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からだの変化

全身性強皮症とは
——冷たい物に触ると指が真っ白に。30〜50歳代の女性に多い膠原病

冷たい物に触ると指が白くなる、朝に手指がこわばる、指がむくんだ感じがする——そんな症状が気になる方に向けた記事です。
日本皮膚科学会によると、全身性強皮症は皮膚や内臓が硬くなる膠原病で、男女比は1:9、30〜50歳代の女性に多くみられます。
患者さんの80%以上は、指が突然白くなるレイノー症状で始まります。そして学会は、この病気は必ずしも進行性ではないと強調しています。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年10月28日 読了:約9分

1. 先に結論

よくある思い込み資料の記述
「強皮症」と言われたら重い病気強皮症には全身性強皮症と限局性強皮症があり、まったく別の病気。限局性強皮症は皮膚だけの病気で内臓を侵さない
どんどん進行していく症状が比較的軽く、ほとんど進行しない患者さんも数多くいる。「進行性」という病名は今は使われない
レイノー症状があれば膠原病レイノー症状は膠原病に共通の症状で、健康な人でも数パーセントにある。すぐに膠原病というわけではない
遺伝するいわゆる遺伝病ではなく、遺伝はしない。生まれてからの環境のほうが発症に重要と考えられている

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

レイノー症状がある方は、指の爪のあま皮に黒い小さな点(爪上皮出血点)がないか、自分で確かめてみてください。学会は、レイノー症状に加えてこれがあれば強皮症が疑われ、さらに詳しい血液検査が必要だとしています。

2. どんな病気か——限局性強皮症とはまったく別

日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aによると、全身性強皮症は皮膚や内臓が硬くなる変化(硬化あるいは線維化)が特徴の病気で、いわゆる膠原病に属します。膠原病とは、体の2つ以上の臓器に同じ病気の変化が起こるもので、全身性強皮症では硬くなる変化が皮膚、肺、消化管、腎臓などに起こります。

3.【核心】始まりはレイノー症状——爪のあま皮もチェック

学会は、全身性強皮症の始まりの症状について次のように書いています。

「全身性強皮症患者さんの80%以上はレイノー症状と呼ばれる症状で始まります。」(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「全身性強皮症」Q10)

レイノー症状ではなく、皮膚の硬化から始まることもあります。その場合は、最初は手指のむくみ感や腫れとして気づき、次第にはっきりとした手指の皮膚の硬化となり、手の甲、前腕、上腕、胸へと体の中心に向かって広がっていきます。胸やけ・胸のつかえといった逆流性食道炎の症状で始まることもあります。

ただし学会は、レイノー症状はほかの膠原病でも起こり、健康な人でも数パーセントにあるので、レイノー症状があるからといってすぐに膠原病というわけではないと注意しています。冷えと膠原病の関係は冷えとむくみの記事でも触れています。

4. 原因——自己免疫・線維化・血管障害

学会によると、原因ははっきりとは分かっていませんが、研究の進歩で3つの異常が重要であることが明らかになりました。

異常資料の記述
自己免疫細菌ではなく自分に対して抗体(自己抗体)が作られ、炎症が起こる。自己抗体は症状が起こる前に血液中に現れる
線維化線維芽細胞が活発に膠原線維(コラーゲン)を作り、皮膚や内臓にたまって硬くなる。皮膚の硬化や肺線維症が起こる
血管障害血管が縮み、硬くなって血流が落ちる。レイノー症状、指先の潰瘍、肺高血圧症などが起こる

免疫を抑える薬が効果を示したことから、自己免疫による炎症が最初に起こり、それが線維化と血管障害を引き起こすと考えられています。遺伝はしませんが、かかりやすさに関わる遺伝子は多数あると考えられ、それよりも生まれてからの環境のほうが重要と考えられています。

5. 軽いタイプと典型的なタイプ

学会によると、全身性強皮症には、レイノー症状だけで皮膚の硬化がまったくない軽いタイプから、皮膚の硬化が胸やお腹まで広がり内臓の病変を伴う典型的なタイプまであります。国際的には、次の2つに分ける分類が広く使われています。

全身性強皮症の2つのタイプ 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「全身性強皮症」Q12・Q14・Q15をもとに整理 限局皮膚硬化型(軽症型) びまん皮膚硬化型(典型的) ・皮膚の硬化:手指から肘まで。  最終的にもせいぜい前腕まで ・進み方:十数年から数十年かけて、  ごくわずかずつ ・内臓:逆流性食道炎は比較的多いが、  重いものはまれ ・多い抗体:抗セントロメア抗体 ・皮膚の硬化:肘から腕、体幹へ ・進み方:発症後数年は進み、5〜6年で  ピーク。その後は徐々に自然に改善 ・内臓:合併が多く、多くは発症から  数年以内に明らかになる ・多い抗体:抗トポイソメラーゼI抗体など 出典:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「全身性強皮症」をもとに作図。経過は典型例で、すべての人に当てはまるわけではない

「限局皮膚硬化型全身性強皮症」と、皮膚だけの病気である「限局性強皮症」は、同じ「限局」という言葉を使いますが、まったく別の病気です。

学会は、以前は“進行性”全身性硬化症(PSS)と呼ばれていたものの、症状が比較的軽くほとんど進行しない患者さんも数多くいると分かり、この病名は今は使われていないとしています。経過は人によって大きく異なり、発症から10年以上たってぶり返したり、少しずつ進んだりする場合もあります。

6. 抗核抗体で、経過の見通しが立つ

学会によると、細胞の「核」に対する自己抗体を抗核抗体といい、全身性強皮症の90%以上で陽性になります。将来の経過を正確に判断するのは難しいものの、どの抗核抗体が陽性かで、おおよその経過を予測できます。学会は、自分がどの抗核抗体をもっているかを知っておくよう勧めています。

抗核抗体(陽性の割合)資料の記述
抗セントロメア抗体(約40%)軽いタイプに多い。皮膚の硬化の範囲・程度が軽く、肺線維症などの重い内臓病変はまれ。逆流性食道炎は比較的多い。1%程度に肺高血圧症が発症後十数年から数十年後に起こることがあり、定期的な肺と心臓の検査が必要
抗トポイソメラーゼI(Scl-70)抗体(約30%)典型的なタイプに多い。皮膚の硬化が前腕から体幹に及ぶことがある。陽性だと肺線維症は約80%で認められる
抗RNAポリメラーゼ抗体(約6%)皮膚の硬化が広く、急速に進むことが多い。肺線維症は少ない代わりに、強皮症腎クリーゼが多い(10%程度)
抗U1RNP抗体手や指にむくみを伴った皮膚の硬化が特徴。ほかの膠原病の症状を一部合併することもある

7. 内臓の病変——毎日の血圧測定も

学会によると、全身性強皮症ではいろいろな内臓病変が起こる可能性がありますが、1人の患者さんがすべてをもつことはまれで、人によって合併する病変やその程度が異なります。

「全身性強皮症の患者さんは毎日きちんと血圧を測定して、血圧が急に上がってくるようなときには直ぐに主治医の先生に相談するようにして下さい。」(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「全身性強皮症」Q16)

学会は、とくに抗RNAポリメラーゼ抗体をもつ患者さんは、毎日の血圧の変化に注意するよう書いています。逆流性食道炎そのものについては逆流性食道炎の記事で書いています。

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この章で扱った毎日の血圧測定のための上腕式血圧計です。日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aは、全身性強皮症の患者さんは毎日きちんと血圧を測定するよう書いています。

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8. 治療

学会は、現在のところ全身性強皮症を完全によくする薬はないものの、「あきらめないで下さい」として、効果を期待できる治療法が開発されてきたとしています。Q&Aに挙げられている代表的な治療は次のとおりです。

対象資料に挙げられている治療
皮膚の硬化ステロイドの少量内服(20mg/日程度)。発症6年以内の典型的なタイプの早期や、最近数か月〜1年で硬化が進んでいる場合などが目安。数週から1か月程度で改善が実感できる。副作用もあるので主治医とよく相談
肺線維症シクロホスファミド(改善は肺活量が数パーセント程度。点滴のほうが副作用が少なく、一般的には点滴。女性では生理がなくなる副作用もある)、ニンテダニブ(悪化のスピードを遅くする)
皮膚の硬化と肺線維症リツキシマブ(B細胞を除く薬。副作用として感染症に十分な注意が必要)
指先などの潰瘍重症ではまず入院して患部の安静。血管拡張薬(少量から)、ボセンタン(新しい潰瘍の出現が約50%減った臨床試験がある)
強皮症腎クリーゼACE阻害薬
逆流性食道炎プロトンポンプ阻害薬。軽いタイプでもしばしば合併するので、治療を続ける

出典:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「全身性強皮症」Q17〜Q20。Q&Aはリツキシマブについて「来年(2021年)の後半には保険収載される見込み」と書いている時点の記載です。現在の治療は主治医に確認してください。

学会は、軽いタイプの全身性強皮症でも、逆流性食道炎や指先の潰瘍など症状に応じてきちんと治療を続けることがとても重要だとしています。

9. 受診したいとき

資料にあるもの

・冷たい物に触ると指が突然白や紫になる(レイノー症状)

・レイノー症状があり、爪のあま皮に黒い小さな点がある(詳しい血液検査が必要)

・手指のむくみ感や腫れ、朝のこわばり、皮膚が硬くなってきた

・全身性強皮症と診断されていて、血圧が急に上がってきた、頭痛やめまいがある(すぐに主治医へ)

・「強皮症」と言われたが、全身性か限局性か分からない

学会は、問診のときには病気と関係ないように思えることでも率直に話すよう書いています。豊胸術や隆鼻術、特定の仕事と関連して発症することがあるためです。

最後に、この記事の要点をもう一度。

① 全身性強皮症は皮膚や内臓が硬くなる膠原病。男女比1:9、30〜50歳代の女性に多い

② 80%以上がレイノー症状で始まる。爪のあま皮の黒い点も手がかり

③ 軽いタイプはほとんど進行しないことも多い。経過は人によって大きく異なる

④ 抗核抗体の種類で、おおよその経過と注意すべき内臓病変が分かる

⑤ 毎日の血圧測定と、軽いタイプでも症状に応じた治療の継続を

10. よくある質問

全身性強皮症とは、どんな病気ですか?

日本皮膚科学会によると、皮膚や内臓が硬くなる変化(線維化)が特徴の膠原病で、皮膚、肺、消化管、腎臓などに硬くなる変化が起こります。男女比は1:9で、30〜50歳代の女性に多くみられます。皮膚だけの病気である限局性強皮症とは、まったく別の病気です。

どんな症状から始まりますか?

学会によると、患者さんの80%以上は、冷たい物に触ったときなどに指が突然真っ白になるレイノー症状で始まります。朝の手指のこわばりや、手指のむくみ感・腫れ、胸やけなどで始まることもあります。軽いタイプでは、レイノー症状だけが十年以上続くこともあります。

指が白くなるのですが、強皮症でしょうか?

学会によると、レイノー症状はほかの膠原病でも起こり、健康な人でも数パーセントにあるので、すぐに膠原病というわけではありません。ただし、レイノー症状に加えて爪のあま皮に黒い小さな出血点(爪上皮出血点)があれば強皮症が疑われ、詳しい血液検査が必要です。

どんどん進行していく病気ですか?

学会によると、必ずしも進行性ではありません。軽いタイプでは、皮膚の硬化は十数年から数十年かけてごくわずかずつしか進まず、せいぜい前腕までにとどまります。典型的なタイプでも、発症5〜6年でピークに達した後は、徐々に皮膚の硬化が自然に改善してきます。ただし経過は人によって大きく異なります。

遺伝しますか?

学会によると、いわゆる遺伝病ではなく、遺伝はしません。かかりやすさに関わる遺伝子は多数あると考えられていますが、それよりも生まれてからの環境のほうが発症に重要と考えられています。

日常生活で気をつけることはありますか?

学会は、全身性強皮症の患者さんは毎日きちんと血圧を測定し、血圧が急に上がってくるときはすぐに主治医に相談するよう書いています。腎臓の血管が硬くなって突然高血圧になる強皮症腎クリーゼは、早く見つけて早く治療を始めることが極めて重要だからです。また、自分がどの抗核抗体をもっているかを知っておくよう勧めています。

参考にした主な資料

凪
なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した内容は、日本皮膚科学会の皮膚科Q&A「膠原病と類縁疾患——全身性強皮症」にもとづくもので、同Q&Aはリツキシマブについて「来年(2021年)の後半には保険収載される見込み」と書いている時点の記載です。治療薬の保険適用などは現在と異なる場合があります。レイノー症状や皮膚の硬化が気になる場合は、皮膚科やリウマチ・膠原病科に相談してください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。