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からだの変化

妊娠高血圧症候群とは
——妊婦さんの10〜20人に1人。家庭血圧の目安と、すぐ連絡したい症状

妊婦健診で血圧が高いと言われた方、これから妊娠・出産を考えている方に向けた記事です。
日本産科婦人科学会によると、妊娠高血圧症候群は妊娠中に高血圧がみられる病気で、以前は妊娠中毒症と呼ばれ、日本で妊産婦が亡くなる原因の第1位だったこともあります。いまは管理が進歩しましたが、脳出血の原因になるなど、今でも注意が必要です。
発症した方は、出産後も将来の生活習慣病のリスクが高いことが分かっています。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年10月26日 読了:約8分

1. 先に結論

よくある思い込み資料の記述
むくみがなければ大丈夫妊娠高血圧症候群に特徴的な症状はない。早期発見には定期的な妊婦健診が最も大切
病院で高いのは緊張のせい白衣高血圧の妊婦さんも多いので、家庭で血圧を測る。家庭血圧が140/90mmHgを超えたら要注意、160/110mmHgを超えたら直ちに産婦人科へ連絡
薬で下げれば治まる降圧薬などは根本的な治療にはならない。危険と判断されれば、赤ちゃんが未熟な時期でも出産で妊娠を終えることがある
出産したら終わり発症した方は、将来高血圧症・糖尿病・脂質異常症になるリスクが高い

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

早期発見と早期治療には、定期的に妊婦健診を受けることが最も大切です。家庭で血圧を測るよう言われたら、160/110mmHgを超えたら直ちに産婦人科へ連絡してください。これまでにない頭痛、ろれつが回らない、手足が動かしにくい、ふだんと違う胃の痛みや吐き気も、すぐに連絡するサインです。

2. どんな病気か——原因は胎盤にあるらしい

日本産科婦人科学会によると、妊娠高血圧症候群の原因は、今もよく分かっていません。ただ、赤ちゃんに栄養や酸素を届ける胎盤がカギを握っているようです。

3. なりやすい人

学会によると、妊娠高血圧症候群は妊婦さんの10〜20人に1人の割合で起こるといわれています。リスクが高いのは、次のような方です。

分類妊娠高血圧症候群になるリスクが高い方
もともとの病気・体質糖尿病・高血圧・腎臓の病気がある/肥満がある/家族に高血圧の方がいる
年齢年齢が高い(40歳以上)
今回の妊娠双子などの多胎妊娠/初めてのお産(初産婦)
これまでの妊娠以前に妊娠高血圧症候群になったことがある

4.【核心】診断の基準と、家庭血圧

学会によると、妊娠中に上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、または下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上になった場合に、妊娠高血圧症候群と診断します。上が160mmHg以上、または下が110mmHg以上は重症で、厳重な管理が必要です。

妊娠中の血圧の目安(上/下) 日本産科婦人科学会「妊娠高血圧症候群」をもとに整理 160/110mmHg以上 140/90mmHg以上 140/90mmHg未満 重症。厳重な管理が必要 家庭血圧でこの値を超えたら、直ちに産婦人科へ連絡 妊娠高血圧症候群と診断。安静が必要 家庭血圧でこの値を超えたら要注意 定期的な妊婦健診で確認を続ける 出典:日本産科婦人科学会「妊娠高血圧症候群」をもとに作図。上か下のどちらかが基準を超えれば該当

家庭で血圧を測るかどうか、測り方は、主治医の指示に従ってください。

学会は、病院やクリニックで測ると血圧が高くなる白衣高血圧の妊婦さんも多いので、そのような方には家庭で血圧を測ってもらう(家庭血圧測定)と書いています。

「家庭血圧が140/90mmHgを越えたら要注意であり、もし160/110mmHgを越えるようなら直ちに産婦人科へご連絡ください。」(日本産科婦人科学会「妊娠高血圧症候群」)

家庭での血圧の測り方そのものについては、家庭血圧の記事で書いています。

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この章で扱った家庭血圧を測るための上腕式血圧計です。日本産科婦人科学会は、白衣高血圧の妊婦さんには家庭で血圧を測っていただきます(家庭血圧測定)としています。

※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。ここで紹介しているのは、タニタの上腕式血圧計 BP-222(医療機器認証番号 227AABZX00085000)です。この型番は、日本高血圧学会の「血圧計の試験結果に関する集計」(2025年)に、臨床試験の規格による試験結果とともに掲載されています。メーカーによると、直近2回の測定値の平均を表示する機能と、60回分の記録機能があります。腕の太さによってはカフが合わないことがあるので、購入前に確認してください。家庭で測るかどうか、いつ測るかは主治医の指示に従い、160/110mmHgを超えたら直ちに産婦人科へ連絡してください。

5. 4つの種類と、発症の時期

種類学会の説明
妊娠高血圧妊娠20週以降に初めて高血圧になり、出産後12週までに軽快する。タンパク尿はない
妊娠高血圧腎症妊娠20週以降に初めて高血圧になり、タンパク尿も出る。タンパク尿がなくても、肝臓や腎臓の機能障害、子癇発作、血液凝固の異常、赤ちゃんの発育不全などがあれば、この診断になる
加重型妊娠高血圧腎症妊娠前または妊娠20週より前から高血圧だった方が、20週以降に妊娠高血圧腎症の症状を発症した場合など
高血圧合併妊娠妊娠前または妊娠20週より前から高血圧で、出産まで加重型の症状が出なかった場合

発症の時期でも分けられ、妊娠34週より前に発症する早発型と、34週より後の遅発型があります。とくに早発型は重症化しやすいといわれています。

6. すぐ産婦人科に連絡したい症状

学会によると、妊娠高血圧症候群に特徴的な症状はありませんが、むくみ、頭痛、めまい、目が見えにくいといった症状には要注意です。

すぐに産婦人科へ連絡してほしい症状(学会の記述)

・これまで経験したことがないような頭痛

・ろれつが回りにくい、手足が動きにくい

・ふだんと違う胃の痛みや吐き気

7. お母さんと赤ちゃんの合併症

重症になったときに起こりうること
お母さんけいれん発作(子癇)、脳出血、肝臓や腎臓の機能障害、肝機能障害・溶血・血小板減少が同時に起こるHELLP症候群、肺に水がたまり呼吸が苦しくなる肺水腫
赤ちゃん発育の遅れ(胎児発育不全)、状態の悪化(胎児機能不全)、胎盤が子宮からはがれる(常位胎盤早期剥離)、ときには胎児死亡

学会は、妊娠高血圧症候群はお母さんと赤ちゃんの生命に関わる、とても危険な病気だとしています。

8. 治療と、予防

予防について、学会は、早期発見と早期治療には定期的に妊婦健診を受けて、適切な産科管理を受けることが最も大切だとしています。海外では、以前の妊娠で妊娠高血圧腎症になった方に、次の妊娠の初期からアスピリンを使って再発を防ごうという試みがあるとも紹介しています。

9.【内科医の視点】出産後も、血圧と体重を

内科医としていちばん伝えたいのは、学会が最後に書いているこの点です。妊娠高血圧症候群を発症した方は、将来、高血圧症や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病を発症するリスクが高いことが分かっています。

学会は、妊娠・出産を終えたあとも、過剰なカロリーや塩分を控え、定期的に運動し、体重を適正にコントロールすることで、自分の健康を守ってほしいとしています。メタボリック症候群と肥満についてはメタボと肥満症の記事で書いています。

10. 連絡・受診したいとき

資料にあるもの

・家庭血圧が160/110mmHgを超えた(直ちに産婦人科へ連絡)

・家庭血圧が140/90mmHgを超えた(要注意)

・これまでにない頭痛、ろれつが回りにくい、手足が動きにくい、ふだんと違う胃の痛みや吐き気(すぐに連絡)

・出産後も高血圧がなかなか軽快しない(フォローアップを続ける)

最後に、この記事の要点をもう一度。

① 妊娠中に140/90mmHg以上。妊婦さんの10〜20人に1人。160/110以上は重症

② 原因ははっきりしないが、胎盤がカギを握っているらしい

③ 特徴的な症状はない。妊婦健診と、必要に応じて家庭血圧

④ 頭痛・ろれつ・手足・胃の痛みや吐き気はすぐ連絡

⑤ 出産後も生活習慣病のリスクが高い。カロリー・塩分・運動・体重を

11. よくある質問

妊娠高血圧症候群とは、どんな病気ですか?

日本産科婦人科学会によると、妊娠中に高血圧がみられる病気で、以前は妊娠中毒症と呼ばれていました。上の血圧が140mmHg以上、または下の血圧が90mmHg以上になった場合に診断し、160mmHg以上または110mmHg以上は重症です。妊婦さんの10〜20人に1人の割合で起こるといわれています。

どんな人がなりやすいですか?

学会によると、もともと糖尿病や高血圧、腎臓の病気がある、肥満がある、40歳以上、家族に高血圧の方がいる、双子などの多胎妊娠、初めてのお産、以前に妊娠高血圧症候群になったことがある、といった方はリスクが高いとされています。

家で血圧を測ったほうがいいですか?

学会は、病院やクリニックで測ると血圧が高くなる白衣高血圧の妊婦さんも多いので、そのような方には家庭で血圧を測ってもらうとしています。家庭血圧が140/90mmHgを超えたら要注意、160/110mmHgを超えるようなら直ちに産婦人科へ連絡してください。測るかどうかは主治医の指示に従ってください。

どんな症状が出たら、すぐ連絡すべきですか?

特徴的な症状はありませんが、むくみ、頭痛、めまい、目が見えにくいといった症状には要注意です。とくに、これまで経験したことがないような頭痛、ろれつが回りにくい、手足が動きにくい、ふだんと違う胃の痛みや吐き気を感じたら、すぐに産婦人科へ連絡してください。

出産すれば、血圧は元に戻りますか?

学会によると、高血圧は出産後に改善することがほとんどですが、なかなか軽快しない方もいるので、注意深いフォローアップが必要です。また、発症した方は将来、高血圧症や糖尿病、脂質異常症になるリスクが高いことが分かっているため、出産後も過剰なカロリーや塩分を控え、定期的に運動し、体重を適正に保つよう勧められています。

予防する方法はありますか?

学会は、早期発見と早期治療のために、定期的に妊婦健診を受けて適切な産科管理を受けることが最も大切だとしています。海外では、以前の妊娠で妊娠高血圧腎症になった方に、次の妊娠の初期からアスピリンを使って再発を防ごうという試みがあると紹介されています。

参考にした主な資料

凪
なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した内容は、日本産科婦人科学会の一般向け解説「妊娠高血圧症候群」にもとづくもので、公開時点の情報です。妊娠中の血圧の測り方や受診のタイミングは、主治医の産婦人科医の指示に従ってください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。