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MEDICALLY REVIEWED BEAUTY & HEALTH
髪と頭皮

抗がん剤の脱毛
——抜け始めは平均18日後、生え始めは3.4か月後。防げるとうたう製品は、まだありません

がんの治療が決まったとき、「髪が抜けるのがいちばんつらい」と感じる方は少なくありません。実際、学会のガイドラインによると、脱毛は治療中に感じる苦痛のなかでいつも上位に挙がる副作用です。
そして、不安につけこむように、「抜けない」「すぐ生える」とうたう製品がたくさん売られています。けれど国立がん研究センターは、予防や発毛を促す効果が十分に確認された製品は、まだないと書いています。
いつ抜けて、いつ生えるのか。何が勧められていて、何にお金をかけなくていいのか。日本がんサポーティブケア学会のガイドラインと国の情報だけで整理します。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年10月1日 読了:約16分

1. 先に結論

ガイドラインと国の情報から読み取れることを、先にまとめます。

よく聞く話資料が書いていること
抗がん剤なら必ず抜ける薬によって0.04%から100%まで大きく違います。治療が決まったら確認できます
抜けたら、もう生えない多くは治療終了から平均3.4か月で生え始めます。ただし1年後も元に戻らない人が47.3%という報告も
脱毛を防ぐシャンプーやサプリがある「効果が十分に確認された製品はありません」(2025年3月時点)
予防法はひとつもない頭皮冷却だけが「弱く推奨」。周術期の乳がんに限られ、保険は使えません
低刺激シャンプーに替えるべき今まで使っていた製品が第一優先です
ウィッグは早めに、高いものをあわてて準備する必要はない。高ければ合うわけでもありません
治療後はカラーもパーマも禁止十分に伸びてから、条件を満たせば「否定しない」

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

脱毛は、抜け始めるまでに準備の時間がある副作用です。その時間を、効果の確かめられていない製品探しではなく、自分の治療で脱毛が起こるかの確認と、ウィッグや帽子の情報集めに使っていただければと思います。

2. いつ抜けて、いつ生えるのか

日本がんサポーティブケア学会の「がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年版」は、外見の変化に対するケアをまとめたガイドラインです。2024年からは本文が無料で公開されています。

まず、なぜ髪が抜けるのか。髪の毛は、毛根の細胞が活発に分裂して伸びています。抗がん剤は、がん細胞のように活発に分裂する細胞に作用するため、髪をつくる細胞も影響を受けます。ガイドラインによると、頭髪の90%以上は伸びている途中の髪なので、多くの髪が影響を受け、頭髪のほとんどが抜けることになります。

抜け始めるまでに、準備する時間があります 化学療法による脱毛と再発毛の目安 治療開始 抜け始め 治療終了 生え始め 生えそろう 1〜3週間 平均18.0日 終了から 平均3.4か月 3〜6か月で 短い毛が 抜け始めるまでにできること 髪を短くする・帽子を用意する ウィッグの情報を集めておく 生えてきた髪は くせ毛・白髪になることも 多くは一時的です 平均日数は乳がんの患者さんを対象にした日本の調査から。時期と程度は、薬と人によって違います。

がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年版「化学療法 総論」と、がん情報サービス「脱毛」をもとに作成

時期の目安です。ガイドラインは「脱毛は化学療法開始1~3 週間後に生じる。」としています。乳がんの患者さんを対象にした日本の調査では、脱毛は治療開始から平均18.0日後に始まり、治療が終わってから平均3.4か月で再び生え始めていました。

国立がん研究センターのがん情報サービス(2025年3月更新)も、治療が終わると「2~3カ月すると産毛のような柔らかい毛が伸びてきたことが実感でき、3~6カ月で短い毛が生えそろうことが多いです。」としています。

抜けるのは頭の髪だけではありません。眉毛、まつ毛、鼻毛、ひげ、わき毛など、全身で起こります。一方、放射線治療による脱毛は、放射線を当てた部位だけで起こります。

生えてきた髪は、前と違うことがある

生えてきた髪がくせ毛になる、白髪になることがあります。がん情報サービスは、これらは一時的なもので、元の状態に戻ることが多いとしています。

ただし、正直にお伝えしておくべき数字もあります。ガイドラインには、治療前の状態に戻っていない人が、治療後1年の時点で47.3%、2年までで36%いたという報告が紹介されています。生えてくることと、元どおりになることは、同じではありません。また、ごく一部の薬や骨髄移植などの場合に、永久的な脱毛も報告されています。

3. 薬によって、こんなに違う

「抗がん剤=髪が抜ける」というイメージは強いですが、実際はそうとは限りません。ガイドラインは「化学療法による脱毛は 65~80%の患者に生じる。」とし、程度は薬の種類、量、投与のスケジュールで決まるとしています。

ほぼ全員の治療もあれば、ほとんど抜けない治療もある 治療の組み合わせ(レジメン)ごとの脱毛の頻度(全グレード) TC療法 乳がん(ドセタキセル+シクロホスファミド) 100% パクリタキセル毎週投与 乳がん 97.1% ドセタキセル 乳がん 91.2% EC療法 乳がん(エピルビシン+シクロホスファミド) 85% FOLFIRI療法 大腸がん 32.7% mFOLFOX6療法 大腸がん 17.2% XELOX療法 大腸がん 4% ニボルマブ 非小細胞肺がん(免疫チェックポイント阻害薬) 0.04% 自分の治療で脱毛が起こるかは、治療が決まった時点で確認できます。 数値はガイドラインの表から一部を抜粋。程度(グレード)を含む全体の頻度です。

がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年版「化学療法 総論」表3をもとに作成

乳がんの治療でよく使われる組み合わせでは、ほぼ全員に脱毛が起こります。日本の調査でも、乳がんの患者さん1,458人のうち99.8%が化学療法で脱毛したと答えていました。一方で、大腸がんの治療の多くや、免疫チェックポイント阻害薬では、ほとんど抜けないものもあります。

がん情報サービスは、自分が受ける治療で脱毛が起こるかどうかや程度を、担当の医師や薬剤師、看護師に確認しておくよう勧めています。抜けない治療なのに、あわててウィッグを買う必要はありません。

4. 推奨がついた予防法は、頭皮冷却だけ

点滴の前から終わったあとまで、専用の装置で頭皮を冷やし続ける方法です。日本でも頭皮冷却システムが医療機器として承認されています。

ガイドラインのCQ1の推奨文です。

「化学療法誘発脱毛の予防や重症度軽減に対する頭皮クーリングシステムは,周術期化学療法を行う乳がん患者に限定して,行うことを弱く推奨する。」

推奨の強さ:2(弱い)/エビデンスの強さ:B(中)/合意率:100%

根拠は、初期の乳がんの患者さんを対象にした3つのランダム化比較試験です。まとめて解析すると、頭髪の半分以上が抜けるのを防げた人の割合は、冷やした群で有意に高くなっていました。ガイドラインは、冷やさなかった人ではすべての人に半分以上の脱毛が起きたのに対し、頭皮冷却によって52%に抑えられる可能性が示された、と説明しています。

一方で、弱い推奨にとどまった理由も書かれています。

がん情報サービスによると、2025年3月時点で頭部冷却装置の使用は公的医療保険の適用外で、費用も施設によって異なります。導入していない施設もあります。希望する場合は、治療が始まる前に担当医に相談してください。

5.【重要】「抜けない」「すぐ生える」とうたう製品

ここがこの記事でいちばん大切な章です。がん情報サービスは、はっきりこう書いています。

「2025年3月現在、がんの治療による脱毛の予防や発毛を促す効果が十分に確認された製品はありません。」

ガイドラインの評価も同じ方向です。

よく勧められるものガイドラインの記載
ミノキシジルの塗り薬(脱毛の予防)「化学療法中の脱毛予防に関しては,ミノキシジルは効果がないと考えられる。」
ミノキシジルの塗り薬(再発毛を早める)有用である可能性はあるが、「現時点では明確なエビデンスがあるとはいえない。」
頭皮マッサージなど「質の高いエビデンスがなく,今後の検討が待たれる。」
育毛をうたう化粧品・医薬部外品化学療法による脱毛については「一部検証が始められた」段階
特別なシャンプー「特定のヘアケア製品を推奨または否定する根拠はなく」

ミノキシジルについて補足します。ガイドラインは、化学療法が終わって6か月たっても十分に生えてこない人に5%のミノキシジルを使った小規模な観察研究で、67%に改善がみられたという報告を紹介しています。ホルモン療法(内分泌療法)中や後の脱毛についても、「ミノキシジル外用薬の使用は否定されない。」としています。ただ、いずれも質の高い根拠とは言えない段階です。使いたい場合は、治療中の薬との兼ね合いもあるので、担当医に相談してからにしてください。市販のミノキシジルの位置づけは薄毛の治療の記事で詳しく書いています。

不安な時期ほど、高価な製品に手を伸ばしたくなります。けれど、効果が確かめられていないものにお金をかける前に、担当の医療者か、がん相談支援センターに一度相談してください。

6. シャンプーは、今までのものでいい

「抗がん剤の治療中は、低刺激のシャンプーに替えたほうがいいですか」。よく受ける質問です。ガイドラインのBQ32は、次のように整理しています。

・「かゆみやにおいなどの問題がない程度に洗髪し,頭皮を清潔に保つことが勧められる。」

・「化学療法前に使用していたヘアケア製品の選択を第一優先とする。」

・「低刺激シャンプーの使用を否定しない。」

「低刺激」という言葉についても、ガイドラインは「低刺激の明確な定義は存在しない。」としています。無香料・無着色・無添加・ノンケミカルなどの表示は、刺激になりうる特定の成分を含まないという意味で、前のシャンプーに問題がなければ、積極的に替える必要はないとされています。

なぜ今までのものなのか。ガイドラインによると、シャンプーの成分には、かぶれの原因になるものもあり、「アミノ酸系なら低刺激」というように成分の種類だけで選ぶのは難しいからです。そのため、化学療法前に使っていた製品をそのまま使うほうがリスクを低く抑えられると考えられています。

洗い方のこつ

脱毛や再発毛の時期には、毛根のまわりの神経が刺激されて、頭皮がピリピリ・チクチクすることがあります。シャンプーが合わないせいだと思って次々に替える方がいますが、ガイドラインは「頭皮に発疹や発赤が生じていなければ,あえてシャンプーを変更する必要はない。」としています。そして「発毛効果のエビデンスが報告されているシャンプー製品は現在のところ存在しない。」とも書いています。頭皮が赤い、じくじくするなどの症状があるときは、担当医に伝えてください。

7. ウィッグは、急いで買わなくていい

ガイドラインのBQ41は、ウィッグについて次のようにまとめています。

・「ウィッグには病気の治療や予防の効果はなく,脱毛の状態そのものに影響することはない。」

・「脱毛した患者の多くはウィッグを必要としており,患者の希望に応じたウィッグの使用が勧められる。」

大切なのは「患者の希望に応じた」という部分です。ガイドラインは、患者さんがウィッグに積極的でないときに医療者が率先して勧めると、「隠さなければいけない症状である」というメッセージを与える危険がある、とまで書いています。帽子やスカーフで過ごす人もいます。どれを選んでもかまいません。

「あわててウィッグを準備する必要はありません」

がん情報サービスは、治療前はウィッグがあったほうがよいと思っていても実際には使わない場合もあるため、「あわててウィッグを準備する必要はありません」としています。一方で、治療前には不要だと思っていても、脱毛が始まると気持ちが変わることもあります。だからこそ、買うかどうかは決めずに、情報だけ先に集めておくのがおすすめです。

ウィッグを使う期間は、平均12.5か月 乳がんで化学療法を受けた日本人女性のウィッグ使用率 当初 84% 治療終了から1年後 47% 治療終了から2年後 15.2% 「一生使うもの」ではなく、1年前後の付き合いになる人が多いということです。 5年後も使っている人が数人いたとも報告されています。

がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年版 BQ41の解説をもとに作成

値段と選び方

自治体の助成

ガイドラインによると、2020年12月の時点で26都道府県の自治体がウィッグの購入費用の助成制度を設けていて、1〜3万円程度のところが多く、市区町村によって異なります。最新の状況は、お住まいの市区町村のホームページや窓口、がん相談支援センターで確認してください。

円形脱毛症など、ほかの病気での脱毛については円形脱毛症の記事で、ウィッグの位置づけを書いています。

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この章で扱った医療用ウィッグです。がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年版は、「脱毛した患者の多くはウィッグを必要としており,患者の希望に応じたウィッグの使用が勧められる。」としています。

※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。ウィッグに、脱毛を防いだり治したりする効果はありません。ガイドラインも「ウィッグには病気の治療や予防の効果はなく」としています。急いで買う必要はありません。試着してつけ心地や重さ、通気性を確かめ、返品・交換ができるかを購入前に確認してください。お住まいの自治体の助成制度もあわせてご確認ください。

8. 抜け始めの時期は、帽子が助けになる

抜け始めの数週間は、枕や床、お風呂場に髪がたくさん落ちて、気持ちがいちばん揺れる時期です。がん情報サービスは、この時期の工夫として次のように書いています。

「髪の抜け始めは、バンダナや室内でも利用できる柔らかい素材の帽子を使うことで、外見的なカバーに加えて、床に髪の毛が落ちるのを防いだり、布団や枕に髪の毛がつきにくくなります。」

髪が長いと抜けた毛が絡まりやすいため、治療が始まる前に短く切っておく人もいます。なお、頭に放射線治療をする場合は、頭を固定する器具(シェル)を作ったあとに髪型が大きく変わると固定の位置がずれることがあるので、髪型を変えるのはシェルを作る前がよいとされています。

抜け始めのころは、頭皮が引っ張られるような痛みや、ひりひり感、かゆみを感じることもあります。多くは一時的ですが、気になるときは担当医に伝えてください。

髪がない頭皮は、日差しを直接受けます。ガイドラインは、薬物療法中の紫外線対策として、外出時に帽子や日傘などで物理的に防ぐことを勧めています。室内用の帽子とは別に、外出用につばのある帽子があると安心です。

9. 眉毛とまつ毛

ガイドラインによると、外来で化学療法を受けている人への調査で、女性では頭髪に加えてまつ毛と眉毛の脱毛も、苦痛の大きい外見の変化の上位に挙がっていました。顔の印象が変わるからです。

がん情報サービスが紹介している工夫です。

眉毛やまつ毛は、髪の毛のあとに抜け始め、髪の毛より先に生え始めることが多いといわれています。

まつ毛の再発毛については、ガイドラインがビマトプロストという薬について「有用である可能性がある。」としています。これは医師が処方する医薬品で、市販の「まつ毛美容液」とは別物です。市販のまつ毛美容液の問題点はまつ毛美容液の記事にまとめています。眉のアートメイクについては、がん患者さんの生活の質が良くなる根拠も、害の根拠も「ほとんどない」とされています。

10. 生えてきた髪——カラーとパーマはいつから

髪が生えてくると、「いつまでも白髪のままでウィッグを外せない」「くせ毛を伸ばしたい」という悩みが出てきます。また最近は、脱毛しない化学療法を長く続ける人も増えています。ヘアカラーやパーマ剤の業界の自主基準では、「病中、病後の回復期」の人は使用を控えるべき対象とされていますが、ガイドラインは生活の質の視点から、一律に禁止するのではなく、条件を示しています。

ヘアカラー(白髪染め)——5つの条件

ガイドラインは、次の5つを満たしたうえで、専門家が注意深くヘアカラー剤で染めることを「否定しない」としています。

① 過去に染毛剤によるアレルギーや皮膚症状がない

② 頭皮に湿疹などがない

③ 染毛剤の使用に適した長さまで伸びている

④ 地肌に薬剤がつかないように染める

⑤ 使用前のパッチテストが陰性

染められる長さと量になるまでには、治療が終わってから6か月程度かかると考えられています。生え始めの髪は細く弱いので、この期間をおくことが必要とされています。また、ヘアマニキュアやカラートリートメントなどは、製品の注意書きに従って注意深く使うなら「否定しない」とされています。

ヘアカラーの主成分の酸化染料は、かぶれ(アレルギー性接触皮膚炎)を起こしやすい成分です。パッチテストの大切さは毛染めによるかぶれの記事で詳しく書いています。

パーマ・縮毛矯正——4つの条件

パーマや縮毛矯正についても、ガイドラインは「患者の QOL が向上するならば,十分に毛髪が伸びた後,技術力のある理美容師が縮毛矯正(ストレートパーマ)またはウェーブパーマを行うことを否定しない。」としています。条件は、頭皮や顔・首・手に腫れや傷、皮膚の病気がないこと、過去にパーマ剤でかぶれたことがないこと、十分な長さに伸びていること、頭皮に薬剤がつかないように施術すること(頭皮から1〜2cm離して塗るとよい)です。

がん情報サービスも、できる限り治療前に使っていた製品を使うこと、パーマ剤や染毛剤が頭皮につかないよう美容室や理容室で施術を受けることを勧めています。いずれも、施術のあとに頭皮にトラブルが出たら、すぐに皮膚科を受診してください。

11. 🚨 相談の目安

担当医や皮膚科に相談したい状態

① 頭皮が赤く腫れる、じくじくする、強い痛みやかゆみが続く

② 治療が終わって6か月たっても、十分に生えてこない

③ カラーやパーマのあとに、頭皮や顔にかゆみ・赤み・腫れが出た(すぐに皮膚科へ)

④ 脱毛のことで気持ちが沈む、外出がつらい

④はとても大切です。脱毛による外見の変化は、年齢や性別にかかわらず、生活の質に影響することがあります。担当の医師や看護師、薬剤師のほか、がん相談支援センターでも相談できます。同じ経験をした人の話を聞ける患者会や患者サロンの情報も、そこで教えてもらえます。

この記事のまとめ

① 抜け始めは治療開始から1〜3週間(平均18.0日)、生え始めは終了から平均3.4か月

② 脱毛の起こりやすさは薬によって0.04%から100%。治療が決まったら確認を

③ 推奨がついた予防法は頭皮冷却だけ(周術期の乳がんに限った弱い推奨・保険適用外)

④ 予防や発毛を促す効果が十分に確認された製品はまだない

⑤ シャンプーは今まで使っていたものが第一優先

⑥ ウィッグは急いで買わなくていい。使う期間は平均12.5か月、自治体の助成も確認を

⑦ 生えてきた髪のカラー・パーマは、十分に伸びてから、条件を満たして

12. よくある質問

抗がん剤の点滴を始めてから、いつごろ髪が抜け始めますか?

薬を投与してから1〜3週間後が目安です。乳がんの患者さんを対象にした日本の調査では、脱毛は化学療法の開始から平均18.0日後に始まっていました。がん情報サービスも「脱毛は、原因となる薬剤を投与してから1~3週間後から始まり」としています。抜け始めるまでに数週間あるので、その間に準備ができます。髪を短く切っておく、室内で使える柔らかい帽子を用意する、ウィッグの情報を集めておく、といったことです。ただし、脱毛が起こるかどうかや程度は、使う薬によって大きく違います。まず担当の医師や薬剤師、看護師に、自分の治療で脱毛が起こるかを確認してください。

脱毛を防ぐシャンプーやサプリメントはありますか?

現時点ではありません。国立がん研究センターのがん情報サービスは、「2025年3月現在、がんの治療による脱毛の予防や発毛を促す効果が十分に確認された製品はありません。」と書いています。学会のガイドラインも、ヘアケアについて「特定のヘアケア製品を推奨または否定する根拠はなく」としていて、シャンプーは「化学療法前に使用していたヘアケア製品の選択を第一優先とする」としています。推奨がついている予防法は、点滴の前後に頭皮を冷やす頭皮冷却だけで、それも周術期の化学療法を受ける乳がんの患者さんに限った弱い推奨です。頭皮冷却は2025年3月時点で公的医療保険の適用外です。「抜けない」「すぐ生える」とうたう高価な製品を勧められても、まず担当の医療者に相談してください。

ウィッグはいつ、いくらくらいのものを買えばいいですか?

急いで買う必要はありません。がん情報サービスは、治療前はウィッグがあったほうがよいと思っていても実際には使わない場合もあるため、「あわててウィッグを準備する必要はありません」としています。一方で、脱毛が始まると気持ちが変わることもあるので、治療が始まる前に種類や値段、選び方の情報を集めておくのがおすすめです。価格は数千円から数十万円までさまざまで、「高額であれば自分に合うということもありません」とされています。がん患者さんを対象にした調査では、女性の購入価格の中央値は38,000円でした。購入前に、返品・交換ができるかを確認しておくと安心です。また、ウィッグの購入費用を助成している自治体があります。お住まいの市区町村の窓口やホームページ、がん相談支援センターで確認してください。

治療が終われば、元の髪に戻りますか?

多くの場合は生えてきます。日本の調査では、治療が終わってから平均3.4か月で再び生え始めていました。がん情報サービスは、2〜3か月で産毛のような柔らかい毛が伸びてきたことを実感でき、3〜6か月で短い毛が生えそろうことが多いとしています。生えてきた髪は、くせ毛になったり白髪が増えたりすることがありますが、多くは一時的です。ただし、ガイドラインには、治療前の状態に戻っていない人が治療後1年の時点で47.3%いたという報告も紹介されています。治療が終わって6か月たっても生えそろわない場合は、担当医や皮膚科に相談してください。ミノキシジルの塗り薬は、再発毛を早める可能性はあるものの、ガイドラインは「現時点では明確なエビデンスがあるとはいえない」としています。

生えてきた髪を染めたり、パーマをかけたりしてもいいですか?

条件つきで可能です。ガイドラインは、次の5つを満たしたうえで、専門家が注意深くヘアカラー剤で染めることを「否定しない」としています。過去に染毛剤でアレルギーや皮膚症状が出たことがない、頭皮に湿疹などがない、染毛に適した長さまで伸びている、地肌に薬剤がつかないように染める、使用前のパッチテストが陰性、の5つです。染められる長さと量になるまでには、6か月程度かかると考えられています。ヘアマニキュアやカラートリートメントは、製品の注意書きに従って注意深く使うなら「否定しない」とされています。パーマや縮毛矯正も、十分に伸びてから、技術力のある理容師・美容師に頭皮につかないよう施術してもらうことが条件です。いずれも、頭皮に赤みやかゆみが出たら、すぐに皮膚科を受診してください。

参考にした主な資料

凪
なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した推奨・数値・対処法は、日本がんサポーティブケア学会「がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年版」と国立がん研究センター がん情報サービス「脱毛」(2025年3月更新)にもとづくもので、公開時点の情報です。脱毛の起こりやすさ・時期・程度は、治療の内容と個人によって異なります。ご自身の治療については担当の医師・薬剤師・看護師にご確認ください。頭皮冷却の実施の可否や費用、ウィッグ購入の助成制度は、医療機関・自治体によって異なります。ミノキシジルなどの薬を使う場合は、治療中の薬との兼ね合いがあるため、必ず担当医にご相談ください。ヘアカラー・パーマのあとに頭皮や顔に症状が出た場合は、皮膚科を受診してください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。