1. 先に結論
| 広告や口コミで見かける話 | 『美容医療診療指針』の記述 |
|---|---|
| 永久脱毛だから、もう生えない | 「欧米では脱毛(hair removal)ではなく減毛(hair reduction)という表記が一般的」 |
| 白髪でも脱毛できる | 「白髪や金髪に対するレーザー脱毛の効果はほとんどない」。狙っているのは毛の色素です |
| 数回で終わる | ある研究では平均8.9回、幅は4〜22回。同じ機械でも人によって違います |
| 1回でこんなに減った | ある試験では1か月後71.0%→6か月後35.7%。直後と数か月後は違います |
| 副作用は赤みくらい | 硬毛化(毛が増える)があり、「発生原因が明確ではなく対処方法も確立されておらず」 |
| 最新の機械がいちばん良い | 肌の色で適した波長が変わります。色が濃い肌にはNd:YAGが最適とされています |
| 痛くない機械のほうが効果も高い | 蓄熱式は痛みは有意に少ないが、脱毛効果は従来式と有意差なし |
| エステの機械も同じようなもの | 「エステティックサロンやホームユースの美容機器…ほとんどがこのIPLである」 |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
脱毛は、いま最も広告が多い医療のひとつです。けれど5つの学会が合同でつくった診療指針が、無料で全文公開されています。
そこには推奨度も、実際の脱毛率も、「原因も対処法も分かっていない」と書かれた合併症も、厚労省が承認している機種の実名も載っています。
受けるか受けないかは、ご自身が決めることです。この記事は、決める前に読める資料があるということをお伝えするために書きました。
2. 【核心】「脱毛」ではなく「減毛」と書かれています
『美容医療診療指針(令和3年度改訂版)』の第5章は、脱毛治療にあてられています。その基礎知識の冒頭近くに、この一文があります。
「なお欧米では脱毛(hair removal)ではなく減毛(hair reduction)という表記が一般的であるが、本邦でレーザー脱毛という呼称が広く普及していることを考慮し、今回の診療指針においては用語としてレーザー脱毛で統一して表記する」
読み方を整理します。学会は「日本ではそう呼ばれているから、この文書でもそう書く」と断ったうえで、実態は「減毛」だと承知している——そう読める文章です。
これは細かい言葉遊びではありません。期待する結果が変わります。「除く(removal)」なら、あるものがなくなる。「減らす(reduction)」なら、量が減る。契約するときに前提としている状態が、この2つでは違います。
実際の数字は8章で見ますが、先にひとつだけ挙げておきます。指針が引用しているコクランのレビューでは、アレキサンドライトレーザーとダイオードレーザーについて「治療後6か月までに約50%の脱毛という短期的な効果があった」とされています。
ゼロになる、ではありません。およそ半分です。
誤解のないように。
これは「効果がない」という話ではありません。指針は5つの機器のうち4つに推奨度1(強く推奨する)をつけています。長期の良い報告もあります。
お伝えしたいのは、期待の置きどころです。「かなり減って、その状態が長く続くことがある」と「一本も生えてこない状態が保証される」は、違うことです。
3. 【一覧】5つの機器を、推奨度で並べる
指針の第5章には、5つのクリニカルクエスチョン(CQ)があります。それぞれに推奨度と承認状況がついています。まず全体を一枚にします。
シワ・タルミの章とは対照的に、こちらは推奨度1がずらりと並びます。
ここで、前提を確認しておきます。この指針の推奨度は独自の3段階です。
- 推奨度1:得られる利益が、生じ得る害や負担を明らかに上回る(あるいは下回る)
- 推奨度2:得られる利益の大きさは不確実である、または生じる害や負担と拮抗している
- 推奨度0:決められない
同じ指針のシワ・タルミの章では、10項目のうち推奨度1(行う)はたった1つでした。それに比べると、脱毛治療の章は5つのうち4つが推奨度1です。
この差には理由があります。脱毛は、効果を測る指標が明快(毛の本数を数えられる)で、ランダム化比較試験が実際に多く行われている分野だからです。次の章で、その中身を見ます。
4. 【逆説】論文がいちばん多いのに、推奨度は2でした
この指針の親切なところは、CQごとに根拠になった論文の本数を、種類別に書いている点です。
- エビデンスA:無作為化臨床試験(ランダム化比較試験)
- エビデンスB:適切にデザインされた非無作為化臨床試験または観察コホート研究
- エビデンスC:専門家の意見
この本数に、動物実験などの非臨床試験は含まれません。並べてみます。
よく研究されていることと、推奨されることは、同じではありません。
目を引くのはIPLです。無作為化臨床試験が14本と、5つのなかで飛び抜けて多い。それなのに推奨度は2です。
これは矛盾ではありません。論文の本数は「どれだけ調べられたか」を表し、推奨度は「利益と害を比べた結果」を表すからです。IPLは比較試験の対照としてよく使われたためAが積み上がりましたが、その比較の結果として「脱毛効率はやや劣る」と判定されたわけです。
推奨文にも、その両面が書かれています。
「単一波長ではないためメラニンへの選択性は脱毛用レーザーと比較すると劣るが、1回あたりの照射面積が広く、レーザーと比較して痛みも少ない。脱毛用レーザーと比較すると脱毛効率はやや劣る」(CQ5-1-5 IPL)
劣る点と優れた点の両方が、一文のなかに並んでいます。「良い・悪い」ではなく「どこが違うか」を書いた推奨文です。
ガイドラインを読むときの、ひとつのコツ。
論文の本数は「どれだけ調べられたか」であって、「どれだけ良かったか」ではありません。
本数が少なくても推奨度1のことがあり(アレキサンドライトは計10本)、本数が最多でも推奨度2のことがあります(IPLは計18本)。本数と推奨度は、必ず両方を見てください。
5. 仕組み——狙っているのは「毛の色」です
ここを理解すると、このあとの話がすべてつながります。
レーザー脱毛は「選択的光熱融解(Selective Photothermolysis)」という原理で行われます。指針の説明を、そのまま引用します。
「レーザー脱毛のターゲットは毛の中に含まれるメラニンであり、レーザー光が毛に含まれるメラニン(chromophore)に達した場合、毛は100℃以上にまで上昇しその部分は気化する。ミリ秒単位の発振時間の場合、熱は周囲へと伝導し、毛包は壊死、熱凝固をきたす。この結果、毛包が破壊されることがレーザー脱毛の機序である」
順番に読み解きます。
- レーザーが狙うのは、毛のなかの黒い色素(メラニン)です
- 色素が光を吸収し、毛が100℃以上になって気化します
- その熱が周囲に伝わり、毛包(毛をつくる組織)が壊死・熱凝固します
- 毛包が壊れることで、その毛穴から毛が生えにくくなります
つまり毛そのものを溶かしているのではなく、毛を「熱を伝えるための導線」として使っているということです。毛が黒いほど光をよく吸収し、熱がよく伝わります。
組織学的にも確認されています。指針によると、照射直後には外毛根鞘とその外側の結合組織性毛包との間の剝離、毛包上皮細胞の構造の乱れと細胞質の変性がみられ、毛の成長を調節しているBulb(毛球)とBulge(バルジ)の両方に障害が及んでいると考えられています。この障害は照射1か月後の組織学的検査でも認められています。
この「色素を狙う」という仕組みが、次の2つの章のすべてを決めます。
6. 【決定的】白髪・金髪には、ほとんど効果がありません
指針の一文は、短く、はっきりしています。
「このため、白髪や金髪に対するレーザー脱毛の効果はほとんどない」
理由は前章のとおりです。狙うべき色素が、そこにないからです。
これは機械の性能の問題ではありません。原理そのものの限界です。どんなに新しい機種でも、より高い出力でも、色素がなければ熱が発生しません。逆に出力だけを上げれば、標的のない熱が皮膚に加わって熱傷のリスクが上がります。
同じ理由で、産毛(うぶ毛)も苦手とされます。細くて色が薄い毛は、含まれる色素の量が少ないためです。
逆に言うと、こういうことです。
レーザー脱毛が最も成立するのは、毛が濃く・太く・黒く、肌の色は薄いという組み合わせのときです。標的(毛の色素)とその周り(皮膚の色素)のコントラストが大きいほど、狙いを絞れます。
逆に肌の色が濃いと、皮膚のメラニンも光を吸収してしまいます。これが12章の「肌の色で機械が変わる」という話につながります。
なお、色素に頼らない方法もあります。指針は電気脱毛について、こう説明しています。「毛包に細い金属製のワイヤー(プローブ)を挿入し、電気を流すことで毛包を破壊する脱毛法である」。そして「レーザー脱毛が普及するまで、電気脱毛が永久脱毛として医療機関で実施されてきた」と記しています。
1本ずつ処理するため時間はかかりますが、毛の色に依存しません。白髪が増えてからの選択肢として、医療機関に相談する価値があります。
7. 「介護脱毛」に、期限があるということ
指針の基礎知識の冒頭に、この一文があります。
「いわゆるムダ毛に対する脱毛は、女性において日本のみならず欧米においても大きな需要がある。男性においてもポピュラーなものになりつつあり、高齢者の将来の介護に備えた脱毛もなされるようになってきている」
学会の診療指針が、介護に備えた脱毛という動機を現状として記述している——これは、それだけ広がっているということです。
排泄の介助を受けるとき、陰部やお尻まわりの毛がないほうが清拭がしやすく、皮膚トラブルも起きにくい。介助する側にとっても、される側にとっても負担が減る。そういう理由で、40代・50代のうちに済ませておく方が増えています。
ここで、6章の内容が効いてきます。
これが、この記事でいちばん実際的な話かもしれません。
介護に備えた脱毛を考えるなら、毛に色素が残っているあいだに検討する必要があります。白髪になってからでは、レーザー脱毛という選択肢が実質的に外れるからです。
「いつかやろう」と思っているうちに、その「いつか」が来たときには方法が変わっている。そういう構造になっています。
もちろん急いで決める必要はありません。ただ、先延ばしにできる期限があるわけではないということは、知っておく価値があると思います。
すでに白髪が多い場合は、前章で触れた電気脱毛が選択肢になります。時間と回数はかかりますが、色に依存しない方法です。
8. 効果は、どのくらいなのか
ここが、いちばん知りたいところだと思います。指針が引用している数字を、そのまま並べます。
まず、最終治療から6か月以上たった時点で比較したメタ解析です。1998〜2003年の臨床試験を対象に、4つの波長を比べています。
「1か月後」と「6か月後」では、見える景色がかなり違います。
この図から読み取れることを、3つ挙げます。
1つめ。どの波長でも、6か月時点ではおおむね40〜60%です。ゼロにはなりません。指針が引用するコクランのレビューも、アレキサンドライトとダイオードについて「治療後6か月までに約50%の脱毛という短期的な効果があった」とし、IPL・Nd:YAG・ルビーについては「効果ほとんどない」と評価しています(このコクランは2006年時点のもので、機器はその後改良されています)。
2つめ。評価する時期で、数字が大きく変わります。腋窩の左右で比較した試験では、施術1か月後の脱毛率がダイオード71.0%、Nd:YAG 82.3%。それが6か月後にはそれぞれ35.7%、54.2%になりました。契約や口コミの「1回でこんなに減った」は、この1か月後の景色であることがあります。
3つめ。長期の良い報告もあります。2施設でロングパルスアレキサンドライトによる脱毛を受けた948人を調べた研究では、長期的合併症はごくわずかで、最終治療から平均11.5年(±2年)経過を追えた173人のうち152人(87.9%)で脱毛状態が維持されていました。
ここを、こう読んでいます。
短期の数字(6か月時点で約50%)と、長期の数字(11.5年後に87.9%が維持)は、矛盾していません。治療を重ねて減らしたあと、その状態が長く続きうるということです。
大事なのは、1回や数回で終わる話ではないという点です。次の章で回数を見ます。
9. 何回で終わるのか——平均8.9回、幅は4〜22回
「何回で終わります」という決まった回数は、指針には書かれていません。書かれているのは、実際の研究で何回行われたかという記録です。
いちばん参考になるのが、この報告です。Fitzpatrickスキンタイプ4〜6の150名に対し、顔・腋窩・下肢・腹部・胸のいずれかをロングパルスNd:YAGレーザーで治療しました。顔は4週間ごと、他の部位は6週間ごとに照射を繰り返し、本人が満足できるレベルの脱毛が達成された時点で治療を終了としています。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 治療の平均回数 | 8.9回 |
| 回数の幅 | 4回 〜 22回 |
| 平均脱毛率 | 54.3% |
| 合併症 | 14%の患者に発生。多くは色素沈着で一過性 |
注目してほしいのは幅です。4回で満足した人と、22回かかった人がいます。同じ機械で、同じプロトコルで治療しても、これだけ違う。毛の太さ、色、密度、部位、肌の色——条件が人によって違うからです。
通う間隔についても、目安が読み取れます。指針が引用している試験の多くは、4〜8週間ごとに5回前後を1クールとしています。顔は間隔が短め(4週間ごと)、体は長め(6〜8週間ごと)という設定が多い印象です。
回数の契約を決めるとき、頭に置いておきたいこと。
①「平均」は自分の回数ではありません。4回の人も22回の人もいる、その平均が8.9回です。
②「1か月後」の見た目で判断しない。8章で見たとおり、6か月後には数字が下がります。
③ 途中で評価する機会をつくる。大きな回数を一度に契約する前に、何回か受けてみて自分の反応を確かめるという方法があります。
10. 【最も知られていない】硬毛化——毛が増えることがあります
この章が、この記事でいちばん書きたかったところです。
脱毛の施術を受けたのに、かえって毛が濃く・太くなることがあります。硬毛化(paradoxical hypertrichosis/逆説的多毛症)と呼ばれる現象で、指針にも明記されています。
指針の書き方は、率直です。
「硬毛化(paradoxical hypertrichosis)の発生は〔ロングパルスアレキサンドライトレーザー〕に特有ではないが、発生原因が明確ではなく対処方法も確立されておらず、好発部位を把握したうえで必要に応じインフォームド・コンセントに追加すべきである」
3つのことが書かれています。
- 特定の機種の問題ではありません。指針はIPLについても「レーザー脱毛と同様、熱傷や硬毛化を生じる可能性がある」と書いています
- なぜ起きるのか分かっていません。「発生原因が明確ではなく」
- どう対処すればよいかも確立していません。「対処方法も確立されておらず」
学会の診療指針が、原因も対処法も分かっていない合併症があると明記している。これは、かなり重い記述です。
そのうえで指針は、好発部位を把握したうえで、必要に応じてインフォームド・コンセントに追加すべきとしています。つまり施術前に説明されるべき事項だということです。
カウンセリングで、これを聞いてみてください。
「硬毛化について教えてください」。
知っていれば、起こりやすい部位や、起きたときにどうするかの方針を説明できるはずです。逆に「そんなことは起きません」と即答された場合は、指針が書いていることと食い違います。
脅すために書いているのではありません。起こる確率よりも、起きたときにどうするかを事前に共有しておくことのほうが大事だと考えています。
11. 起こりうる合併症
指針がレーザー脱毛の一般的な合併症として挙げているものを、整理します。
| 合併症 | 指針の記述と補足 |
|---|---|
| 毛囊炎 | 毛穴の炎症。照射後に生じることがあります |
| 熱傷(水疱・痂皮) | 肌の色が濃い場合・日焼けした肌でリスクが上がります。冷却装置による表皮保護が前提の治療です |
| 炎症後色素沈着 | 最も多い合併症。ある研究では14%の患者に合併症がみられ、多くは色素沈着で一過性でした |
| 色素脱失 | 逆に色が抜けること |
| 瘢痕 | まれですが報告されています |
| 硬毛化 | 原因も対処法も確立していません(10章) |
| 疼痛 | 機種で差があります。Nd:YAGは「他の機器よりやや強い」と指針が明記しています |
指針は、表皮を守る仕組みについて具体的に書いています。ロングパルスアレキサンドライトの推奨文にはこうあります。「皮膚冷却装置による表皮保護を併用することで、熱傷などの合併症を避けながら比較的少ない疼痛で永久的脱毛効果を得やすい」。
冷却は、快適さのためだけのものではありません。熱傷を防ぐための装置です。IPLについても、指針は「脱毛治療に際しては、表皮保護のために冷却が必用であり、初期の機器には装備されていない」と書き、承認状況の欄にも「機器により冷却装置の有無に違いあり」と記しています。
そして、同じ推奨文にはこんな一文も続きます。
「脱毛部位、毛包の深度、毛の太さや色調、皮膚の色調(Fitzpatrickのスキンタイプ4〜6)などの要素によっては脱毛効果が劣る場合や硬毛化を生じる可能性があるため、多様化した脱毛希望部位すべてに万能とは言えず注意を要する」
「すべてに万能とは言えず」。推奨度1がついた機器の推奨文に、この但し書きが入っています。
12. 肌の色で、適した機械が変わります
5章で見たとおり、レーザーは色素を狙います。ところが色素は、毛だけでなく皮膚にもあります。肌の色が濃いほど、皮膚のメラニンもレーザーを吸収してしまい、熱傷や色素沈着のリスクが上がります。
ここで使われるのがFitzpatrickのスキンタイプという分類です。日焼けのしやすさ・赤くなりやすさで1〜6に分け、数字が大きいほど色が濃い肌になります。日本人はおおむね3〜4に入ります。
指針は、この分類ごとに適した機器を整理しています。
| スキンタイプ | 指針の整理 |
|---|---|
| 1〜5(薄め〜中間) | ダイオードまたはアレキサンドライトが適していると判断できる |
| 4〜6(濃いめ) | Nd:YAGがよい。「色が濃い肌に使用する場合最適なレーザー」とされています |
理由は波長にあります。Nd:YAGの波長(1064nm)はメラニンやヘモグロビンへの色素選択性が低い——つまり皮膚のメラニンに反応しにくい。そのうえ波長が長いために深達性に優れており、深いところで熱を発生させます。皮膚表面を巻き込みにくいということです。
その代わり、選択性が低いぶん脱毛率はやや下がり(図の42.3%)、痛みは「他の機器よりやや強い」とされます。すべてが有利な機械はないということです。
実際的な意味。
日焼けした肌は、一時的にスキンタイプが濃くなったのと同じ状態です。だから多くのクリニックが日焼け直後の施術を避けます。安全のためのルールであって、売り上げを減らす方向の話です。
脱毛を予定しているなら、その期間の紫外線対策は治療の一部だと考えてください。日焼け止めの選び方と必要な量は日焼け止めの選び方・塗り方——SPF・PAの本当の意味と「量」の話に書いています。
13. 痛みが少ない「蓄熱式」は、何が違うのか
近年よく見かける蓄熱式脱毛(英語ではin motion mode)についても、指針は独立したCQを立てて推奨度1をつけています。
従来の方式(単発式)と何が違うのか。指針の説明はこうです。
| 従来の単発式 | 蓄熱式(in motion mode) | |
|---|---|---|
| 照射 | 高フルエンスで1発ずつ | 低フルエンスで高速に反復照射 |
| 手の動き | 1照射ごとにハンドピースを動かす | ハンドピースを動かしながら照射する |
| 狙い方 | 1発で毛包を熱損傷させる | 複数発で毛包全体に蓄熱していく |
比較試験の結果が、いくつも引用されています。
| 試験 | 脱毛効果 | 痛み(VAS 0〜10) |
|---|---|---|
| 25人・二重盲検・下肢の左右比較 | 蓄熱式86% / 単発式91% | 蓄熱式3 / 単発式5 |
| 中国人女性98人・二重盲検 | 蓄熱式90.2% / 単発式87%(有意差なし) | 蓄熱式2.75 / 単発式6.75(有意差あり) |
| 女性20人・無作為化・6/12か月評価 | 両者で有意差なし | 蓄熱式が有意に痛くなかった |
まとめると、脱毛効果は従来式とほぼ同等で、痛みははっきり少ないということになります。治療時間も短縮されており(平均20分 対 26分)、スキンタイプによらず照射できる点も利点です。
ただし、指針は弱点も書いています。
「蓄熱式脱毛レーザー機器はハンドピースを動かしながら施術するため、施術者の技量により効果に差が出る可能性は否めない。また、上口唇や、眉周囲など狭い照射部位ではハンドピースを動かすことが十分にできないこともあり、高フルエンス、単射式脱毛と併用することもある」
手を動かしながら均一にエネルギーを入れる方式なので、やる人の腕が結果に影響する。そして狭い部位(上唇・眉のまわりなど)は苦手で、単発式との併用になることがある。
368人を対象にした研究では、一部に色素沈着が出た部位について「面積が小さいため、ハンドピースを連続的かつ均一に移動することが難しく、技術的な問題が考えられた」と分析されています。狭い部位ほど、動かし方が難しいということです。
なお同じ研究では、日焼けをした82人とそうでない人のあいだで有害事象に差はなく、患者満足度は5段階評価で3以上をつけた人が全体の95%でした。
14. エステ・家庭用の機器とは、何が違うのか
指針の基礎知識に、一行だけ、しかしはっきりと書かれています。
「エステティックサロンやホームユースの美容機器として販売されている商品はほとんどがこのIPLである」
IPLとは何か。指針の説明では、高圧電流パルスを用いて紫外線・可視光線・近赤外線の領域の光を放出させるフラッシュランプシステムの総称です。単一の波長のレーザーではなく、600〜1200nmという幅のある光を、カットオフフィルターで一定の波長帯だけ残して使います。
この「幅がある」ことが、そのまま推奨度2の理由になっています。「単一波長ではないためメラニンへの選択性は脱毛用レーザーと比較すると劣る」。狙いを絞りきれない、ということです。
一方で、良い点も明記されています。1回あたりの照射面積が広く、痛みが少ない。実際、IPLの脱毛率は報告により50〜85%とされ、日本からの報告では腋窩で5回治療の6か月後に85.63%、下腿で3回治療後に81.11%という観察もあります。指針も「IPLは日本人のスキンタイプにも十分に使用可能と考えられる」としています。
ここは、誤解のないように書きます。
指針が評価しているのは、医療機関で使われるIPL機器です。家庭用機器の有効性を検証したものではありません。
指針には家庭用機器の効果に関する記述がなく、この記事でも家庭用機器の効果について述べることはできません。「サロンや家庭用に使われているのはIPLという種類の光である」という事実だけが、指針から言えることです。
もうひとつ、承認状況にも差があります。IPLの欄には「承認器もあるが、未承認器も広く使用されている。機器により冷却装置の有無に違いあり」と書かれています。
冷却装置は、11章で見たとおり表皮を熱傷から守るための装置です。「機器により有無に違いあり」という一文は、安全性の前提が機器によって揃っていないということを意味します。
指針は、扱う側の習熟についても触れています。「skin typeが濃くなるほど低フルエンス、ロングパルスが必用になるなど、至適パラメーターの決定がやや難しいと考えられ、レーザー機器と比較し、習熟に一定程度の期間が必用と思われる」。
設定が難しい機器だ、ということです。そしてIPLでも熱傷や硬毛化を生じる可能性があると明記されています。
15. 【資料】厚労省が承認している脱毛器
指針には、厚生労働省において脱毛器として認可されている機種が実名で列挙されています。診療指針としてはめずらしい記載です。そのまま掲載します。
機種名まで書かれているので、実際に確認できます(承認状況は変わりえます)。
この一覧から読み取れることが、3つあります。
1つめ。8機種すべてが、アレキサンドライト・ダイオード・Nd:YAGのいずれかです。指針の言葉では「いずれもアレキサンドライトレーザー、ダイオードレーザー、Nd:YAGレーザーである」。3章の推奨度1が並んだ表と、そのまま対応しています。
2つめ。日本での承認は、そう古くありません。ロングパルスアレキサンドライトについて指針は「本邦で2016年に長期脱毛用レーザー装置として初めて薬事承認を取得した機種はLPAであった」と書いています。ダイオードレーザーは「本邦では2018年から厚生労働省の承認を得ている」。米国FDAの承認(1997年)から20年ほど遅れています。
3つめ。承認を得ていない機器も使われています。これは違法という意味ではありません。医師が自らの責任で未承認の医療機器を用いること自体は認められています。ただし日本の審査機関が有効性と安全性を確認していないということであり、健康被害が生じた場合、承認機器を対象とする公的な救済制度は原則として使えません。
だから「製品名を聞く」ことに意味があります。
承認されているかどうかは、「レーザー脱毛」という施術名ではなく、目の前の機械で決まります。
製品名を聞いておけば、あとから調べられます。記録としても残ります。答えられない・教えられないという場合は、それ自体が情報です。
16. 🚨 受ける前に確認する5つと、困ったときの相談先
ここまでの内容を、使える形にまとめます。
| 確認すること | なぜ、それを聞くのか |
|---|---|
| 1. 使う機械の製品名は | 承認の有無は施術名ではなく機器で決まります。記録としても残ります(15章) |
| 2. 私の肌の色に合う波長ですか | 色が濃い肌・日焼け中はNd:YAGが適するとされます。熱傷・色素沈着に直結します(12章) |
| 3. 硬毛化について教えてください | 原因も対処法も確立していない合併症。指針は説明に加えるべきとしています(10章) |
| 4. 何回で、どう評価しますか | 平均8.9回・幅4〜22回。「1か月後」と「6か月後」は違います(8・9章) |
| 5. 白髪が混じる部位はどうしますか | 白髪にはほとんど効果がありません。その部位をどうするかは事前の合意事項です(6章) |
この5つは、いじわるな質問ではありません。すべて診療指針に書かれていることです。答えられるのが本来の姿です。
受ける前後に、自分でできること
- 施術期間中は日焼けを避ける。日焼けした肌は、一時的に色が濃くなったのと同じで熱傷のリスクが上がります
- 照射前の自己処理は「剃る」。毛抜きやワックスで毛根から抜くと、狙う標的そのものがなくなります
- 記録を残す。施術日・部位・機種名・出力設定。同意書と明細をまとめて保管してください
- 薬を飲んでいる場合は必ず申告する。光に対する反応が変わる薬があります
こんなときは、医療機関へ
- 水ぶくれ、強い痛み、じくじくした傷——熱傷の可能性があります。自己判断で市販薬を塗らず受診してください
- 照射部位の赤み・腫れが数日たっても引かない、膿が出る——毛囊炎や感染の可能性があります
- 照射した部位やその周囲で、かえって毛が濃くなった——硬毛化かもしれません。施術した医療機関に伝えてください
- 色が濃く残る、逆に白く抜けた——色素沈着・色素脱失は多くが一過性ですが、経過を診てもらってください
どこに相談すればいいのか
同じ指針の第6章は、医療安全にあてられており、公的な相談先が明記されています。
「医療(美容医療を含む)に関する苦情や相談に対応する行政機関として、都道府県等が設置している医療安全支援センターがある」
美容医療も明確に対象です。全国に設置されており、お住まいの都道府県・保健所設置市の窓口が利用できます。
順番としては、まず施術を受けた医療機関に連絡すること。そのうえで対応に納得できないとき、あるいはどこに相談してよいか分からないときに、この窓口があります。
同じ指針の他の章については、シワ・タルミの美容医療——10の施術のうち「強く推奨」は1つだけにまとめています。有害事象の実態調査の数字や、指針が自ら書いている利益相反の話も、そちらに書きました。
17. よくある質問
白髪でも脱毛できますか?
レーザー脱毛では、ほとんど効果が期待できません。美容医療診療指針は理由をはっきり書いています。「レーザー脱毛のターゲットは毛の中に含まれるメラニンであり、レーザー光が毛に含まれるメラニンに達した場合、毛は100℃以上にまで上昇しその部分は気化する」。つまりレーザーは毛そのものを狙っているのではなく、毛に含まれる黒い色素を狙っています。その熱が周囲に伝わって毛包が壊れる、という仕組みです。だから指針はこう続けます。「このため、白髪や金髪に対するレーザー脱毛の効果はほとんどない」。色素が減った毛には、当てるべき標的がないということです。ここから、ひとつの実際的な結論が出てきます。介護に備えた脱毛を考えている場合、白髪になってからでは選択肢が狭くなるということです。指針は「高齢者の将来の介護に備えた脱毛もなされるようになってきている」と現状に触れていますが、レーザー脱毛が成り立つのは毛に色素が残っているあいだです。なお、白髪でも対応できる方法として電気脱毛(毛包に細い金属製のプローブを挿入して電気を流し毛包を破壊する方法)があります。指針は「レーザー脱毛が普及するまで、電気脱毛が永久脱毛として医療機関で実施されてきた」と記しています。色素に頼らない方法なので、白髪が増えてからの選択肢として医療機関に相談する価値があります。
「永久脱毛」と言われましたが、本当に一生生えてこないのですか?
言葉の使われ方に注意が必要です。美容医療診療指針は、この点について明確に書いています。「欧米では脱毛(hair removal)ではなく減毛(hair reduction)という表記が一般的であるが、本邦でレーザー脱毛という呼称が広く普及していることを考慮し、今回の診療指針においては用語としてレーザー脱毛で統一して表記する」。つまり学会は、日本での呼び方に合わせただけで、実態としては「減毛」だと承知したうえで書いているということです。数字を見るとその意味が分かります。指針が引用しているコクランのレビューでは、アレキサンドライトレーザーとダイオードレーザーで「治療後6か月までに約50%の脱毛という短期的な効果があった」とされています。ゼロになるのではなく、およそ半分です。別のメタ解析では、最終治療から6か月以上たった時点の脱毛率がダイオード57.5%、アレキサンドライト54.7%、ルビー52.8%、Nd:YAG 42.3%でした。一方で長期の良い報告もあります。948人を対象にした調査では、最終治療から平均11.5年たって追跡できた173人のうち152人(87.9%)で脱毛状態が維持されていました。つまり「かなり減って、その状態が長く続くことがある」というのが実像です。「一本も生えてこない状態が保証される」という意味ではありません。
脱毛したのに毛が増えた気がします。そんなことがあるのですか?
あります。硬毛化(paradoxical hypertrichosis)と呼ばれる現象で、美容医療診療指針にも記載されています。指針の書き方は、率直です。「硬毛化の発生はロングパルスアレキサンドライトレーザーに特有ではないが、発生原因が明確ではなく対処方法も確立されておらず、好発部位を把握したうえで必要に応じインフォームド・コンセントに追加すべきである」。ここで重要なのは3点です。第一に、特定の機種の問題ではないこと。指針はIPLについても「レーザー脱毛と同様、熱傷や硬毛化を生じる可能性がある」と書いています。第二に、なぜ起きるのかが分かっていないこと。第三に、どう対処すればよいかも確立していないことです。原因も対処法も分かっていない現象が起こりうる、と学会が明記しているわけです。そのうえで指針は、起こりやすい部位を把握して説明に加えるべきだとしています。つまり、これは施術前に説明されるべき事項です。カウンセリングで硬毛化の説明がなかった場合は、こちらから「硬毛化について教えてください」と尋ねてみてください。起こりうることとして認識しているかどうかが分かります。
何回くらい通えば終わりますか?
「何回で終わる」と決まった回数は、指針には書かれていません。書かれているのは、実際の研究で何回行われたかという数字です。参考になる報告があります。Fitzpatrickスキンタイプ4〜6の150名にNd:YAGレーザーで脱毛治療を行った研究では、顔は4週間ごと、他の部位は6週間ごとに照射を繰り返し、本人が満足できる状態になった時点で治療を終了としました。その結果、治療の平均回数は8.9回で、幅は4回から22回でした。平均脱毛率は54.3%です。つまり同じ機械で同じように治療しても、4回で満足する人と22回かかる人がいたということです。もうひとつ、通う間隔についても目安が読み取れます。指針が引用する試験の多くは4〜8週間ごとの照射で、5回前後を1クールとしています。そして注意したいのが、効果の評価時期です。ある試験では、施術1か月後の脱毛率がダイオード71.0%、Nd:YAG 82.3%だったのに対し、6か月後の追跡ではそれぞれ35.7%、54.2%まで下がっていました。直後の見た目と、数か月後に落ち着いたところは違うということです。契約回数を決めるときは、この「1か月後」と「6か月後」の差を頭に入れておいてください。
エステや家庭用の脱毛器と、クリニックのレーザーは何が違うのですか?
使っている光の種類が違います。美容医療診療指針は、こう書いています。「エステティックサロンやホームユースの美容機器として販売されている商品はほとんどがこのIPLである」。IPLは単一の波長のレーザーではなく、600〜1200nmといった幅のある光を組み合わせたものです。指針は5つの機器に推奨度をつけていますが、レーザー4種(アレキサンドライト・ダイオード・Nd:YAG・蓄熱式)がいずれも推奨度1だったのに対し、IPLだけが推奨度2でした。その推奨文は「単一波長ではないためメラニンへの選択性は脱毛用レーザーと比較すると劣るが、1回あたりの照射面積が広く、レーザーと比較して痛みも少ない。脱毛用レーザーと比較すると脱毛効率はやや劣る」です。ただし誤解のないように補足すると、指針が評価しているのは医療機関で使われるIPL機器であって、家庭用機器の有効性を検証したものではありません。指針には家庭用機器の効果に関する記述はなく、この記事でも家庭用機器の効果について述べることはできません。もうひとつ、承認状況にも差があります。指針はIPLについて「承認器もあるが、未承認器も広く使用されている。機器により冷却装置の有無に違いあり」と書いています。冷却装置は表皮を熱傷から守るためのもので、初期の機器には装備されていませんでした。
参考資料
- 厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)美容医療に関する調査研究班 美容医療診療指針作成分科会「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」日本美容外科学会会報 2022 Vol.44 特別号 第5章「脱毛治療」(本記事の推奨度・推奨文・承認状況・エビデンス論文数・脱毛率・機種一覧は、すべてこの資料にもとづいています。日本皮膚科学会、日本形成外科学会、日本美容皮膚科学会、日本美容外科学会(JSAPS)、日本美容外科学会(JSAS)の5学会共同で作成)
- 公益社団法人日本皮膚科学会「一般公開ガイドライン」
- 厚生労働省「医療安全対策」
- 医療安全支援センター総合支援事業「医療安全支援センター」(お住まいの都道府県・保健所設置市の窓口が探せます)