えめですが、合意率は100%です。委員全員が一致しました。

ここは、この記事の姉妹編にあたる⑬骨密度の記事に詳しく書いています。何をどれくらいやるか、家でできる運動については、そちらをご覧ください(→骨は20歳がピーク|骨密度の減り方と、一生歩くための骨活ガイド)。

もう一点、ガイドラインが繰り返し強調しているのが転倒予防です。骨がもろくても、転ばなければ折れません。逆に言えば、骨と転倒は両輪です。膝や足元の問題は転倒に直結します(→変形性膝関節症足白癬・爪白癬)。

ガイドラインは生活習慣についても、「患者には転倒、喫煙、過度の飲酒などの骨折危険因子を回避する生活習慣を指導することも重要である」としています。喫煙と過度の飲酒は、骨折の危険因子です。

12. 副作用の話——顎骨壊死をどう考えるか

骨粗鬆症の薬について、いちばんよく聞かれるのがこれです。「顎の骨が腐ると聞いた」

まず、事実から。顎骨壊死は、ガイドラインが実際に注意点として挙げている副作用です。存在しないものではありません。ガイドラインの表4-4「骨粗鬆症治療薬の使用上の注意点」を整理します。

ガイドラインが挙げる注意点
ビスホスホネート薬顎骨壊死、非定型大腿骨骨折。胃腸障害は連日服用製剤のほうが週1回製剤よりも多い
デノスマブ低カルシウム血症、顎骨壊死、非定型大腿骨骨折
ロモソズマブ虚血性心疾患、脳血管障害、顎骨壊死、非定型大腿骨骨折
SERM(ラロキシフェン等)深部静脈血栓症や視力障害に注意。わが国の市販後調査では0.16%とまれ
テリパラチド悪心、嘔吐、頭痛、倦怠感。投与は24か月間まで
アバロパラチド投与は18か月間まで
活性型ビタミンD3薬高カルシウム血症
ビタミンK2薬ワルファリン投与例は禁忌
カルシウム薬便秘、胸焼け。1回の投与量は500mgを超えないように

こうして並べると、骨折を防ぐ力が強い薬ほど、注意点も具体的に書かれていることが分かります。これは骨粗鬆症に限った話ではありません。

数字の見方について、ひとつだけ。

副作用の一覧を読むと、どうしても怖くなります。けれど比べるべきなのは「薬を飲んだときのリスク」と「飲まなかったときのリスク」です。

この記事の5章で見たとおり、大腿骨近位部骨折後の生存率は5年で49%死亡率は15〜20%という報告があります。ガイドラインがアレンドロネートの評価で「益のほうが害より勝ると考えられる」と明記しているのは、この比較の上での判断です。

もちろん、これは骨折リスクが高い人についての話です。だから「誰でも飲むべき」ではなく、「自分がどちら側にいるかを、測って知る」ことが先になります。

13. 【重要】歯の治療で、自分から薬を止めないでください

前の章の続きですが、独立させます。ここは実害が出ている場面だからです。

顎骨壊死を心配して、歯科を受診する前に自己判断で骨粗鬆症の薬をやめてしまう方がいます。あるいは、歯の治療が長引くあいだ、そのまま飲まなくなってしまう。

ガイドライン2025年版の立場は、明確です。

「原則として抜歯時に骨吸収抑制薬を休薬しないことを提案する」

——ガイドライン2025年版 表4-4 注記(顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023を反映)

これは、以前の考え方から変わった部分です。2025年版は、2023年に出された『顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー』の内容を反映しています。休薬しても顎骨壊死を確実に防げるわけではなく、その間に骨折のリスクだけが上がる——という考え方に整理されました。

実際にやっていただきたいこと、3つ。

  1. 歯科を受診するとき、骨粗鬆症の薬を飲んでいることを必ず伝える。お薬手帳を見せるのがいちばん確実です
  2. 薬を始める前に、歯科で口の中を診てもらう。必要な治療は先に済ませておくのが理想です
  3. 日頃の口腔ケアを続ける。これがいちばん現実的な予防です(→口の健康と全身のつながり

そして、いちばん大事なこと。休薬するかどうかは、処方医と歯科医が相談して決めることです。患者さんが一人で決める種類の判断ではありません。迷ったら、やめる前に電話で聞いてください。

14. 折れたのに、治療が始まらない問題

2章で引用した序文の一節を、もう一度出します。

「骨粗鬆症により骨折が生じた例についても、骨折の急性期治療だけが行われ、その原因である骨粗鬆症自体に対する治療が継続的に行われている例が多くないのも現実である。骨折の原因が骨粗鬆症によるものであれば、骨粗鬆症自体に対する治療を開始しなければ、さらなる骨折の危険性が増す状態を放置していることになる。」

折れた骨はつないでもらえる。けれど、なぜ折れたのかは誰も追いかけない。——これが起きています。

手首を折って、ギプスをして、治って、それで終わり。5章で見たとおり「脆弱性骨折は一度起こすと再骨折のリスクが高い」のに、その一度目が警告として使われていないわけです。

この問題に対応する仕組みが、ガイドラインにCQとして立てられています。

CQ40:骨粗鬆症患者の再骨折予防にFLSの介入は推奨されるか?

▶ FLSの介入を実施することを推奨する。

エビデンスの強さ B/合意率 75.0%

FLS(Fracture Liaison Service)は、骨折した患者さんを骨粗鬆症の評価と治療につなぐ仕組みです。日本では骨粗鬆症リエゾンサービス(OLS)という名前でも呼ばれ、ガイドライン全体で65回言及されています。薬と同じくらいの分量で「つなぐ仕組み」が論じられているのは、それだけこの断絶が問題視されているということです。

ご家族が骨折したとき、聞いてほしい一言があります。

「この骨折、骨粗鬆症の検査はしなくて大丈夫でしょうか」

とくに、転んだ程度で折れた場合。ガイドラインが定義する「脆弱性骨折」とは、軽微な外力で生じる骨折のことです。立った高さからの転倒で折れたなら、それは骨の側に理由があるサインかもしれません。

整形外科で骨折の治療をしている最中でも、この質問はできます。言いにくいことではありません。

15. 薬や病気が原因のこともあります

ここまで「原発性骨粗鬆症」——加齢や閉経による、いわば体質的なもの——を中心に書いてきました。けれど骨粗鬆症には、原因のあるタイプ(続発性骨粗鬆症)があります。

ガイドラインが挙げている「低骨量を呈する疾患」から、身近なものを抜き出します。

分類ガイドラインが挙げるもの
内分泌性副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症、性腺機能不全、クッシング症候群
栄養性吸収不良症候群、胃切除後神経性食欲不振症、ビタミンAまたはD過剰、ビタミンC欠乏症
薬物グルココルチコイド(ステロイド)、性ホルモン低下療法治療薬、SSRI、ワルファリン、メトトレキサート、ヘパリン
不動性臥床安静、対麻痺、廃用症候群
その他関節リウマチ、糖尿病慢性腎臓病(CKD)、肝疾患、アルコール依存症

とくに知っておいてほしいのが、ステロイドです。

ガイドラインは「グルココルチコイドによる骨脆弱性の亢進は骨密度の低下のみでは説明がつかず、同じ骨密度でもグルココルチコイド使用者は骨折リスクが高いことが知られている」と明記しています。

つまりステロイドを使っている方は、骨密度の数字が同じでも折れやすいということです。この場合は通常の診断基準ではなく、『グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023』に沿って方針を決めることが望まれる、とされています。

膠原病、喘息、皮膚疾患などでステロイドを長く使っている方は、骨のことを主治医に一度確認してください。

甲状腺の病気が入っていることにも触れておきます。甲状腺機能亢進症は疲れやすさや動悸で見つかることが多い病気ですが、骨にも影響します(→甲状腺の記事)。糖尿病、慢性腎臓病も同じ表に並んでいます。骨は、全身の状態を映しています。

16. 🚨 受診の目安と、上手なかかり方

こんなときおすすめの行動
閉経した/閉経が近い一度、骨密度を測ってください。ガイドラインは「閉経前から定期的に骨密度測定を行い」としています
若い頃より身長が縮んだ・背中が丸くなった椎体骨折のサインかもしれません。骨密度に加えて脊椎X線を相談してください
転んだ程度で骨折したことがあるそれが脆弱性骨折なら、骨密度に関係なく骨粗鬆症の可能性があります
親や兄弟姉妹が大腿骨を骨折した家族歴はガイドラインが聴取すべき項目に挙げています
ステロイドを長く使っている同じ骨密度でも骨折リスクが高くなります。主治医に確認を
甲状腺・糖尿病・慢性腎臓病がある/胃を切除した続発性骨粗鬆症の原因になり得ます
骨粗鬆症の薬を、自己判断でやめている再開の相談を。とくに歯の治療のために止めた方は13章を読んでください
「骨量減少」と言われて様子見中条件によっては治療対象です。数値だけで決まりません

診察室で伝えると話が早いこと、5つ。

  1. 若い頃の身長と、今の身長(差は椎体骨折の手がかりです)
  2. これまでの骨折(何歳のとき、どこを、どんな状況で。「転んだだけ」かどうかが重要です)
  3. 家族の骨折歴(とくに親の大腿骨骨折)
  4. 使っている薬すべて(お薬手帳を。ステロイド・SSRI・ワルファリンは特に)
  5. 閉経の年齢(自然か、手術によるものか)

最後に、この記事の要点を3つだけ。

1. 痛みは、この病気を教えてくれません。骨折するまで無症状で、折れてからも3分の2は痛くありません。測る以外に方法がありません。

2. 一度折れたら、それは警告です。「折れた骨は治療されたが、折れた原因は治療されていない」——学会自身がそう書いています。

3. 選択肢は、10年で増えました。骨折を防ぐことに対して「推奨する」と評価された薬が5つあり、うち2つは2025年版で新しく加わったものです。合わなくてやめた方も、もう一度相談する価値があります。

17. よくある質問

痛くないのに、骨粗鬆症ということはありますか?

あります。それが骨粗鬆症のいちばん怖いところです。

ガイドライン2025年版は「骨粗鬆症は骨折を発生しない限り痛みを生じない」と明記しています。つまり、骨がどれだけもろくなっても、折れるまでは何の症状も出ません。

さらに、折れてからも痛いとは限りません。ガイドラインは椎体骨折、つまり背骨の骨折について「腰背部痛などの明らかな症状のない骨折が約3分の2を占める」と書いています。3人に2人は、背骨が折れていることに気づいていないということです。別の箇所では「痛みを伴わない形態骨折が痛みを伴う臨床骨折の約2倍存在する」とも記されています。

だからこそガイドラインは、脊椎X線像によるスクリーニングが重要だとしています。身長が若い頃より縮んだ、背中が丸くなってきた、という変化は、それ自体が背骨の骨折のサインであることがあります。痛みの有無で判断しないでください。

骨密度が低いと言われました。すぐ治療が必要ですか?

骨密度の数値だけでは決まりません。

ガイドライン2025年版の原発性骨粗鬆症の診断基準では、まず脆弱性骨折があるかどうかを判定します。大腿骨近位部または椎体の骨折がすでにある場合は、それだけで骨粗鬆症と診断されます。その他の脆弱性骨折がある場合は、骨密度がYAMの80%未満であれば骨粗鬆症です。脆弱性骨折がない場合は、骨密度がYAMの70%以下、または−2.5SD以下であれば骨粗鬆症と診断されます。一方、骨密度が−2.5SDより大きく−1.0SD未満の場合は「骨量減少(骨減少)」という区分で、骨粗鬆症とは呼びません。

ただし注意すべき点があります。ガイドラインは、このカットオフ値について「その時点における最大の感度・特異度をもって骨粗鬆症患者をそれ以外の者と区別する方針で策定された値であり、骨折リスクの高低をもとに決められた値ではない」と書いています。数値は線引きであって、リスクそのものではありません。

だから年齢、過去の骨折、家族歴、使っている薬、他の病気を合わせて判断します。骨密度の紙だけで自己判断せず、医師に相談してください。

骨粗鬆症の薬で、顎の骨が腐ると聞いて怖いです。

顎骨壊死は、ガイドライン2025年版が実際に注意点として挙げている副作用です。表4-4では、ビスホスホネート薬、デノスマブ、ロモソズマブの注意点として顎骨壊死と非定型大腿骨骨折が記載されています。ですので、心配されるのは当然のことです。

ただし、この記事でいちばんお伝えしたいのは次の一文です。ガイドラインは顎骨壊死の注記として「原則として抜歯時に骨吸収抑制薬を休薬しないことを提案する」と書いています。これは2023年の顎骨壊死検討委員会ポジションペーパーを反映したもので、以前とは考え方が変わった部分です。歯の治療があるからと自己判断で薬を中断すると、骨折のリスクだけが上がってしまいます。

実際にやっていただきたいのは3つです。1つ目は、歯科を受診するときに骨粗鬆症の薬を飲んでいることを必ず伝えること。2つ目は、薬を始める前に歯科で口の中を診てもらい、必要な治療を済ませておくこと。3つ目は、日頃の口腔ケアを続けることです。

中断するかどうかは、処方医と歯科医が相談して決めることで、患者さんが一人で決めることではありません。

カルシウムのサプリを飲めばいいですか。どのくらい必要ですか?

ガイドライン2025年版は量を明示しています。CQ2の推奨は「カルシウムを700〜800mg/日、ビタミンDを15〜20µg/日(600〜800IU/日)摂取することを提案する」で、合意率93.8%、エビデンスの強さはCです。

ただし、期待しすぎないほうがよい点も同時に書かれています。ガイドラインはカルシウムとビタミンDについて「かつては治療薬としても用いられてきたが、近年はより有効なさまざまな骨粗鬆症治療薬が開発されており、治療薬としての意義は少なく(活性型のビタミンDは除く)、骨密度、骨折予防に対する効果は必ずしも一致していない」と述べています。

カルシウム薬そのものの評価も、骨密度上昇に対してエビデンスの強さD、骨折抑制に対してCで、いずれも「推奨する」ではなく「提案する」にとどまります。しかも骨折抑制効果が確認されたのは椎体骨折のみで、大腿骨近位部骨折と非椎体骨折では認められませんでした。

もう一点、安全性の注意があります。ガイドラインは「カルシウムサプリメントの服用例は、そうでない例よりも心血管系の併発症が多いとする報告がある」とし、その対策として「カルシウムの1回の投与量は500mgを超えないように配慮する」と明記しています。

まとめると、カルシウムとビタミンDは土台として必要ですが、それは薬の代わりではなく、まず食事から、サプリを使うなら1回500mgを超えない形で、ということになります。

骨に良いというビタミンK2のサプリは、飲む価値がありますか?

ガイドライン2025年版の評価は、はっきりしています。

CQ11「骨粗鬆症患者の骨折抑制に対し、メナテトレノン(ビタミンK2)の投与は推奨されるか?」に対する推奨文は「投与しないことを提案する」で、合意率は100%、エビデンスの強さはDでした。メナテトレノンは日本で骨粗鬆症の治療薬として長く使われてきた薬で、この評価は方針の転換にあたります。しかも合意率100%、つまり投票した委員全員が一致しています。

骨密度に対しては別の評価で、CQ10は「投与することを提案する」(エビデンスB、合意率87.5%)です。骨密度は上がる方向でも、肝心の骨折を減らすところでは確認できなかった、という結果です。

同じように「投与しないことを提案する」とされた薬がもう一つあり、カルシトニン薬です(CQ28骨密度・CQ29骨折抑制、いずれもエビデンスC)。

なお、これはあくまで骨粗鬆症治療としての評価です。納豆や緑黄色野菜を食べることを否定するものではありませんし、ワルファリンを服用中の方はビタミンK2薬が禁忌である点にもガイドラインは触れています。

サプリを買う前に、まず骨密度を測って、必要なら推奨や提案の強い薬を検討する——順番はそちらです。

参考資料

なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した推奨文・エビデンスの強さ・合意率・診断基準・数値は『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』にもとづくもので、個々の患者さんに適した治療は診察のうえで決まります。本文で挙げた薬にはそれぞれ禁忌、副作用、投与期間の上限、他の薬との相互作用があり、すべての方に適するわけではありません。処方されている薬を自己判断で中止・変更しないでください。とくに歯科治療にあたっての休薬は、処方医と歯科医の判断が必要です。骨密度の数値は診断の一要素にすぎず、脆弱性骨折の有無や他の危険因子と合わせて評価されます。掲載内容は公開時点の情報にもとづいており、内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。