1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 足が赤く腫れたら、まず冷やして様子を見る | 蜂窩織炎は細菌の感染症。治療の中心は抗菌薬で、重症度によって飲み薬か点滴かが分かれる |
| けがをしていないから感染症ではない | なりやすさには足白癬(水虫)・むくみ・静脈不全なども挙がっている |
| 赤みが強いほど重い | 重さの目安は熱・脈・呼吸などの全身の症状と、進行の速さ |
| 皮膚の感染症で命に関わることはない | 深いところに及ぶ壊死性軟部組織感染症は、死亡率76%という報告がある。早期の手術が生存率を左右する |
| 一度治れば終わり | くり返していること(再発例)自体が、なりやすさの一つ |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
足が赤く腫れて熱を持ち、痛むときは、早めに受診してください。特に、痛みが強い・急速に広がる・高い熱が出るときは、命に関わる感染症のことがあるので、すぐに医療機関へ。
2. 蜂窩織炎は、皮膚と皮下脂肪の急な感染症
この記事で主に使う資料は、日本形成外科学会など三学会の「形成外科診療ガイドライン 3 2021年版 創傷疾患」のうち、感染創の章(蜂窩織炎・壊死性軟部組織感染症)です。ガイドラインは、蜂窩織炎をこう説明しています。
「蜂窩織炎は皮膚・皮下脂肪層の急性感染性炎症で,臨床所見としていわゆる炎症の4 徴である発赤・腫脹・熱感・疼痛を認める。病巣が真皮深層~脂肪層にあるため発赤の境界は不明瞭である。好発部位は顔面,四肢で,多くは下腿の片側性にみられる。」
つまり、赤い・腫れる・熱い・痛いの4つがそろい、赤みと正常な皮膚の境目がはっきりしないのが特徴です。いちばん多いのは、片方の足のすねです。
よく似た病気に丹毒(たんどく)があります。ガイドラインによると、病気の場所がもっと浅く、赤みの境目がはっきりしているものを日本や米国では丹毒と呼びます(欧州では蜂窩織炎と丹毒は移行する同じ病気とされています)。
3.【核心】なりやすさに関わるもの
ガイドラインは、血液の培養検査を行うべき人を説明するなかで、蜂窩織炎のリスクファクターとしてこう挙げています。
「高齢(65 歳以上),足白癬,再発例,静脈不全,浮腫(リンパ浮腫および慢性浮腫),肝硬変,全身性炎症反応症候群(systemic infl ammatory response syndrome:SIRS),整形外科手術による同側人工物挿入,創または潰瘍の存在,BMI 30 以上などが挙げられている」
ガイドラインは、こうしたリスクファクターのある人や重い持病のある人は、血液培養の陽性率が高く入院期間も延びやすいとしています。
注目してほしいのは、足白癬(水虫)が挙がっていることです。ガイドラインは、検査の説明でも「患肢の趾間皮膚に浸軟あるいは創がある場合」、つまり足の指の間がふやけたり傷になったりしている場合に触れています。指の間のジュクジュクした水虫は、細菌の入り口になりえます。
もう一つが、むくみと静脈不全です。足のむくみや、静脈の弁がうまく働かない静脈不全(下肢静脈瘤など)は、40〜50代の女性にも身近なものです。
4. 原因菌の多くは「溶連菌」
ガイドラインは、1979〜2010年の28の文献をまとめた報告を紹介しています。血液培養が陽性になったのは蜂窩織炎1,578例中125例(7.9%)と1割未満で、原因菌は58%がβ溶血性連鎖球菌でした。
そして、膿のたまらない典型的な蜂窩織炎について、ガイドラインは「原因菌の多くは溶血性連鎖球菌である。」と書いています。のどの炎症でよく知られる溶連菌の仲間です。一方、膿がたまるタイプでは黄色ブドウ球菌も原因になり、重症例や膿のある例ではMRSA(薬が効きにくい黄色ブドウ球菌)への備えも考えるとされています。
5. 膿があるか、全身の症状があるかで分ける
ガイドラインは、蜂窩織炎を膿がたまっているか(膿性・非膿性)と重症度(軽症・中等症・重症)で分けて、治療を考えるとしています(CQ8)。膿がたまっていれば、切開して膿を出す対象になります。
| 重症度 | ガイドラインの目安(膿のないタイプ) | 治療の例 |
|---|---|---|
| 軽症 | 全身的な感染の徴候がない | 抗菌薬の飲み薬 |
| 中等症 | 全身の炎症の目安(SIRS)が1点以上:体温36度以下か38度以上、脈拍90回/分以上、呼吸数20回/分以上、白血球数の異常 | 1点なら飲み薬、2点以上なら点滴 |
| 重症 | SIRS 2点以上で、血圧が低い、免疫が落ちている、急速に進行している | 壊死性の感染症を考えて、外科的な処置と点滴 |
表の目安は医療者が判断に使うものですが、裏を返せば、高い熱や、脈が速い・息が速いといった全身の症状、そして急速に広がることが、重症のサインだということです。
6. 🚨 命に関わる「壊死性軟部組織感染症」
蜂窩織炎と見分けなければならないのが、壊死性軟部組織感染症(壊死性筋膜炎など)です。ガイドラインはこう説明しています。
「壊死性軟部組織感染症は表在筋膜や筋肉など深部まで及ぶ感染症であり,蜂窩織炎のように抗菌薬治療を行うのみならず,外科的治療も必要とする疾患である。そして,急速かつ破壊的な進行性疾患であることから,早期診断が重要であると考えた。」
ガイドラインは、死亡率が76%という報告や、医療機関を受診してから24時間以内に手術を行った群とそれ以上かかった群で、生存率に差があったという国内の報告を紹介しています。早期の手術(デブリードマン)は「生命予後の改善に有効である。」(CQ10、1C)とされ、疑わしい場合は診断のための切開や、CT・MRIの検査が行われます。
同じく溶連菌が原因となる劇症型溶血性レンサ球菌感染症について、大阪府の一般向けの解説はこう書いています。
「初期症状は、四肢の疼痛、腫脹、発熱、血圧低下などが見られます。」「発病から病状の進行が非常に急激かつ劇的で、発病後数十時間以内には筋肉周辺組織の壊死を起こしたり、血圧低下や多臓器不全からショック状態に陥り、死に至ることも少なくありません。死亡率は約30%と言われています。」
そして、「四肢の疼痛、腫脹、発熱などの感染の兆候が見られる場合は、速やかに医療機関を受診してください。」と呼びかけています。予防として、手足などの傷口から感染する場合があるため、傷口を汚れた手で触らないなど清潔に保つことが大切としています。傷の手当てについては切り傷・すり傷の手当てと破傷風で書いています。
7.【内科医の視点】水虫・むくみ・体重・肝臓
内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。3章のリスクファクターを見直すと、ふだんの生活や持病の管理で向き合えるものが多く含まれています。
| リスクファクター | あわせて読みたい記事 |
|---|---|
| 足白癬(水虫) | 足白癬・爪白癬(水虫)——かゆくない水虫もある |
| 静脈不全・むくみ | 下肢静脈瘤と脚のむくみ、冷えとむくみ |
| BMI 30以上 | 40代の代謝と筋肉 |
| 肝硬変 | 脂肪肝とALTの記事 |
なお、ガイドラインは、これらを治療すれば蜂窩織炎を防げるとまでは書いていません。それでも、水虫を放置しない、むくみの原因を確かめることは、それぞれの病気としても大切なことです。蜂窩織炎をくり返している方は、なりやすさに当てはまるものがないか、主治医と一緒に見直してみてください。
また、ガイドラインは、化学療法中や免疫が落ちている人、淡水や海水の中でのけが・動物にかまれた傷から起きた蜂窩織炎では、血液の培養検査などを考慮するとしています。持病のある方は、自己判断で様子を見ないでください。
8. どんな検査をする?
ガイドラインは、全身の症状のない典型的な軽症例では、画像検査を行っても有意な所見は得られず(CQ6)、培養検査も推奨されないとしています(CQ7)。
一方で、膿がたまっているかどうかを見るには超音波検査が役立ち、壊死性の感染症との区別が必要なときにはCT・MRIが有用とされています(CQ6・CQ9)。ガイドラインは、臨床所見だけで膿がたまっていると判断できたのは63.6%で、画像検査で初めて分かったのが36.6%という報告も紹介しています。
9. すぐに受診したほうがよいとき
医療機関で診てもらいたいとき(資料の記述から)
・足や腕が赤く腫れて熱を持ち、痛む(蜂窩織炎のことがあります。早めに受診)
・手足の痛み・腫れに発熱を伴う(大阪府は「速やかに医療機関を受診」と呼びかけています)
・症状が急速に進む、血圧が下がる(重症や壊死性の感染症のことがあります。すぐに)
・赤く腫れた部分に膿がたまっているようだ(切開が必要なことがあります)
・免疫が落ちている、化学療法中、肝硬変などの持病がある方の赤い腫れ
・海や川の中でのけが、動物にかまれた傷から腫れてきた
・蜂窩織炎をくり返している
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 蜂窩織炎は赤い・腫れる・熱い・痛いの4つ。多くは片足のすね
② なりやすさに65歳以上・水虫・再発・静脈不全・むくみ・肝硬変・BMI30以上
③ 原因菌の多くは溶連菌。治療の中心は抗菌薬
④ 重症のサインは熱・脈・呼吸などの全身の症状と急速な進行
⑤ 壊死性軟部組織感染症は死亡率76%という報告。早期の手術が生存率を左右する
⑥ 手足の痛み・腫れに発熱があれば、速やかに受診
10. よくある質問
蜂窩織炎とはどんな病気ですか?
形成外科診療ガイドライン(2021年版)によると、蜂窩織炎は皮膚と皮下脂肪の急性の感染性の炎症で、赤み・腫れ・熱感・痛みがみられ、赤みの境目ははっきりしません。顔や手足に起こりやすく、多くは片方のすねにみられます。膿のたまらない典型的な蜂窩織炎では、原因菌の多くは溶血性連鎖球菌とされています。
蜂窩織炎になりやすいのは、どんな人ですか?
形成外科診療ガイドラインは、リスクファクターとして、65歳以上、足白癬(水虫)、くり返していること、静脈不全、リンパ浮腫や慢性のむくみ、肝硬変、全身の炎症反応、同じ側の足の人工関節などの手術、傷や潰瘍があること、BMI30以上などを挙げています。
水虫があると、蜂窩織炎になりやすいのですか?
形成外科診療ガイドラインは、蜂窩織炎のリスクファクターの一つに足白癬(水虫)を挙げ、足の指の間の皮膚がふやけていたり傷があったりする場合には、その部分からの培養検査を考慮してもよいとしています。ただし、水虫を治療すれば蜂窩織炎を防げるかについては書かれていません。水虫そのものも、皮膚科で確かめて治療することが大切です。
蜂窩織炎と壊死性筋膜炎は、どう違いますか?
形成外科診療ガイドラインによると、壊死性軟部組織感染症(壊死性筋膜炎など)は筋膜や筋肉など深いところまで及ぶ感染症で、抗菌薬だけでなく外科的治療も必要になり、急速かつ破壊的に進行します。死亡率76%という報告や、受診から24時間以内に手術を行うかどうかで生存率に差があったという報告が紹介されています。区別にはCTやMRIが有用とされています。
足が赤く腫れたら、すぐに受診したほうがいいですか?
赤み・腫れ・熱感・痛みがそろっている場合は、蜂窩織炎のことがあるので早めに受診してください。大阪府の劇症型溶血性レンサ球菌感染症の解説は、手足の痛み・腫れ・発熱などの感染の兆候が見られる場合は速やかに医療機関を受診するよう呼びかけています。急速に広がる、血圧が下がるといった場合は、すぐに受診してください。
参考にした主な資料
- 日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会「形成外科診療ガイドライン 3 2021年版 創傷疾患」(改訂第2版・金原出版、2021年9月30日発行。第Ⅱ編 感染創診療ガイドライン 2章 蜂窩織炎 CQ6〜CQ8、3章 壊死性軟部組織感染症 CQ9〜CQ13)。Minds ガイドラインライブラリで本文公開中
- 大阪府「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」(2025年12月2日更新)