1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 指の関節が曲がってきたら、リウマチ | 指の第1関節が変形するへバーデン結節は変形性関節症で、関節リウマチとは異なる |
| へバーデン結節は、みんな強く変形する | いろいろな程度の変形があり、すべての人が強い変形になるとは限らない |
| 指の痛みは、我慢して使い続けるしかない | へバーデン結節は痛むときは安静に。使わなければならないときはテーピングがお勧め |
| 腱鞘炎の注射は一度で終わり | ばね指の注射はおおむね3か月以上症状が出ないことが多いが、再発することも少なくない |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
指や手首の痛みは、痛む場所で病気の見当がつきます。どれも指や手の使いすぎが関わるので、まず痛む場所を休めること。そして、両手の指が左右対称に腫れて朝こわばる場合は、関節リウマチを考えて早めに受診してください。
2.【核心】痛む場所で見当をつける
あくまで目安です。似た症状のほかの病気もあるため、診断は整形外科で受けてください。
手のしびれが中心の場合は、手根管症候群のこともあります(→明け方の手のしびれ)。
3. へバーデン結節:指の第1関節のコブ
「指の第1関節(DIP関節)が変形し曲がってしまう原因不明の疾患です。」(日本整形外科学会「へバーデン結節」)
- 第1関節の背側に2つのコブ(結節)ができるのが特徴
- 人差し指から小指の第1関節が赤く腫れたり、曲がったりする。痛みを伴うこともある。親指にみられることもある
- 第1関節の動きが悪くなり、痛みで強く握ることが難しくなる
- 関節の近くに水ぶくれのような透き通ったでっぱり(ミューカスシスト、粘液嚢腫)ができることがある
- 原因は不明。40歳代以降の女性に多く、手をよく使う人がなりやすい傾向
学会は、X線や手術の所見から見るとへバーデン結節は変形性関節症であり、関節リウマチとは異なるとしています。第2関節(PIP関節)に起こる似た病気はブシャール結節と呼ばれます。
| 治療・予防 | 資料の記述 |
|---|---|
| 保存的療法 | 局所の安静(固定も含む)、投薬、局所のテーピングなど。急性期には少量の関節内ステロイド注射も |
| 手術 | 痛みが改善しないときや、変形がひどく日常生活に支障が出る場合。コブを切除する、関節を固定するなど |
| 予防 | 第1関節が痛むときは安静に。痛くても使わなくてはならないときはテーピングがお勧め。ふだんから指先に過度な負担をかけない |
この章で扱った指のテーピングです。日本整形外科学会は、へバーデン結節について「痛くても使わなくてはならないときは、テーピングがお勧めです。」と書いています。
※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。まず整形外科で、へバーデン結節かどうか(関節リウマチなど他の病気でないか)の診断を受けてください。ここで紹介しているのは、ニチバンの指用の非伸縮テーピングテープ(幅12mm)です。学会は、テーピングを痛くても指を使わなければならないときの方法として挙げており、痛むときの基本は安静です。巻き方は、医療機関で確かめてから使ってください。
4. ばね指:指の付け根の引っかかり
指を曲げる腱(屈筋腱)は、指の部分で靱帯性腱鞘(じんたいせいけんしょう)というトンネルに押さえられています。学会は、ベルトとベルト通しの関係に似ていると説明しています。その出口の指の付け根で腱や腱鞘が炎症を起こすと腱鞘炎になり、さらに進むと引っかかり(ばね現象)が起こります。これがばね指です。
- 指の付け根に痛み・腫れ・熱感。朝方に症状が強く、日中使っていると軽くなることも少なくない
- 進行するとばね現象、さらに悪化すると指が動かない状態に
- 更年期の女性、妊娠出産期の女性に多い。手の使いすぎ、スポーツや指をよく使う仕事の人にも多い
- 糖尿病、リウマチ、透析の患者さんにもよく起こり、その場合は複数の指に起こる
- 親指と中指に多い
治療は、局所の安静(シーネ固定も含む)、投薬、腱鞘内ステロイド注射など。学会は、この注射は有効でおおむね3か月以上は症状が出ないことが多い一方、再発することも少なくないとしています。改善しないときや再発を繰り返す場合は、腱鞘の一部を開く手術(腱鞘切開)を行い、小さな傷で済むとされています。
5. ドケルバン病:手首の親指側の痛み
親指を広げると、手首の親指側に2本の腱が浮かび上がります。この腱が通る手首の腱鞘で起こる腱鞘炎がドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)です。
- 手首の親指側が痛み、腫れる
- 親指を広げたり動かしたりすると、強い痛みが走る
- 妊娠出産期の女性や更年期の女性に多い。手の使いすぎ、スポーツや指をよく使う仕事の人にも多い
学会は、自分で調べる方法として、手首を直角に曲げて親指を伸ばしたときに痛みが強くなるかをみる方法(岩原・野末のサイン)を紹介しています。治療は、局所の安静(シーネ固定も含む)、投薬、腱鞘内ステロイド注射など。改善しないときや再発を繰り返す場合は、腱鞘を開く手術が行われます。
6. 母指CM関節症:親指の付け根の痛み
親指の付け根で、手首の骨とつながる関節(CM関節)は、親指がほかの指と向き合ってつまむ動作ができるよう、大きく動く関節です。その分、使いすぎや老化で関節の軟骨がすり減りやすく、進むと関節が腫れ、ずれて(亜脱臼)親指が変形してきます。
- 物をつまむときやビンのふたを開けるときなど、親指に力が要る動作で、手首の親指の付け根付近が痛む
- 進行すると付け根が膨らみ、親指が開きにくくなる
- 親指の先の関節が曲がり、手前の関節が反った「白鳥の首」変形になることがある
学会は、手首の親指側の腱鞘炎(ドケルバン病)や、リウマチによる関節炎と区別しなければならないとしています。
「消炎鎮痛剤入りの貼り薬を貼り、CM関節保護用の軟性装具を付けるか、固めの包帯を母指から手首にかけて8の字型に巻いて動きを制限します。」(日本整形外科学会「母指CM関節症」)
それでも不十分なときは、痛み止めの飲み薬や関節内注射。痛みが強く、高度な変形がある場合は手術が必要になります。
この章で扱った親指の付け根(CM関節)用の軟性装具です。日本整形外科学会は、母指CM関節症の治療として「CM関節保護用の軟性装具を付ける」方法を挙げています。
※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。まず整形外科で、母指CM関節症かどうか(ドケルバン病や関節リウマチでないか)の診断を受けてください。ここで紹介しているのは、医療用品メーカーのアルケアの母指CM関節用サポーターです。販売ページによると、パッドとステー(支え)を内蔵し、親指のストラップで締めて使う左右兼用のもので、サイズはSとMがあります。サイズや着け方は、できれば医療機関で相談してから選んでください。学会は、装具などで不十分なときは飲み薬や注射、高度な変形では手術が必要になるとしています。
7.【内科医の視点】関節リウマチとの違い
内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。指の関節が腫れると、多くの方が「リウマチでは」と心配されます。日本整形外科学会は、関節リウマチを次のように説明しています。
「最初は両方の手や足の指の関節が対称的に腫れて、とくに朝、こわばるようになります。」(日本整形外科学会「関節リウマチ」)
| へバーデン結節 | 関節リウマチ | |
|---|---|---|
| 正体 | 変形性関節症 | 自己免疫疾患。滑膜の慢性の炎症 |
| 多い人 | 40歳代以降の女性 | 30〜40歳代の女性に多い(どの年代でも起こる) |
| 腫れ方 | 指の第1関節 | 両方の手や足の指の関節が左右対称に腫れ、特に朝こわばる |
| 全身の症状 | — | 貧血、微熱、だるさなどを伴うことがある |
学会は、関節リウマチでは早めの診断・治療が必要だとしています。また、「リウマチの血液検査(血清リウマトイド因子)が陽性」というだけでは関節リウマチとは診断できないとも書いています。血液検査の結果だけで不安にならず、整形外科やリウマチの専門医で診てもらってください。
関節リウマチの経過や、運動・装具などのリハビリについては関節リウマチと運動で書いています。
ばね指は、糖尿病の患者さんにもよく起こり、その場合は複数の指に起こるとされています。血糖については糖尿病予備軍の記事で書いています。更年期の体の変化については更年期のセルフケアで書いています。
8. 受診したほうがよいとき
早めに受診したいとき
・両手の指が左右対称に腫れ、朝こわばる(関節リウマチの可能性)
・関節の腫れに加えて、微熱やだるさがある
・指が引っかかって動かなくなった
整形外科で相談したいとき
・指の第1関節が赤く腫れて痛む、変形してきた
・指の付け根の痛みや朝の引っかかりが続く
・手首の親指側や、親指の付け根が痛み、家事や仕事に支障がある
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 第1関節のコブ=へバーデン結節。40歳代以降の女性に多く、リウマチとは異なる
② 指の付け根の引っかかり=ばね指。更年期・妊娠出産期の女性に多い
③ 手首の親指側=ドケルバン病、親指の付け根=母指CM関節症
④ どれも安静が基本。へバーデン結節はテーピング、CM関節症は軟性装具も
⑤ 両手の指が左右対称に腫れて朝こわばるなら、関節リウマチを考えて早めに受診
9. よくある質問
指の第1関節が腫れて曲がってきました。リウマチですか?
日本整形外科学会によると、指の第1関節が変形して曲がる病気はへバーデン結節と呼ばれ、X線や手術の所見から見ると変形性関節症で、関節リウマチとは異なります。40歳代以降の女性に多く、手をよく使う人がなりやすい傾向があります。関節リウマチは、両方の手や足の指の関節が左右対称に腫れて、特に朝こわばるのが始まりとされています。診断は整形外科で受けてください。
へバーデン結節で、自分でできることはありますか?
日本整形外科学会は、第1関節が痛むときは安静にし、痛くても使わなくてはならないときはテーピングがお勧めとしています。ふだんから指先に過度な負担をかけないことも勧められています。治療としては、局所の安静や投薬、テーピングのほか、急性期の関節内注射、痛みや変形が強い場合の手術があります。
朝、指が引っかかって伸びにくいのですが。
日本整形外科学会によると、指の付け根で腱と腱鞘に炎症が起こる腱鞘炎が進むと、引っかかり(ばね現象)が起こるばね指になります。朝方に症状が強く、日中使っていると軽くなることも少なくありません。更年期や妊娠出産期の女性に多く、糖尿病やリウマチ、透析の患者さんにもよく起こります。
ペットボトルのふたを開けると、親指の付け根が痛みます。
日本整形外科学会によると、物をつまむときやビンのふたを開けるときに親指の付け根付近が痛むのは、母指CM関節症の症状です。使いすぎや老化で関節の軟骨がすり減って起こります。治療は、消炎鎮痛剤入りの貼り薬とCM関節保護用の軟性装具や包帯による固定から始め、不十分なときは飲み薬や注射、変形が強い場合は手術が検討されます。
リウマチの血液検査が陽性でした。リウマチということですか?
日本整形外科学会は、リウマチの血液検査(血清リウマトイド因子)が陽性というのは診断基準の一つを満たすだけで、この結果だけで関節リウマチと診断することはできないとしています。関節リウマチは早めの診断・治療が必要とされているため、症状とあわせて専門医に相談してください。
参考にした主な資料
- 日本整形外科学会「症状・病気をしらべる」:「へバーデン結節」「ばね指(弾発指)」「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」「母指CM関節症」「関節リウマチ」