1. 先に結論
| よくある思い込み | 指針の評価 |
|---|---|
| 血圧は病院で測るもの | 上腕カフ式血圧計での家庭血圧測定を「強く推奨する」 |
| 手首式でも同じ | 手首式で介入した研究では、収縮期血圧に有意な効果は見られませんでした |
| スマートウォッチで十分 | ウェアラブル機器は「推奨・提案を保留する」。血圧を測る機器の試験は1件もありませんでした |
| 測るだけでいい | 効果は、測った値を医療者と共有する場合により大きくなりました |
| 塩分は気をつけていれば分かる | 尿や料理の塩分を測る道具を使った介入を「提案する」 |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
家庭で血圧を測るなら、上腕に巻くタイプを選んでください。そして朝と夜、決まった条件で測り、すべて記録して、受診のときに見せてください。手首式やスマートウォッチの値は、今のところ参考にとどめるのが指針の立場です。
2. 高血圧の人は推計4300万人。7割は管理できていません
指針の冒頭には、日本の現状が書かれています。日本の高血圧者は推計4300万人。そのうち3100万人(72%)が、未治療あるいは血圧のコントロールが不良です。
高血圧は、食事・運動・適正体重の維持・節酒・禁煙・ストレス管理で予防できること、そして薬で血圧を下げれば脳や心臓の病気を防げることが分かっています。それでも、分かっていることが生活や医療に活かされていない——指針はこの差を埋める道具として、デジタル技術に期待をかけています。
ただし、指針は同時に、血圧を下げる効果が実証された技術がある一方で、科学的な有効性が実証されないまま使われている技術もあることを問題にしています。だからこそ、技術ごとに研究を集めて評価したのです。
3. 指針が評価した6つの技術
評価の結果を、1枚にまとめました。推奨の強さは「強く推奨」「提案」「保留」などの段階で示されています。
「保留」は「効果がない」という意味ではなく、判断できるだけの研究がまだない、という意味です。番号は指針の問い(HQ)の順です。
「強く推奨」がついたのは、6つのうち上腕式血圧計での家庭血圧測定だけです。新しい技術ほど評価が控えめになっているのが分かります。
4.【核心】上腕式の家庭血圧は「強く推奨」——65の試験から
指針の推奨文は、こうです。
「成人において,上腕カフ式血圧計を用いた家庭での血圧自己測定(家庭血圧測定)による介入(特に遠隔管理・ヘルスケアプロバイダーによる介入を伴うもの)を強く推奨する。」
根拠になったのは、家庭血圧を測るグループと測らないグループを比べたランダム化比較試験65件(計21,053人)です。家庭血圧を測ったグループでは、測らなかったグループに比べて収縮期血圧(上の血圧)が3.27mmHg、拡張期血圧(下の血圧)が1.61mmHg低くなっていました。
そして効果は、測った値を医療者が遠隔で確認したり、サポートしたりする場合にさらに大きく、収縮期血圧で4.27mmHgの差になっていました。測るだけで終わらせず、記録を見せて相談することが大事だということです。
手首式で介入した研究では、効果が見られませんでした
この章で見落とせないのが、次の一文です。
「上腕カフ式血圧計ではなく,手首カフ式血圧計(手首にカフを巻くタイプ)を用いて介入した研究では,収縮期血圧に対する有意な介入効果は観察されませんでした。」
指針は血圧計の選び方についても、「手首にカフを巻くタイプの血圧計は,値が不正確になりがちであり注意が必要です。」と書いています。手首式は手軽ですが、家庭血圧を続けるなら上腕式を選んでください。適切なサイズのカフを使うことも大切だとされています。
信頼できる血圧計を選ぶ手がかりとして、指針は日本高血圧学会学術委員会のウェブサイト(血圧計の試験結果をまとめたリスト)を挙げています。購入前に、型番が載っているかを確かめると安心です。
この章で紹介した上腕式の家庭用血圧計です。日本高血圧学会の指針は、上腕カフ式血圧計を用いた家庭での血圧自己測定を「強く推奨する。」としています。
※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。ここで紹介しているのは、タニタの上腕式血圧計 BP-222(税込9,680円・医療機器認証番号 227AABZX00085000)です。この型番は、日本高血圧学会の「血圧計の試験結果に関する集計」(2025年)に、臨床試験の規格による試験結果とともに掲載されています。メーカーによると、直近2回の測定値の平均を表示する機能と、60回分の記録機能があります。脈の乱れを知らせるマークは、メーカーも不整脈の診断・判定をするものではないとしています。腕の太さによってはカフが合わないことがあるので、購入前に確認してください。測った値は記録して受診のときに見せ、自己判断で降圧薬を減らしたりやめたりしないでください。
5. 正しい測り方——朝と夜、2回ずつ
上腕式を選んでも、測り方がばらばらでは意味がありません。指針はこう書いています。「誤った測定方法では正しい血圧値は測定できません。」指針に載っている「家庭血圧の正しい測り方」を図にしました。
測る前には、血圧計の取扱説明書をよく読んでください。
ポイントは「同じ条件で、続けて測る」ことです。指針は家庭血圧の利点として、決まった条件で一定期間測ってその平均を見ることで、自分の基準になる血圧が分かること、日々や季節による変動まで分かることを挙げています。
そして、2回測って、すべて記録する。高い値が出たときだけ書く、低いほうだけ書く、というのでは記録の意味が薄れます。記録機能のある血圧計や、スマートフォンのアプリと連携できる血圧計を使うと続けやすくなります。
6. スマートウォッチの血圧は「保留」
最近は、腕時計型や指輪型など、身につけて血圧や心拍数を記録できる機器が増えています。指針の評価はこうでした。
「成人へのさまざまなウェアラブルデバイスによる介入のエビデンスは不十分なため,推奨・提案を保留する。」
集まったランダム化比較試験は21件(計2,474人)。ただし中身は歩数計(28.6%)や活動量計(23.8%)が中心で、血圧を測定できる機器を使った試験は1件もありませんでした。12週・24週・48週のいずれでも、血圧に有意な差は出ていません。
カフを使わずに血圧を測るという「カフレス」の機器について、指針は手厳しい書き方をしています。「その測定値の妥当性は極めて低いことが報告されています」。一方で、2022年の研究のまとめでは、15種類のカフレス機器のうち8種類で平均の誤差が5mmHg以内だったとも紹介されており、評価は機器によって分かれます。
指針の使い方の助言は、次の2つです。
- 血圧測定に使うなら、「医療機器認定を受けた製品をお薦めします。」
- 得られた血圧は、「医師などヘルスケアプロバイダーと共有し,適切な診断や治療計画を立てるための参考情報として利用されるべきです。」
スマートウォッチは、歩数や睡眠を記録して生活を見直すきっかけにはなりえます。ただ、血圧の判断は上腕式の家庭血圧で行う、というのが今の段階での使い分けです。
7. 塩分を「測る」道具は「提案」
減塩が血圧に大事なことはよく知られています。ただ指針は、個人の食塩摂取量を客観的に把握することは難しく,減塩指導の大きな障害だったと書いています。そこで登場したのが、尿のナトリウムとカリウムの比や、味噌汁・スープの塩分濃度を測る道具です。
「成人において,尿中ナトリウム/カリウム比または食事/尿中ナトリウム濃度測定デバイスを用いた介入(特に教育プログラムと併用した場合)を提案する。」
根拠は8件のランダム化比較試験(計1,442人・うち6件が国内)で、収縮期血圧、尿のナトリウム/カリウム比、食塩摂取量がいずれも有意に下がっていました。8件のうち2件は、スープや汁物の塩分濃度を測る道具を使った研究です。
使うときの注意も書かれています。
- 「これらのデジタル技術は,個人の食生活の質を評価するためのもので,疾患の診断をするものではありません。」
- カリウムを増やすことは血圧によいとされていますが、「慢性腎臓病患者では,カリウム制限が必要なことがあるため注意を要します」
「うちの味噌汁はどのくらいの濃さか」を一度測ってみるだけでも、減塩の目安になります。腎臓の病気と食塩の関係は腎臓の数値の記事で詳しく書いています。
この章で紹介した料理の塩分濃度を測る道具です。日本高血圧学会の指針は、尿中ナトリウム/カリウム比または食事/尿中ナトリウム濃度測定デバイスを用いた介入を「提案する。」としています。
※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。ここで紹介しているのは、タニタの電子塩分計「しおみくん」SO-313-NWH(税込6,600円)です。メーカーによると、味噌汁やスープなどの液体の塩分濃度を0.4〜1.4%の範囲で「うす味」「ふつう味」「から味」の6段階に表示します。測れるのは30〜90℃の液体で、粘りの強い液体や固形物は測れません。指針の評価は、こうした道具を教育プログラムなどと組み合わせて使う介入についてのもので、測るだけで血圧が変わるわけではありません。食事の1品を測る道具なので、1日の食塩摂取量そのものは分かりません。腎臓の病気で通院中の方、降圧薬を飲んでいる方は、減塩の進め方を主治医にご相談ください。
8. アプリ・遠隔医療・AIの評価
| 技術 | 指針の評価 |
|---|---|
| スマートフォンアプリ | 「提案する」。ランダム化比較試験69件などを集めた解析で、介入6か月後の収縮期血圧が2.76mmHg低下。ただし「長期間(6ヵ月以降)の効果に関するエビデンスは不十分である。」 |
| 遠隔医療・保健指導 | 「提案する」。血圧管理のためにデジタル技術を使った遠隔の診療や保健指導 |
| AIを使った診療・保健指導の支援 | エビデンスが不十分なため「推奨・提案を保留する。」 |
アプリについて、指針は常に最新の情報に基づいて選ぶことが大切だとしています。血圧計と連携して記録をグラフにできるアプリは、4章の「測った値を共有する」ことにもつながります。
9. 測った値の使い方と、相談のしかた
家庭血圧は、測って終わりではありません。指針は、測定結果を医療者と共有することでより適切なアドバイスや診断・治療を受けることが可能になりますとしています。
受診のときに持っていくもの
・朝と夜の家庭血圧の記録(すべての回の値)
・使っている血圧計の種類(上腕式か手首式か)
・健診の結果票、飲んでいる薬やサプリメントの一覧
降圧薬を飲んでいる方は、家で測った値が低めだったからといって、自己判断で薬を減らしたりやめたりしないでください。記録を持って主治医と相談するのが基本です。
お酒と血圧の関係はお酒とγ-GTPの記事で、高血圧は少しでも飲むとリスクが上がる病気として整理しています。いびきや睡眠中の呼吸の止まりがある方は、睡眠時無呼吸も高血圧に関わります。
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 上腕式血圧計での家庭血圧測定は「強く推奨」。65試験・約2.1万人で血圧が下がった
② 効果は、測った値を医療者と共有するとさらに大きい
③ 手首式で介入した研究では有意な効果なし。値も不正確になりがち
④ ウェアラブル機器は「保留」。血圧を測る機器の試験はまだない
⑤ 朝(起床後1時間以内・排尿後・食前服薬前)と夜(寝る前)、2回測ってすべて記録
⑥ 尿や料理の塩分を測る道具は「提案」。診断の道具ではない
10. よくある質問
手首式の血圧計を持っています。買い替えたほうがいいですか?
家庭血圧を続けて測るなら、上腕式をおすすめします。日本高血圧学会の指針は、上腕カフ式血圧計を用いた家庭血圧測定を「強く推奨」していますが、手首式の血圧計で介入した研究では、収縮期血圧に有意な効果は見られませんでした。指針は「手首にカフを巻くタイプの血圧計は,値が不正確になりがちであり注意が必要です。」とも書いています。購入するときは、日本高血圧学会のウェブサイトにある血圧計の試験結果のリストで型番を確かめると安心です。今お持ちの手首式で測った値も、医師に見せるときは「手首式で測った」と伝えてください。
スマートウォッチで測った血圧は信用できますか?
今のところ、血圧の判断に使うのは控えたほうがよいと考えます。指針は腕時計型などのウェアラブル機器について「エビデンスは不十分なため,推奨・提案を保留する。」としています。集まった21件の試験は歩数計や活動量計が中心で、血圧を測る機器を使った試験はありませんでした。カフを使わない「カフレス」の機器については、「その測定値の妥当性は極めて低いことが報告されています」と書かれています。使う場合は医療機器の認定を受けた製品を選び、値は医師と共有する参考情報にとどめてください。
家庭血圧は、いつ、何回測ればいいですか?
指針に載っている測り方は、朝は起床後1時間以内・排尿後・食事と薬の前に、夜は寝る前に、それぞれ1〜2分座って安静にしてから測る、というものです。背もたれのある椅子に脚を組まずに座り、カフを心臓の高さに合わせます。測る前にたばこ・お酒・カフェインをとらず、測っている間は話したり動いたりしないこと。そして原則として2回測って、すべてを記録します。毎日同じ条件で測ることで、自分の基準になる血圧が分かります。
家で測るだけで、血圧は下がるのですか?
指針がまとめた65件の試験では、家庭血圧を測ったグループは測らなかったグループより、収縮期血圧が3.27mmHg、拡張期血圧が1.61mmHg低くなっていました。測ることで生活習慣や服薬を自分で見直しやすくなるためと考えられています。さらに、測った値を医療者が遠隔で確認したりサポートしたりした場合は、収縮期血圧で4.27mmHgの差になり、効果が大きくなっていました。測った記録は、受診のときに必ず見せてください。
塩分計は、使ったほうがいいですか?
指針は、尿のナトリウム/カリウム比や、料理・尿のナトリウム濃度を測る道具を使った介入を「提案」しています(とくに教育プログラムと組み合わせた場合)。8件の試験で、収縮期血圧や食塩摂取量が有意に下がっていました。料理の塩分計は、味噌汁やスープの濃さを知って味付けを見直すきっかけになります。ただし指針は、これらは食生活を評価するためのもので「疾患の診断をするものではありません」としています。また、カリウムを増やす工夫は、慢性腎臓病でカリウムを制限されている方には向かないことがあるので、通院中の方は主治医に相談してください。
参考にした主な資料
- 日本高血圧学会「デジタル技術を活用した血圧管理に関する指針」作成委員会 編「デジタル技術を活用した血圧管理に関する指針」日本高血圧学会, 2025年3月(日本医療研究開発機構〔AMED〕の支援による。日本の高血圧者数、HQ1 家庭血圧測定と正しい測り方、HQ2 ウェアラブルデバイス、HQ3 尿中ナトリウム/カリウム比・食事/尿中ナトリウム濃度測定デバイス、HQ4 スマートフォンアプリ、HQ5 遠隔医療・保健指導、HQ6 AI)
- 日本高血圧学会 学術委員会「日本高血圧学会 血圧計の試験結果に関する集計」(2025年12月25日更新)
タニタ 上腕式血圧計 BP-222|タニタオンラインショップ
タニタ 電子塩分計 しおみくん SO-313-NWH|タニタオンラインショップ