1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| がんなら見ればすぐ分かる | 基底細胞癌はほくろに、日光角化症とボーエン病は湿疹に、乳房外パジェット病は湿疹やいんきんたむしに似ている |
| 皮膚がんは命に関わる | 日光角化症とボーエン病は表皮内がんで転移しない。進行していなければ、いずれも手術でほぼ根治が可能 |
| 原因は紫外線だけ | 紫外線のほか、ウイルス(HPV)、ひどいやけどのあと、治りにくく繰り返す傷なども原因になる |
| 陰部は人に見せにくいので様子を見る | 学会は、外陰部など見せにくい場所でも皮膚科専門医に相談することを勧めている |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
学会は、早期発見にはふだんから自分の皮膚や手、爪を見ることが大切だとしています。いつもと違うものが出てきた、色が黒い・赤い、触ると硬い・痛い——気になる部分が出てきたら、自己判断せずに皮膚科専門医に相談してください。
2. 皮膚がんの種類——どの細胞ががんになるか
日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aによると、皮膚がんは、皮膚を作っている正常な細胞ががん化したものです。
| がん化する細胞 | がん |
|---|---|
| メラノサイト(色素を作る細胞) | メラノーマ |
| 角化細胞(垢を作る表皮の細胞) | 日光角化症、ボーエン病、有棘細胞癌 |
| 毛包 | 基底細胞癌 |
| アポクリン腺(わきや陰部にある汗腺) | 乳房外パジェット病 |
- 日光角化症とボーエン病は「表皮内がん」とも呼ばれ、がん細胞が表皮の中にとどまっていて、ほかへ転移できない
- 有棘細胞癌は、がん細胞が表皮の下の真皮に達した(浸潤した)状態で、リンパ管や血管に入って転移を起こす可能性がある
メラノーマについてはほくろとメラノーマの記事で書いています。
3.【核心】見た目——ほくろ・湿疹に似ている
学会は、それぞれの典型的な症状を次のように説明しています。
| がん | 似ているもの | 資料の記述 |
|---|---|---|
| 基底細胞癌 | ほくろ | よく見ると、ほくろよりテカテカしていて、小さく黒い粒が集まって見える。中央がへこんでいたり、軽い刺激で出血しやすい |
| 日光角化症 | 湿疹 | かさぶたがついた、赤みを帯びた、円形・楕円形やいびつな形 |
| ボーエン病 | 湿疹 | 赤、褐色、黒色が入り混じった色。かさぶたがついた、円形・楕円形やいびつな形 |
| 有棘細胞癌 | — | 皮膚から突き出た赤いしこり。初めは乾いているが、進むと浸出液が出て、においを放つようになる |
| 乳房外パジェット病 | 湿疹、いんきんたむし | 赤くジクジクしている。茶色が混じったり、白く色が抜けたところが混じる。進むとしこりができることがある |
出典:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「メラノーマ以外の皮膚悪性腫瘍」Q2をもとに整理
4. 出やすい年齢と部位
学会によると、5つのがんはいずれも60歳以上で多くなるといわれています。
| がん | 男女比 | 出やすい部位 |
|---|---|---|
| 基底細胞癌 | わずかに男性に多い | 顔が最多 |
| 日光角化症 | わずかに女性に多い | 日光にさらされる部位。顔、高齢男性の頭、手の甲 |
| ボーエン病 | わずかに女性に多い | 脚が最多。次いで体幹、腕。爪に出ることもある |
| 有棘細胞癌 | わずかに男性に多い | 頭頸部が最多。次いで体幹、腕 |
| 乳房外パジェット病 | 男性に多い | 外陰部(性器のまわり)が最多。次いでわき、肛門のまわり。女性では大陰唇に多い |
5. 原因
- 基底細胞癌:子どものころに浴びた紫外線の影響が大きいといわれている。先天性の病気がある人、放射線照射後の人、免疫が抑えられている人では若い年齢にも見られる
- 日光角化症:長期にわたって浴びた紫外線
- ボーエン病:いぼウイルスであるHPVの感染や、ヒ素を含んだ井戸水の摂取
- 有棘細胞癌:日光角化症やボーエン病から進むことがある。ひどいやけどのあと、放射線による慢性の皮膚障害、長く続く慢性の炎症なども原因になる
- 乳房外パジェット病:原因はまだ分かっていない
紫外線が皮膚に与える影響(光老化)については光老化の記事で書いています。
6. 治療と、治療成績
学会によると、5つのがんは、いずれも進行していなければ手術のみでほぼ根治(こんち)が可能です。治療成績は、ほかの臓器のがんと同じく5年生存率で示されています。
| がん | 主な治療 | 治療成績 |
|---|---|---|
| 基底細胞癌 | 手術。ほとんど転移しない。放射線治療のことも | 早期なら手術で約90〜95%以上 |
| 日光角化症 | 手術。イミキモドクリーム(塗り薬)、凍結療法も | 手術でほぼ100%。塗り薬での病変消失率は約55〜85% |
| ボーエン病 | 手術。5-FU軟膏(抗がん剤の塗り薬)、凍結療法も | 手術でほぼ100%。5-FU軟膏では再発率が約10% |
| 有棘細胞癌 | 早期は手術。転移が疑われるとリンパ節の検査や切除。大きい場合は放射線治療、転移があれば手術・抗がん剤・放射線を組み合わせる | 転移がなく早期ならほぼ100%。大きい・深い場合は約80%。リンパ節転移があるとさらに下がる |
| 乳房外パジェット病 | 早期は手術。転移が疑われるとリンパ節の検査や切除 | 早期なら約90%以上。2個以上のリンパ節に転移していると予後が悪くなる |
出典:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「メラノーマ以外の皮膚悪性腫瘍」Q5・Q6をもとに整理。Q&Aは新しい治療として、海外で使われ始めた薬(有棘細胞癌の転移に対するPD-1阻害薬など)も紹介していますが、国内の承認状況は記載時点のものです。
7. 予防——紫外線と、治りにくい傷
学会は、皮膚がんの原因として挙げられているのは、紫外線を浴びること、井戸水中のヒ素、慢性炎症だとしています。
- 紫外線はできるだけ避けることが重要。スポーツや仕事で難しい場合は、日焼け止めクリームを塗る、帽子や日傘を使う、長袖の衣服にするなどを行う
- 慢性炎症とは、具体的には治りにくく、繰り返す傷のこと。早めに皮膚科専門医に相談する
日焼け止めの選び方と塗り方は日焼け止めの記事で書いています。
この章で扱った日焼け止めです。日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aは、皮膚がんを防ぐために紫外線をできるだけ避け、難しい場合は日焼け止めクリームを塗る、帽子や日傘を使う、長袖の衣服にするなどを挙げています。
※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。ここで紹介しているのは、紫外線吸収剤を使わず(紫外線散乱剤のみ)、美白有効成分を含まない化粧品の日焼け止めです(SPF32・PA+++、光アレルギーテスト・ノンコメドジェニックテスト済みとメーカーが表示)。日焼け止めは、帽子や日傘、長袖とあわせて使うものです。気になる皮膚の変化がある場合は、日焼け止めで様子を見ずに皮膚科専門医に相談してください。
8. 早期発見のコツ
「早期発見には、普段から自分の皮膚や手、爪を見ることが大切です。」(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「メラノーマ以外の皮膚悪性腫瘍」Q8)
- まずは、いつもと違うものが出てきた、色が黒い、赤い、触ってみると硬い、痛いなど、変化に気づくこと
- 気になる部分が出てきたら、安易に自己判断せずに皮膚科専門医に相談する。悪性の疑いがあれば、検査をしたり、手術ができる病院を紹介してくれる
- 外陰部など他人に見せにくい場所は躊躇してしまうが、皮膚科専門医に相談することを勧める
9. 皮膚科で相談したいとき
資料にあるもの
・ほくろのようだが、テカテカしている、中央がへこんでいる、軽い刺激で出血する
・かさぶたがついた赤い湿疹のようなものが、日光の当たる場所に続いている
・赤・褐色・黒が混じった湿疹のようなものが、脚などにある
・陰部やわきに、赤くジクジクした湿疹やいんきんたむしのようなものが続いている
・治りにくく、繰り返す傷がある
最後に、この記事の要点をもう一度。
① メラノーマ以外の皮膚がんは、ほくろ・湿疹・いんきんたむしに似ている
② いずれも60歳以上で多い。日光角化症とボーエン病はわずかに女性に多い
③ 原因は紫外線、HPV、やけどのあと、治りにくい傷など
④ 進行していなければ手術でほぼ根治。早期の治療成績は高い
⑤ ふだんから自分の皮膚・手・爪を見る。見せにくい場所でも皮膚科へ
10. よくある質問
メラノーマ以外にどんな皮膚がんがありますか?
日本皮膚科学会によると、角化細胞ががん化する日光角化症・ボーエン病・有棘細胞癌、毛包ががん化する基底細胞癌、アポクリン腺ががん化する乳房外パジェット病などがあります。日光角化症とボーエン病は表皮内がんで、ほかへ転移しません。
ほくろと皮膚がんは、どう見分けますか?
学会によると、基底細胞癌はほくろに似ていますが、よく見るとほくろよりテカテカしていて、小さく黒い粒が集まって見えます。中央がへこんでいたり、軽い刺激で出血しやすいことも特徴です。見分けは難しいので、気になる場合は自己判断せず皮膚科専門医に相談してください。
湿疹だと思っていたら、がんということはありますか?
あります。学会によると、日光角化症とボーエン病は湿疹に似ていて、かさぶたがついた赤い(ボーエン病では赤・褐色・黒が混じった)病変になります。乳房外パジェット病は、湿疹やいんきんたむしに似た赤くジクジクした病変で、外陰部やわきに多くみられます。
皮膚がんは手術で根治できますか?
学会によると、いずれのがんも進行していなければ手術のみでほぼ根治が可能です。5年生存率は、日光角化症とボーエン病は手術でほぼ100%、基底細胞癌は早期なら約90〜95%以上、有棘細胞癌は転移がなく早期ならほぼ100%とされています。
皮膚がんを予防するには、どうすればいいですか?
学会は、紫外線をできるだけ避けることが重要で、難しい場合は日焼け止めクリームを塗る、帽子や日傘を使う、長袖の衣服にするなどを勧めています。また、治りにくく繰り返す傷(慢性炎症)は、早めに皮膚科専門医に相談するよう書いています。
陰部にできものがあり、受診が恥ずかしいです。
学会は、外陰部など他人に見せにくい場所は躊躇してしまうだろうとしたうえで、皮膚科専門医に相談することを勧めています。乳房外パジェット病は外陰部に最も多く、女性では大陰唇に多いとされています。
参考にした主な資料
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「メラノーマ以外の皮膚悪性腫瘍」(Q1〜Q8)