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検査と数値

甲状腺眼症
——まぶたの腫れ・目が出る・物が二重に。甲状腺の数値が正常でも起こり、治療の第一歩は甲状腺機能の正常化と禁煙

まぶたが腫れぼったい、目を見開いたような顔になった、目が前に出てきた気がする。バセドウ病と言われている——そんな方に向けた記事です。
日本眼科学会によると、甲状腺眼症は「バセドウ病でみられる目の症状」で、自己免疫の病気です。ただし甲状腺機能が正常、あるいは低下している場合でも目に症状が現れるため、「甲状腺眼症」という名前が一般的に使われています。
炎症は週単位・月単位で悪化したあと自然に落ち着きますが、症状の一部が残ってしまうことが問題とされています。治療の第一歩は、甲状腺機能の正常化と禁煙です。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年10月23日 読了:約7分

1. 先に結論

よくある思い込み資料の記述
甲状腺の数値が正常なら、目の症状は関係ない甲状腺機能が正常あるいは低下している場合でも目に症状が現れる
炎症が治まれば、元どおりになる反応はピークを超えると自然に終息するが、症状の一部が残ってしまうことが問題。症状が重いほど残る症状も強い傾向
目の病気なので、たばこは関係ない甲状腺機能の正常化と禁煙は、甲状腺眼症治療の第一歩
見た目の変化は我慢するしかない外見の変化による社会的・心理的影響も大きな問題とされる。炎症が治まった後のまぶたの異常や眼球突出には手術も行われる

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

甲状腺眼症は、甲状腺の数値が正常でも起こります。まぶたの腫れ・見開き、目が出る、物が二重に見えるといった変化があれば眼科で相談してください。禁煙は治療の第一歩です。

2. 甲状腺眼症とは——自己免疫の病気

バセドウ病では甲状腺ホルモンが過剰になります(甲状腺機能亢進)。甲状腺眼症は「バセドウ病眼症」とも呼ばれますが、甲状腺機能が正常あるいは低下している場合でも目に症状が現れるため、「甲状腺眼症」という名前が一般的に使われています。

甲状腺の数値の読み方やバセドウ病については甲状腺と疲れの記事で書いています。

3.【核心】炎症の症状と、残りやすい症状

甲状腺眼症の症状——消えていくものと、残りやすいもの 日本眼科学会(監修:日本眼形成再建外科学会)の解説をもとに整理 炎症による症状 ・目の奥の不快感、目を動かすと痛む ・まぶたが赤くむくむ ・白目の充血、ぶよぶよする ・目頭が赤い ・涙が出る、目が悪くなった(初期) → 経過とともに鎮静化していく 後遺症になりやすい症状 ・まぶたが腫れる(眼瞼腫脹) ・見開いてしまう(眼瞼後退) ・目が出る(眼球突出) ・目を動かしにくい ・モノが2つに見える(複視) → 脂肪が増える・組織が硬くなる 最も重症な場合は失明する。視神経や眼表面の高度な障害で、緊急な対応が必要 出典:日本眼科学会「甲状腺眼症」をもとに作図

まぶたの腫れや見開き、眼球突出などは改善するものの、後遺症になりやすいとされています。

「これら症状は、見え方のみならず、外見の変化により人目が気になるといった社会的・心理的影響も大きな問題となります。」(日本眼科学会「甲状腺眼症」)

まぶたが下がる・腫れる病気はほかにもあります(→まぶたのトラブル)。日本眼科学会は、甲状腺眼症と似た症状を示し区別が必要な病気として、特発性眼窩炎症、IgG4関連眼疾患、リンパ腫を挙げています。

4. 経過——半年から数年で落ち着く

「この反応は週単位、月単位で悪化しますが、ピークを超えると自然に終息します。早くて半年、長ければ数年の経過です。問題は次に述べる症状の一部が残ってしまうことです。」(日本眼科学会「甲状腺眼症」)

日本眼科学会は、症状が重いほど、残る症状も強い傾向があるとしています。

5. 検査——抗体の血液検査とMRI

検査資料の記述
血液検査診断には、血液検査で甲状腺刺激ホルモン受容体抗体を検出することが重要
MRI目の周囲の組織に起こる炎症や、脂肪・筋肉の変化をMRIで評価し、適切な治療方針を決める。目を動かす筋肉(外眼筋)が太くなっている様子がわかる

6. 治療——第一歩は甲状腺機能の正常化と禁煙

「甲状腺機能の正常化(低下させない)および禁煙は、甲状腺眼症治療の第一歩です。」(日本眼科学会「甲状腺眼症」)

症状には大きな個人差があり、状態が収まるまで経過を観ることも選択肢の一つとされています。治療を行う場合は、炎症の有無によって薬物治療か手術に分けられます。

治療資料の記述
薬物療法(炎症に対して)ステロイドの大量投与が基本。目の周囲への局所注射、または点滴(+内服)。放射線治療にも補助的な効果が期待できる。近年、テプロツムマブという生物学的製剤(点滴)が登場し、高い治療効果が示されている
手術炎症が治まった後のまぶたの異常、斜視、眼球突出に対して行う。目の周りの脂肪を取る、筋肉や腱を移動させる、顔の骨を削るといった特殊な手術を行う医療機関は限られる。失明の危険が高い最も重症な例では、炎症があっても手術(眼窩減圧術)を勧めることがある
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この章で扱った禁煙を手助けする市販薬です。日本眼科学会は、「甲状腺機能の正常化(低下させない)および禁煙は、甲状腺眼症治療の第一歩です。」としています。この市販薬は、資料に名前の出ている製品ではありません。

※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。ここで紹介しているのは、ニコチンを皮膚から補う禁煙補助薬ニコチネル パッチ20(第1類医薬品・販売元 佐藤製薬)です。添付文書に書かれた使い道(効能)は、禁煙時のイライラ・集中困難・落ち着かないなどの症状の緩和で、甲状腺眼症の治療薬ではありません。購入時には薬剤師による確認があります。添付文書では、妊娠中・授乳中の人、3か月以内に心筋梗塞を起こした人、重い狭心症や重い不整脈と診断された人、急性期の脳梗塞・脳出血と診断された人、うつ病と診断されたことのある人などは使用しないこととされています。使い方は、最初の6週間はパッチ20、次の2週間はパッチ10を1日1枚で、連続して8週間を超えて使用しないこととされています。使用中の喫煙はしないでください。甲状腺の病気で治療中の方は、使う前に主治医または薬剤師に相談するか、禁煙外来を利用してください。

7.【内科医の視点】甲状腺の数値が正常でも、目は別に診てもらう

内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。資料によると、甲状腺眼症は甲状腺機能が正常、あるいは低下している場合でも起こります。内科で甲状腺の数値が落ち着いていても、まぶたや目の変化があれば、眼科で別に診てもらうことが大切です。

もう一つは禁煙です。資料は、甲状腺機能の正常化と並べて禁煙を治療の第一歩に挙げています。バセドウ病の方で喫煙している方は、主治医に禁煙の相談をしてみてください。

8. 眼科を受診したいとき

すぐに眼科を受診したいとき

・甲状腺眼症と言われていて、急に見えにくくなった(最も重症な場合は失明する。緊急な対応が必要)

眼科を受診・相談したいとき

・まぶたが赤くむくむ、腫れる、見開いたようになった

・目が前に出てきた、目を動かすと痛い、動かしにくい

・物が二重に見える

・バセドウ病などの甲状腺の病気があり、目の症状が気になる(甲状腺の数値が正常でも)

最後に、この記事の要点をもう一度。

① 甲状腺眼症は自己免疫の病気。甲状腺機能が正常・低下でも起こる

② 炎症の症状は落ち着いていくが、まぶたの腫れ・見開き・眼球突出・複視は残りやすい

③ 経過は早くて半年、長ければ数年

④ 診断には甲状腺刺激ホルモン受容体抗体の血液検査とMRI

⑤ 治療の第一歩は甲状腺機能の正常化と禁煙。炎症にはステロイドや生物学的製剤、落ち着いた後は手術も

9. よくある質問

甲状腺の数値が正常でも甲状腺眼症になりますか?

日本眼科学会によると、バセドウ病では甲状腺ホルモンが過剰になりますが、甲状腺機能が正常あるいは低下している場合でも目に症状が現れます。そのため「甲状腺眼症」という名前が一般的に使われています。

甲状腺眼症ではどんな症状が出ますか?

日本眼科学会によると、炎症が強いときには目の奥の不快感、目を動かすときの痛み、まぶたが赤くむくむ、白目の充血などが起こり、これらは経過とともに鎮静化していきます。一方、まぶたが腫れる、見開いてしまう、目が出る、物が二つに見えるといった症状は、後遺症になりやすいとされています。

甲状腺眼症はどのくらい続きますか?

日本眼科学会によると、反応は週単位・月単位で悪化しますが、ピークを超えると自然に終息し、早くて半年、長ければ数年の経過です。問題は症状の一部が残ってしまうことで、症状が重いほど残る症状も強い傾向があるとされています。

甲状腺眼症のためにできることはありますか?

日本眼科学会は、甲状腺機能の正常化(低下させない)と禁煙を、甲状腺眼症治療の第一歩としています。症状には大きな個人差があり、状態が収まるまで経過を観ることも選択肢の一つとされています。

どんな治療がありますか?

日本眼科学会によると、炎症に対してはステロイドの大量投与が基本で、目の周囲への局所注射や点滴で行います。放射線治療にも補助的な効果が期待でき、近年はテプロツムマブという生物学的製剤(点滴)も登場しています。炎症が治まった後のまぶたの異常や斜視、眼球突出には手術を行います。

参考にした主な資料

凪
なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した内容は、日本眼科学会の一般向け解説(監修:日本眼形成再建外科学会)にもとづくもので、公開時点の情報です。まぶたの腫れや眼球突出、複視などがある場合は眼科を受診してください。急に見えにくくなった場合は、すぐに受診してください。甲状腺の治療については主治医と相談してください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。