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MEDICALLY REVIEWED BEAUTY & HEALTH
髪と頭皮

亜鉛と抜け毛
——足りないと髪は抜けます。でも、とりすぎると銅が足りなくなります

「抜け毛には亜鉛」。サプリメントの棚や育毛の広告で、よく見かける言葉です。
たしかに、亜鉛が足りなくなると髪は抜けます。学会の診療指針も、脱毛を亜鉛欠乏の症状に挙げています。けれど、足りているかどうかは採血でしか分かりません。そして、とりすぎると銅が足りなくなり、貧血や、かえって毛髪の異常が起こることも知られています。
日本臨床栄養学会の「亜鉛欠乏症の診療指針」と、2025年版の食事摂取基準の数値から、亜鉛と抜け毛の本当の関係を整理します。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年10月3日 読了:約13分

1. 先に結論

資料から読み取れることを、先にまとめます。

よく聞く話資料が書いていること
亜鉛不足で髪が抜ける本当。指針は脱毛を亜鉛欠乏の症状に挙げ、後頭部から始まり頭全体に広がるとしています
抜け毛の人はみんな亜鉛不足抜け毛の原因はさまざま。足りているかは採血で確かめます
採血はいつでも同じ早朝空腹時が望ましい。午後は約20%下がり、食後も下がる
亜鉛サプリを飲めば髪が生える指針が補充を勧めるのは、欠乏の症状があり、値が低い人
亜鉛は多いほどよい女性の上限は1日35mg。とりすぎると銅欠乏(貧血・毛髪の異常など)
サプリでとるのがいちばんまずは食事。かき・レバー・赤身肉・大豆製品に多い

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

抜け毛に味覚の変化・口内炎・皮膚炎が重なっていたら、亜鉛不足を疑って採血を。そして亜鉛は、足りなくても、とりすぎても、髪に良くないミネラルです。

2. 亜鉛は、髪で何をしているのか

亜鉛は、体に欠かせないミネラルのひとつです。公益財団法人長寿科学振興財団の健康長寿ネットによると、成人の体内に約2g含まれ、数百におよぶ酵素の構成要素として、たんぱく質やDNAの合成などに関わっています。

日本臨床栄養学会の「亜鉛欠乏症の診療指針2018」によると、体内の亜鉛の約8%が皮膚と毛髪に存在します。そして、亜鉛が足りなくなると「体内の蛋白合成全般が低下する.」とされています。髪は、細胞が活発に分裂してたんぱく質を作り続けている場所です。指針は、蛋白合成が盛んな細胞や臓器で障害が起こりやすいと説明しています。

髪が抜ける仕組みやヘアサイクルについては髪はなぜ抜けるのかの記事で詳しく書いています。

3. 足りないと、どんなふうに抜けるのか

指針は、亜鉛欠乏による脱毛の特徴をこう書いています。

「機械的刺激を受けやすい後頭部に始まり,しだいに頭部全体に拡大する.眉毛なども脱落して全脱毛状態になる.円形脱毛症になることもある.」

枕などでこすれやすい後頭部から、というのが特徴です。また、円形脱毛症の人では血清亜鉛が低い例が多く、円形脱毛症44人のうち15人(34%)で血清亜鉛が70µg/dL以下だったという報告が紹介されています。円形脱毛症そのものについては円形脱毛症の記事をご覧ください。

抜け毛以外のサイン

亜鉛不足は、髪だけに出るわけではありません。指針は、亜鉛欠乏の症状として次のようなものを挙げています。

抜け毛にこうした症状が重なっているときは、亜鉛不足を疑う手がかりになります。逆に、抜け毛だけのときは、薄毛のタイプや甲状腺、鉄不足など、ほかの原因も考える必要があります。女性の抜け毛の原因の見分け方は女性の薄毛の記事にまとめています。

4. 足りなくなりやすいのは、どんな人か

食事から足りていない

指針は、国民健康・栄養調査(平成27年)をもとに、男女とも20歳代以降で「平均亜鉛摂取量は,推奨量に比べてやや少なく,摂取不足気味であると言える」としています。特に妊娠中・授乳中の女性は、推奨量に比べて著しく少ないとされています。

健康長寿ネットは、亜鉛の吸収を妨げるものとして、穀類や豆類に多いフィチン酸や食物繊維、加工食品に多い食品添加物を挙げ、アルコールは亜鉛の排出を増やすとしています。また、若い世代で食生活の乱れによる亜鉛欠乏から味覚障害を訴える人が増えていることにも触れています。

病気や薬が関わっている

指針は、慢性の肝臓の病気、糖尿病、慢性の炎症性腸疾患、腎臓の病気では、血清亜鉛の値がしばしば低いとしています。

そして、キレート作用(亜鉛と結びつく作用)のある薬を長く飲んでいると、亜鉛欠乏をきたすおそれがあるとしています。指針の表には、亜鉛欠乏による味覚障害を起こす主な薬として、関節リウマチ、パーキンソン病、うつ病、痛風、甲状腺の病気、てんかんなどの薬が並んでいます。

持病の薬を自己判断でやめるのは危険です。抜け毛や味の変化が気になったら、処方している医師に相談してください。

5. 確かめるのは採血——朝、空腹で

亜鉛が足りているかどうかは、見た目や自覚症状だけでは分かりません。指針は、亜鉛欠乏症を症状と血清亜鉛の値で診断するとしています。

亜鉛不足は、4つの条件で判断します 亜鉛欠乏症の診断基準(日本臨床栄養学会) ① 症状がある 皮膚炎、口内炎、脱毛症、食欲低下、味覚障害、貧血など(または血液のALPが低い) ② その症状の原因となる、ほかの病気が否定される ③ 血清亜鉛 60µg/dL未満 亜鉛欠乏症 ③ 血清亜鉛 60〜80µg/dL未満 潜在性亜鉛欠乏 ④ 亜鉛を補充すると症状が改善する 採血は早朝空腹時が望ましい。午後は約20%下がり、食後も下がる傾向があります。 ①②③を満たせば補充の対象。④まで満たして確定診断になります。

日本臨床栄養学会「亜鉛欠乏症の診療指針2018」の診断基準をもとに作成

基準は、60µg/dL未満が亜鉛欠乏症、60〜80µg/dL未満が潜在性亜鉛欠乏です。

測るタイミングで、値が変わる

ここが大切なポイントです。指針によると、血清亜鉛には日内変動があり、午前に高く、午後には約20%下がる傾向があります。食後にも下がる傾向があり、ストレスや一部のホルモンの状態でも値が変わります。そのため、

「血清亜鉛は,早朝空腹時に測定することが望ましい」

とされています。午後の外来で、昼食のあとに採血すると、実際より低く出ることがあるということです。また、採血した血液が溶血すると、見かけ上高い値になるとも書かれています。

亜鉛の値は、ふつうの健診の項目には入っていないことが多い検査です。気になる症状があれば、「亜鉛を測ってもらえますか」と医師に相談してみてください。

6. 足りないと分かったら——治療は医療機関で

指針によると、亜鉛欠乏症の症状があり、血液の値が低い場合は、食事からの亜鉛だけでは不十分で、亜鉛の補充療法が必要になるとされています。

日本では、2017年に酢酸亜鉛の薬(ノベルジン)の適応が広がり、「低亜鉛血症」の病名で処方できるようになりました。指針が示す治療量は、成人で亜鉛として1日50〜100mgです。

この量は、食事摂取基準の耐容上限量(女性35mg)を超えています。だからこそ、治療は医師の管理のもとで行います。指針は、亜鉛を投与している間は数か月に1回程度、血清亜鉛・銅・鉄を測ること、血清亜鉛が250µg/dL以上になれば減量すること、銅欠乏や鉄欠乏が見られたら減量や中止、補充を行うことを示しています。

自己判断で高用量のサプリメントを長く飲み続けることとは、まったく別のものです。

7.【重要】とりすぎると、銅が足りなくなる

必要な量と、超えてはいけない量 女性の亜鉛の1日あたりの量(日本人の食事摂取基準2025年版) 0 10 20 30 40mg 推奨量 7.0〜8.0mg 上限 35mg 推奨量と上限のあいだ 推奨量(女性) 18〜29歳 7.5mg/30〜64歳 8.0mg 65〜74歳 7.5mg/75歳以上 7.0mg とりすぎると 銅の吸収が妨げられ、銅欠乏に 貧血・毛髪の異常・白血球の減少など 妊娠中期・後期は推奨量に+2.0mg、授乳中は+3.0mg。男性の上限は年齢により40〜45mg。

健康長寿ネット「亜鉛の働きと1日の摂取量」(日本人の食事摂取基準2025年版の値)をもとに作成

亜鉛は、腸で吸収されるときに銅と拮抗する(競い合う)ことが知られています。指針はこの点を、吸収の章の最初に書いています。

健康長寿ネットは、とりすぎの影響について次のように書いています。

「亜鉛サプリメントの不適切な利用や、日常的に高濃度の亜鉛を摂取により、銅の吸収阻害による銅欠乏症(銅欠乏症の症状は、貧血、骨異常、毛髪異常、白血球減少、好中球減少、心血管系や神経系の異常、成長障害などがある)のおそれがあります」

注目していただきたいのは、銅欠乏の症状に「毛髪異常」が入っていることです。髪のためにと思って亜鉛をとりすぎると、かえって髪に異常が出ることがありうるのです。指針も、亜鉛投与の有害事象として、吐き気や腹痛、銅欠乏による貧血・白血球減少、鉄欠乏性貧血を挙げています。

日本人の食事摂取基準(2025年版)は、女性(18歳以上)の耐容上限量を1日35mg、男性を年齢により40〜45mgとしています。健康長寿ネットは、「通常の食事による、亜鉛の過剰摂取の可能性は低いですが」と書いています。問題になるのは、サプリメントを重ねて飲む場合です。

サプリメント全般の考え方はサプリメントの記事でも書いています。

8. 食事でとるには

亜鉛が多いのは、魚介・肉・大豆製品 可食部100gあたりの亜鉛量 かき(養殖・生) 14.0mg 豚レバー(生) 6.9mg 牛もも赤肉(生) 4.8mg きな粉 4.1mg 焼きのり 3.6mg 豚かたロース赤肉(生) 3.2mg うなぎかば焼 2.7mg 油揚げ 2.5mg ふだん食べる量は食品によって違います(かき1個のむき身は約15g、焼きのり1枚は約2g)。

健康長寿ネット「亜鉛の働きと1日の摂取量」の表(日本食品標準成分表にもとづく)をもとに作成

亜鉛は、魚介類、肉類、藻類、豆類などに多く含まれます。健康長寿ネットの表によると、可食部100gあたりで、養殖のかきが14.0mgと飛び抜けて多く、豚レバー6.9mg、牛もも赤肉4.8mg、きな粉4.1mgと続きます。

女性の1日の推奨量は、18〜29歳で7.5mg、30〜64歳で8.0mg、65〜74歳で7.5mg、75歳以上で7.0mgです。健康長寿ネットによると、令和元年の国民健康・栄養調査で、亜鉛の摂取量(全体の平均)は8.4mgで、穀類からとっている量がいちばん多く、次いで肉類、魚介類でした。

特別な食品を選ぶより、毎食に肉・魚・卵・大豆製品のおかずを1品入れることが基本です。たんぱく質と亜鉛は、同じ食品に多く含まれています。たんぱく質の記事で紹介した食べ方が、そのまま亜鉛にも役立ちます。

そのうえで、食が細い、偏りがちで食事だけでは推奨量に届きにくい場合に、上限を守ってサプリメントで補うのはひとつの方法です。ただし、それは「足りない分を補う」ためで、髪を生やすためではありません。

9. 🚨 受診の目安

医療機関に相談したい状態

① 抜け毛に加えて、味が分かりにくい・口内炎・皮膚炎・食欲低下がある

② 後頭部から抜け始め、範囲が広がってきた/眉毛も抜けてきた

③ 肝臓の病気・糖尿病・腸の病気・腎臓の病気がある、または長く飲んでいる薬がある

④ 亜鉛のサプリを長く飲んでいて、貧血、疲れやすさ、手足のしびれなどが出てきた

⑤ 円形の脱毛斑ができた、急に全体が抜けてきた

④は、銅欠乏の可能性も考えます。飲んでいるサプリメントの製品名と量を、そのまま医師に伝えてください。

この記事のまとめ

① 亜鉛が足りないと、後頭部から髪が抜け、頭全体に広がることがある

② 抜け毛に味覚障害・口内炎・皮膚炎が重なっていたら疑うきっかけに

③ 確かめるのは採血。60µg/dL未満が欠乏、60〜80µg/dL未満が潜在性欠乏

④ 採血は早朝空腹時に。午後は約20%下がる

⑤ 治療は医療機関で、亜鉛・銅・鉄を測りながら

⑥ 女性の上限は1日35mg。とりすぎると銅欠乏で貧血や毛髪の異常も

⑦ 基本は食事。かき・レバー・赤身肉・大豆製品に多い

10. よくある質問

抜け毛が増えました。亜鉛不足かどうかは、どうすれば分かりますか?

血液検査で血清亜鉛の値を測ると分かります。日本臨床栄養学会の診療指針は、60µg/dL未満を亜鉛欠乏、60〜80µg/dL未満を潜在性亜鉛欠乏としています。ただし、亜鉛の値は午後になると約20%下がり、食後にも下がる傾向があるため、「血清亜鉛は,早朝空腹時に測定することが望ましい」とされています。抜け毛だけでなく、味が分かりにくい、口内炎ができやすい、皮膚炎が治りにくいといった症状が重なっていれば、亜鉛不足を疑う手がかりになります。ほかの原因(甲状腺の病気、鉄不足、薄毛のタイプなど)もあるので、かかりつけ医や皮膚科で相談してみてください。

亜鉛のサプリを飲めば、髪は生えてきますか?

亜鉛が本当に足りない人では、補充で症状が良くなることが期待されます。診療指針も、亜鉛を補充して症状が改善することを診断の条件の一つにしています。ただし、指針が補充を勧めているのは、欠乏の症状があり、血液の値が低い人です。亜鉛が足りている人の抜け毛が、亜鉛を足すことで改善するという記載は、指針にはありません。まず採血で、本当に足りないのかを確かめてください。足りないと分かった場合の治療は、医療機関で処方される亜鉛製剤で、量を調節しながら定期的に血液を調べて行います。

亜鉛をとりすぎると、どうなりますか?

銅が足りなくなることがあります。亜鉛は腸で吸収されるときに銅と競い合うためです。健康長寿ネットは、亜鉛サプリメントの不適切な利用や、日常的に高濃度の亜鉛をとることで、銅の吸収が妨げられて銅欠乏症になるおそれがあるとしています。銅欠乏症の症状として、貧血、骨の異常、毛髪の異常、白血球の減少、神経系の異常などが挙げられています。髪のために飲んだ亜鉛で、かえって髪に異常が出ることもありうるということです。日本人の食事摂取基準(2025年版)では、女性の耐容上限量は18歳以上で1日35mgです。サプリメントは食事からの分と合わせて考え、複数の製品を重ねて飲まないようにしてください。

亜鉛は、どんな食べ物に多く含まれていますか?

魚介類や肉類に多く含まれます。健康長寿ネットの表によると、可食部100gあたりで、養殖のかきが14.0mg、豚レバーが6.9mg、牛もも赤肉が4.8mg、きな粉が4.1mg、焼きのりが3.6mgです。女性の1日の推奨量は、30〜64歳で8.0mg、18〜29歳と65〜74歳で7.5mgです。穀類や豆類に多いフィチン酸や食物繊維は亜鉛の吸収を妨げ、アルコールは亜鉛の排出を増やすとされています。加工食品に偏った食事も、亜鉛不足につながることがあります。主食・主菜・副菜をそろえて、肉や魚、大豆製品を毎日の食事に入れることが基本です。

飲んでいる薬で亜鉛が不足することはありますか?

あります。診療指針は、キレート作用(亜鉛と結びつく作用)のある薬を長く飲んでいると亜鉛欠乏をきたすことがあると書いています。亜鉛欠乏による味覚障害を起こす主な薬として、関節リウマチの薬、パーキンソン病の薬、うつ病の薬、痛風の薬、甲状腺の薬、てんかんの薬などが表にまとめられています。また、肝臓の病気、糖尿病、慢性の炎症性腸疾患、腎臓の病気がある人では、血清亜鉛の値が低いことが多いとされています。持病の薬を自己判断でやめるのは危険です。抜け毛や味の変化が気になったら、処方している医師に相談してください。

参考にした主な資料

凪
なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した診断基準・数値は、日本臨床栄養学会「亜鉛欠乏症の診療指針2018」と健康長寿ネット「亜鉛の働きと1日の摂取量」(日本人の食事摂取基準2025年版の値)にもとづくもので、公開時点の情報です。抜け毛にはさまざまな原因があり、亜鉛不足はそのひとつにすぎません。亜鉛の補充が必要かどうかは、症状と血液検査をもとに医師が判断します。サプリメントを利用する場合は耐容上限量を超えないようにし、持病のある方、薬を飲んでいる方、妊娠中・授乳中の方は医師・薬剤師にご相談ください。持病の薬を自己判断で中止しないでください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。