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MEDICALLY REVIEWED BEAUTY & HEALTH
体型と代謝

変形性膝関節症
——40歳以上の55%。「年のせい」で片づけないための、確かな話

X線で見た膝の変化がある方は、日本に約2,500万人40歳以上の有病率は約55%で、要介護への移行リスクは約6倍——診療ガイドラインに書かれている数字です。
そして、いちばん強く推奨されている治療は、薬でも手術でもなく運動でした。一方、テレビでよく見るあの成分について、日本整形外科学会は「有効性はすべて否定的である」と書いています。
この記事はご家族と一緒に読んでいただけるよう、なるべくやさしい言葉で書きました。お若い方に向けた章も用意しています。膝は、若いうちの過ごし方が何十年か後に効いてくる関節だからです。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年8月13日 読了:約18分

1. 先に結論

長い記事です。まず要点だけまとめます。

よく言われることガイドラインの記述
年のせいだから仕方ない40歳以上の約55%に起こる、たしかに多い病気です。ただし要介護への移行リスクは約6倍。放っておいてよい病気ではありません
まず痛み止め推奨の強さが最高(1)なのは運動療法・教育プログラム・塗り薬/貼り薬。飲み薬も注射も、その一段下です
まず痩せなさい体重減少は「有用であるが、その効果は限定的である」(推奨2)。予防としては非常に重要ですが、痛みを取る手段としては運動が上です
グルコサミンを飲んでいる「これらの有効性はすべて否定的である」。学会が正面から結論を出しています
膝の内視鏡手術できれいにする変形性膝関節症に対しては「行わないことを提案する」。人工関節への移行を減らす利点も示されませんでした
若いうちは関係ない最大の危険因子は若い頃の膝のケガです(オッズ比4.2〜6.0)

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

お金をかけるところと、力を入れるところが、ずれていることがあります。
毎月のサプリ代よりも、週3回の運動のほうが、ガイドラインの評価は上です。そして運動は、整形外科で膝の状態を診てもらってから始めるのがいちばん確実です。

2. 膝で、何が起きているのか

むずかしい言葉を使わずに説明します。

膝の骨と骨の間には、クッションの役割をする軟骨があります。長い年月のあいだに、このクッションがすり減り、骨と骨のすきま(関節裂隙といいます)が狭くなっていきます。骨のふちには骨棘という出っぱりができます。これが変形性膝関節症です。

ここで、ひとつ知っておいていただきたいことがあります。

膝の痛みの原因としては、疾患の進行に伴う滑膜炎や骨髄病変が関与している。また社会心理的な問題の関与も指摘されている。

——変形性膝関節症診療ガイドライン2023

つまり、痛みは「すり減り」だけで決まるわけではないのです。関節の内側の膜が炎症を起こしている状態(滑膜炎)や、骨の中の変化が関わっています。

実際、痛みのある方の77.5%に骨髄の病変が見られたのに対し、痛みのない方では30%だったという報告が紹介されています。

ですから——

痛みと関係があるもの。ガイドラインは、膝の痛みと関連が指摘されている要素として、女性であること、肥満、大腿四頭筋(ふとももの前の筋肉)の筋力低下、膝のケガの既往を挙げています。
そして重要な一文があります。ある研究では男女ともに大腿四頭筋の筋力低下が膝の痛みと有意に相関した一方、握力との関連はみられなかったと報告されています。
膝を守る筋肉は、膝の筋肉なのです。握力を鍛えても膝は守れません。8章につながる話です。

3. 数字で見る——2,500万人、そして要介護6倍

ガイドラインの序文と本文から、そのまま引用します。

変形性膝関節症は、約800万人が疼痛や硬さ、腫れなど何らかの症状を有しており、X線学的な関節症変化は約2,500万人に存在し、40歳以上で有病率が約55%、有症状者が1,800万人に達するといわれ、要介護への移行リスクが約6倍あることが指摘されています。

日本の大規模な疫学研究(ROADスタディ)では、膝の変形性関節症の有病率は54.6%(男性42%、女性61.5%)女性のほうが明らかに多いのがこの病気の特徴です。

そして、命にも関わります

ここは驚かれるかもしれませんが、ガイドラインにはっきり書かれています。

画像診断による膝OAは心血管障害、糖尿病および腎障害による生命予後に関与するとの報告がある。〔…〕したがって、症候性膝OAまたは画像上の膝OAは総死亡リスクを上げるといえる。

北米の51,938人を約13.6年追跡した研究では、X線で膝の変形がある方は、心血管障害の方の死亡リスクを1.43倍、糖尿病の方で2.04倍、腎障害の方で1.14倍に上げていました。そして肥満があると、この差はさらに広がります(心血管障害1.89倍、糖尿病3.42倍)。

なぜ膝で死亡リスクが上がるのか。理屈はこうです。

膝から始まる悪循環 膝が痛む 動くのがつらい 歩かなくなる 外出が減る 筋力が落ちる 体重が増える 高血圧・糖尿病 心臓・血管の病気へ 体重が増えると、膝にさらに負担がかかる だから「膝が痛いから動かない」は、いちばん避けたい選択です。 ※ガイドラインも「膝OAによる活動性の低下から高血圧や糖尿病を発症し、  心血管疾患の合併により死亡に至る危険性が高い」と指摘しています
日本整形外科学会「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」BQ2・BQ5の記述より作成。

ガイドラインは正直に、「膝OAのQOLや健康寿命への影響については報告が少なく評価できない」とも書いています。分かっていないことは分かっていないと書く。信頼できる資料の書き方です。

4. 【若いうちから①】いちばん強い原因は「膝のケガ」

ここからの2章は、まだ膝が痛くない、お若い方に向けて書きます。ご家族に若い方がいらしたら、ぜひ伝えてあげてください。

危険因子の強さを、ガイドラインが挙げているオッズ比(何倍なりやすいか)で並べます。

何倍なりやすいか(オッズ比) 前十字靭帯+半月板の損傷 6.0 前十字靭帯の損傷 4.2 膝のケガ(全般) 2.83 肥満 2.66 過体重 1.98 女性であること 1.68 いちばん上の2つは、多くが10代〜20代に起きるケガです。
日本整形外科学会「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」BQ3に引用された大規模レビューの数値より作成。

見ていただきたいのは、いちばん上に来るのが体重ではなく「膝のケガ」だということです。

前十字靭帯は膝の中にある靭帯で、サッカー、バスケットボール、スキー、バレーボールなどで切れることがあります。半月板も同じくスポーツでよく痛める部分です。

これらの多くは、10代から20代に起こります。そして膝OAとして表に出てくるのは、その何十年か後です。

お若い方へ、そのご家族へ。

膝をひねった、腫れた、「膝が抜ける感じ」がした——そういうとき、痛みが引いたからといって自己判断で終わりにしないでください。

整形外科で、最後まで診てもらう。必要なら手術やリハビリを最後までやりきる。そのひと手間が、40年後の膝を決めます。

「もう治ったから大丈夫」と思っていた昔のケガが、いま膝が痛い理由かもしれません。診察のときは、若い頃のケガを必ず伝えてください。

5. 【若いうちから②】35〜54歳で膝が痛む方へ

もうひとつ、はっとさせられる数字があります。

ガイドラインは、膝の自然経過について次の研究を紹介しています。膝OAと診断されてはいないけれど、3か月以上続く膝の痛みがある35〜54歳の男女143人を、12年追跡した研究です。

3か月以上続く膝の痛みがある35〜54歳を、12年追った結果 開始時、膝の変形は まだ「なし」だった76人 86% が12年のうちに 膝OAへ移行 開始時、すでに膝OA だった67人 95% が12年のうちに 進行した 読み取ること: 「3か月以上続く膝の痛み」は、年齢に関係なく相談する価値があります。 ※日本の松代膝検診では、21年後の再調査で61%に新たな膝OAの所見が認められたとの報告もあります
日本整形外科学会「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」BQ1に引用された長期追跡研究より作成。

30代・40代の「膝の痛み」は、年のせいではありません。これから何十年もつきあう膝の、いちばん早い時期のサインかもしれない、ということです。

3か月以上続いているなら、一度整形外科で診てもらってください。それだけで、その後の道が変わることがあります。

6. 危険因子の全体像

すべての年代に向けて、ガイドラインが挙げている危険因子を整理します。

分類内容
はっきりしているもの肥満(過体重)/女性/高齢/膝関節のケガの既往/膝に負担をかける仕事や活動
仕事・動作農業・林業・漁業は事務職や技術職より危険性が高い。正座やしゃがみ込む動作は骨棘の形成や関節のすきまが狭くなることに影響する
体の使い方O脚・X脚などのアライメント/膝を伸ばす筋力の低下/歩くときに膝が横にぶれる(スラスト)/膝の曲げ伸ばしの制限/内側半月板の変性
全身の病気高血圧・脂質異常・糖代謝異常。合併数が増えるほど発症・進行の危険度も増す
認知機能軽度の認知障害から、運動不足・過体重・高血圧を経て膝OAを発症する危険度はオッズ比4.19との報告

ここで注目していただきたいのは、高血圧・脂質異常・糖代謝異常が並んでいることです。いわゆるメタボリックシンドロームの要素で、合併している数が増えるほど、膝のリスクも上がります

健診の結果は、心臓や血管のためだけの数字ではないということです(→健診結果の読み方ガイド)。

骨密度との関係は。「骨粗鬆症だから膝も悪くなる」と思われがちですが、ガイドラインは骨密度やビタミンDについて「弱い関連性もしくは関連性なしという結果であり、膝OAのリスク因子かどうかは現時点で明らかではない」としています。
骨と関節は、別に考えたほうがよい問題です(→骨密度の記事)。
なお喫煙については、大規模レビューでオッズ比0.9と「予防的な因子」という結果が示されたという記述があります。ただしこれは喫煙をすすめる根拠にはまったくなりません。喫煙が全身に及ぼす害は、膝ひとつと比べられるものではありません。

7. 【重要】治療を、推奨の強さで並べる

ここがこの記事の中心です。

ガイドライン2023は、それぞれの治療に「推奨の強さ」をつけています。定義はこうです。

推奨の強さ意味
1:強い実施することを推奨する
2:弱い実施することを提案する
2:弱い(逆向き)実施しないことを提案する

この物差しで並べると、こうなります。

変形性膝関節症診療ガイドライン2023の評価 1 / 強い推奨 —— 実施することを推奨する 運動療法(種類は問わない。筋トレ・有酸素運動・太極拳・ヨガなど) 教育プログラム(生活習慣の指導を受けること) NSAIDsの外用薬(塗り薬・貼り薬) 2 / 弱い推奨 —— 実施することを提案する ・体重減少(「有用であるが、その効果は限定的である」) ・装具療法(膝装具・外側楔型足底板)/歩行補助具 ・アセトアミノフェン/NSAIDsの内服/ヒアルロン酸の関節内注射 ・ステロイドの関節内注射(短期的効果のみ。頻回・長期は避けるべき)/TENS/超音波 2 / 弱い —— 実施しないことを提案する 鍼治療・灸治療 関節鏡による半月板部分切除・デブリドマン(膝の内視鏡手術) ※サプリメント(グルコサミン・コンドロイチン・ビタミンD)は別の資料で検証され、  有効性は否定的と結論されています(11章)
日本整形外科学会「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」CQ1〜CQ15の推奨文と推奨の強さより作成。

この図を見て、驚かれた方も多いのではないでしょうか。

いちばん上にあるのは、薬でも注射でも手術でもなく、運動です。

8. 第一の治療は、運動です

ガイドラインの推奨文をそのまま引用します。

CQ2 変形性膝関節症に運動療法は有用か
運動療法は、鎮痛、身体機能改善効果、日常生活機能改善効果を認め有用である。
推奨の強さ 1:強い(実施することを推奨する)

どんな運動をすればよいのか

安心していただきたいのですが、種類は決まっていません。研究に含まれていたのは次のようなものです。

ガイドラインは「効果的な運動療法の種類に関するエビデンスは不明である」と書いています。つまり「続けられるものを選んでよい」ということです。太極拳やヨガでよいのです。

頻度と期間の目安

ひとつ、具体的な数字が紹介されています。

2019年に報告された陸上運動による膝痛改善に効果的な運動頻度と期間に関するシステマティックレビューでは、週3回、8〜11週または12〜15週が有用であると報告されている。

週3回、2〜4か月。これが一つの目安になります。

膝を守る筋肉は、ふとももの前です

2章で触れたとおり、大腿四頭筋(ふとももの前の筋肉)の筋力低下が、膝の痛みと相関します。ここを保つことが、膝にとっては直接的です。

具体的な方法は、必ず整形外科や理学療法士から、ご自身の膝に合ったものを教わってください。ガイドラインもこう釘を刺しています。

適切な運動を実施するためには、画像評価を含む整形外科学的評価を行うことが重要である。

自己流で始める前に、一度診てもらう。これが遠回りに見えて、いちばん確実です。

運動には、膝以外の効果もあります。ガイドラインは、運動療法がサルコペニア(筋肉の減少)、フレイル(虚弱)、ロコモティブシンドローム、肥満の体重管理にも効果が期待でき、「膝OAに対する運動療法による直接的な効果以外にも有益である」としています。
3章の悪循環の図を思い出してください。運動は、その輪を断ち切る場所にあります。(→筋肉と基礎代謝の記事たんぱく質の記事

9. 体重を減らす——「効果は限定的」と書かれた理由

ここは、多くの方が意外に思われるところだと思います。

CQ3 変形性膝関節症に体重減少は有用か
変形性膝関節症に対する体重減少は有用であるが、その効果は限定的である。
推奨の強さ 2:弱い(実施することを提案する)

「膝が痛いなら、まず痩せなさい」——よく言われる言葉です。ですがガイドラインでは、体重減少は運動療法より一段下の扱いになっています。

ただし、ここを読み違えないでください。2つの話を分ける必要があります。

評価
予防として(太らないこと)非常に重要。過体重でオッズ比1.98、肥満で2.66。危険因子として上位です
治療として(すでに痛む膝を、減量で良くする)効果は限定的(推奨2)

つまり——太らないことは、なる前に効く。すでに痛む膝には、減量だけでは足りない。

そして実際には、運動をすれば体重にも働きかけられます。ですから順番としては、まず運動。減量はそこに付いてくるものと考えるのが現実的です。

すでに一生懸命に減量してこられた方へ。
それは決して無駄ではありません。心臓、血管、血糖、そして膝の進行——どれにも意味があります。
ただ「痩せたのに膝が良くならない」と、ご自身を責める必要はまったくない、ということです。ガイドラインがそう書いています。

10. 【高齢の方へ】痛み止めは、持病によって変わります

この章は、ぜひご家族と一緒に読んでください。膝の記事の中で、いちばん実生活に直結する部分です。

ガイドラインには、高齢の方の薬の第一選択を、持病ごとに分けた項目があります(CQ6)。そのまま表にします。

持病の状況第一選択として推奨されているもの
併存疾患がないアセトアミノフェン/NSAIDs外用薬(塗り薬・貼り薬)/NSAIDs内服薬/COX-2選択的阻害薬/ヒアルロン酸の関節内注射
胃腸の障害のリスクがあるアセトアミノフェン/NSAIDs外用薬/ヒアルロン酸注射
NSAIDsの飲み薬が外れます
心臓・血管の障害のリスクがあるアセトアミノフェン/NSAIDs外用薬/ヒアルロン酸注射
NSAIDsの飲み薬が外れます
腎臓の障害のリスクがあるアセトアミノフェン/ヒアルロン酸注射
塗り薬・貼り薬も外れます

いちばん下の行を見てください。

腎臓が心配な方は、湿布も第一選択から外れています。

「貼り薬なら薬のうちに入らない」「市販の湿布くらい大丈夫」——そう思われている方は、とても多いと思います。ですが貼り薬にも成分は入っており、体に吸収されます。

ガイドラインは、高齢の方について、こう注意を促しています。

高齢者における薬物療法には、併存する慢性疾患が多いため長期に多剤を服用していることや、臓器予備能が小さいため過量投与となりやすいなどの留意点がある。

診察のときに、これを伝えてください。

そして市販の痛み止めを自己判断で足さないでください。飲み薬と貼り薬で同じ成分が重なることもあります。

注射という選択肢

2つあり、性格が違います。

種類ガイドラインの記述
ヒアルロン酸
関節内注射
「変形性膝関節症に対して有用である」(推奨2・エビデンスB)。持病があっても第一選択に残るため、高齢の方には選ばれやすい選択肢です
ステロイド
関節内注射
「有用であるが短期的効果のみであり、頻回の投与や長期間の使用は避けるべきである」(推奨2・エビデンスC)

ステロイド注射は「よく効くけれど、繰り返してはいけない」種類の治療です。打つたびに楽になるからと続けたくなりますが、ガイドラインがはっきり「避けるべき」と書いていることは知っておいてください。

11. 【重要】グルコサミン・コンドロイチンについて

この章を書くために、この記事を書いたと言ってもいいと思います。

変形性膝関節症のガイドラインには、サプリメントだけを扱った独立の資料が付いています。日本整形外科学会が、正面から検証したものです。

まず、学会自身が広告についてこう書いていることを紹介します。

これら〔いわゆる健康食品やサプリメント〕は食品に分類されるため一般小売店でも販売可能であって、法律上、その効能・効果を謳うことは許されない。しかし、種々のマスメディアで日々喧伝される膝OAに対する健康食品やサプリメントの広告には上記に抵触する疑いのあるものもある

——変形性膝関節症診療ガイドライン2023「サプリメントに関わる資料集成」

そのうえで、メタ解析の結果です。

成分検証の規模結果
コンドロイチンランダム化比較試験18研究6か月未満では鎮痛効果なし。6か月〜2年ではわずかにあるが、2000年以降の質の高い5研究に限れば鎮痛効果はほとんどなし。機能改善・ADL/QOL改善・軟骨保護作用はすべての期間を通じてなし
グルコサミンランダム化比較試験11研究すべての期間を通じて、鎮痛・機能改善・ADL/QOL改善・軟骨保護作用なし
両方の併用ランダム化比較試験12研究鎮痛・機能改善・ADL/QOL改善効果なし
ビタミンDランダム化比較試験4研究長期では効果は漸減し軽度。軟骨保護作用なし

そして結論です。

以上より、変形性膝関節症に対するサプリメント(グルコサミン、コンドロイチン、およびグルコサミンとコンドロイチンの併用およびビタミンD)の鎮痛・機能改善効果、ADL/QOLの改善効果は認められず、軟骨保護作用も明らかでなく、これらの有効性はすべて否定的である
有害事象の発生はプラセボと有意な差はないものの、臨床的改善が見込まれない以上、そのコストは患者にとって受容できるものとはいえないと考える。

整理します。

ここで、このサイトが何度もお伝えしてきた見方が、また当てはまります。古い研究では差が出ていたのに、2000年以降の質の高い研究に限ると効果がほとんど消えた——コンドロイチンの部分です。これは飲むコラーゲンの記事でお見せしたのとまったく同じ形です。

もう何年も飲んでこられた方へ。

だまされた、と落ち込まないでください。テレビでも新聞でも大きく宣伝されているものを試すのは、ごく自然なことです。私の家族も飲んでいました。

お伝えしたいのは、これだけです。そのお金と期待を、週3回の運動と、整形外科への一度の受診に向け直せませんか。ガイドラインが評価しているのは、そちらのほうです。

やめるかどうかはご自身で決めてよいことです。害はないと書かれています。ただ「これを飲んでいるから大丈夫」と思って受診が遅れることだけは、避けていただきたいと思います。

サプリメント全般の見分け方は、別に一本書いています(→サプリメントの選び方)。

12. 手術——勧められるもの、勧められないもの

手術と聞くと身構えてしまいますが、ここも評価が分かれています。

勧められないもの:関節鏡の手術

CQ15 変形性膝関節症に対する鏡視下半月板部分切除や鏡視下デブリドマンの有用性は限定的であり、治療法としては行わないことを提案する。(推奨2・実施しないことを提案する/エビデンスB)

膝に小さな穴をあけて内視鏡でみて、傷んだ半月板を切ったり、関節の中をきれいにしたりする手術です。「膝の中を掃除する」と説明されることがあります。

ガイドラインが挙げている根拠です。

すすめられたときには、「ガイドラインでは行わないことを提案する、となっていると聞きました。私の場合はどうでしょうか」と聞いてみてよいと思います。

誤解のないように。これは「変形性膝関節症に対して」の評価です。若い方の外傷による半月板損傷など、状況が違えば話は変わります。診断が何であるかによって、同じ手術の評価が変わるということです。

有効とされているもの:人工膝関節置換術

人工膝関節全置換術(TKA)は、高齢者の内側及び外側に進行した変形性膝関節症症例には疼痛の軽減、ADLの改善に有効で、QOLの向上にも有用である。

進行した膝には、はっきり有効とされています。ガイドラインは、機種やデザインの違いについて「現在使用されているレベルの機種やデザインでは有意な差はない」とも書いています。広告で機種を選ぶ必要はない、ということです。

このほか、骨を切って傾きを直す骨切り術、膝の内側だけを置き換える単顆置換術という選択肢もあり、年齢や進行の程度で使い分けられます。

「もう歳だから手術は無理」と、ご自分で決めてしまわないでください。判断は、整形外科医と一緒にするものです。

13. 暮らしの工夫——正座・しゃがみ込み・階段

今日からできることを、やさしくまとめます。

場面工夫
正座・しゃがみ込みガイドラインは正座やしゃがみ込む動作が骨棘の形成や関節のすきまが狭くなることに影響するとしています。いすの生活に切り替えるのがいちばん確実です。法事などで避けられないときは、正座いすを使う手もあります
床の生活布団からベッドへ、座卓からテーブルへ。立ち上がる回数と深さが減るだけで、膝の負担は変わります
階段下りのほうが膝に負担がかかります。手すりを使う、一段ずつ降りる。エレベーターを使うことは「怠け」ではありません
歩くとき杖や歩行器も装具療法として推奨(2)されています。使うことをためらわないでください。膝をかばって転ぶほうが、ずっと大きな損失です
靴・足底板外側楔型足底板を含む装具療法は推奨2。整形外科で相談して作るものです
運動週3回、2〜4か月を目安に。続けられるものを選ぶ。膝の状態を診てもらってから始める

「動かないほうが膝にいい」は、逆です。
3章の悪循環の図をもう一度思い出してください。痛いから動かない → 筋力が落ちて体重が増える → 膝にもっと負担がかかる。この輪に入ってしまうのが、いちばん避けたいことです。
痛みが強いときは無理をしないでください。ただ「膝のために安静にする」という考え方は、ガイドラインの立場とは違います。

14. 🚨 受診の目安と、上手なかかり方

こんなときは、整形外科へ

サイン理由
膝の痛みが3か月以上続いている年齢に関係なく相談の価値があります(5章)
膝が腫れている・熱をもっている・水がたまる炎症が起きている可能性。痛みの原因として滑膜炎が関与します
正座ができなくなった/階段が怖い関節の動く範囲の制限は、進行の要素のひとつです
歩くとき膝が横にぶれる感じがするスラストと呼ばれる現象で、危険因子として挙げられています
外出が減った・買い物に行かなくなったご家族が気づくサインです。悪循環の入口かもしれません
若い頃に膝をケガしたいま痛くなくても、診察のときに伝える価値があります

診察で伝えること

聞いてよい質問

最後に、いちばん大事なことを繰り返します。

膝の痛みは「年のせい」で終わらせなくてよいものです。要介護への移行リスクが約6倍という数字は、逆に言えばここで手を打つ意味が大きいということでもあります。

そして、いちばん強く推奨されているのは運動でした。お金はほとんどかかりません。必要なのは、整形外科への一度の受診と、週3回の時間です。

15. よくある質問

グルコサミンやコンドロイチンは膝に効きますか?

日本整形外科学会のガイドライン2023は、サプリメントを独立した資料として検証し、はっきりした結論を出しています。コンドロイチンは18研究のメタ解析から、2000年以降の質の高い研究5つに限れば鎮痛効果はほとんどなく、機能改善やADL・QOLの改善、軟骨保護作用はすべての期間を通じてありませんでした。グルコサミンは11研究で、すべての期間を通じて効果なし。併用も12研究で効果なし。ビタミンDも同様です。

結論は「これらの有効性はすべて否定的である」。さらに「有害事象の発生はプラセボと有意な差はないものの、臨床的改善が見込まれない以上、そのコストは患者にとって受容できるものとはいえない」と書かれています。つまり体に害はないけれど、お金に見合わない、ということです。

膝が痛いとき、いちばんやるべきことは何ですか?

運動です。推奨の強さが最高の「1:強い(実施することを推奨する)」となっている保存療法は、教育プログラム・運動療法・NSAIDsの外用薬(塗り薬/貼り薬)の3つです。飲み薬も注射も、その一段下の「2:弱い」に位置づけられています。

運動の種類は問われていません。筋力トレーニング、有酸素運動、太極拳、ヨガなどが研究に含まれており、どれが優れているかは不明とされています。頻度の目安として、陸上運動について「週3回、8〜11週または12〜15週が有用」というシステマティックレビューが紹介されています。

ただし「適切な運動を実施するためには画像評価を含む整形外科学的評価を行うことが重要」ともあります。自己流で始める前に、一度整形外科で膝の状態を診てもらってください。

痩せれば膝の痛みは良くなりますか?

効果はありますが、期待されているほど大きくはありません。推奨文は「変形性膝関節症に対する体重減少は有用であるが、その効果は限定的である」で、推奨の強さは「2:弱い」。強く推奨されている運動療法より一段下です。

ただし誤解しないでください。太っていることは発症リスクとしては非常に重要で、オッズ比は過体重1.98、肥満2.66と報告されています。つまり「太らないようにすること」は予防として強く意味がありますが、「すでに痛くなった膝を、体重を落とすことだけで良くする」効果は限定的、ということです。順番としては、まず運動。減量はそこに付いてくるものと考えるのが実際に近いと思います。

若いうちから気をつけることはありますか?

あります。最も強い危険因子は、じつは体重でも加齢でもなく「膝のケガ」です。オッズ比は、膝関節外傷の既往で2.83、前十字靭帯損傷で4.2、前十字靭帯と半月板の合併損傷では6.0。肥満の2.66を上回ります。学生時代のスポーツでの膝のケガを「もう治った」と思っていても、何十年か後に効いてくるということです。ケガをしたら自己判断で終わりにせず、整形外科で最後まで診てもらってください。

もう一つ。35〜54歳で3か月以上続く膝の痛みがある方を12年追跡した研究では、追跡開始時に膝の変形がなかった方の86%が12年のうちに変形性膝関節症に移行していました。「まだ若いから」ではなく、続く膝の痛みはその時点で相談する意味があります。

あとは太らないこと、正座やしゃがみ込みを減らすこと、そして膝を伸ばす筋肉(大腿四頭筋)を保つことです。ある研究では大腿四頭筋の筋力低下は膝の痛みと相関した一方、握力とは関連がありませんでした。膝を守る筋肉は、膝の筋肉です。

高齢で持病があります。痛み止めは飲んでも大丈夫ですか?

持病によって、選べる薬が変わります。ガイドラインは高齢者について、併存疾患ごとに第一選択を分けて示しています。

併存疾患がない場合はアセトアミノフェン、NSAIDsの塗り薬・貼り薬、NSAIDsの飲み薬、COX-2選択的阻害薬、ヒアルロン酸の関節内注射。胃腸の障害のリスク心血管障害のリスクがある場合は、そこからNSAIDsの飲み薬が外れます。そして腎障害のリスクがある場合は、アセトアミノフェンとヒアルロン酸注射だけになります。つまり腎臓が心配な方は、塗り薬・貼り薬も第一選択から外れます。「湿布なら薬ではないから安心」とは言えません。

ガイドラインは高齢者について、多くの薬を長期に飲んでいることや、臓器の予備能力が小さく過量になりやすいことに留意すべきだとしています。市販の痛み止めを自己判断で足す前に、必ずかかりつけの先生に相談してください。お薬手帳をそのまま見せるのがいちばん確実です。

あわせて、足の爪も見てみてください。

厚く変形した爪は靴のなかで痛みの原因になり、歩き方に影響します。爪白癬は70歳代がピークで、80代以上の割合も増えています。自分では見えにくく手も届きにくい場所なので、気づかれないまま進むことがよくあります(→足白癬・爪白癬の記事)。

参考資料

なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療や特定商品の推奨・否定を行うものではありません。膝の痛みには変形性膝関節症以外の原因もあり、診断には整形外科での診察と画像検査が必要です。本文で紹介した推奨の強さは日本整形外科学会「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」にもとづくもので、個々の患者さんに適した治療は診察のうえで決まります。運動を始める際は、事前に膝の状態の評価を受けてください。処方されている薬を自己判断で中止・変更したり、市販の痛み止め・貼り薬を自己判断で追加したりしないでください。掲載内容は公開時点の情報にもとづいており、内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。