1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| しこりが見つかった=がん | 甲状腺のしこりは超音波で6.9〜31.6%に見つかり、悪性は女性で3.18%。副腎の腫瘍は約半数が良性でホルモンも出さないもの |
| 見つかったらすぐ手術 | 甲状腺の良性腫瘍は原則として治療せず経過観察。副腎も、悪性やホルモンを出す腫瘍でなければ経過観察 |
| 良性と言われたら、もう検査はいらない | 甲状腺は良性と診断されても経過観察が必要。副腎も診断後数年間は定期的な検査が勧められる |
| 症状がないから大丈夫 | 副腎の偶発腫瘍は定義上、症状がない。検査でホルモンの異常が見つかることがある |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
健診で偶然見つかったしこりは、多くが良性で、経過観察になります。だからこそ大切なのは、一度きちんと医療機関で評価してもらい、その後の検査を途切れさせないことです。
2.【核心】見つかる頻度と、悪性の割合
超音波で調べると小さなしこりまで見つかるため、見つかる割合は上がり、悪性の割合は下がります。
甲状腺のしこりは、首を触って見つかる割合は0.78〜1.87%ですが、超音波検査を使うと6.9〜31.6%に上がります。その代わり、悪性の割合は、触って見つかったものでは女性11.34%、超音波で見つかったものでは女性3.18%と報告されています。
3. 甲状腺のしこり:検査の進め方
甲状腺は、首の前の「のどぼとけ」のすぐ下にあり、生命活動の維持やカルシウムの調節に欠かせないホルモンを出す臓器です。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、甲状腺の腫瘍は多くの場合自覚症状がないものの、首の前に硬いしこりとして触れ、飲み込む動作に合わせて上下に動くのが特徴だとしています。
「甲状腺に腫瘍がみつかった場合、まずは超音波検査を行い、悪性が疑われれば、精密検査として穿刺吸引細胞診を行って良悪性の鑑別を行います。」(日本内分泌学会「甲状腺腫瘍(良性・悪性)」)
- 穿刺吸引細胞診は、細い針でしこりの細胞をとって調べる検査
- ただし、手術をしないと良性か悪性かが区別できない場合もある(とくに濾胞腺腫と濾胞癌)
- 良性腫瘍から甲状腺ホルモンが出すぎるタイプでは、動悸、汗が多い、体重が減るなどの症状が出ることがある
- 腫瘍が大きくなると、しこりや甲状腺全体の腫れ、首の前の違和感を感じることがある
甲状腺のホルモンの病気については甲状腺と女性の疲れの記事で書いています。のどの違和感は、甲状腺以外の原因でも起こります(→口とのどの不調)。
4. 甲状腺のしこり:治療と経過観察
| 診断 | 資料の記述(日本内分泌学会) |
|---|---|
| 良性 | 原則的に治療はせず、経過観察。ただし、大きくて見た目が気になる、圧迫症状が強い、悪性の合併が疑われる場合などは手術。嚢胞などではエタノールを注入する治療(PEIT)が行われることも |
| 悪性 | 手術が基本。再発や転移がある場合は、手術後に放射性ヨウ素の治療 |
「当初は良性の可能性が高いと思われていた腫瘍が、経過とともに悪性であることが分かってくる場合がありますので、良性と診断されても経過観察は必要です。特に、経過中に大きくなってくる場合は要注意です。」(日本内分泌学会「甲状腺腫瘍(良性・悪性)」)
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、最近は良性腫瘍では大きいものや自覚症状の強いものを除いて経過観察となる場合が多くなっていること、悪性腫瘍はその7割は予後が良好なものであることを書いています。
5. 副腎偶発腫瘍:何が見つかっているのか
副腎偶発腫瘍とは、副腎の病気を調べる目的ではない画像検査で、偶然見つかった副腎の腫瘍の総称です。日本内分泌学会は、人間ドックのCT検査などで見つかることが多く、CTなどの画像検査で約4%に見つかり、年齢とともに増えるとしています。
| 中身 | 割合・特徴(日本内分泌学会) |
|---|---|
| 非機能性副腎皮質腺腫 | 約半数。良性で、ホルモンの異常を伴わない |
| コルチゾールを出す腺腫 | 約10%。多くはサブクリニカルクッシング症候群(目立つ症状が出にくいタイプ) |
| 褐色細胞腫 | 8%程度 |
| アルドステロンを出す腺腫 | 数%(高血圧が先に出るため、偶然見つかることは少ない) |
| 悪性のもの | 頻度は低いが、副腎皮質癌や転移性の腫瘍、悪性リンパ腫も。4cm以上のものは特に注意 |
何の腫瘍かは、造影CT、MRI、シンチグラフィー、ホルモンの検査などから総合的に判断します。アルドステロンを出す副腎の腫瘍(原発性アルドステロン症)については高血圧の陰に隠れたホルモンの病気で書いています。
6. 副腎偶発腫瘍:治療と経過観察
- 悪性の疑いが強い場合と、ホルモンを出す機能性の腫瘍の場合は、腫瘍を取る手術
- それ以外の場合は経過観察
- 良性のホルモンを出す腫瘍は、手術で治癒が得られる。ホルモンの異常のタイプによっては、手術前の薬や手術後のホルモン補充が必要
「良性かつ非機能性腫瘍で、手術せず経過観察の方針になった場合でも、増大傾向が見られたり、少しずつホルモン異常が現れたりすることがあり、手術治療の方針に変わることが数%の症例に見られますので、診断後数年間は定期的に検査を受けることが勧められます。」(日本内分泌学会「副腎偶発腫瘍」)
7.【内科医の視点】「経過観察」を途切れさせない
内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。甲状腺のしこりも、副腎の腫瘍も、多くは良性で、すぐに何かをする必要はありません。だからこそ、「経過観察」と言われたまま、次の検査の予定があいまいになってしまうことがあります。
資料はどちらも、良性と言われても経過観察が必要で、大きくなる・ホルモンの異常が出てくることがあると書いています。健診で指摘されたら、まず医療機関で一度きちんと評価を受け、次にいつ、どの検査を受けるかを確認しておいてください。健診の結果の見方については健康診断の記事で書いています。
8. 相談・受診したほうがよいとき
受診して評価を受けたいとき
・健診や人間ドックで甲状腺のしこりや副腎の腫瘍を指摘された
・経過観察中のしこりが大きくなっていると言われた
・副腎の腫瘍が4cm以上と言われた
・甲状腺のしこりがあり、動悸・汗が多い・体重が減る、首の前の違和感がある
・副腎の腫瘍があり、血圧が高い(ホルモンを出す腫瘍のことも)
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 甲状腺のしこりは超音波で6.9〜31.6%に見つかり、悪性は女性で約3%
② 甲状腺は超音波→必要なら細胞診。良性なら原則、経過観察
③ 副腎の腫瘍はCTで約4%。約半数は良性でホルモンも出さない
④ 副腎は、悪性やホルモンを出す腫瘍なら手術。4cm以上は特に注意
⑤ どちらも良性と言われても定期的な検査を続ける
9. よくある質問
健診で甲状腺にしこりがあると言われました。がんですか?
日本内分泌学会によると、超音波検査を使うと甲状腺のしこりは6.9〜31.6%の人に見つかり、そのうち悪性の割合は女性で3.18%と報告されています。しこりが見つかった場合は、まず超音波検査を行い、悪性が疑われれば細い針で細胞をとる穿刺吸引細胞診で良性か悪性かを見分けます。
甲状腺のしこりが良性なら、もう検査はいりませんか?
日本内分泌学会は、良性の腫瘍は原則として治療せず経過観察するとしたうえで、当初は良性の可能性が高いと思われていた腫瘍が経過とともに悪性とわかる場合があるので、良性と診断されても経過観察が必要だとしています。とくに経過中に大きくなってくる場合は要注意とされています。
人間ドックのCTで副腎に腫瘍があると言われました。
日本内分泌学会によると、副腎の病気を調べる目的ではない画像検査で偶然見つかった副腎の腫瘍は副腎偶発腫瘍と呼ばれ、CTなどで約4%に見つかります。約半数は良性でホルモンの異常を伴わない腺腫ですが、ホルモンを出す腫瘍や褐色細胞腫、まれに悪性のものもあるため、CTやMRI、ホルモンの検査などで総合的に調べます。
副腎の腫瘍は手術が必要ですか?
日本内分泌学会によると、悪性の疑いが強い場合と、ホルモンを出す機能性の腫瘍の場合は手術で腫瘍を取りますが、それ以外は経過観察になります。腫瘍が4cm以上のものは特に注意が必要とされています。経過観察中に大きくなったりホルモンの異常が出てきたりして手術の方針に変わることが数%あるため、診断後数年間は定期的な検査が勧められています。
症状がないのに、検査を続ける必要がありますか?
副腎偶発腫瘍は、もともと症状がないまま偶然見つかったものを指します。日本内分泌学会は、経過観察中に大きくなったり少しずつホルモンの異常が出てきたりすることがあるため、診断後数年間は定期的に検査を受けるよう勧めています。甲状腺のしこりも、良性と診断されても経過観察が必要とされています。
参考にした主な資料
- 日本内分泌学会「一般の皆様へ」:「甲状腺腫瘍(良性・悪性)」(2019年11月4日更新)、「副腎偶発腫瘍」(2026年9月8日更新)
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「頸部の腫れ・腫瘍」