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検査と数値

糖尿病網膜症
——初期は自覚症状がほとんどない。糖尿病と言われたら、症状がなくても年1回の眼底検査を

健診で血糖値やHbA1cが高いと言われた。糖尿病の治療中だけれど、目は特に見えにくくないので眼科には行っていない——そんな方に向けた記事です。
日本眼科学会によると、糖尿病網膜症は、糖尿病によって網膜の血管が障害される病気で、放置すると失明に至ることもあり、日本では成人の中途失明原因の上位を占めています。
そして初期の段階では自覚症状がほとんどありません。そのため日本眼科学会は、糖尿病と診断された方は自覚症状がなくても定期的に眼底検査を受けることが重要とし、年1回の定期検査を推奨しています。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年10月23日 読了:約8分

1. 先に結論

よくある思い込み資料の記述
見えにくくなってから眼科に行けばいい初期の段階では自覚症状がほとんどなく、知らないうちに病気が進行していることも少なくない。症状がなくても年1回の定期検査が推奨される
血糖さえ下がれば、網膜症も止まる初期の変化は血糖値のコントロールが良くなれば改善することもあるが、増殖網膜症の段階になると血糖の状態にかかわらず進行していく
レーザー治療で見え方が元に戻る網膜光凝固術は悪化を防ぐための治療で、元の状態に戻すための治療ではない。多くの場合、治療後の視力は不変かむしろ低下する
視力が落ちるのは進んでからだけ黄斑にむくみが生じる糖尿病黄斑浮腫は、初期の段階でも起こることがあり、視力が低下する

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

糖尿病と言われたら、見え方に問題がなくても年1回は眼科で眼底検査を受けてください。治療の基本は血糖・血圧・脂質の全身管理で、眼科の治療はそれに加えて行います。

2. 糖尿病網膜症とは

網膜は、眼の奥で光を感じ取り映像を脳に伝える組織で、細い血管が密に張り巡らされています。日本眼科学会によると、原因は長期間にわたる高血糖です。

3.【核心】進行の3段階

糖尿病網膜症の3段階 日本眼科学会(監修:日本網膜硝子体学会)の解説をもとに整理 ① 単純網膜症 初期 毛細血管瘤、小さな出血、硬性白斑 自覚症状はほとんどない 血糖値のコントロールが良くなれば 改善することもある ▼ 細い血管が広い範囲で詰まると ② 前増殖網膜症 一歩進行 網膜が酸素不足になり、新生血管の準備が始まる かすみを自覚することが多いが、 全く自覚症状がないこともある 多くの場合、網膜光凝固術(レーザー)が必要 ▼ 新生血管が網膜や硝子体に伸びると ③ 増殖網膜症 硝子体出血、牽引性網膜剥離 血糖の状態にかかわらず進行。若いほど早い 手術を必要とすることが多くなる 出典:日本眼科学会「糖尿病網膜症」をもとに作図

増殖網膜症で硝子体に出血すると、黒い影やゴミのようなものが見える飛蚊症や、出血量が多いと急な視力低下を自覚することがあります。

「この時期になると血糖の状態にかかわらず、網膜症は進行していきます。特に年齢が若いほど進行は早く、注意が必要です。」(日本眼科学会「糖尿病網膜症」——増殖糖尿病網膜症について)

飛蚊症や網膜剥離そのものについては飛蚊症と網膜剥離の記事で書いています。

4. どの段階でも起こる「糖尿病黄斑浮腫」

黄斑は網膜の中心にあり、ものを見るために最も重要な部分です。黄斑付近に毛細血管瘤などが多発したり、血液成分が染み出たりして、黄斑にむくみが生じた状態が糖尿病黄斑浮腫です。

黄斑の病気としては、加齢で起こる加齢黄斑変性もあります。

5. 症状と、とくに注意が必要な人

時期資料の記述
初期自覚症状がほとんどない。知らないうちに病気が進行していることも少なくない
進行するとかすんで見える、視力が低下する、視野の一部が暗く見える、飛蚊症が増える
出血が起こると突然視界が真っ黒になることもある

日本眼科学会は、とくに注意が必要な方として次を挙げています。

6. 検査——症状がなくても年1回

「糖尿病と診断された方は、自覚症状がなくても定期的に眼底検査を受けることが重要です。」(日本眼科学会「糖尿病網膜症」)

日本眼科学会は、症状がなくても年1回の定期検査を推奨しています。

7. 治療——全身管理と、レーザー・注射・手術

日本眼科学会は、治療の基本は、まず血糖・血圧・脂質の全身管理だとしています。眼科の治療は、進行の程度によって異なります。

状態眼科の治療(資料の記述)
糖尿病黄斑浮腫抗VEGF薬の硝子体内注射でむくみを軽減する。通常、繰り返し注射が必要になることが多い
前増殖網膜症網膜光凝固(レーザー治療)で虚血部分を焼き固め、新生血管の発生を防ぐ。通常は通院で行う
増殖網膜症新生血管や出血が進んだ場合は、硝子体手術で血液を取り除き、網膜を修復する。眼球にあけた3、4つの穴から細い器具を入れる

「この治療は網膜症の悪化を防ぐための治療であって、決して元の状態に戻すための治療ではありません。」(日本眼科学会「糖尿病網膜症」——網膜光凝固術について)

日本眼科学会は、網膜光凝固術のあと多くの場合、視力は不変かむしろ低下するとしたうえで、失明予防のために大切な治療だとしています。

8.【内科医の視点】内科と眼科、両方に通う

内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。資料は、治療の基本を血糖・血圧・脂質の全身管理としつつ、自覚症状がなくても年1回の眼底検査を推奨しています。内科で血糖の治療を受けていても、眼底は眼科で調べなければわかりません。内科の通院と、眼科の年1回の検査をセットで続けてください。

また、網膜症は高血圧・腎臓病を合併している方でとくに注意が必要とされています。健診で血糖値やHbA1cが「境界型」と言われた段階の考え方は糖尿病予備軍の記事で書いています。

9. 眼科を受診したいとき

すぐに眼科を受診したいとき

・突然視界が真っ黒になった、急に視力が落ちた

・黒い影やゴミのようなもの(飛蚊症)が急に増えた

眼科で定期的に診てもらいたいとき

・糖尿病と診断された(自覚症状がなくても年1回)

・かすんで見える、視野の一部が暗く見える

・血糖コントロールが不十分、高血圧・腎臓病がある、糖尿病の期間が長い

最後に、この記事の要点をもう一度。

① 糖尿病網膜症は、日本の成人の中途失明原因の上位

② 初期は自覚症状がほとんどない。症状がなくても年1回の眼底検査

③ 単純 → 前増殖 → 増殖の3段階。増殖網膜症は血糖の状態にかかわらず進行

④ 糖尿病黄斑浮腫は初期でも起こり、視力が低下する

⑤ 治療の基本は血糖・血圧・脂質の管理。レーザーは悪化を防ぐ治療で、元に戻す治療ではない

10. よくある質問

目が見えにくくなければ、眼科に行かなくてもいいですか?

日本眼科学会によると、糖尿病網膜症は初期の段階では自覚症状がほとんどなく、知らないうちに病気が進行していることも少なくありません。そのため、糖尿病と診断された方は自覚症状がなくても定期的に眼底検査を受けることが重要とされ、症状がなくても年1回の定期検査が推奨されています。

糖尿病網膜症にはどんな段階がありますか?

日本眼科学会によると、単純糖尿病網膜症、前増殖糖尿病網膜症、増殖糖尿病網膜症の3段階に分けられます。増殖網膜症では新生血管が網膜や硝子体に向かって伸び、硝子体出血や牽引性網膜剥離を起こすことがあり、手術を必要とすることが多くなります。

血糖をコントロールすれば網膜症は良くなりますか?

日本眼科学会によると、初期の単純網膜症でみられる変化は、血糖値のコントロールが良くなれば改善することもあります。一方、増殖網膜症の段階に至ると、血糖の状態にかかわらず網膜症は進行し、とくに年齢が若いほど進行は早いとされています。

レーザー治療をすると見え方は良くなりますか?

日本眼科学会によると、網膜光凝固術は網膜症の悪化を防ぐための治療で、元の状態に戻すための治療ではありません。多くの場合、治療後の視力は不変かむしろ低下しますが、失明予防のために大切な治療とされています。

糖尿病黄斑浮腫とは何ですか?

日本眼科学会によると、網膜の中心にある黄斑の付近に毛細血管瘤などが多発したり血液成分が染み出たりして、黄斑にむくみが生じた状態です。単純網膜症の段階でも起こることがあり、視力が低下します。抗VEGF薬の硝子体内注射でむくみを軽減しますが、効果は永続的ではないため、通常、繰り返し注射が必要になることが多いとされています。

参考にした主な資料

凪
なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した内容は、日本眼科学会の一般向け解説(監修:日本網膜硝子体学会)にもとづくもので、公開時点の情報です。糖尿病と診断された方は、自覚症状がなくても眼科で定期的に眼底検査を受けてください。突然視界が真っ黒になった、急に視力が落ちたといった場合は、すぐに眼科を受診してください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。