1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 刺されたらすぐ痛むので気づく | 痛みやかゆみなどの自覚症状がないことが多く、虫が吸血してかなり大きくなってから気づく例が多い |
| 見つけたら指でつまんで引きはがす | マダニの腹部を指でつまむと、体液成分が皮膚内に流入しやすくなるので避けるべき。先の尖ったピンセットで口器の部分をつまみ、ゆっくり引き抜く |
| マダニに刺されたら必ず病気になる | 日本では野外のダニが病原体を持っている確率はきわめて低い。過剰に恐れる必要はない |
| 刺された覚えがなければ、マダニの病気ではない | 日本紅斑熱の患者さんのほとんどは、刺されたという自覚がない |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
マダニを見つけても慌てなくて大丈夫です。腹部をつままず、自分で取れそうになければ皮膚科へ。野外活動のあとに高熱・発疹・だるさ・下痢や嘔吐が出たら、必ず受診して野外活動をしたことを伝えてください。
2. マダニとは——草の葉で待ち、乗り移って血を吸う
日本皮膚科学会によると、日本ではマダニが46種類ほど知られており、成虫の体長は2〜8mmの大型のダニです。
- 主に林の中やその周囲、河川敷などで、草やササの葉に付いて待っている
- 動物やヒトが通ると体や衣服に乗り移り、吸着する場所を探して口器を皮膚に刺し、吸血を始める
- 幼虫で約3日、若虫で約7日、成虫では10〜14日間くらい皮膚に吸着し続け、満腹になると自然に落ちる
- 海外旅行での登山やハイキングで刺されて帰国する人も見られる
ダニには、アレルギーの原因になるチリダニや、皮膚に寄生するヒゼンダニなど多くの種類がありますが、感染症を媒介する可能性があるのはマダニ類と、ツツガムシ類の一部です。
3.【核心】刺されたら——除去のしかたと受診の目安
除去が難しい場合は、局所麻酔をして皮膚ごと切除する必要があるため、皮膚科を受診してください、とされています。
「吸着したマダニの腹部を指で摘まむと、マダニの体液成分が皮膚内に流入しやすくなるので、避けるべきです。」(日本皮膚科学会「皮膚科Q&A ダニ類による感染症」Q3)
- マダニに吸着されてからの時間が短いほど、除去は容易
- 口器がちぎれて残ると、チクチクした違和感や、のちに硬いしこりができる場合がある
- ペット用のマダニ除去器具を使う方法もあるが、医療用器具ではないので自己責任で用いる必要がある
- 自分で除去した場合、虫を捨てずに保管しておくと、病気が出たときの重要な試料になる
4. ダニが媒介する主な感染症
日本皮膚科学会によると、これらの感染症は、ダニに刺されたからといって全員に起こるわけではありません。一方で、診断や治療が遅れると重症化し、命に関わるものもあるため、正しい知識を持って対応することが重要とされています。
| 病気 | 資料の記述 |
|---|---|
| 日本紅斑熱 | 関東地方より西で多く、年間約300例。刺されて2〜8日ほどで高熱、全身にかゆみのない赤い発疹(手のひら・足の裏にも)、黒いカサブタのついた「刺し口」。テトラサイクリン系の抗菌薬で治療する。重症化する例もある |
| つつが虫病 | マダニではなくツツガムシの幼虫(約0.3mm)が媒介。北海道を除く全国で晩秋から早春に多く、年間400〜500例。5〜14日後に39〜40℃の高熱、2〜3日後に発疹、刺し口。治療が遅れると重症化することがある |
| ライム病 | 日本ではシュルツェマダニが媒介し、主に北海道や本州中部山岳部。数日〜14日後に、刺された部位の赤みが5〜20cmほどに広がる遊走性紅斑。顔面神経麻痺などが出ることも |
| 重症熱性血小板減少症候群(SFTS) | マダニが媒介するウイルス感染症。毎年60〜100例、4〜10月に多い。主に近畿〜北陸より西。6〜14日後に38℃以上の高熱、腹痛・嘔吐・下痢など。有効な治療法はなく、高齢者では重症化して亡くなることもある。ネコなどの動物を介して感染することも |
「一般的に、日本では野外のダニ類が何らかの病原体を持っている確率はきわめて低いので、ダニ類に刺されても過剰に恐れる必要はありません。」(日本皮膚科学会「皮膚科Q&A ダニ類による感染症」Q4)
5. 刺されないための予防
日本皮膚科学会は、マダニやツツガムシのいる山野や河川敷で野外活動をするときの予防法として、次を挙げています。
- 長袖、長ズボンで肌の露出を避ける
- ズボンの裾を長靴や靴下の中に入れる
- むやみに林の中や草むらに入らない
- ディートやイカリジンなどの忌避剤を含む虫除け剤を活用する。塗り残しがないよう肌にしっかり塗り伸ばす
- 衣類の上から噴霧できる製品もあり、とくに靴下やズボンの裾に噴霧しておくとよい
「ディートやイカリジンなどの忌避剤を含有した虫除け剤はダニ類の吸着を防ぐ効果がありますので、活用してください。」(日本皮膚科学会「皮膚科Q&A ダニ類による感染症」Q9)
日本皮膚科学会は、ディートは小児への使用回数が制限されているので使用上の注意をよく確認すること、イカリジンは小児への使用制限はないことも書いています。
この章で扱った、イカリジンを含む虫除け剤です。日本皮膚科学会は、マダニなどのダニ類に対してディートやイカリジンなどの忌避剤を含む虫除け剤の活用を勧め、イカリジンは小児への使用制限はないとしています。
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6. 野外活動のあとにすること
- 入浴時に、脇の周囲や下腹部、陰部、太ももなどにマダニが吸着していないか調べる
- 乳幼児では頭部に吸着していることがあるので、頭皮も探す
- マダニを見つけても慌てる必要はない。自分で除去できそうにない場合は皮膚科を受診する
7.【内科医の視点】刺された覚えがないことが多い
内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。資料によると、日本紅斑熱の患者さんのほとんどは、マダニに刺されたという自覚がありません。つつが虫病のツツガムシの幼虫も約0.3mmと小さく、吸着されてもほとんど気づかないとされています。
だからこそ、資料は受診するときに野外活動歴(時期、場所、内容など)や、刺されたかもしれないことを医師に伝えるよう勧めています。発熱で内科を受診するときも、数日〜2週間前に山や草むら、河川敷に行ったことを一言伝えてください。傷の手当てや破傷風については切り傷・すり傷と破傷風の記事で書いています。
8. 医療機関を受診したいとき
必ず医療機関を受診したいとき(資料の記述)
・ダニに刺されたあとに発熱や倦怠感が出た
・発疹・刺し口などの皮膚の症状が出た
・下痢・嘔吐などの消化器の症状が出た
・麻痺などの神経の症状が出た
受診するときは、野外活動歴と、ダニに刺された(かもしれない)ことを伝え、自分で取ったマダニがあれば持参する
皮膚科を受診したいとき
・マダニが吸着していて、自分で除去できそうにない(吸着して3日以上たっているなど)
最後に、この記事の要点をもう一度。
① マダニに刺されても痛みやかゆみがないことが多い
② 除去はピンセットで口器をつまみ、ゆっくり。腹部を指でつままない。取れなければ皮膚科へ
③ 病原体を持つ確率はきわめて低く、過剰に恐れる必要はない
④ 刺されて数日〜2週間の高熱・発疹・刺し口・下痢や嘔吐は受診。野外活動歴を伝える
⑤ 予防は長袖・長ズボン・裾を靴下に、ディートやイカリジンの虫除け剤
9. よくある質問
マダニに刺されたらどうすればいいですか?
日本皮膚科学会によると、吸着して早期であれば、先の尖ったピンセットなどでマダニの口器の部分をつまんで、ゆっくり引き抜くことでうまく除去できる場合が多いとされています。腹部を指でつまむと体液成分が皮膚内に流入しやすくなるので避けるべきです。吸着して3日以上たつと除去が難しくなるため、取れない場合は皮膚科を受診してください。
マダニに刺されると病気になりますか?
日本皮膚科学会によると、日本では野外のダニが何らかの病原体を持っている確率はきわめて低いので、刺されても過剰に恐れる必要はありません。ただし、日本紅斑熱やつつが虫病、重症熱性血小板減少症候群など、診断や治療が遅れると重症化して命に関わる感染症もあるため、正しい知識を持って対応することが重要とされています。
どんな症状が出たら受診すればいいですか?
日本皮膚科学会は、ダニに刺されたあとに発熱や倦怠感、発疹・刺し口などの皮膚症状、下痢・嘔吐などの消化器症状、麻痺などの神経症状が出た場合は、必ず医療機関を受診するよう勧めています。その際には、野外活動歴やダニに刺されたかもしれないことを医師に伝え、自分で除去したマダニがあれば持参すると診断の参考になるとしています。
マダニに刺されないためにはどうすればいいですか?
日本皮膚科学会によると、山野や河川敷で野外活動をするときは、長袖・長ズボンで肌の露出を避け、ズボンの裾を長靴や靴下の中に入れること、むやみに林や草むらに入らないことが大切です。ディートやイカリジンなどの忌避剤を含む虫除け剤も活用し、衣類の上から噴霧できる製品は靴下やズボンの裾に噴霧しておくとよいとされています。
子どもに虫除け剤を使ってもいいですか?
日本皮膚科学会によると、ディートについては小児への使用回数が制限されているので、使用上の注意をよく確認して使用する必要があります。イカリジンは小児への使用制限はありません。また、乳幼児では頭部にマダニが吸着していることがあるため、野外活動のあとは頭皮も探す必要があるとされています。
参考にした主な資料
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」:「ダニ類による感染症」Q1〜Q9