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MEDICALLY REVIEWED BEAUTY & HEALTH
体型と代謝

たんぱく質は足りているか
——子どもから高齢者まで、必要な量と「運動とセット」の理由

中学生・高校生の女子に必要なたんぱく質は1日55g。成人女性の50gより多いことを、ご存じでしたか。
そして、もうひとつ。日本人の平均摂取量は、実は推奨量を上回っています。それなのに筋肉は減っていく。なぜか——答えは「量」ではなく「配分」と「運動」にありました。
厚生労働省は、こう明記しています。「運動不足は、体たんぱく質異化状態を招き、適度の運動は食事性たんぱく質の利用を高めます」。つまり、動かなければ、食べたたんぱく質は活きません。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年8月8日 読了:約19分

1. 先に結論

論点 この記事で言えること
成人の推奨量 男性65g/女性50g(1日あたり・18〜64歳)
成長期 中高生の女子は55g=成人女性より多い。15〜17歳の男子は65gで成人男性と同じ
日本人の実際 平均では足りています。20歳以上の平均は男性78.0g/女性65.9g。問題は総量ではなく配分と運動
運動との関係 厚労省が明記——「運動不足は、体たんぱく質異化状態を招き、適度の運動は食事性たんぱく質の利用を高めます」
上限 多いほど筋肉が増えるわけではありません。体重1kg当たり1.3g/日を超えると効率が落ちるとされています
高齢期 食べる総量が減るなか、目標量(総エネルギーに占める割合)の下限は15%に引き上げられています
配分 1,741人を3年追跡した研究で、食事ごとに均等に配分している人ほど筋力が強いという関連が報告されています
この記事でいちばん伝えたいこと

「たんぱく質が足りない」という言葉を、いろいろな場所で見かけます。でも数字を確かめると、日本人の平均摂取量は推奨量を上回っています
では、なぜ筋肉は減っていくのか。答えは「食べ方」と「動き方」のほうにありました。同じ量を食べていても、朝を抜いて夜に偏れば不利になる。そして運動がなければ、食べたたんぱく質は筋肉として使われにくくなる。
プロテインを買い足す前に、確かめられることがあります。この記事は、そのためのものです。

2. 何g必要なのか——年代別の答え

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の推奨量です。2025年度から2029年度まで使われる、現行の基準です。

たんぱく質の推奨量(g/日)/食事摂取基準2025年版 年齢 男性 女性 1〜2歳2020 3〜5歳2525 6〜7歳3030 8〜9歳4040 10〜11歳4550 12〜14歳6055 15〜17歳6555 18〜29歳6550 30〜64歳6550 65歳以上6050 ※12〜17歳の女子(55g)は、成人女性(50g)より多く必要とされています
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書「たんぱく質の食事摂取基準」より作成。

まずここを押さえてください。成人は男性65g、女性50g。これが出発点です。

そして、この表にはもう一つ大事な指標があります。目標量——総エネルギーに占めるたんぱく質の割合です。こちらは年齢で変わります。

年齢目標量(総エネルギーに占める割合)
1〜49歳13〜20%
50〜64歳14〜20%
65歳以上15〜20%

下限が、年齢とともに上がっていきます。この意味は6章で詳しくお話しします。ここでは「歳をとるほど、食事に占めるたんぱく質の割合を高めるよう設計されている」とだけ覚えておいてください。

なお上限は全年齢で20%エネルギーです。2025年版はこう説明しています——「成人における各種の代謝変化への影響や、高齢者における腎機能に好ましくない影響を予防する観点などから、1歳以上の全年齢区分において20%エネルギーとした」。

3. 【意外】日本人は、平均では足りている

ここが、この記事でいちばん意外に思われるところかもしれません。

令和6年国民健康・栄養調査による、実際の摂取量です。

推奨量と、実際の摂取量(20歳以上の平均) 男性 推奨量 65g 実際 78.0g 女性 推奨量 50g 実際 65.9g 年代別(男女計):20代 69.5g/30代 69.9g/40代 69.3g/50代 71.9g/60代 73.7g         70代 74.0g/80歳以上 68.4g どの年代も、平均では推奨量を下回っていません
厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」より作成。1人1日当たり平均値・全国補正値。

20歳以上の平均は男性78.0g、女性65.9g。推奨量(男性65g、女性50g)を、どちらも上回っています。年代別に見ても、平均が推奨量を下回る年代はありません。

ですから、「日本人はたんぱく質不足だ」という言い方は、平均で見るかぎり正確ではありません。この点は、はっきりお伝えしておきたいと思います。サプリメントの記事でも書きましたが、不安を作ってから商品を差し出すという順序には、いつも注意が必要です。

では、なぜ筋肉は減っていくのか

ここからが本題です。平均が足りていても、次の3つの問題が残ります。

問題内容
①平均は個人を語らない 平均が足りていても、足りない人は必ずいます。65歳以上で低栄養傾向(BMI 20以下)の人は男性12.2%、女性22.4%。85歳以上でその割合が高くなります
②配分が偏っている 同じ総量でも、朝が軽く夜に偏る食べ方は不利である可能性が指摘されています(7章)
③運動が足りない これが最大の問題です。動かなければ、食べたたんぱく質は筋肉として使われにくくなります(5章)

つまり——問われているのは「量」ではなく「使われ方」なのです。

4. 成長期——大人より多く必要な時期がある

2章の図をもう一度見てください。驚かれた方も多いはずです。

成長期の推奨量(1日あたり)

男子:12〜14歳 60g/15〜17歳 65g(=成人男性と同じ)
女子:12〜14歳 55g/15〜17歳 55g(=成人女性の50gより多い

さらに10〜11歳の女子は50g。この時点ですでに、成人女性と同じ量が必要とされています。

「子どもだから少なくていい」は成り立ちません。体が作られている時期だからこそ、大人と同じか、それ以上に必要なのです。

これは実務的にも大事な話です。中高生の時期は——

睡眠の記事でも書きましたが、この年代は成長のために大人より多くを必要とするのに、生活は大人より不規則になりやすいという構造を抱えています。睡眠も、たんぱく質も、同じ形をしています。

保護者の方へ。細かく計算する必要はありません。「朝・昼・夕のそれぞれに、主菜(肉・魚・卵・大豆製品)が1品あるか」——これだけを見てください。朝がパンとコーヒーだけになっていないか。それが確認できれば十分です。
そして、この時期に「食べること」と「体を動かすこと」が習慣になっているかどうかは、その後何十年にも効いてきます。5章でお話しするとおり、たんぱく質は運動とセットで初めて活きるからです。

5. 【核心】30〜40代の落とし穴——動かないと、活きない

ここが、この記事の芯です。

30代・40代の方の多くは、たんぱく質の平均摂取量が推奨量を上回っています(男女計で30代69.9g、40代69.3g)。それなのに、40代からの「痩せにくい」の正体で書いたとおり、筋肉は静かに減っていきます。

なぜか。厚生労働省の記述を、そのまま引用します。

運動不足は、体たんぱく質異化状態を招き、適度の運動は食事性たんぱく質の利用を高めます。一方、激しい運動は、たんぱく質分解を亢進させることから、運動強度に応じてたんぱく質必要量は U字型を描くと言われています」

——厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」INFORMATION 8「身体活動とエネルギー・栄養素について」

「異化」とは、体のたんぱく質が分解される方向のことです。運動が足りないと、体は「筋肉を維持しなくていい」と判断する方向に傾きます。そして「適度の運動は食事性たんぱく質の利用を高める」——つまり、動くことで、食べたたんぱく質が筋肉に向かいやすくなる。

この一文が意味するのは、こういうことです。

順序を間違えないでください

❌ たんぱく質を増やす → 筋肉が増える
⭕ 体を動かす → 食べたたんぱく質が筋肉に向かう

運動のない生活にプロテインを足しても、期待した結果にはなりにくい。逆に、運動を始めれば、いま食べている量のままでも変わる可能性があります。

証拠を見ておきます

49の研究・1,863人を統合したメタ解析(Br J Sports Med, 2018)は、たんぱく質の補給が何をもたらすかを調べました。結果は——

いずれも統計的に有意でした。ただし——この研究の対象は「6週間以上のレジスタンス運動(筋トレ)を行っている人」です。論文の題名自体が「レジスタンス運動によって得られる筋肉量と筋力の増加に対する、たんぱく質補給の効果」となっています。運動が前提にある話なのです。

さらに、この研究は正直な限界も示しています。たんぱく質補給の効果は加齢とともに小さくなり(1歳につき−0.01kg、p=0.002)、筋トレ経験者でより大きかった(+0.75kg)。つまり「早くから始めた人ほど有利」ということでもあります。

30〜40代で運動不足の方へ

「忙しくて運動する時間がない」——本当によく分かります。ですが、国が求めている水準は、思ったより現実的です。

項目成人(18〜64歳)への推奨
身体活動3メッツ以上の身体活動を週23メッツ・時以上。具体的には歩行またはそれ以上の強度を1日60分以上(1日約8,000歩以上に相当)
運動3メッツ以上の運動を週4メッツ・時以上。具体的には息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上
筋力トレーニング週2〜3日
全体の方向性:「個人差を踏まえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組む。今よりも少しでも多く身体を動かす」

そして、ここが重要です。同ガイドは筋力トレーニングをこう定義しています——「筋トレマシンやダンベルなどを使用するウエイトトレーニングだけでなく、自重で行う腕立て伏せやスクワットなどの運動も含まれる」

ジムに通う必要はありません。スクワットでいいのです。週2〜3日、自宅で。

6. 高齢期——食べる量が減るのに、割合は上げる

高齢の方、そしてご家族に読んでいただきたい章です。

なぜ「割合」なのか

2章で見たとおり、目標量の下限は49歳まで13%、50〜64歳で14%、65歳以上で15%と上がっていきます。食事摂取基準2025年版の説明を引きます。

「目標量の下限は、推奨量以上であり、かつ、高齢者においてはフレイル等の発症予防も考慮した値であることが望まれる。そこで、フレイルの発症予防を目的とした量を算定することはできないものの、高齢者については推奨量より少し多めに摂取した方がフレイルの発症を予防できる可能性を考え、他の年齢区分の値よりも引き上げた

——日本人の食事摂取基準(2025年版)たんぱく質〈概要〉

ここに、高齢期特有の事情があります。歳をとると、食べる総量そのものが減ります。同じ50gを食べていても、総エネルギーが減れば、たんぱく質の「割合」は自動的に下がります。だから割合のほうを引き上げる——そういう設計なのです。

実際の目標量は、思ったより多い

厚生労働省が高齢者向けに作成したパンフレット「食べて元気にフレイル予防」には、活動量別の目標量が示されています。これが非常に実用的です。

高齢者のたんぱく質目標量(g/日)/活動量別 対象 低い(座って過ごす) 普通 高い 65〜74歳 男性 77〜103g 90〜120g 103〜138g 65〜74歳 女性 58〜78g 69〜93g 79〜105g 75歳以上 男性 68〜90g 79〜105g 75歳以上 女性 53〜70g 62〜83g ※「普通」=座って過ごすことが多いが、家事や職場への移動、買物、軽いスポーツなどを行っている ※参照体位にもとづく参考値。腎機能が低下しているなど不安がある方はかかりつけ医にご相談ください 推奨量(女性50g)より、目標量はかなり多くなります
厚生労働省「食べて元気にフレイル予防」(食事摂取基準を活用した高齢者のフレイル予防事業)より作成。

注目していただきたいのは、65〜74歳の女性で活動量が「普通」なら、目標量は69〜93gだという点です。推奨量の50gと比べると、ずいぶん多く感じられるはずです。

これは矛盾ではありません。推奨量(50g)は「不足しないための最低ライン」、目標量は「総エネルギーの15〜20%」から計算した幅だからです。両方を知っておくと、目安が立てやすくなります。

証拠はどこまで確かか——正直に書きます

「高齢者はたんぱく質を多めに」というのは、よく聞く話です。では根拠はどこまで固いのか。食事摂取基準2025年版の記述を引きます。

「フレイル又はフレイルの前段階であるプレフレイルを有する者を対象に、プレフレイルからフレイルへの移行やフレイルの重症化を検証したコホート研究があるが、結果は一貫していない。このように、研究の数・質ともにまだ十分でなく、フレイルを改善させるためのたんぱく質摂取量に関して結論を出すことは難しい

——同 たんぱく質 4-1 フレイル

国の基準そのものが、こう書いています。ですから「高齢者は◯g摂れば筋肉が保てる」という言い切りは、現時点ではできません。

一方で、質の高い研究も紹介されています。

まとめると——「はっきり証明された」とは言えないが、複数の質の高い研究が同じ方向を指している。これが現在地です。そして高齢期は、足りないことのリスクのほうが、多めに摂ることのリスクより大きい局面です(腎機能に問題がある場合を除きます。11章参照)。

7. プランニング①——1日をどう配分するか

ここからが実務です。「どう計画すればいいか」にお答えします。

いちばん大事なのは、3食に分けること

カナダで行われた大規模な追跡研究があります。NuAge研究——67〜84歳の男性827人・女性914人、合計1,741人を3年間追跡したものです(Am J Clin Nutr, 2017)。

この研究は、たんぱく質を「1日にどれだけ食べたか」ではなく、「食事ごとにどう配られていたか」を調べました。結果は——

研究の結果

たんぱく質の摂取が食事ごとにより均等に配分されている人ほど、筋力が強いという関連が認められました(総摂取量とは独立して)。

ただし正直に付け加えると、3年間の身体機能の低下そのものとは関連しませんでした。論文の題名にも「but not with 3-y physical function decline」と明記されています。筋力との関連は見えたが、機能低下を防ぐところまでは示されなかった——それがこの研究の到達点です。

厚生労働省のe-ヘルスネットも、同じ方向の記述をしています。

1日1食や2食などの偏りのある食生活ではなく、1日3食を規則正しく決まった時間に摂り、さらに3食毎にバランスよく、たんぱく質を多く含む食品を摂取することを心がけることが、筋肉量の維持に繋がります

——e-ヘルスネット「高齢者の低栄養予防」

実際の配分イメージ

日本の食事は、たいてい朝が軽く、夜が重い形をしています。朝はパンとコーヒー、昼は麺類、夜にしっかり——という方は多いはずです。

これを、こう変えます。

時間よくある形変えたい形
パンとコーヒーだけ/何も食べない 主菜を1品足す(卵、納豆、ヨーグルト、チーズ、豆乳など。手間の少ないもので構いません)
麺類だけ/丼ものだけ 主菜のある定食型に。難しければ、麺に卵やゆで卵、豆腐、サラダチキンを足す
ここに集中している ここは変えなくて構いません。朝と昼に「寄せる」のが目的です

総量を増やす必要はありません。いまの量のまま、朝と昼に寄せる——それだけで配分は変わります。むしろ夜だけ増やすと、総量が増えるわりに効果が上がりにくい可能性があります。

8. プランニング②——何をどう組み合わせるか

「主食・主菜・副菜」で考える

細かい計算をしなくても済む、いちばん実用的な考え方です。厚生労働省の資料で使われている枠組みを紹介します。

区分主な役割食品
主食炭水化物の主な供給源ご飯、パン、麺類
主菜たんぱく質の主な供給源肉、魚、卵、大豆・大豆製品
副菜ビタミン、ミネラル、食物繊維の主な供給源野菜など

やることは、ひとつだけです。「毎食、主菜が1品あるか」を見る。グラム計算より、これがずっと続きます。

食品ごとのおおよそのグラム数(卵1個で何gか、など)は、40代からの「痩せにくい」の正体に目安を挙げてあります。ただし製品による差が大きいので、あくまで「感覚をつかむため」の数字としてお使いください。

忙しい人ほど落ちやすい落とし穴

e-ヘルスネットは、外食・中食(持ち帰り弁当や惣菜)について、実務的な注意を書いています。

そして、間違えやすい点も指摘されています。

「外食で料理を組み合わせる場合、サイドメニューの中に冷奴や卵焼き、鶏唐揚げなどが小鉢で提供されている場合がありますが、これらは主にたんぱく質の供給源で、副菜としての組み合わせにはなりませんので気を付けてください」

——e-ヘルスネット「外食・中食の上手な活用法」

逆に言えば——冷奴や卵焼きを足すことは、たんぱく質を足すことになります。「副菜が足りないとき」と「主菜が足りないとき」で、選ぶものが違うということです。

食べる量が減ってきた方の工夫

高齢期や、食欲が落ちているときの現実的な工夫です。

そして、いちばん大事なことを。「食べられない」が続くときは、工夫の問題ではありません。口の問題、薬の副作用、飲み込みの問題、うつなど、原因が別にあることがあります。便秘の記事でも書いたとおり、本人が言わないことは、周りが記録するしかありません。

9. 運動をどう組み合わせるか

5章で見たとおり、たんぱく質は運動とセットで初めて活きます。年代別の推奨を整理します。

年代推奨(身体活動・運動ガイド2023)
こども 身体を動かす時間が少ないこどもには、何らかの身体活動を少しでも行うことを推奨。
(参考:WHOガイドラインでは、中強度以上の身体活動を1日60分以上、筋肉・骨を強化する身体活動を週3日以上、スクリーンタイムを減らす)
激しすぎる運動やオーバーユース(使いすぎ)にも注意
成人 歩行またはそれ以上の強度を1日60分以上(約8,000歩以上)/息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上筋力トレーニングを週2〜3日
高齢者 歩行またはそれ以上の強度を1日40分以上(約6,000歩以上)/筋力・バランス・柔軟性など多要素な運動を週3日以上筋力トレーニングを週2〜3日(多要素な運動に含めてもよい)
座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように

全年代に共通する方向性は、ガイドの言葉どおりです——「個人差を踏まえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組む。今よりも少しでも多く身体を動かす」

早く始めるほど有利、という話

5章で紹介したメタ解析は、たんぱく質補給の効果が加齢とともに小さくなることを示していました。同時に、筋トレの経験がある人でより大きいことも。
つまり——30代・40代で運動の習慣を作っておくと、その後の投資効率が変わります。「歳をとってからやればいい」ではなく、「早く始めた人が有利」なのです。骨密度の記事で書いた「骨は20歳がピーク」と、同じ構造をしています。

10. プロテインは必要か——「上限」の話

ここまで読まれた方は、もうお分かりだと思います。それでも、はっきり書いておきます。

多いほど増える、ではありません

厚生労働省の身体活動・運動ガイド2023は、ポイントとして次を挙げています。

総たんぱく質摂取量が多いほど筋肉量が直線的に増えるものではないため、身体活動量に応じて、たんぱく質を摂取することが重要である。

本文ではこう説明されています。系統的レビューによると、総たんぱく質摂取量が体重1kg当たり0.1g/日増加すると、2〜3か月で筋量0.39kgの増加が期待できる。一方、体重1kg当たり1.3g/日を超えると筋量増加の効率が悪くなり、総たんぱく質摂取量と筋量の変化の間は直線的とまでは言えない。「必要な量以上に摂取することは腎機能を始めとする健康障害のリスクが高くなる可能性がある」

先ほどのメタ解析(Br J Sports Med, 2018)も、同じ方向の結論を出しています——「たんぱく質摂取量が1日あたり体重1kg当たり1.62gを超えると、筋トレによる除脂肪量の増加はそれ以上得られなかった」

そして食事摂取基準2025年版は、こう書いています。

「(推奨量以上の摂取により、他の健康指標に対し有益な影響を得られるという根拠が乏しいことが報告されていることから、)上限のないたんぱく質の摂取が健康増進に有益な効果をもたらすわけではない点には注意が必要である

——日本人の食事摂取基準(2025年版)たんぱく質

目安を計算してみます

体重別の「効率が落ち始める目安」(1.3g/kg/日)

体重50kg:約65g/体重60kg:約78g/体重70kg:約91g

3章で見た日本人の平均摂取量は、男性78.0g・女性65.9g。つまり多くの方は、すでにこの目安の近くにいます。ここからさらにプロテインを足すことの上積みは、期待するほど大きくない可能性があります。

では、プロテインに意味はないのか

そうではありません。整理するとこうなります。

こういう場合考え方
筋トレを継続していて、食事だけでは届かない 使う場面です。メタ解析が効果を示したのは、この条件でした
食が細く、食事だけでは目標量に届かない 補助として現実的です。高齢期はとくに、量を食べられないことのほうが問題になります
運動はしていないが、とりあえず飲んでいる 先に運動を。「運動不足は体たんぱく質異化状態を招く」——順序が逆になっています
食事で足りているのに、さらに足している 上積みは限定的です。同じお金を、続けられる運動の環境(靴、ジム、時間)に使うほうが確実です

サプリメントの記事で使った物差しが、ここでも効きます。「その商品でなければ得られないものか」「同じお金でもっと確かなものが買えないか」。たんぱく質は、肉・魚・卵・大豆製品という、どこにでもある食品から摂れます。

11. 注意が必要な方へ

たんぱく質を増やす前に、相談していただきたい方

厚生労働省の身体活動・運動ガイド2023は、こう記しています。

慢性腎臓病(CKD)においては、たんぱく質摂取が腎機能の低下を促進させる危険性があるため、一般的に腎機能が低下している場合は、たんぱく質制限が行われます。また、高血圧症や糖尿病等の疾患を有している者や高齢者においては、潜在的に腎機能が低下している可能性もあることから、かかりつけの医師に相談することが必要です。

つまり——腎臓の病気がある方/高血圧や糖尿病のある方/高齢の方は、自己判断でたんぱく質を増やす前に、一度相談してください。健診結果のクレアチニンやeGFRの欄が、その手がかりになります。

なお、食事摂取基準2025年版は耐容上限量(これ以上摂ってはいけないという量)を設定していません。理由は「基準を設定し得る明確な根拠となる報告が十分ではないこと」です。「上限が決まっていない」は「いくらでも大丈夫」という意味ではありません。むしろ、判断材料が足りないということです。

また同基準は、「特定の疾患の管理を目的としてたんぱく質摂取量の制限や多量摂取が必要な場合は目標量ではなく、そちらを優先すべきである」としています。治療のために制限されている方は、この記事の数字ではなく、主治医の指示に従ってください。

12. 今日からできること

  1. 自分の推奨量を知る。成人男性65g、成人女性50g。中高生の女子は55g。65歳以上は目標量で考える(6章の図)
  2. 朝食に主菜を1品足す。卵1個、納豆1パック、ヨーグルト——手間の少ないもので構いません。総量を増やすのではなく、朝と昼に寄せるのが目的です
  3. 毎食「主菜があるか」だけ見る。グラム計算は要りません。丼ものや麺類だけの食事が続いていないか
  4. 筋力トレーニングを週2〜3日。スクワットや腕立て伏せで構いません。これがないと、食べたたんぱく質が活きません
  5. 1日8,000歩を目安に(高齢の方は6,000歩)。届かなくても「今より少しでも多く」
  6. ご家族の食事を気にかける。とくに高齢の方、部活動をしている中高生、ひとり暮らしの方
  7. 腎機能に不安があれば、増やす前に相談する
🚨 こういうときは受診を

これらは厚生労働省の高齢者向けチェック項目に含まれるものです。「歳のせい」で片づけず、一度相談してください。食事の工夫だけでは届かない原因が隠れていることがあります。

13. よくある質問

成長期の子どもには、どのくらいのたんぱく質が必要ですか?

日本人の食事摂取基準(2025年版)の推奨量は、男子が12〜14歳で60g/日、15〜17歳で65g/日。女子は12〜14歳と15〜17歳がいずれも55g/日です。
注目していただきたいのは、成人女性の推奨量が50g/日であることです。つまり中学生・高校生の女子は、成人女性より多くのたんぱく質を必要としています。男子の15〜17歳(65g)は成人男性と同じ量です。
「子どもだから少なくていい」は成り立ちません。体が作られている時期だからこそ、大人と同じか、それ以上に必要なのです。

日本人はたんぱく質が不足しているのですか?

平均で見れば、不足していません。令和6年国民健康・栄養調査では、20歳以上の平均摂取量は男性78.0g/日、女性65.9g/日で、推奨量(男性65g、女性50g)を上回っています。
ただし、これは平均の話です。平均は個人を語りません。65歳以上で低栄養傾向(BMI 20以下)の人は女性で22.4%にのぼります。また問題は総量だけでなく配分にもあります。朝食が軽く夜に偏る食べ方では、同じ総量でも筋肉の維持に不利である可能性が指摘されています。「足りているか」ではなく「どう配られているか」を見るほうが実際的です。

たんぱく質は多くとればとるほど筋肉が増えますか?

増えません。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、ポイントとして「総たんぱく質摂取量が多いほど筋肉量が直線的に増えるものではないため、身体活動量に応じて、たんぱく質を摂取することが重要である」と明記しています。同ガイドが引用する系統的レビューでは、体重1kg当たり1.3g/日を超えると筋量増加の効率が悪くなるとされています。
また食事摂取基準2025年版も「推奨量以上の摂取により、他の健康指標に対し有益な影響を得られるという根拠が乏しい」ことから「上限のないたんぱく質の摂取が健康増進に有益な効果をもたらすわけではない点には注意が必要である」としています。

運動をしないでたんぱく質だけとっても意味がありますか?

効率が大きく落ちます。厚生労働省の身体活動・運動ガイド2023は「運動不足は、体たんぱく質異化状態を招き、適度の運動は食事性たんぱく質の利用を高めます」と記載しています。異化とは体のたんぱく質が分解される方向のことで、運動が足りないと、食べたたんぱく質が筋肉として使われにくくなるということです。
49の研究・1,863人を統合したメタ解析でも、たんぱく質の補給が筋肉量と筋力を増やしたのは「レジスタンス運動(筋トレ)を継続している人」においてでした。食事だけを整えても、運動がなければ十分な効果は期待しにくいのが実際です。

高齢になって食が細くなりました。どう工夫すればいいですか?

考え方を「量」から「割合」に切り替えることが役に立ちます。食事摂取基準2025年版では、たんぱく質の目標量(総エネルギーに占める割合)の下限が、49歳までは13%、50〜64歳で14%、65歳以上で15%と年齢とともに引き上げられています。食べる総量が減るなかで、たんぱく質の割合は上げる、という設計です。
実務としては、①1日3食を欠かさない ②毎食に主菜(肉・魚・卵・大豆製品)を1品入れる ③朝食を軽くしすぎない、の3つが基本です。カナダの高齢者1,741人を3年間追跡した研究では、たんぱく質を食事ごとに均等に配分している人ほど筋力が強いという関連が報告されています。
なお、腎機能に不安がある方はかかりつけ医にご相談ください。

この記事のまとめ。成人の推奨量は男性65g・女性50g。そして中高生の女子は55g=成人女性より多い。「子どもだから少なくていい」は成り立ちません。
意外なことに、日本人の平均摂取量は推奨量を上回っています(20歳以上で男性78.0g・女性65.9g)。それでも筋肉が減るのは、問題が「量」ではなく「配分」と「運動」にあるからです。
厚生労働省は明記しています——「運動不足は、体たんぱく質異化状態を招き、適度の運動は食事性たんぱく質の利用を高めます」。動かなければ、食べたたんぱく質は活きません。順序は「たんぱく質→筋肉」ではなく「運動→たんぱく質が筋肉に向かう」です。
そして多いほど増えるわけでもありません。体重1kg当たり1.3g/日を超えると効率が落ちるとされ、国の基準も「上限のない摂取が健康増進に有益な効果をもたらすわけではない」としています。
高齢期は、食べる量が減るからこそ「割合」を上げる設計になっています(目標量の下限15%)。実務は3つ——3食欠かさない/毎食に主菜を1品/朝を軽くしすぎない。
やることは、拍子抜けするほど地味です。朝に卵を1個足す。週2〜3日スクワットをする。プロテインを買い足す前に、これが済んでいるかを確かめてみてください。

参考にした主な資料

なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。腎機能が低下している方、慢性腎臓病・高血圧症・糖尿病などの疾患をお持ちの方、ご高齢の方は、たんぱく質摂取量を自己判断で増やす前に、かかりつけの医師にご相談ください。治療のためにたんぱく質の制限や増量を指示されている方は、この記事の数値ではなく主治医の指示を優先してください。意図しない体重減少、食欲不振の持続、飲み込みにくさ、歩行速度の低下などがある場合は、食事の工夫だけで対応せず、医療機関にご相談ください。運動を始める際は、持病のある方は事前に医師にご確認ください。掲載内容は公開時点の情報にもとづいており、内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。