1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 血液検査で異常がなければ、体の問題はない | 痒疹では、一般的な血液検査をしても異常のないことがしばしばある。一方、中高年以上で症状がとてもひどい場合には、何らかの内臓の病気と関連していることがある |
| 皮膚に何もないなら、気のせい | 皮膚を見ても何もできていないのにかゆみを感じる病気があり、皮膚そう痒症と呼ばれる。腎臓、肝臓・胆道、糖尿病、ホルモン異常、血液や内臓の悪性腫瘍、内服薬などが原因になっていることもある |
| かゆみなら、抗ヒスタミン薬で止まる | 皮膚そう痒症のかゆみは、ヒスタミン以外の物質によっても生じていると考えられ、抗ヒスタミン薬ではある程度の効果にとどまり、完全にかゆみをとめることはできない |
| 検査をすれば、原因はかならず見つかる | 誘因は人それぞれで、詳しい検査をしてもなにも見つからないこともよくある |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
痒疹も皮膚そう痒症も、はっきりした原因がわからないことが少なくありません。ただ、学会は中高年以上で症状がとてもひどい痒疹では内臓の病気と関連していることがあるとしていて、皮膚そう痒症でも内臓の病気や内服薬が原因になっていることがあるとしています。皮膚だけの問題と決めつけず、いろいろな検査で問題になるところを探していく病気です。
2. 痒疹と皮膚そう痒症の違い
| 痒疹 | 皮膚そう痒症 | |
|---|---|---|
| 皮膚の見た目 | 非常にかゆい、ポツポツとした赤い皮膚のもりあがり(丘疹)がパラパラとちらばる | 皮膚を見てもなにもできていない |
| できる場所 | すねのあたりやお腹まわりに限られるタイプから、体中にできるタイプまで様々 | 全身いたるところがかゆくなるものと、陰部、肛門周囲、顔や頭など限られたところだけかゆくなるものがある |
| 続き方など | 丘疹が1週間程度で消える急性のものから、何か月も消えず茶色の硬いイボのようになる慢性のものまである | 発作的に「痒みが襲ってくる」「体の中から痒みが湧いてくる」という方もよくみられる |
出典:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「痒疹(ようしん)・かゆみ」Q1、Q5、Q6をもとに整理。
3. 痒疹はなぜできるのか
学会によると、痒疹ができる理由は、今のところはっきりとわかっていません。関係することがあるものとして、次が挙げられています。
- 虫刺されがきっかけになることがある
- アトピー性皮膚炎のようなアレルギーが関係していることがある(ただし、そうでない人もたくさんみられる)
- まれに内服薬が原因になっている場合もある
- タイプによっては、長い間引っ掻き続けてしまうことも一因になっていると考えられている
4.【核心】検査で何を探すのか
学会によると、痒疹では一般的な血液検査をしても異常のないことがしばしばあります。しかし、誘因は人それぞれなので、いろいろな検査をしながら問題になるところを探していきます。関連があるものとして、次が挙げられています。
| 資料の記述 | |
|---|---|
| 糖尿病・透析 | 糖尿病の方や透析をうけている方には、痒疹がよくみられる |
| 内臓などの病気 | ホルモンの異常、肝臓・胆道系の異常、血液の病気、そのほかいろいろな悪性腫瘍がかくれていることもあるといわれている |
| 金属アレルギー | 歯科金属や、食べ物に含まれる金属のアレルギーで痒疹になる人もいる |
| 慢性の細菌感染 | 鼻・のどや歯に慢性の細菌感染があり、その治療でよくなることもある。この細菌感染は自覚症状が全くないことが多く、注意が必要とされている |
出典:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「痒疹(ようしん)・かゆみ」Q3をもとに整理。
ただし、詳しい検査をしても、残念ながらなにも見つからないこともよくあります。
5. 痒疹の治療
| 資料の記述 | |
|---|---|
| ステロイド外用薬 | 多くはこれを用いる |
| 抗ヒスタミン薬 | かゆみに対して用いる |
| デュピルマブ(皮下注射薬、自己注射可能) | アトピー性皮膚炎の治療薬として知られる。結節性痒疹に保険適用になった。費用はかかるが、従来の治療法に比べて高い効果が期待できる |
| 紫外線療法 | 体中にある場合に行うことがある。かゆみにもよいとされる |
| 保湿薬 | しっかり塗ったほうがよい場合もある |
| 液体窒素による冷凍凝固療法 | かゆいイボのようなかたまりがなかなか消えないときに行う |
| ビタミンD3軟膏 | 有効なこともある |
出典:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「痒疹(ようしん)・かゆみ」Q4をもとに整理。薬の量は主治医の判断によります。
資料は、ステロイド外用薬と抗ヒスタミン薬以外は保険適用外の治療としたうえで、デュピルマブが結節性痒疹に保険適用になったことを挙げています。適用の範囲は変わることがあるので、主治医に確認してください。
症状が非常にひどいときには、ステロイド薬や免疫抑制薬の内服が行われますが、学会はこの病気で長く飲み続けることは望ましいことではないとしています。今後も新しい治療薬の登場が見込まれています。
6. 皮膚そう痒症はなぜかゆいのか
学会によると、皮膚そう痒症でかゆみが起こるメカニズムは、十分には解明されていません。原因になっていることがあるものとして、次が挙げられています。
- 肌の乾燥:ちょっとした刺激でかゆくなることがある
- 腎臓、肝臓・胆道の病気、糖尿病、ホルモン異常
- 血液や内臓の悪性腫瘍
- 内服薬
これらによるかゆみの起こり方は、蕁麻疹や湿疹のときにみられるかゆみとは同じではないといわれています。
7. 皮膚そう痒症の治療
| 資料の記述 | |
|---|---|
| 原因の病気の治療 | 原因となっている病気がある場合には、その治療が必要 |
| 保湿薬 | 肌が乾燥していることも多いので、しっかり塗ることも大切 |
| 抗ヒスタミン薬 | ある程度の効果が期待できるが、完全にかゆみをとめることはできない |
| 漢方薬 | 効果はまちまち |
| ナルフラフィン塩酸塩(内服薬) | 腎不全で血液透析をうけている方や、慢性的に肝機能障害がある方のかゆみに使用される |
| 抗不安薬、抗うつ薬、末梢神経痛に使用する薬 | どうしてもよくならないときに試みられるが、保険適用外 |
| 紫外線療法 | 行われることがある(保険適用外) |
出典:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「痒疹(ようしん)・かゆみ」Q7をもとに整理。
乾燥によるかゆみの手当ては乾燥肌とかゆみの記事で、じんましんはじんましんの記事で書いています。
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 痒疹はかゆいポツポツが続く病気。皮膚そう痒症は皮膚に何もないのにかゆい病気
② はっきりした原因は不明なことが多いが、内臓の病気や内服薬が関係することがある
③ 痒疹では歯科金属などの金属アレルギーや、自覚症状のない鼻・のど・歯の慢性の細菌感染が関係することも
④ 痒疹の治療はステロイド外用薬と抗ヒスタミン薬が中心。結節性痒疹にはデュピルマブが保険適用に
⑤ 皮膚そう痒症では、原因の病気の治療と保湿薬が大切
8. よくある質問
痒疹とはどんな病気ですか?
日本皮膚科学会によると、非常にかゆいポツポツとした赤い皮膚のもりあがり(丘疹)がちらばってできる病気です。丘疹が1週間程度で消える急性のものから、何か月も消えず茶色の硬いイボのようになる慢性のものまであります。
皮膚に何もないのにかゆいのはなぜですか?
学会によると、皮膚を見てもなにもできていないのにかゆみを感じる病気を皮膚そう痒症といいます。メカニズムは十分には解明されていませんが、肌の乾燥のほか、腎臓、肝臓・胆道、糖尿病、ホルモン異常、血液や内臓の悪性腫瘍、内服薬などが原因になっていることがあります。
痒疹ではどんな検査をしますか?
学会によると、一般的な血液検査では異常のないことがしばしばあります。誘因は人それぞれなので、内臓の病気、歯科金属などの金属アレルギー、鼻・のどや歯の慢性の細菌感染など、いろいろな検査をしながら問題になるところを探します。詳しい検査をしてもなにも見つからないこともよくあります。
痒疹の治療にはどんなものがありますか?
学会によると、多くはステロイド外用薬と抗ヒスタミン薬を用います。体中にある場合の紫外線療法、かたまりへの液体窒素による冷凍凝固療法、ビタミンD3軟膏などもありますが保険適用外です。デュピルマブは結節性痒疹に保険適用になりました。
皮膚そう痒症に抗ヒスタミン薬は使えますか?
学会によると、ある程度の効果が期待できます。ただ、皮膚そう痒症のかゆみはヒスタミン以外の物質によっても生じていると考えられ、完全にかゆみをとめることはできません。原因の病気の治療や、保湿薬をしっかり塗ることも大切です。
参考にした主な資料
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「痒疹(ようしん)・かゆみ」(Q1〜Q7)