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からだの変化

睡眠時無呼吸
——閉経で女性のリスクは約6倍。本人には気づけない病気です

日本人7,051人を調べた研究があります。中等度以上の睡眠呼吸障害が見つかった割合は——男性23.7%、閉経前の女性1.5%、そして閉経後の女性9.5%閉経を境に、約6倍です。
そして、この病気の最大の特徴は本人にはほぼ気づけないこと。診療ガイドラインが「最も信頼できる」とする手がかりは、眠っている間の出来事ばかりです。
気づけるのは、隣で寝ている人か、検査だけ。だからこの記事は、ご本人にも、ご家族にも読んでいただきたいと思っています。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年8月11日 読了:約18分

1. 先に結論

論点 この記事で言えること
男女差 男性に多いのは事実。ただし閉経後の女性は9.5%(閉経前は1.5%)。約6倍に増えます
自覚できるか ほぼできません。手がかりはすべて眠っている間の出来事。質問紙での診断も推奨されていません
いちばん確かな合併症 高血圧(エビデンスレベルA)。「二次性高血圧の主要な原因のひとつ」。とくに薬が効きにくい高血圧では要注意
糖尿病との関係 2型糖尿病発症の独立した危険因子となる可能性が高い(B)。ただしCPAPで血糖が改善する証拠は不十分
最大の危険因子 肥満。ガイドラインが「最も重要な因子」と明記しています
治療 中等症〜重症はCPAPが第一選択(推奨1・A)。一夜4時間以上、毎日が目安
睡眠薬 「最初に睡眠薬の使用は実施せず、まずはOSAそのものの治療を優先する」とガイドラインが明記
この記事でいちばん伝えたいこと

更年期の睡眠目の健康睡眠の真実——これまで何度も「睡眠時無呼吸の可能性があります、受診を」と書いてきました。数えると18回です。
でも、毎回そこで終わっていました。「では、どうやって気づけばいいのか」を書いていなかった。
この記事は、その回収です。そして答えは少し変わっています——ご自身では気づけません。だからこの記事は、「隣で寝ている人に読んでもらう」ことまでを含めて書きました。

2. 【核心】閉経を境に、女性のリスクは約6倍

「いびきをかくのは男の人」「無呼吸はお父さんの病気」——そう思われている方が多いと思います。半分は当たっていて、半分は危険な思い込みです。

日本人7,051人のデータ

日本呼吸器学会の「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」が紹介している研究です。日本人7,051人(男性2,274人、閉経前女性1,585人、閉経後女性3,160人)を解析したものです。

中等度以上の睡眠呼吸障害が見つかった割合(日本人7,051人) 男性 23.7% 閉経前の女性 1.5% 閉経後の女性 9.5% ← 閉経を境に約6倍 ※3%ODI 15以上(中等度以上)。男性2,274人・閉経前女性1,585人・閉経後女性3,160人の解析 ガイドラインの記述: 「中等度以上の患者は成人男子の約20%、閉経後女性の10%にも及ぶ」
日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」CQ3およびに掲載の疫学データより作成。

閉経前1.5% → 閉経後9.5%。この落差が、この記事でいちばんお伝えしたい数字です。

ガイドラインは冒頭で、こう書いています——「中等度以上の患者は成人男子の約20%、閉経後女性の10%にも及ぶと考えられている」閉経後の女性の10人に1人です。

年齢による変化

別の見方も紹介されています。睡眠関連呼吸障害(AHI 15以上で定義)の有病率は——

年齢層女性男性
30〜40歳くらい5%弱10%程度
50歳代10%弱10〜20%程度
70歳以上10%を超える20%を超える

読み取っていただきたいのは2点です。

さらに、若い世代のデータもあります。医学生487名(平均24.6歳)を調べた研究では、男子学生の46.1%、女子学生の11.6%に軽度以上の睡眠呼吸障害が見られました。若いから無関係、でもないのです。

なぜ閉経で増えるのか。この記事の元にしたガイドラインは、女性ホルモンとの関係を断定はしていません。ただ、更年期の睡眠の記事でも書いたとおり、この時期には体重の増えやすさ、脂肪のつき方の変化、上気道周囲の変化など、複数の要因が重なります。
大事なのは理由よりも「閉経後は、それまでとリスクが違う」と知っておくことです。

3. 本人には気づけない——だから家族が要る

ここが、この病気のいちばん厄介なところです。

ガイドラインが挙げる「疑うべき症状」

いびき、日中の過度の眠気、睡眠中の窒息感とともに目覚めることやあえぎ呼吸の存在、不眠、他者から睡眠中の呼吸中断が報告されることなどであるが、最も信頼できるのは、睡眠中の窒息感やあえぎ呼吸の存在である。」

——SAS診療ガイドライン2020 CQ8

並んでいるものを見てください。いびき、窒息感、あえぎ呼吸、呼吸の中断——すべて、眠っている間の出来事です。

つまり本人が自力で確認できるものが、ほとんどありません。日中の眠気だけは自覚できますが、それも「歳のせい」「疲れているだけ」と説明がついてしまいます。

セルフチェックでは、判断できません

「無呼吸 チェック」で検索すると、たくさんの質問票が出てきます。ですがガイドラインの評価は厳しいものです。

「OSAの特徴的な症状や徴候を主観的に問う質問紙は多数あるが、診断精度は低く、質問紙で診断しないことを推奨する」(推奨の強さ1・合意率100%)

「自他覚症状はOSAを疑う要素になるが、客観的検査に比べて信頼度は劣るため、診断の根拠とはしないことを提案する

——同ガイドライン CQ11、CQ8

「チェックで問題なかったから大丈夫」は成り立ちません。逆に「引っかかったから病気だ」でもありません。質問票は、検査を受けるかどうかを決める材料としてだけ使う——それがガイドラインの立場です。

ご家族の方へ——あなたにしかできないことがあります

眠っている家族について、次のことに心当たりはありませんか。

これは、あなたにしか観察できない情報です。本人は知りようがありません。
伝えにくいかもしれませんが、「いびきがうるさい」ではなく「息が止まっているように見えて心配だから、一度調べてみない?」という言い方だと、受け取ってもらいやすいと思います。

4. 何が起きているのか

仕組みを、簡単に押さえておきます。

「解剖学的に狭小な上気道が覚醒中に閉塞しないのは、オトガイ舌筋を中心とした上気道開大筋群が気道の閉塞を防いでいるからである。しかし、睡眠中はトーヌスが低下し、加えて吸気に伴う上気道内の陰圧に対する上気道開大筋群の代償機構が不十分であれば上気道は閉塞する。」

——同ガイドライン CQ4

平たく言えば、こうです。

  1. のどの奥は、もともと狭い通り道です
  2. 起きている間は、舌やのどの筋肉が緊張して通り道を保っています
  3. 眠ると、その緊張がゆるみます
  4. 息を吸うときの陰圧に負けて、通り道がふさがる
  5. 呼吸が止まり、体が「苦しい」と反応して脳が短く覚醒し、また呼吸が始まる

この繰り返しが、一晩に何十回、重症では何百回と起こります。本人は目覚めたと認識していません。だから「寝ていたつもり」なのに、まったく休まっていない。睡眠の記事で書いた「睡眠休養感」が低いという状態そのものです。

2つの種類があります

種類内容
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA) のどの通り道がふさがるタイプ。この記事で扱っているのは主にこちらで、圧倒的に多いものです
中枢性睡眠時無呼吸(CSA) 呼吸をしようとする指令そのものが止まるタイプ。心不全との関連が深く、頻度は低い(50歳前後で女性0.1%程度、男性1.0%程度)

ガイドラインは「OSASがSASと解釈されることも多い」と注意を促しています。一般に「睡眠時無呼吸」と言われるとき、たいていは閉塞性のほうを指しています。

5. 放っておくと、何が起きるか

ここが、ご質問いただいた核心部分です。合併症ごとに、証拠の強さが違います。正直に並べます。

睡眠時無呼吸と合併症——証拠の強さ(エビデンスレベル) 高血圧 「二次性高血圧の主要な原因のひとつ」 A 内臓脂肪型肥満 「OSAの重要な要因である」 A 2型糖尿病 「発症の独立した危険因子となる可能性が高い」 B 心不全 「発症と増悪に関与する。双方向性の関連がある」 B 脂質異常症 「独立した危険因子であることを示すエビデンスは不十分」 C
SAS診療ガイドライン2020のクリニカルクエスチョン一覧(CQ7・17〜20)より作成。A=強い、B=中程度、C=弱い。

高血圧——いちばん確かな関係

「OSAは二次性高血圧の主要な原因のひとつであり、特に治療抵抗性高血圧や夜間早朝高血圧ではOSAの合併に注意が必要である。」(エビデンスレベルA)

CPAP治療によってOSA患者の血圧が低下し、減量や降圧薬に上乗せの降圧効果が期待できる。」(A)

——同ガイドライン CQ17

ここは実用的です。「薬を飲んでいるのに血圧が下がらない」「朝の血圧だけ高い」——こういう方は、無呼吸が隠れている可能性があります。

健診結果の読み方で血圧の見方を書きましたが、「治療しているのに下がらない高血圧」は、原因を探す価値のあるサインです。

糖尿病——関係はあるが、治療の効果は別

ガイドラインの記述は、2つに分かれています。

ここは正確に読んでください。「無呼吸があると糖尿病になりやすい」は言えます。でも「CPAPをすれば血糖が良くなる」とまでは、まだ言えません。

期待を持たせすぎないために、ここは正直に書いておきます。糖化とHbA1cの記事で扱ったとおり、血糖の管理はそれ自体として取り組む必要があります。

心不全——双方向の関係

「SASは心不全の発症と増悪に関与するが、一方で心不全によってSASは悪化し、双方向性の関連がある」(B)とされています。便秘の記事でも「因果の向き」の話を書きましたが、ここは両方向に流れているという珍しいケースです。

脂質異常症——ここは弱い

「OSAが脂質異常の独立した危険因子であることを示すエビデンスは不十分である」(C)。CPAP治療での改善についても同じく不十分(C)とされています。

「無呼吸を治せば、コレステロールも良くなる」——そういう説明を見かけたら、そこまでの根拠はないと考えてください。

心血管疾患——治療の効果

「可能性がある」という書き方であることに注目してください。そして条件が付いています——「使用状況が保たれていれば」。これが8章につながります。

6. 危険因子——最も重要なのは肥満

「OSAの発症に関連する主な因子には、肥満、性差、加齢があり、頭蓋顎顔面形態や上気道軟部組織の増大なども関連するが、最も重要な因子は肥満である。」

——同ガイドライン CQ5

そして「内臓脂肪型肥満はOSAの重要な要因である」(エビデンスレベルA)とも記されています。

ここで、この記事でお伝えしたい構造が見えてきます。

悪循環になりやすい

閉経 → 体重が増えやすくなる → 無呼吸のリスクが上がる → 睡眠の質が落ちる → 日中の活動量が減る → さらに太る

40代からの「痩せにくい」の正体で書いた変化と、更年期の睡眠で書いた変化が、ここで合流します。閉経後の女性でリスクが6倍になる背景には、この重なりがあります。

ただし——やせている人には起こらない、という意味ではありません。ガイドラインは頭蓋顎顔面形態(あごが小さい、後退しているなど)も因子として挙げています。日本人はもともと、あごが小さい人が多いとされています。

「太っていないから関係ない」は、成り立ちません。いびきや呼吸の中断を指摘されたなら、体型にかかわらず調べる価値があります。

7. どこで、どう調べるのか

「調べたほうがいい」と分かっても、次が分からないと動けません。具体的に書きます。

2段階になっています

検査内容とガイドラインの評価
簡易モニター
(携帯型検査)
自宅で、一晩つけて眠るだけの検査です。ガイドラインは「明確な併存疾患がなく、かつ中等度から重症のOSAが疑われる場合、PSGの代替としての診断に用いることを提案する」(推奨2・エビデンスA)としています。入院は不要です
終夜睡眠ポリグラフ検査
(PSG)
確定診断の標準検査。ガイドラインは「OSAとCSAの確定診断にはPSGが標準であり、実施することを推奨する」(推奨1・A)としています。多くは1泊の入院で行われます

いきなり入院が必要なわけではありません。まず自宅でできる簡易検査から始まるのが一般的です。ここを知らずに「大がかりそうだから」と敬遠される方が、とても多いと感じます。

どこに行けばいいか

ガイドラインは、この病気が診られる診療科として呼吸器内科、循環器内科、耳鼻咽喉科、精神科、歯科、口腔外科を挙げています。

実務的には、まずかかりつけ医で構いません。「いびきと無呼吸を指摘された」と伝えれば、必要に応じて検査や紹介につないでもらえます。睡眠外来や睡眠センターがある施設なら、なお確実です。

重症度の目安

検査ではAHI(無呼吸低呼吸指数)——1時間あたりに呼吸が止まったり浅くなったりする回数——が測られます。ガイドラインの診療の流れでは、AHI 5・15・20・40といった数値が治療方針の分かれ目として使われています。

数字そのものを覚える必要はありません。「回数で重症度が決まり、それによって治療が変わる」ということだけ知っておいてください。

8. 治療——CPAPと、それ以外

CPAPが第一選択

CPAP治療はOSAに有効であり、OSAによる日中の眠気などの臨床症状が強い症例、および中〜重症例ではCPAP治療が第一選択となり、行うことを推奨する」(推奨の強さ1・合意率100%・エビデンスレベルA)

——同ガイドライン CQ16-2

CPAPは、鼻に当てたマスクから空気を送り込み、気道がふさがらないように押し広げておく装置です。日本での在宅使用は保険適用があり、ガイドラインによれば患者数は50万人を超えようとしているとされています。その50%以上は60歳未満——決して高齢者だけのものではありません。

「4時間」という数字を覚えてください

CPAPの使用時間について、ガイドラインが示す目安

そして——「CPAPの中断により、治療前に比較してAHIは悪化することはないが、OSAは再発する」。使っている間だけ効く、という性質の治療です。

「つけたけれど、続かなくて」——これはよく伺う話です。ですがガイドラインは、続けるための工夫についても記しています。

やめる前に、相談してください。マスクの種類を変えるだけで続くようになる方は、実際にいらっしゃいます。副作用としては、マスクの違和感、鼻やのどの乾燥、皮膚や目の違和感などが挙げられています。

CPAP以外の選択肢

治療ガイドラインの位置づけ
減量 「肥満を伴うOSA患者に対して減量療法を併用することを推奨する」(推奨1)。「減量療法はOSA患者の無呼吸を軽減させる」とされ、さらに高血圧・糖尿病・脂質異常症などの改善の可能性も挙げられています
口腔内装置(OA) マウスピースであごを前に出し、気道を広げるもの。「CPAP治療の適応とならない軽〜中等症の症例、あるいはCPAPが使用できない症例で、行うことを提案する」(推奨2・A)。歯科で作製します
体位療法(横向き寝) 仰向けをやめると無呼吸が軽くなる人がいます。「側臥位にて無呼吸が軽減されることを確認したうえで」指導することを提案(推奨2)。自己判断ではなく、確認したうえでという条件つきです
手術 CPAP・OAが使えない場合の選択肢。副作用を十分に説明したあとに行うことを提案(推奨2)

減量は「ついで」ではなく、正式に推奨されている治療です。たんぱく質の記事で書いたとおり、減量は食事だけでなく運動とセットで考えると続きやすくなります。

9. 【重要】眠れないからと睡眠薬を飲む前に

この章は、睡眠の真実を読んでくださった方に、とくにお伝えしたいことです。

不眠を有するOSA患者の治療では、最初に睡眠薬の使用は実施せず、まずはOSAそのものの治療を優先する。

「(睡眠薬は)薬剤により結果が異なるが、特に重症例においてはイベント数の増加、イベント時間の延長が報告されている。」

——同ガイドライン CQ32

「イベント数の増加、イベント時間の延長」——つまり、無呼吸の回数が増え、一回あたりの時間が長くなることが報告されている、ということです。

これは重要な意味を持ちます。

起こりうる、よくない流れ

無呼吸で眠りが分断される → 「眠れない」と感じる → 睡眠薬を飲む → 無呼吸が悪化する可能性 → さらに休まらない

この流れに入ってしまうと、本当の原因である無呼吸には、いつまでも手が付きません。

ただし、誤解のないように書き添えます。

いびきを指摘されたことがある、日中の眠気が強い——そういう方が睡眠薬を使っている、あるいは使おうとしているなら、次の受診時に一言だけ伝えてください。「無呼吸の可能性はありますか」と。

10. 運転をされる方へ

ガイドラインには、車の運転についての独立した章があります。

OSA罹患により運転事故リスクは上昇する。特に、中等〜重症の眠気(意図せず不適切な居眠りを日常活動中に生じるレベル)を有するか、眠気、疲労、不注意による事故もしくはニアミスを最近生じているOSAドライバーは、早期の診断・治療を受けるべきである。」

CPAP治療によって、OSA患者の事故リスクは低下する。

——同ガイドライン CQ35

「ヒヤリとしたことが最近ある」——これは、ガイドラインが名指ししている受診理由です。

ご自身が運転されない方も、ご家族が運転される場合は伝えてあげてください。本人は「少し疲れていただけ」と考えがちですが、居眠り運転は本人だけの問題では済みません。

11. 🚨 受診の目安と、今日からできること

こういうときは、調べる価値があります

【他の人から指摘されたこと】

【自分で感じること】

【検査結果や治療から】

ひとつでも当てはまれば、かかりつけ医に「無呼吸の検査を受けたほうがいいでしょうか」と聞いてみてください。それだけで十分です。

今日からできること

  1. 家族に聞いてみる。「私、寝ているとき息が止まってることある?」——この一言が出発点です
  2. 家族の睡眠を見てみる。いびきが途切れる、息が止まる——あなたにしか観察できない情報です
  3. 心当たりがあれば、かかりつけ医に相談する。まずは自宅でできる簡易検査から始まります
  4. 血圧が下がりにくい方は、そのことも伝える。「二次性高血圧の主要な原因のひとつ」です
  5. 睡眠薬を使っている・使おうとしている方は、「無呼吸の可能性はありますか」と一言。自己判断で中止はしないでください
  6. 体重が増えてきた方は、減量も正式な治療のひとつ。ただし無呼吸の治療の代わりにはなりません

12. よくある質問

睡眠時無呼吸は男性の病気ではないのですか?

男性に多いのは事実ですが、女性にも決して少なくありません。とくに閉経が大きな分かれ目になります。
日本人7,051人を対象とした研究では、中等度以上の睡眠呼吸障害が見つかった割合は、男性23.7%、閉経前の女性1.5%、閉経後の女性9.5%でした。閉経を境に約6倍に増えています。診療ガイドラインも「中等度以上の患者は成人男子の約20%、閉経後女性の10%にも及ぶ」としています。
さらに70歳以上の女性では10%を超えるという報告が多く、30〜40歳代でも女性の5%弱に見られます。「男性の病気」という思い込みが、女性の発見を遅らせています。

自分で気づく方法はありますか?

残念ながら、ほとんどありません。それがこの病気の最大の特徴です。
診療ガイドラインは、疑うべき症状としていびき、日中の過度の眠気、睡眠中の窒息感とともに目覚めること、あえぎ呼吸、不眠、そして「他者から睡眠中の呼吸中断が報告されること」を挙げ、「最も信頼できるのは、睡眠中の窒息感やあえぎ呼吸の存在」としています。いずれも眠っている間の出来事で、本人には確認できません。
またガイドラインは、質問紙について「診断精度は低く、質問紙で診断しないことを推奨する」とも述べています。つまりセルフチェックでは判断できず、気づけるのは隣で寝ている人か、検査だけです。

放っておくと、どうなりますか?

合併症によって、証拠の強さが異なります。
最も確かなのは高血圧です。ガイドラインは「OSAは二次性高血圧の主要な原因のひとつであり、特に治療抵抗性高血圧や夜間早朝高血圧ではOSAの合併に注意が必要」(エビデンスレベルA)としています。
糖尿病については「2型糖尿病発症の独立した危険因子となる可能性が高い」(B)心不全とは双方向の関係があり(B)、CPAP治療は心血管障害関連のパラメーターを改善する(A)とされます。
一方で脂質異常症については「独立した危険因子であることを示すエビデンスは不十分」(C)です。つまり「何にでも効く」わけではなく、高血圧と糖尿病、心血管系が中心だと理解してください。

眠れないので睡眠薬を飲んでいます。問題ありますか?

睡眠時無呼吸が背景にある場合、注意が必要です。診療ガイドラインは「不眠を有するOSA患者の治療では、最初に睡眠薬の使用は実施せず、まずはOSAそのものの治療を優先する」と明記しています。理由は、睡眠薬によっては「特に重症例においてはイベント数の増加、イベント時間の延長が報告されている」ためです。つまり、無呼吸を悪化させる可能性があります。
ただしすでに睡眠薬を飲んでいる方は、自己判断で中止しないでください。いびきを指摘されたことがある、日中の眠気が強いといった心当たりがあれば、次の受診時に「無呼吸の可能性はありますか」と伝えてください。

CPAPはどのくらい使えばいいですか?

診療ガイドラインは、明確な数字を示しています。日中の主観的な眠気の改善には「少なくとも一夜あたり4時間以上」、そして「効果を維持するためには毎日使用することが望ましい」。さらに高血圧と心血管イベントの頻度を抑えるためにも「少なくとも一夜あたり4時間以上」とされています。つまり4時間が一つの目安です。
またガイドラインは「CPAPの中断により、治療前に比較してAHIは悪化することはないが、OSAは再発する」としています。使い続けている間だけ効果があるという性質の治療です。
合わないと感じたら、やめる前にマスクの種類や加湿器の追加などを相談してください。それで続くようになる方がいます。

この記事のまとめ。睡眠時無呼吸は男性に多い——それは事実です。でも閉経前の女性1.5%が、閉経後には9.5%へ。約6倍になります。ガイドラインは「中等度以上の患者は成人男子の約20%、閉経後女性の10%にも及ぶ」としています。
そして最大の特徴は、本人には気づけないこと。手がかりはすべて眠っている間の出来事で、質問紙での診断も推奨されていません気づけるのは、隣で寝ている人か、検査だけです。
合併症は、証拠の強さが違います。高血圧はA(「二次性高血圧の主要な原因のひとつ」、とくに薬が効きにくい高血圧では要注意)、糖尿病はB脂質異常症はC。何にでも効くわけではありません。最大の危険因子は肥満ですが、やせていても、あごが小さければ起こります。
治療は中等症〜重症でCPAPが第一選択。目安は一夜4時間以上、毎日。そして——「不眠を有するOSA患者の治療では、最初に睡眠薬の使用は実施せず、まずはOSAそのものの治療を優先する」。眠れないからと薬だけで対処し続けるのは、危険なことがあります。
検査は、まず自宅でできる簡易検査から始まります。入院からではありません。
今夜、家族に聞いてみてください。「私、寝ているとき息が止まってることある?」——そこからしか始まらない病気です。

参考にした主な資料

なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。睡眠時無呼吸の診断には検査が必要で、症状や質問票だけで判断することはできません。現在処方されている睡眠薬・降圧薬などを、自己判断で中止・減量・増量しないでください。CPAP治療を受けている方が装置の使用をやめる場合も、必ず主治医にご相談ください。強い日中の眠気があり運転や危険を伴う作業をされる方は、早めに医療機関にご相談ください。掲載内容は公開時点の情報にもとづいており、内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。