1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 欧米の病気で、日本人には少ない | かつては少ないと考えられていたが、近年著しく増加し、現在は成人の失明原因の第4位 |
| 見えにくくなったら、もう打つ手がない | 近年は治療法が大きく進歩し、多くの患者さんで視力を保ったり、改善できたりするようになってきた |
| 注射で落ち着いたら、通院は終わり | 病状が落ち着いていても再発しやすい。もう一方の目にも起こりやすいため、症状がないときも定期的に通院 |
| 目にいいサプリを飲んでおけば予防になる | サプリメントがすすめられるのはある程度進行した方など。ごく初期の方や、発症していない方での予防効果は確立していない |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
ものの中心がゆがむ、中心が暗く欠けるときは眼科を受診してください。片目ずつ見ると気づきやすく、アムスラー検査は自宅でも確認できます。予防と進行を抑えるために最も重要なのは禁煙です。
2. 黄斑とは——小さいけれど、見え方の中心
日本眼科学会は、ものを見るしくみをカメラに例えています。目の奥に広がる「網膜」はカメラのフィルムにあたり、受け取った光を電気信号に変えて脳に伝えます。
- 網膜の中心にある直径1.5〜2mmほどの小さな部分が黄斑。まっすぐ見つめたところの光が届く
- 黄斑は、文字を読む、人の顔を見分ける、車を運転するといった日常生活の重要な見え方に深く関わる
- ごく小さな部分だが、ここが傷むと、ほかの網膜に異常がなくても視力が大きく低下する
年齢を重ねると、網膜やその下の組織に老廃物がたまったり、血管の状態が変わったりします。初期にみられる代表的な変化が「ドルーゼン」と呼ばれる黄色い沈着物です。こうした変化を背景に黄斑が傷み、視力が低下する病気が加齢黄斑変性です。日本人では、ドルーゼンが目立たないまま、網膜の下にある血管の層(脈絡膜)が厚いこと(パキコロイド)を背景に発症するタイプが多いことが分かってきたとされています。
3.【核心】新生血管型と萎縮型
日本人を含むアジア人の新生血管型には、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)など、欧米とは異なる特徴をもつタイプが多くみられるとされています。
「この血管はもろく、血液の成分がしみ出して網膜がむくんだり(網膜浮腫)、網膜の下に水がたまったり(網膜下液)します。血管が破れると出血します。」(日本眼科学会「加齢黄斑変性」——新生血管型について)
4. 症状——中心がゆがむ、欠ける
| 症状 | 資料の記述 |
|---|---|
| 変視症(ものがゆがんで見える) | 網膜がむくんだり、網膜の下に水がたまると、網膜の表面がゆがむ。障害されるのは黄斑なので、中心はゆがんで見えても、周辺は正しく見えるのが特徴 |
| 視力低下・中心暗点(中心が見えない) | 見ているものの中心が暗く欠けて見え、視力が低下する。進行すると文字を読む、運転免許を更新するなどが難しくなる |
| 色覚の変化 | 症状が進むと、色が分かりにくくなることがある |
多くは徐々に進みますが、網膜の下に大きな出血が起こると、突然大きく視力が下がることもあるとされています。発症から間もない場合には、目の中にガスを注入する方法や硝子体手術で、黄斑の下にたまった出血を移動させる治療を行うことがあります。
5. 検査と、自宅でもできるアムスラー検査
眼科では、正しく診断し、病気の活動性(勢い)を評価するために、いくつかの検査を組み合わせて行います。
- 視力検査:視力低下の程度を調べる
- アムスラー検査:方眼紙のような図を片目ずつ見て、線のゆがみや見えない部分を調べる
- 眼底検査:ドルーゼンや出血、新生血管の有無を調べる
- 光干渉断層計(OCT):網膜の断面を立体的に撮影する。造影剤を使わず短時間ででき、繰り返し行える。現在は病気の活動性の判定に最も重要な検査
- そのほか、OCTアンギオグラフィー(OCTA)、眼底自発蛍光(FAF)、腕の血管から蛍光色素を注射する造影検査
「簡便で自宅でも確認でき、早期発見や経過観察に役立ちます。」(日本眼科学会「加齢黄斑変性」——アムスラー検査について)
加齢黄斑変性で障害されるのは黄斑(中心部)なので、ゆがみや欠けは図の中心付近に出やすくなります。片目ずつ見るのがポイントです。
6. 治療と、長い付き合い
| 治療 | 資料の記述 |
|---|---|
| 抗VEGF療法(新生血管型) | 異常な血管の発生に関わるVEGFという物質を抑える薬を目の中(硝子体)に注射する。新生血管型の第一選択。まず1か月ごとに数回注射し、その後は活動性をみながら長期的に続ける。薬によっては最長で約4か月(16週)程度まで間隔を空けられるようになった |
| 光線力学的療法(PDT) | 光に反応する薬を点滴し、弱い専用レーザーで異常な血管を閉じる。抗VEGF療法と組み合わせるのが基本。治療後48時間は強い光を避ける |
| レーザー光凝固 | 新生血管が黄斑の中心から離れた場所にある場合。中心にかかる場合は行わない |
| 萎縮型の注射薬 | 2025年に国内で初めて使えるように。月1回の注射から始め、1年後からは2か月に1回。失われた視力を回復させる薬ではなく、進行をゆるやかにする治療 |
新生血管型の治療の目的は、異常な血管の活動を抑え、視力を保つ・改善することです。日本眼科学会は、視力が良くなることもあるものの、完全に元どおりになることはまれとしています。
「病状が落ち着いていても再発しやすいため、自己判断で中断せず、通院と治療を続けることが大切です。」(日本眼科学会「加齢黄斑変性」)
治療で症状が落ち着いても再発することや、もう一方の目にも起こりやすいことが知られており、症状がないときも定期的に通院して経過をみることが大切とされています。視力が大きく低下した場合は、拡大鏡や明るい照明などを活用する「ロービジョンケア」が、読み書きなど日常生活の助けになります。
7. 禁煙・食事・サプリメント
日本眼科学会は「加齢黄斑変性の予防と進行を抑えるために」として、次の3つを挙げています。
「喫煙は、自分で変えられる最も重要な危険因子です。日本国内の研究でも、喫煙者は進行した加齢黄斑変性になる危険が数倍高いと報告されています。予防のためにも禁煙が強くすすめられます。」(日本眼科学会「加齢黄斑変性」)
| 対策 | 資料の記述 |
|---|---|
| 禁煙 | 自分で変えられる最も重要な危険因子。禁煙が強くすすめられる |
| 食事 | 魚(オメガ3脂肪酸)や、緑黄色野菜・果物(ビタミンC・E、ルテイン・ゼアキサンチンなどの抗酸化物質)を多くとり、肉類や揚げ物などに偏った脂肪の多い食事を控えるバランスのよい食生活が、発症や進行を抑えるのに役立つと考えられている |
| サプリメント | ビタミンC・ビタミンE・ルテイン・ゼアキサンチン・亜鉛・銅などを含むサプリメントが、進行を抑えるのに役立つことが海外の大規模研究で示されている。とくにある程度進行した方や、片方の目がすでに進行した加齢黄斑変性になっている方にすすめられる |
サプリメントについては、注意点もはっきり書かれています。ごく初期の方や、発症していない方での予防効果は確立していません。以前用いられたβカロテンは、喫煙者・元喫煙者で肺がんの危険を高めることが分かったため、現在はルテイン・ゼアキサンチンに置き換えられています。また、ビタミンや亜鉛のとりすぎには注意が必要で、日本人を対象とした検証はまだ限られているとされています。
この章で扱った、ビタミンC・ビタミンE・ルテイン・ゼアキサンチン・亜鉛・銅を含むサプリメントです。日本眼科学会は、こうしたサプリメントはある程度進行した方や、片方の目がすでに進行した加齢黄斑変性になっている方にすすめられるとしています。
※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。ごく初期の方や、まだ発症していない方に役立つかどうかは確立していません。飲むかどうかは、眼科で病状を調べてもらったうえで相談してください。サプリメントは目の中への注射などの治療の代わりにはなりません。ここで紹介しているのは、ボシュロムのオキュバイト プリザービジョン2(栄養機能食品・1日3粒が目安)です。販売ページの栄養成分表示では、1日3粒あたりビタミンC 408mg、ビタミンE 242mg、亜鉛30mg相当、銅1.5mg相当、ルテイン10mg、ゼアキサンチン2mgです。日本眼科学会はビタミンや亜鉛のとりすぎに注意が必要としているので、ほかのサプリメントとの重複に気をつけ、目安量を守ってください。販売ページは、薬を服用中あるいは通院中の方、妊娠・授乳中の方はかかりつけの医師に相談のうえ飲むこととしています。
8.【内科医の視点】禁煙は、目のためにもなる
内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。資料が「自分で変えられる最も重要な危険因子」として挙げているのは、サプリメントではなく喫煙です。日本国内の研究でも、喫煙者は進行した加齢黄斑変性になる危険が数倍高いと報告されています。タバコをやめることは、目の病気の予防としても強くすすめられています。
もう一つは、片目ずつ見ることです。資料は、アムスラー検査を片目ずつ行うとしています。光が走る・黒い影が増えるといった別の見え方の変化については飛蚊症と網膜剥離で書いています。
9. 眼科を受診したいとき
眼科を受診・相談したいとき
・ものの中心がゆがんで見える(周辺はまっすぐ見える)
・見ているものの中心が暗く欠ける
・アムスラー検査で線のゆがみや見えない部分がある
・突然大きく視力が下がった(網膜の下の大きな出血のことがある)
・すでに治療中で、症状が落ち着いている(自己判断で中断せず、定期的に通院)
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 加齢黄斑変性は主に50歳以上。日本では成人の失明原因の第4位
② 日本では新生血管型が大部分。萎縮型は1割程度
③ 症状は中心のゆがみと中心が暗く欠けること。アムスラー検査は自宅でも確認できる
④ 治療は目の中への注射(抗VEGF療法)が中心。再発しやすいので通院を続ける
⑤ 最も重要な対策は禁煙。サプリメントはある程度進行した方などにすすめられる
10. よくある質問
加齢黄斑変性はどんな病気ですか?
日本眼科学会によると、加齢に伴って網膜の中心部である黄斑が傷み、見ようとするところが見えにくくなる病気です。主に50歳以上にみられ、年齢が上がるほど多くなります。日本でも近年著しく増加し、現在は成人の失明原因の第4位となっています。
どんな症状が出ますか?
日本眼科学会によると、ものがゆがんで見える変視症が代表的で、中心はゆがんで見えても周辺は正しく見えるのが特徴です。進むと見ているものの中心が暗く欠けて見え(中心暗点)、視力が低下します。網膜の下に大きな出血が起こると、突然大きく視力が下がることもあります。
自宅でチェックする方法はありますか?
日本眼科学会は、方眼紙のような図を片目ずつ見て、線のゆがみや見えない部分を調べるアムスラー検査を挙げ、簡便で自宅でも確認でき、早期発見や経過観察に役立つとしています。ゆがみや見えない部分があれば眼科を受診してください。
どんな治療がありますか?
日本眼科学会によると、新生血管型では、VEGFという物質を抑える薬を目の中に注射する抗VEGF療法が第一選択です。病状が落ち着いていても再発しやすいため、自己判断で中断せず、通院と治療を続けることが大切とされています。萎縮型では、2025年に、進行した萎縮が広がる速さを遅らせることを目的とした注射薬が国内で初めて使えるようになりました。
サプリメントは飲んだほうがいいですか?
日本眼科学会によると、ビタミンC・ビタミンE・ルテイン・ゼアキサンチン・亜鉛・銅などを含むサプリメントが進行を抑えるのに役立つことが海外の大規模研究で示されており、とくにある程度進行した方や、片方の目がすでに進行した加齢黄斑変性になっている方にすすめられます。ごく初期の方や、発症していない方での予防効果は確立していません。ビタミンや亜鉛のとりすぎにも注意が必要とされています。
参考にした主な資料
- 日本眼科学会「目の病気」:「加齢黄斑変性」(監修:日本眼循環学会)