1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| シミなら何でも薄くなる | 薦められるのは小さいしみ(長年の日光や日焼けのあとのしみなど)。そばかす・肝斑は診断や治療が容易ではない |
| しわ全般に効果がある | 対象は小じわ。深いしわには効果はない |
| 1回で変わる | 中等度のにきびで平均6回、重症で平均10回の治療後に急速に改善した経験がある。しみは数か月から年単位 |
| 終わったらいつもどおりでよい | 角質層が剥がれ紫外線が通りやすくなるので、毎日の日焼け止めと十分な保湿が必要 |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
学会は、しみは悪性度の高い皮膚がんとまぎらわしい場合もあり、安易な自己診断は厳禁で、まず皮膚科専門医に相談してくださいとしています。ピーリングは、皮膚科診療技術を十分に修得した医師の管理下で行われるべき治療です。
2. どんな治療か——業として行えば医業
日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aによると、ケミカルピーリングは1990年代に欧米から日本に導入され、多くの施設で行われるようになりました。その一方で、国民生活センターには腫れや炎症などの危害例の相談が多数寄せられるようになりました。
- 2000年6月、厚生省(当時)が「ケミカルピーリングは業として行われれば医業に該当する」と明言した
- 日本皮膚科学会は、安全なケミカルピーリングのための治療ガイドラインを2001年に作り、2008年に3回目の改正をした
- ガイドラインは基本理念として、皮膚科診療技術を十分に修得した皮膚科専門医ないし同等の技術・知識をもつ医師の十分な管理下で行われるべき行為だとしている
3.【核心】薦められるのは3つだけ
学会は、ガイドライン(改訂第3版)で根拠に基づいた適応を明示しているとし、治療の選択肢の一つとして薦められる病気・状態として、次の3つを挙げています。いずれもグリコール酸とサリチル酸(マクロゴール基剤)が使われています。
| 状態 | 資料の記述 |
|---|---|
| にきび | ただし、にきび痕に対しては十分な根拠がない |
| 小さいしみ | 長年日光にあたっていたためにできるしみ、日焼けのあとのしみなど |
| 小じわ | ただし、深いしわには効果はない |
そのうえで学会は、そばかすのような遺伝的な病気や、肝斑のように紫外線や女性ホルモンで悪化する病気は、診断や治療が容易ではないとしています。シミの種類の見分け方はシミと肝斑の記事、ニキビ治療の全体像はニキビの記事で書いています。
4. 薬剤と、剥がす深さ
学会によると、ガイドラインには一般的に使われる薬剤として、グリコール酸、サリチル酸(マクロゴール基剤、エタノール基剤)、トリクロロ酢酸(TCA)、その他として乳酸、ベーカーゴードン液、フェノールが挙げられています。病気や状態によって、濃度を変えたり、数種類を組み合わせたりして使います。
このうちグリコール酸は、日本人の肌に最もマイルドで比較的安全に使えるため、多くの施設で使われています。ただし、治療時の皮膚の状態でピーリングの深さは変わるので、担当者は常に注意しながら行っています。
| レベル | 名称 | 剥がす深さ |
|---|---|---|
| 1 | 最浅層ピーリング | 角層 |
| 2 | 浅層ピーリング | 表皮の顆粒層から基底層の間 |
| 3 | 中間(深)層ピーリング | 表皮と、真皮乳頭層の一部から全部 |
| 4 | 深層ピーリング | 表皮と、真皮乳頭層および網状層に及ぶ深さ |
出典:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「ケミカルピーリング」Q4 資料1(ケミカルピーリングの剥離深度による分類)
学会は、厚く剥がすことで前がん病変などを取り除くことができ、薄く剥がす(角層を除く)ことで皮膚の再生の仕組みが働き、新しい皮膚の再生が期待できるとしています。
- にきび:浅いピーリングで毛穴をふさいでいる角質や面皰が出され、つまった毛穴が開通する。膿をもった炎症性のにきびでも、膿が出るのが促される
- しみ:表皮の生まれ変わり(ターンオーバー)が促され、表皮にたまっていたメラニン色素が角質とともに落ちる。くすみも改善される。ただし肉眼で確認できるようになるには、根気よく治療を続け、治療中の遮光などの努力が必要
5. 変化が出るまでの回数
学会によると、変化が出る時期は、病気とその重症度、薬剤とその濃度、年齢、治療時の皮膚の状態、季節によって様々で、いずれも個人差があります。
にきびでは、続けていると新しいにきびが出るまでの期間が長くなり、徐々に治療の間隔を空けていくとされています。
6. 受ける前の注意
学会は、次のような点を挙げています。
- 治療中の病気がある人、妊娠中・授乳中の人、傷あとが残りやすい人は、受ける前に担当医に相談する
- 角質が傷んでいるとピーリングが必要以上に深くなるので、前日の顔剃り、パック、スクラブ洗顔は避ける
- 1か月以内にほかの治療(ケミカルピーリング、レーザー、電気・ワックス脱毛など)を受けている場合は、行えないことがあるので担当者に相談する
- 顔に湿疹がある場合も、ピーリングが深くなるため行えないことがある
- 口唇ヘルペスやとびひ(伝染性膿痂疹)がある場合は、治癒するまで行えない
7. 受けたあと——遮光と保湿
学会によると、ピーリング中はほとんどの場合ぴりぴりとした刺激感があり、ピーリング後は皮膚が赤くなったり、かさかさしたりしますが、たいていは2、3日で治まります。水ぶくれや浅い傷、小さいかさぶたができることもあり、その状態が続くようなら皮膚科専門医に相談するよう書かれています。
「紫外線は、しみや皮膚老化の原因となりますので、毎日必ずサンスクリーン剤(紫外線散乱剤を使用した低刺激性・低アレルギー性のSPF18、PA++程度のもの)による遮光に留意してください。」(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「ケミカルピーリング」Q9)
- 角質層は紫外線から皮膚を守っている。ピーリングで角質層が剥がれ、紫外線が皮膚を通りやすい状態になっている
- 角質層は水分が失われるのも防いでいる。ピーリング後は保湿力が落ちるので、自分の肌に合った保湿剤・乳液などで十分に補う(いつもより多めに)
- まれに、今まで使っていた化粧品が肌に合わなくなることがある。その場合は化粧品の使用を一時中断する
日焼け止めの量と塗り直しは日焼け止めの記事で書いています。
この章で扱った遮光のための日焼け止めです。日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aは、ケミカルピーリングのあとは紫外線散乱剤を使った低刺激性・低アレルギー性の日焼け止めで、毎日必ず遮光するよう書いています。
※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。ここで紹介しているのは、紫外線吸収剤を使わず(紫外線散乱剤のみ)、美白有効成分を含まない化粧品の日焼け止めです(SPF32・PA+++、光アレルギーテスト・ノンコメドジェニックテスト済みとメーカーが表示)。学会が目安として挙げる「SPF18、PA++程度」より数値は高めです。ピーリングのあとに肌が赤い・ひりひりする間や、使っていた化粧品が合わなくなったときは使用を控え、何をいつから使うかは施術を受けた医師の指示に従ってください。
8. 併用する治療
| 状態 | 資料の記述 |
|---|---|
| にきび | 抗菌薬の内服との併用で、治療期間の短縮が図れる |
| しみ(老人性色素斑、肝斑、雀卵斑、炎症後色素沈着など) | レチノイン酸、ハイドロキノン、レチノール、各種ビタミンC製品などの美白剤の併用で効果が期待できる。ただし、ピーリング直後の皮膚に使うと、赤く腫れる、かぶれ、ただれるなどの思わぬ副作用が生じることがある。担当医師の指示に従う |
9. 料金と、エステティックサロンのピーリング
学会のQ&Aは、料金について、保険診療外の治療(2008年9月現在)で、各施設に直接相談するよう書いています。
エステティックサロンについては、次のように説明しています。
- エステティックサロンでは、肌表面の状態を整える、化粧のりを良くする、肌に透明感を持たせる、肌をしっとりと整えるなどの目的でピーリングが行われている
- しかし、病気の治療を目的としたケミカルピーリングは法律で禁止されている
- 安全性を最優先するため、TCA(トリクロール酢酸)、フェノールの使用は禁止されている
- グリコール酸は「pH3.0以上、濃度10%以下」であればエステティックサロンでも使ってよいのではないかという、厚生労働省の研究班の報告がある
- まだ法的に決着がついていない点もあるので、あらかじめ皮膚科専門医に相談することを薦めている
皮膚科で相談したいとき(資料にあるもの)
・しみが気になる(悪性度の高い皮膚がんとまぎらわしい場合もあり、自己診断は厳禁)
・ピーリングのあと、水ぶくれ・浅い傷・かさぶたが続く
・治療中の病気がある、妊娠中・授乳中、傷あとが残りやすい
・エステティックサロンでピーリングを受けようか迷っている
最後に、この記事の要点をもう一度。
① ケミカルピーリングは、業として行えば医業。皮膚科の技術を修得した医師の管理下で
② 薦められるのはにきび・小さいしみ・小じわ。にきび痕は根拠不十分、深いしわには効果なし
③ にきびは約2週間に1回から。しみは数か月から年単位
④ 前日の顔剃り・パック・スクラブは避ける。1か月以内のレーザーや脱毛は相談
⑤ 受けたあとは毎日の遮光と十分な保湿
10. よくある質問
ケミカルピーリングとは何ですか?
日本皮膚科学会によると、皮膚に化学薬品を塗り、皮膚を剥がすことで起こる変化を利用する治療です。2000年に厚生省(当時)が、業として行えば医業に該当すると明言しました。学会のガイドラインは、皮膚科診療技術を十分に修得した医師の管理下で行われるべきだとしています。
どんな肌の悩みに向いていますか?
学会によると、ガイドラインが治療の選択肢の一つとして薦めているのは、にきび、小さいしみ(長年の日光や日焼けのあとのしみなど)、小じわの3つです。ただし、にきび痕には十分な根拠がなく、深いしわには効果はありません。
肝斑やそばかすにも使えますか?
学会は、そばかすのような遺伝的な病気や、肝斑のように紫外線や女性ホルモンで悪化する病気は、診断や治療が容易ではないとしています。しみは皮膚がんとまぎらわしい場合もあるので、自己診断せず、まず皮膚科専門医に相談してください。
何回くらいで変化が出ますか?
学会によると個人差がありますが、にきびでは約2週間に1回の治療から始め、中等度で平均6回、重症で平均10回の治療後に急速に改善した経験があるとされています。くすみはグリコール酸で約4〜5回程度、しみは数か月から年単位のことが多いとされています。
ピーリングのあと、何に気をつければいいですか?
学会によると、角質層が剥がれて紫外線が通りやすくなっているので、紫外線散乱剤を使った低刺激性・低アレルギー性の日焼け止めで毎日必ず遮光します。保湿力も落ちるので、保湿剤や乳液で十分に補います。赤みやかさかさは、たいてい2、3日で治まります。
エステのピーリングと、皮膚科のピーリングは違いますか?
学会によると、エステティックサロンでは肌表面を整えるなどの目的で行われていますが、病気の治療を目的としたケミカルピーリングは法律で禁止され、TCAやフェノールの使用も禁止されています。法的に決着がついていない点もあるため、あらかじめ皮膚科専門医に相談することを薦めています。
参考にした主な資料
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「ケミカルピーリング」(Q1〜Q12)