1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| めまいは脳の病気 | 脳の病気によるめまいは比較的少数。めまいの病気でもっとも多いのは良性発作性頭位めまい症(耳の病気) |
| 突然聞こえなくなっても、様子を見ればいい | 突発性難聴は、発症早期に治療を始めたほうが聴力の経過が良好と報告されている。早期に耳鼻咽喉科へ |
| 耳鳴りは耳だけの問題 | 高血圧や糖尿病、疲れやストレス、睡眠不足、肩こりが耳鳴りを悪化させる |
| 年をとって聞こえにくいのは仕方がない | 難聴は認知症の予防できる因子の中で最大の危険因子ともいわれる。補聴器相談医に相談を |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
めまいの多くは耳の病気で、耳鼻咽喉科で診断と治療ができます。突然の難聴は早めに受診。そして、めまいに意識障害・言葉の障害・手足の麻痺・激しい頭痛を伴うときは、脳卒中の可能性があるので救急車を呼んでください。
2.【最優先】救急車を呼ぶべきめまい
「めまいの他に、意識障害、ことばの障害、運動麻痺、知覚麻痺、激しい頭痛などを伴う場合は脳卒中の可能性も考慮した検査が必要になります。救急車を呼ぶなどの対応をしてください。」(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「めまい・顔面神経麻痺」)
学会は、めまいがすると脳に異常が起きたのではないかと心配する人が多いものの、実際には脳の病気によるめまいは比較的少数だとしています。ただし、脳の中で体のバランスを保つのに重要な小脳や脳幹の出血や梗塞では、めまいが起こります。上のような症状を伴うときは、迷わず救急車を呼んでください。
3.【核心】めまいの代表的な病気
メニエール病の「聞こえ」は、めまいの前後に悪くなり、めまいがよくなるとともに回復することが多いとされています。
良性発作性頭位めまい症(もっとも多い)
学会によると、めまいの病気の中でもっとも多いのがこの病気です。寝返り、起き上がるとき、横になるときなど、頭の位置を変えたり動かしたりしたときに起こる回転性のめまいで、数秒から数十秒でおさまり、難聴や耳鳴りは伴いません。
原因は、内耳にある耳石器の耳石の一部がはがれて、半規管の中を浮遊し、頭の動きで移動するためです。耳鼻咽喉科では、目の動きを見ながら頭を動かしてめまいを誘発し、はがれた耳石の場所を特定します。多くの場合、はがれた耳石を元の位置に戻す「耳石置換法」でめまいを改善させることができるとされ、学会は早めに耳鼻咽喉科を受診するよう勧めています。
メニエール病
難聴、耳鳴り、耳のつまり感などの聞こえの症状を伴うめまいを繰り返す病気です。内耳のリンパ液が多すぎる状態(内リンパ水腫)で起こり、その誘因としてさまざまなストレスが関わっていると考えられています。意識がなくなる、手足がしびれるなど、脳の障害を思わせる症状は伴いません。診断と経過観察には聴力検査と眼振(目の動き)の検査が必要なので、耳鼻咽喉科を受診してください。治療は、生活指導と、内リンパ水腫を軽くする薬などです。
4. 突然の難聴は、早めの受診を
学会は、突然起こった原因不明の難聴を「突発性難聴」と定義しています。朝、目が覚めて気づくような突然の難聴のほか、耳鳴り、耳がふさがった感じ、めまいなどが出ることがあります。
「発症早期に治療を開始した方が聴力予後が良好であることが報告されており、早期に耳鼻咽喉科を受診し、検査を行い、治療に結びつけることが大切です。」(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の病気」)
- 原因はまだ不明。循環障害、ウイルス感染、自己免疫などが入り混じっていると推定されている
- 治療は副腎皮質ステロイド、血管拡張薬、ビタミン剤などの内服や点滴など。いずれの治療も有効性が確立しているわけではない
- 難聴やめまい以外に、ろれつが回らない、顔の感覚が鈍い、飲み込みにくいなどがあれば、脳梗塞などほかの病気を考える必要がある
- 脳梗塞や聴神経腫瘍と見分けるため、MRI検査が推奨されている
5. 耳鳴り:何が悪化させるのか
耳鳴りは、実際には音がしていないのに何かが鳴っているように聞こえる現象で、一般に難聴とともに出ることが多いとされています。本人にしか聞こえない耳鳴りの原因は、いまだに不明です。
「高血圧や糖尿病、疲れやストレス、睡眠不足、肩こりなどは増悪因子です。」(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の症状」)
急に起こった耳鳴りでは、まず難聴の原因となる病気の治療が行われます。慢性化した耳鳴りには、漢方薬や精神安定剤、循環改善薬、ビタミン剤などが使われますが、学会は確実に耳鳴りを軽くすることは難しいとしています。慢性期には、TRT(耳鳴り再訓練療法)や自律訓練法などの方法もあります。
高血圧や糖尿病、睡眠不足、肩こりが悪化させる要因に挙がっているのは、内科医として見逃せない点です(→家庭血圧、糖尿病予備軍、睡眠、首の痛み・肩こり)。
6. 聞こえにくさと、耳のつまり感
学会は、加齢性難聴は両方の耳が同じように長年かけて少しずつ聞こえにくくなる状態で、誰しもがいつかは経験するとしています。一方で、次のような難聴は、治療できる耳の病気の可能性があるので早めに耳鼻咽喉科を受診するよう勧めています。
- 片耳の難聴
- 急になった難聴、変化のある難聴
- 耳鳴りやめまいを伴う難聴
- 耳だれや耳の痛みを伴う難聴
耳がつまった感じは、耳あかや水、外耳炎(外耳)、かぜに伴う耳管の腫れや、加齢や体重減少で耳管が開きすぎた状態(中耳)など、外耳・中耳・内耳のどこに原因があっても起こるとされています。耳のかゆみは、ほとんどが外耳炎によるもので、学会は、外耳の皮膚は刺激に弱く、耳掃除などでも炎症を起こしやすいと書いています。
7.【内科医の視点】難聴は認知症の最大の危険因子
内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。学会は、聞こえにくさについて次のように書いています。
「難聴は認知症の予防可能な因子の中で最大の危険因子ともいわれており、難聴を放置しておくと認知症やフレイルの原因となりますので注意が必要です。」(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の症状」)
学会は、補聴器の効果が期待できることが多いので、「難聴」と「補聴器」の両方を熟知した学会認定の補聴器相談医に相談するよう勧めています。聞こえにくさが気になったら、まず耳鼻咽喉科で相談してください。認知症の予防については認知症の予防の記事で書いています。
8. 受診したほうがよいとき
救急車を呼んでほしいとき
・めまいに加えて、意識がおかしい、言葉が出にくい・ろれつが回らない、手足が動かない・しびれる、激しい頭痛がある
早めに耳鼻咽喉科を受診したいとき
・突然聞こえが悪くなった(朝起きて気づいた、など)
・寝返りや起き上がるときに、ぐるぐる回るめまいが起こる
・難聴・耳鳴り・耳のつまり感を伴うめまいを繰り返す
・片耳の難聴、耳だれや耳の痛みを伴う難聴
・聞こえにくさが気になる(補聴器相談医に相談)
最後に、この記事の要点をもう一度。
① めまいの病気でもっとも多いのは、頭の位置で起こる良性発作性頭位めまい症。耳石を戻す方法がある
② 突然の難聴は、早く治療を始めるほうが聴力の経過がよい。早めに受診
③ 耳鳴りは、高血圧・糖尿病・ストレス・睡眠不足・肩こりで悪化する
④ 難聴は認知症の予防できる因子の中で最大の危険因子。補聴器相談医へ
⑤ めまいに意識障害・言葉の障害・麻痺・激しい頭痛を伴えば救急車
9. よくある質問
朝起き上がるとき、ぐるぐる回るめまいがします。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会によると、寝返りや起き上がるとき、横になるときなど、頭の位置で起こる回転性のめまいで、数秒から数十秒でおさまり、難聴や耳鳴りを伴わないものは良性発作性頭位めまい症で、めまいの病気の中でもっとも多いとされています。はがれた耳石を元の位置に戻す方法でめまいを改善させることができる場合が多いため、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
めまいがすると、脳の病気が心配です。
学会によると、実際には脳の病気によるめまいは比較的少数です。ただし、めまいに加えて意識障害、ことばの障害、手足の麻痺やしびれ、激しい頭痛などを伴う場合は、脳卒中の可能性も考えた検査が必要で、救急車を呼ぶなどの対応をするよう勧められています。
朝起きたら、片方の耳が聞こえにくくなっていました。
学会によると、突然起こった原因不明の難聴は突発性難聴と呼ばれ、目が覚めて気づくような難聴のほか、耳鳴りや耳がふさがった感じ、めまいを伴うことがあります。発症早期に治療を始めたほうが聴力の経過がよいと報告されているため、早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。
耳鳴りを悪化させるものはありますか?
学会は、高血圧や糖尿病、疲れやストレス、睡眠不足、肩こりなどを耳鳴りの悪化因子として挙げています。耳鳴りは一般に難聴とともに出ることが多く、急に起こった耳鳴りでは、まず難聴の原因となる病気の治療が行われます。
聞こえにくいのは年のせいだと思っていました。放っておいてもいいですか?
学会によると、難聴は認知症の予防できる因子の中で最大の危険因子ともいわれ、放置すると認知症やフレイルの原因となるので注意が必要です。補聴器の効果が期待できることが多いため、難聴と補聴器の両方を熟知した学会認定の補聴器相談医に相談するよう勧められています。
参考にした主な資料
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳鼻咽喉科・頭頸部外科が扱う代表的な病気」:「めまい・顔面神経麻痺」「耳の病気」「耳の症状」