1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 胆石があれば、すぐ手術 | 胆のう結石で症状がなければ、がんの合併がないことを確認したうえで、経過観察も可能。何らかの症状がある場合は手術が原則 |
| 石だけ取ればいい | 石だけ取っても再発するため、胆のうごと取り除く手術を行う |
| 胆のうを取ると、消化ができなくなる | 取ったあとは胆管が役割を担い、脂肪分やビタミンの消化・吸収に影響がないとされる |
| 胆石を放っておくと、がんになる | 胆石が原因でがんになるという明らかなデータはない。ただし胆のうがんの約70〜90%以上に胆石が合併しているため、がんの合併の評価と経過観察が大切 |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
健診で胆のう結石を指摘されても、症状がなければ慌てる必要はありません。ただし、がんの合併がないかを確認し、定期的に経過観察を受けることが前提です。そして、食後の右上腹部の痛み・黄疸・高熱が出たら、早めに受診してください。
2. 胆石とは:胆汁の通り道にできる石
胆汁は、肝臓で1日に600〜1,000mLほど作られる黄褐色の液体です。胆管という管を通って十二指腸に流れ出し、その途中にある袋状の胆のうで濃縮されて、食べ物の脂肪分やビタミンの消化・吸収を助けます。この胆汁の通り道に石ができる病気が胆石症です。
| できる場所 | 頻度 |
|---|---|
| 胆のう結石 | 約80%(もっとも多い) |
| 総胆管結石 | 約20% |
| 肝内結石 | 約2% |
ガイドは、日本人の胆石を持っている人の割合は、食生活の欧米化や高齢化などにより年々増加しているといわれている、としています。石の種類は、胆汁のコレステロール濃度が高いときにできるコレステロール石と、胆汁への細菌感染が原因と考えられる色素石の2つに分けられます。
3.【核心】症状がなければ、経過観察も可能
「胆石症になっても、胆嚢結石では8 割の人が、また総胆管結石では2~3 割の人は自覚症状がありません。このような場合には無症状胆石と呼ばれます。」(日本消化器病学会「患者さんとご家族のための胆石症ガイド2023」)
「経過観察」は、何もしないという意味ではありません。定期的に検査を受け続けることです。
「無症状の場合には、胆のうにがんの合併のないことを確認したうえで、治療を行わず定期的に経過観察することも可能です。」(同ガイド)
胆のうの中の石(胆のう結石)は、腹部超音波検査で見つけることができます。ガイドは、腹部超音波検査を「おなかの聴診器」と呼び、患者さんの負担はほとんどない検査だとしています。ただし、総胆管の中の石は、腹部超音波検査で描き出すのが多くの場合むずかしく、必要に応じてCTやMRCP(MRIで胆管を写す検査)などが行われます。
4. 治療が必要になるサイン
ガイドは、胆石症で起こる症状を次のように説明しています。
| 症状 | 資料の記述 |
|---|---|
| 胆道痛 | 右の肋骨の下やみぞおちの痛み。右肩に抜けるような痛みのことも。食後少しして出ることが多い |
| 黄疸 | 石が胆汁の流れをせき止めると、白目や皮膚が黄色くなる。皮膚のかゆみや、褐色から黒色の尿が出ることも |
| 高い熱 | 石のあるところに細菌が感染すると、高い熱が出る(急性胆のう炎・急性胆管炎)。適切な治療が行われないと敗血症というきわめて重い病気を引き起こす |
胆石があると言われている方は、食後のみぞおちや右上腹部の痛み、白目の黄色さ、濃い色の尿、発熱に気をつけてください。黄疸は白目の部分でわかりやすいとされています。
5. 胆石ができやすくなる要因
ガイドは、胆汁の成分に影響して胆石をできやすくする要因として、次のものを挙げています。
- 高カロリー食、肥満、脂質異常症
- 極端な体重減少、絶食や過度のダイエット(胆のうの働きが悪くなる)
- 妊娠、長期間の経口避妊薬
- 腸の切除、クローン病、肝硬変、胃の切除後
肥満や脂質異常症と同時に、極端なダイエットも要因に入っていることに注目してください。体重は、急に大きく減らすのではなく、適正に保つことが大切です。
6. 治療:胆のうごと取る手術
何らかの症状がある胆のう結石では、手術による治療が原則です。ガイドは、石だけを取り除いても再発してまた手術が必要になるため、「胆石を作る胆のうが悪い」という考え方で、胆石と一緒に胆のうを取り除く手術を行うと説明しています。
- 現在は、小さな傷で手術後の痛みも少なく、数日で退院できる腹腔鏡下胆のう摘出術が広く行われている
- 胆のう炎を繰り返して癒着がひどい場合や、胆のうがんの合併が疑われる場合などは開腹手術
- 手術は100%安全とはいかず、0.4%に重い合併症が起こると報告されている
- 条件を満たすコレステロール石では飲み薬で溶かすこともできるが、年単位で飲み続ける必要があり、対象は限られる
「胆のうを取ってしまった後は流れ道である胆管が胆汁の分泌機能を担って、脂肪分やビタミンの消化・吸収に影響がないとされています。」(同ガイド)
下痢などの消化器症状がみられる場合もありますが、ガイドは、胆のう炎や胆石発作に悩まされなくなる、食事制限が不要になるといったメリットのほうが大きいとしています。また、治療後も再発することがあるので、健康診断の際には一般検査に加えて超音波検査を受けることが勧められています。
7. 胆石と胆のうがんの関係
「胆石を放っておくと、がんになるのでは」という心配に、ガイドは次のように答えています。
- 胆石が原因でがんになるという明らかなデータはない
- ただ、胆のうがんには約70〜90%以上と高い割合で胆石が合併していることが知られている
- 胆石ががんの原因なのか、がんができた結果なのかを判断するのはむずかしいのが現状
「胆のう結石症と診断された場合にがんの合併がないかを評価すること、合併がみられない場合にも経過観察を受けることが大切です。」(同ガイド)
8.【内科医の視点】予防は、肥満・糖尿病・脂質の管理と同じ
内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。ガイドは、胆石は生活習慣と密接に関連しているとして、肥満や糖尿病、脂質異常などに気をつけるよう勧めています。
| ガイドが挙げていること | 内容 |
|---|---|
| 気をつけること | 暴飲暴食を避ける、適度な運動、コレステロール・脂質の適量摂取、便秘の予防、規則正しい食生活、過度のダイエットはしない、アルコール飲料や香辛料の過度の摂取を避ける |
| リスクを減らす効果が期待されるもの | 魚油、野菜、ナッツ、植物性タンパクなど。適度のコーヒーや飲酒もリスクを減らすとされるが、度を越すと逆効果 |
ガイドが挙げる肥満・糖尿病・脂質異常は、健診で調べる項目でもあります(→コレステロール、脂肪肝とALT、糖尿病予備軍)。便秘については便秘の記事で書いています。
9. 受診したほうがよいとき
早めに受診したいとき
・食後しばらくして、右の肋骨の下やみぞおちが痛む(右肩に抜けることも)
・白目や皮膚が黄色い、皮膚がかゆい、尿が褐色から黒っぽい
・胆石があると言われていて、高い熱が出た
相談したいとき
・健診で胆のう結石を指摘された(がんの合併がないかの確認と、経過観察の方針)
・胆石の治療後で、定期的な検査について知りたい
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 胆のう結石の8割は自覚症状がない
② 症状がなければ、がんの合併がないことを確認したうえで経過観察も可能
③ 食後の右上腹部・みぞおちの痛み、黄疸、高い熱は受診のサイン
④ 症状があれば、胆のうごと取る手術が原則。取っても消化・吸収に影響はないとされる
⑤ 予防は、肥満・糖尿病・脂質異常に気をつけ、過度のダイエットをしないこと
10. よくある質問
健診で胆石があると言われましたが、痛みはありません。手術が必要ですか?
日本消化器病学会の患者さん向けガイドによると、胆のう結石では8割の人に自覚症状がありません。症状がない場合は、胆のうにがんの合併がないことを確認したうえで、治療を行わずに定期的に経過観察することも可能とされています。何らかの症状がある場合は、手術による治療が原則です。
胆石があると、どんな症状が出ますか?
ガイドによると、右の肋骨の下やみぞおちの痛み(胆道痛)がみられ、右肩に抜けるような痛みが起こることもあります。食後少しして症状が出ることが多いのが特徴です。胆汁の流れが妨げられると白目や皮膚が黄色くなる黄疸が、細菌が感染すると高い熱が出ることがあります。
胆のうを取ってしまっても大丈夫ですか?
ガイドによると、胆のうを取ったあとは胆管が胆汁の分泌の役割を担い、脂肪分やビタミンの消化・吸収に影響がないとされています。下痢などの症状がみられる場合もありますが、胆のう炎や胆石発作に悩まされなくなる、食事制限が不要になるといったメリットのほうが大きいとされています。
胆石を放っておくと、がんになりますか?
ガイドによると、胆石が原因でがんになるという明らかなデータはありません。ただ、胆のうがんには約70〜90%以上と高い割合で胆石が合併していることが知られています。胆のう結石と診断されたら、がんの合併がないかを評価し、合併がない場合も経過観察を受けることが大切とされています。
胆石を予防する方法はありますか?
ガイドは、胆石は生活習慣と密接に関連しているとして、肥満や糖尿病、脂質異常に気をつけるよう勧めています。暴飲暴食を避ける、適度な運動、コレステロール・脂質の適量摂取、便秘の予防、規則正しい食生活、過度のダイエットをしないことなどが挙げられ、魚油や野菜、ナッツ、植物性タンパクはリスクを減らす効果が期待されるとされています。
参考にした主な資料
- 日本消化器病学会「患者さんとご家族のための胆石症ガイド2023」(Q1〜Q8)