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からだの変化

飛蚊症と網膜剥離
——飛蚊症の多くは加齢による自然な変化。急に増えた・光が走るときは早めに眼科へ

白い壁や空を見ると、黒い糸くずや虫のような影が動いて見える。視界の端に「ピカッ」と光が走る——そんな方に向けた記事です。
日本眼科学会によると、こうした飛蚊症(ひぶんしょう)や光視症(こうししょう)は、多くの場合、眼の中のゼリー状の組織が網膜から離れる加齢に伴う自然な変化(後部硝子体剥離)で起こります。
ただし、急に飛蚊症が増えたり、光が頻繁に見えるようになった場合は、網膜裂孔や網膜剥離が起こっている可能性があり、できるだけ早く眼科を受診することが大切とされています。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年10月22日 読了:約8分

1. 先に結論

よくある思い込み資料の記述
飛蚊症が見えたら、すぐ重い病気多くは加齢に伴う自然な変化(後部硝子体剥離)で、誰にでも起こりうる現象。症状は時間とともに落ち着くことが多い
昔からある飛蚊症なら、増えても気にしなくていい急に飛蚊症が増えたり、光が頻繁に見えるようになった場合は、網膜裂孔や網膜剥離が起こっている可能性がある
網膜に穴があいたら痛むはず網膜には痛みを感じる神経がないため、裂け目ができても、剥がれても痛みはない
網膜剥離は手術すれば必ず元通り見える黄斑が剥がれていない段階なら術後の視力回復が良好なことが多いが、黄斑が剥がれると視力が完全には戻らないことがある

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

飛蚊症の多くは加齢による変化ですが、急に増えた、光が頻繁に走る、視野の一部が欠ける・カーテンがかかったように見えるときは、痛みがなくてもできるだけ早く眼科を受診してください。

2. 飛蚊症・光視症と後部硝子体剥離

眼球の中は硝子体(しょうしたい)という透明でゼリー状の組織で満たされています。日本眼科学会によると、若い頃の硝子体は網膜にしっかりと付着していますが、加齢とともにゼリーが少しずつ液状化し、次第に網膜から離れていきます。この状態を「後部硝子体剥離」と呼びます。

症状資料の記述
飛蚊症黒い糸くずや虫のような影が、目の動きに合わせて動いて見える。硝子体の濁りや、硝子体が網膜から離れる際に生じた影が原因
光視症視界の端に「ピカッ」と光が走るように見える。硝子体が網膜を引っ張る際に光を感じることで起こる

自覚症状が非常に強い場合には、レーザー処置や硝子体手術を行うことがあるとされています(レーザー処置は保険適用外)。

3.【核心】後部硝子体剥離から網膜剥離へのつながり

「しかし、硝子体が剥がれる際に網膜を強く引っ張ると、網膜裂孔や網膜剥離などの病気を引き起こすことがあります。」(日本眼科学会「後部硝子体剥離」)

後部硝子体剥離 → 網膜裂孔 → 網膜剥離 日本眼科学会(監修:日本網膜硝子体学会)の解説をもとに整理 後部硝子体剥離 多くは加齢に 伴う自然な変化 硝子体が液状化・収縮して網膜から離れる 症状:飛蚊症、光視症 通常は治療を必要としない ▼ 硝子体が網膜を強く引っ張ると 網膜裂孔 網膜に裂け目 痛みはない 光視症、出血による飛蚊症が現れることがある 治療:レーザー光凝固術(外来で短時間) 網膜剥離への進行を防ぐ ▼ 裂孔から液体が入り込むと 網膜剥離 放置すれば 失明の危険 視野の一部が欠ける、カーテンがかかったように 見えにくくなる、急な視力低下 治療:多くは手術(硝子体手術など) 出典:日本眼科学会「後部硝子体剥離」「網膜裂孔」「網膜剥離」をもとに作図

網膜裂孔・網膜剥離の原因として、加齢による硝子体の変化のほか、強度近視、外傷、眼の手術後なども挙げられています。

「多くの場合、これらの症状は時間とともに落ち着きますが、急に飛蚊症が増えたり、光が頻繁に見えるようになった場合は、網膜裂孔や網膜剥離が起こっている可能性があります。その場合はできるだけ早く眼科を受診することが大切です。」(日本眼科学会「後部硝子体剥離」)

4. 網膜裂孔——痛みはなく、レーザーで進行を防ぐ

網膜裂孔とは、眼の奥にある網膜という薄い神経の膜に裂け目ができた状態です。

「裂孔そのものは小さくても、放置するとその部分から網膜が剥がれて網膜剥離へ進行し、重い視力障害や失明につながることがあります。」(日本眼科学会「網膜裂孔」)

裂孔が見つかった場合は、網膜剥離への進行を防ぐ治療を速やかに行うことが大切とされています。主な治療はレーザー光凝固術で、裂け目の周囲をレーザーで焼き固め、網膜と下の組織を癒着させます。痛みはほとんどなく、外来で短時間に行うことが可能です。治療後も、新たな裂孔や再発がないか定期的な経過観察が必要とされています。

5. 網膜剥離——カーテンがかかったように見える

網膜剥離とは、光を感じ取る網膜が、下の組織(網膜色素上皮)から剥がれて浮き上がる状態です。日本眼科学会は、放置すれば失明につながる危険な病気としています。最も多いのは、網膜の裂け目(裂孔)から眼の中の液体が入り込んで剥がれていく裂孔原性網膜剥離です。

タイプ原因と治療(資料の記述)
裂孔原性網膜剥離加齢で硝子体が収縮して網膜を引っ張り、裂孔ができて液が入り込む。多くの場合手術が必要。黄斑がまだ剥がれていない早期なら、レーザー光凝固術で剥離の拡大を防げることもある
牽引性網膜剥離糖尿病網膜症や外傷、手術後の瘢痕によって網膜が引っ張られて剥がれる。引っ張る力を解除するために硝子体手術
滲出性網膜剥離炎症や腫瘍などで液がたまって剥がれる。原因疾患の治療

剥離が進行している場合の手術には、硝子体を除去して眼内にガスやオイルを入れ、網膜を内側から押さえる硝子体手術(現在最も一般的)と、眼球の外側にシリコンを縫いつけて外から支える強膜バックリング手術(若年者や初期例に多い)があります。手術により多くの症例で網膜を元の位置に戻すことができますが、重症例では複数回の手術が必要なこともあるとされています。

「黄斑が剥がれていない段階で治療すれば、術後の視力回復が良好なことが多いですが、黄斑が剥がれてしまった場合は、視力が完全には戻らないことがあります。」(日本眼科学会「網膜剥離」)

6. 眼科ではどんな検査をするか

後部硝子体剥離で受診した場合も、硝子体が網膜を引っ張った際に網膜裂孔ができていないかを丁寧に調べるとされています。

ものの中心がゆがむ、中心が暗く欠けるといった見え方の変化については加齢黄斑変性で書いています。

7.【内科医の視点】「いつもの飛蚊症」との違いは「急な変化」

内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。資料を読むと、飛蚊症そのものは多くが加齢による変化で、慣れて気にならなくなることがほとんどとされています。一方で、受診の目安として繰り返し書かれているのは「急に」という言葉です。飛蚊症が急に増えた、光が頻繁に見えるようになった、視野が急に欠けた——こうした変化があれば、以前からの飛蚊症がある人でも眼科で調べてもらうことが勧められています。

もう一つは、痛みがないことです。網膜には痛みを感じる神経がないため、裂け目ができても剥がれても痛みはありません。痛くないから様子を見る、ではなく、見え方の変化で判断してください。年代ごとの目の検診の考え方は目の健康とアイフレイルの記事で書いています。

8. すぐ眼科を受診したいとき

できるだけ早く眼科を受診したいとき

・飛蚊症が急に増えた

・視界の端に光が走る(光視症)のが頻繁になった

・視野の一部が黒く欠ける、カーテンがかかったように見えにくい

・急に視力が落ちた

・強度近視がある、目を打った、眼の手術後で、上のような症状がある

最後に、この記事の要点をもう一度。

① 飛蚊症・光視症の多くは、後部硝子体剥離という加齢に伴う自然な変化

② 硝子体が網膜を強く引っ張ると、網膜裂孔や網膜剥離につながることがある

③ 急に飛蚊症が増えた・光が頻繁に見えるときは、できるだけ早く眼科へ

④ 網膜裂孔はレーザー光凝固術で網膜剥離への進行を防ぐ。網膜剥離は多くが手術

⑤ 痛みはない。黄斑が剥がれる前の治療が、視力回復のために大切

9. よくある質問

飛蚊症は病気ですか?

日本眼科学会によると、飛蚊症の多くは、眼の中のゼリー状の硝子体が加齢とともに網膜から離れる後部硝子体剥離によるもので、誰にでも起こりうる自然な変化です。後部硝子体剥離そのものは通常は治療を必要とせず、硝子体の濁りによる飛蚊症は残ることがあっても、時間とともに慣れて気にならなくなることがほとんどとされています。

どんなときに眼科を受診すればよいですか?

日本眼科学会は、急に飛蚊症が増えたり、光が頻繁に見えるようになった場合は、網膜裂孔や網膜剥離が起こっている可能性があるため、できるだけ早く眼科を受診することが大切としています。視野の一部が欠ける、カーテンがかかったように見えにくくなる、急に視力が落ちるといった症状も網膜剥離で起こります。

網膜に穴があいたり剥がれたりすると痛みますか?

日本眼科学会によると、網膜には痛みを感じる神経がないため、網膜裂孔でも網膜剥離でも痛みはありません。網膜裂孔は初期に自覚症状がほとんどなく、網膜剥離を起こしてから気づく場合もあるとされています。

網膜裂孔はどのように治療しますか?

日本眼科学会によると、主な治療はレーザー光凝固術で、裂け目の周囲をレーザーで焼き固めて網膜と下の組織を癒着させ、裂孔から網膜が剥がれるのを防ぎます。痛みはほとんどなく、外来で短時間に行うことが可能です。治療後も、新たな裂孔や再発がないか定期的な経過観察が必要とされています。

網膜剥離は手術すれば元通り見えるようになりますか?

日本眼科学会によると、手術により多くの症例で網膜を元の位置に戻すことができますが、重症例では複数回の手術が必要なこともあります。黄斑が剥がれていない段階で治療すれば術後の視力回復が良好なことが多い一方、黄斑が剥がれてしまった場合は、視力が完全には戻らないことがあるとされています。

参考にした主な資料

凪
なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した内容は、日本眼科学会の一般向け解説(監修:日本網膜硝子体学会)にもとづくもので、公開時点の情報です。飛蚊症が急に増えた、光が頻繁に走る、視野が欠ける、急に視力が落ちたといった場合は、痛みがなくてもできるだけ早く眼科を受診してください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。