1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 髪型で抜け毛は起きない | ポニーテール・編み込み・三つ編み・お団子など、引っ張る髪型を続けると抜けることがある(牽引性脱毛症) |
| 抜けても、また生えてくる | 初期なら戻るが、長く続いて毛包まで傷むと永久に生えてこなくなることがある |
| 抜け毛は頭皮の問題だけ | 毛は内臓の状態を映す鏡。甲状腺機能低下症・亜鉛欠乏症・膠原病などでも抜ける |
| 毛を抜く癖には育毛剤を | 抜毛症は抜くのをやめれば自然に回復し、塗り薬や育毛剤は全く必要ない |
| これをすれば抜けないという方法がある | 特別な予防法はない。原因をつくらない生活とヘアケアが大切 |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
生え際や分け目が薄くなってきたら、まず毎日の髪型を見直す。そして、抜け毛の原因は自分では見分けにくいので、早めに皮膚科へ。早く気づくほど、元に戻る可能性が高くなります。
2. 髪は1日0.4mm伸び、1日100本ほど抜ける
この記事で使う資料は、日本皮膚科学会の皮膚科Q&A「脱毛症」です。まず、髪の生えかわりのしくみから。
| 皮膚科Q&Aの説明 | |
|---|---|
| 髪の本数 | 頭髪は約10万本。そのほとんど(約85〜90%)が「伸びる毛」 |
| 成長期 | 毛をつくる力のある時期。毛包ごとに異なるが大体2〜6年 |
| 伸びる速さ | 毛は1日約0.4mm伸びる |
| 退行期・休止期 | 毛包の下の部分が縮む「退行期」、休む「休止期」。休止期は2〜3か月で、次の成長期の準備ができると毛が抜ける |
| 1日に抜ける量 | 個人差や季節差はあるが、おおよそ1日100本程度まで |
この生えかわりのサイクルを毛周期といいます。皮膚科Q&Aは、「脱毛症」は一つの病気ではなく、毛をつくる毛包や毛が何らかの理由で壊されるものと、毛周期が乱れて抜け毛が多くなるものの、大きく2つに分けられるとしています。毛周期と男女の薄毛の違いは髪はなぜ抜けるのかでも書いています。
3.【核心】引っ張る髪型で起こる「牽引性脱毛症」
ヘアスタイルと脱毛症の関係について、皮膚科Q&Aはこう答えています。
「髪の毛が強くひっぱられるような髪型を習慣的に行うことで髪の毛が抜けることがあり、牽引性脱毛症と呼ばれています。ポニーテールや編み込み、三つ編み、お団子など一定の髪型を続けることで起こりやすく、特に前髪を後ろにひっぱるような髪型を長期間続けることで生え際の髪が抜けやすくなってしまいます。」
髪型だけではありません。Q&Aは「エクステンションやヘアアイロンなどの習慣も毛が引っ張られる力が加わるため、強さによっては原因となることがあります。」とも書いています。
| 原因になりうる習慣(Q&Aより) | 起こりやすいこと |
|---|---|
| ポニーテール・お団子・編み込み・三つ編み | 同じ髪型を続けると抜けやすい |
| 前髪を後ろに引っ張る髪型を長期間 | 生え際の髪が抜けやすい |
| エクステンション・ヘアアイロン | 引っ張る力の強さによっては原因になる |
仕事で毎日髪をきつくまとめる方、同じ分け目・同じ結び方を何年も続けている方は、生え際や分け目の変化に気をつけてみてください。
4. 戻る抜け毛、戻らない抜け毛
牽引性脱毛症で大切なのは、時間との勝負だという点です。
「牽引性脱毛症は初期の段階であれば原因となっている髪型をやめることで元に戻りますが、長時間続くことで髪の毛をつくり、支える土台となる毛包まで障害を受けると永久的に髪が生えてこなくなることがあります。そのため早めに原因に気づき、皮膚科に相談して髪型やヘアケア習慣を変えたり工夫したりすることが大切です。」
なぜ戻らなくなることがあるのか。皮膚科Q&Aは別の質問で、毛が生えるかどうかは毛包がどの程度ダメージを受けたかによると説明しています。毛包には幹細胞があり、多少壊れても修復できますが、幹細胞が完全に壊されると永久脱毛になりえます。完全に壊れていなくても、強いダメージを受けると細く弱い毛しかつくれなくなる場合もあります。
膠原病は、エリテマトーデスなど。頭皮の白癬は、白癬菌が毛に感染して起こるケルスス禿瘡のことです。
だからこそ、Q&Aは「心配な場合には、できるだけ早く医療機関を受診すると良いでしょう。」としています。
5. 毛を抜いてしまう癖(抜毛症)
考え事をしているときに髪をさわる癖がエスカレートして、毛を抜いてしまうようになることがあります。皮膚科Q&Aは、これを抜毛癖(トリコチロマニア)と呼び、頭髪だけでなく眉毛やまつ毛を抜いてしまう方もいること、子どもから大人まで幅広い年齢で起こる可能性があることを説明しています。
「抜毛癖は機械的な刺激による脱毛症であり、毛を抜くことがなくなれば自然に治っていきますので、ステロイド外用剤や育毛剤などを塗る必要は全くありません。」
ただし、抜毛症は円形脱毛症と区別するのが難しい場合があるため、皮膚科専門医の診察を受けることが勧められています。心理的な負担が明らかな場合などは、心療内科などの医師に相談するとよいとされています。お子さんの場合は、叱らずに温かく見守ることが最も重要と書かれています。円形脱毛症については円形脱毛症の記事で書いています。
6.【内科医の視点】抜け毛は、からだのサインのことがある
内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。皮膚科Q&Aは、こう書いています。
「皮膚だけでなく、毛も内臓の状態を映す鏡のようなもの、という考え方があり、実際に他の多くの病気に関連する脱毛症が知られています。」
| 抜け毛に関わる病気(Q&Aより) | あわせて読みたい記事 |
|---|---|
| 甲状腺機能低下症 | その疲れ、甲状腺かも |
| 亜鉛欠乏症 | 亜鉛と抜け毛 |
| 膠原病(エリテマトーデスなど) | 治療が遅れると永久に生えなくなることがある。早期診断・早期治療が極めて重要 |
| 副腎皮質機能不全症 | ホルモンの病気 |
| 感染症(頭皮の白癬=ケルスス禿瘡、梅毒など) | 頭部白癬(しらくも) |
特に、エリテマトーデスの脱毛やケルスス禿瘡について、Q&Aは「治療開始が遅れると脱毛部の皮膚が線維化して硬くなり永久に毛が生えなくなってしまうので(瘢痕性脱毛)、早期診断・早期治療が極めて重要です。」と強調しています。
抜け毛のほかにも体調の変化がある方は、健康診断の結果も見直してみてください。皮膚科Q&Aも、脱毛症の原因となる病気を見逃さないよう、髪の毛だけでなく全身の健康にも気を配ることを勧めています。
7. 手術・妊娠・ダイエットのあとの抜け毛
もう一つ知っておきたいのが、休止期脱毛です。皮膚科Q&Aはこう書いています。
「また大きな手術、重症の感染症、妊娠、過激なダイエットなどの後に、毛の抜けかわりが影響をうけ、抜け毛増える休止期脱毛という現象も知られています。」
体に大きな負担がかかると、毛周期が影響を受けて抜け毛が増えます。過激なダイエットが挙げられていることは、40〜50代で体重を落とそうとしている方にも知っておいてほしい点です。皮膚科Q&Aも、髪の新陳代謝には各種のビタミン・ミネラルが関係しているとして、バランスのとれた食生活を勧めています(8章)。
8. 抜け毛を防ぐために、日常でできること
皮膚科Q&Aは、まず「これをすれば髪の毛が抜けなくなるという、特別な予防法があるわけではありません」と前置きしたうえで、抜け毛の原因をつくらないための注意点を挙げています。
| 項目 | 皮膚科Q&Aの注意点 |
|---|---|
| 髪型・カラー | 髪に負担のかかる髪型や、極端に頻回のカラーリングはなるべく避ける |
| 洗髪 | 自分にあったシャンプーやコンディショナーを使い、頭皮が乾燥しすぎたり油っぽくならない頻度で洗う |
| 食事 | 髪の新陳代謝にはビタミン・ミネラルが関係するので、バランスのとれた食生活 |
| 生活 | 休止期脱毛もあるため、無理をせず、適度に休息し、規則正しい生活を |
| 観察 | 変化に早く気づけるよう、普段から抜け毛の量や頭皮の状態を把握しておく |
カラーリングによるかぶれについてはヘアカラーのかぶれ、シャンプーの選び方の考え方はヘアケアの記事で書いています。
9. 受診したほうがよいとき
皮膚科で相談したいとき(資料の記述から)
・生え際や分け目が薄くなってきた(牽引性脱毛症は早めに気づいて相談するのが大切)
・抜け毛が増えた、毛が細くなったなど、心配な変化がある(できるだけ早く受診)
・毛を抜いてしまう癖がある(円形脱毛症との区別のため、皮膚科専門医へ。心理的な負担が大きければ心療内科なども)
・抜けたところの皮膚が硬くなってきた(瘢痕性脱毛のことがあります。早期の診断・治療を)
・抜け毛とともに、からだの不調がある(甲状腺・亜鉛・膠原病などの病気を見逃さない)
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 引っ張る髪型・エクステ・ヘアアイロンで牽引性脱毛症が起こる
② 初期なら髪型をやめれば戻る。長く続くと永久に生えないことがある
③ 抜毛症はやめれば自然に回復。育毛剤は不要
④ 毛は内臓の状態を映す鏡。甲状腺・亜鉛・膠原病などのサインのことも
⑤ 手術・妊娠・過激なダイエットのあとは休止期脱毛が起こりうる
⑥ 特別な予防法はない。早めに気づいて、早めに皮膚科へ
10. よくある質問
ポニーテールを毎日していると、髪は薄くなりますか?
日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aによると、ポニーテールや編み込み、三つ編み、お団子など、髪が強く引っ張られる髪型を習慣的に続けると、牽引性脱毛症と呼ばれる抜け毛が起こることがあります。特に前髪を後ろに引っ張る髪型を長期間続けると、生え際の髪が抜けやすくなります。エクステやヘアアイロンも、強さによっては原因になるとされています。
牽引性脱毛症は治りますか?
皮膚科Q&Aは、初期の段階であれば原因となっている髪型をやめることで元に戻るが、長時間続いて毛包まで障害を受けると、永久的に髪が生えてこなくなることがあるとしています。早めに原因に気づき、皮膚科に相談して髪型やヘアケア習慣を変えることが大切です。
1日に何本くらい抜けるのは普通ですか?
皮膚科Q&Aによると、1日に抜ける毛の量は、個人差や季節差、ヘアケアの仕方などにもよりますが、おおよそ1日100本程度までといわれています。頭髪は約10万本あり、そのほとんど(約85〜90%)が伸びる時期にあります。
抜け毛は、病気のサインのことがありますか?
皮膚科Q&Aは、毛も内臓の状態を映す鏡のようなものという考え方があるとし、膠原病(エリテマトーデスなど)、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能不全症、亜鉛欠乏症、梅毒などの感染症で脱毛が起こりうるとしています。エリテマトーデスの脱毛や頭皮の白癬(ケルスス禿瘡)では、治療が遅れると永久に毛が生えなくなることがあるため、早期の診断と治療が極めて重要とされています。
ダイエットのあと、抜け毛が増えました。
皮膚科Q&Aは、大きな手術、重症の感染症、妊娠、過激なダイエットなどのあとに、毛の抜けかわりが影響を受けて抜け毛が増える「休止期脱毛」という現象が知られているとしています。無理をせず休息をとり、バランスのとれた食生活を心がけることが勧められています。心配な場合は皮膚科を受診してください。
参考にした主な資料
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」(Q1・Q4・Q5・Q15〜Q18)