1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 股関節の痛みは高齢になってから | 発症年齢は平均40〜50歳。女性では子どもの頃の股関節の発育の問題が主な原因 |
| 痛み止めは毎日飲んでおく | できれば調子の悪い時や、どうしても負担をかけなければならない時に限定して使うほうが良い |
| 杖を使うと弱って見える | 心理的抵抗がなければ杖の使用も勧められる |
| 運動や生活の工夫で、進行を止められる | 保存療法で病態の進行を抑止することは困難とされる。手術を選ぶ時期を逃さないことが重要 |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
脚の付け根の痛みが続くときは整形外科へ。変形性股関節症と言われたら、痛みを悪くしない使い方、体重、杖、水中歩行などで負担を減らし、運動と生活指導を一緒に続けてください。良くならないときは、手術の時期を主治医と相談しましょう。
2. 症状——脚の付け根の痛みと、日常動作のしにくさ
日本整形外科学会によると、主な症状は関節の痛みと機能障害です。股関節は鼠径部(脚の付け根)にあるので、最初は立ち上がりや歩き始めに脚の付け根に痛みを感じます。
- 進行すると痛みが強くなり、常に痛む(持続痛)、夜寝ていても痛む(夜間痛)こともある
- 足の爪切りがやりにくい、靴下が履きにくい、和式トイレや正座が難しくなる
- 長い時間立ったり歩いたりすることがつらくなり、台所仕事などの家事に支障が出る
- 階段や車・バスの乗り降りに手すりが必要になる
理学療法ガイドラインは、歩くときの膝への負担が増えるため膝の痛みを伴いやすく、変形性膝関節症の発症や進行のリスクが高くなるとしています。膝については変形性膝関節症の記事で書いています。
3. 原因と、進み方
- 関節軟骨がすり減ることをきっかけに、股関節が壊れ、変形する病気
- 日本では、寛骨臼蓋形成不全(骨盤側の受け皿が浅い)など、何かの病気や状態に続いて起こる二次性のものが多い
- 高齢社会になり、はっきりした原因となる病気がなくても、年齢とともに発症することがある
- 有病率は男性0〜2.0%、女性2.0〜7.5%と女性で高い(X線による診断)
症状の進み方には個人差があります。
4.【核心】負担を減らして大事に使う
「関節は一生に一個しかありませんので、本症と診断されたらまず負担を減らして大事に使うということが大切になります。」(日本整形外科学会「変形性股関節症」)
| 工夫 | 資料の記述 |
|---|---|
| 使い方を観察する | 初期のうちは、どんな使い方で痛みが強くなるかを自分でよく観察し、日常生活と痛みを悪くしない使い方をよく合わせる |
| 痛み止め | 選択肢の一つ。できれば調子の悪い時やどうしても負担をかけなければならない時に限定 |
| 体重 | 過体重があればダイエットも考える |
| 杖 | 心理的抵抗がなければ杖の使用も勧められる |
| 運動 | 痛みで歩かなくなると筋肉が衰えるので、できれば水中歩行や水泳(平泳ぎを除く)を週2、3回行うと理想的。運動療法は痛みを誘発することがあるので、慎重に始めて徐々に強度を高める |
この章で扱った杖です。日本整形外科学会は、変形性股関節症について、負担を減らして大事に使うために、「心理的抵抗がなければ杖の使用もお薦めします。」としています。
※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。ここで紹介しているのは、折りたたみ式で長さを調節できる、アルミ製の一点杖(SGマーク付きと販売ページに表示)です。商品画像の表示では、重さ約250g、対応身長140〜160cmです。身長に合わない場合は、ほかの長さの杖を選んでください。杖の長さや持ち方などの使い方は、整形外科医や理学療法士に相談してください。杖は股関節の負担を減らす道具の一つで、痛みが強いときや良くならないときは受診してください。
5. 運動療法と生活指導
理学療法ガイドライン第2版は、変形性股関節症の発症・進行予防について、運動療法を単独で行うのと、生活指導などを併用するのとどちらが有効かを検討しています。
「変形性股関節症に対する発症・進行予防として、運動療法と生活指導の併用を条件付きで推奨する。」(理学療法ガイドライン第2版 第11章 変形性股関節症 CQ1)
- 推奨の強さは条件付き推奨、エビデンスの強さはC(弱い)。条件は「身体機能の維持改善に着目する場合」
- 運動療法と患者教育(生活指導を含む)の併用は、身体機能の維持改善に効果が示された
- 一方で、病気の発症や進行予防に有効かどうかは不明。ホットパックなどの物理療法との併用の有効性も不明
- 運動療法と生活指導は特別な機器や設備がなくてもでき、患者の負担は小さいと考えられている
6. 手術——時期を逃さない
日本整形外科学会によると、保存療法でも症状が取れない場合は手術を考えます。初期のうちは自分の骨を生かす骨切り術、変形が進んでいる場合は人工股関節手術の対象になります。
「保存療法選択により病態の進行を抑止することは困難であり、保存療法から手術療法を選択する時期を逸しないことが重要である。」(理学療法ガイドライン第2版 第11章 変形性股関節症 理学療法アルゴリズム)
人工股関節全置換術(THA)のあとは、脱臼のリスクや人工関節の耐用年数に配慮し、脱臼を防ぐ動作や股関節に負担をかけない動作の習得、杖の使用など、一人ひとりに応じた生活指導が必要とされています。
7.【内科医の視点】痛いから動かない、が筋肉を弱らせる
内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。資料は、痛みがあるとどうしても歩かなくなり、筋肉が衰えてしまうと書いています。そのうえで、股関節への負担が少ない水中歩行や水泳を勧め、運動は慎重に始めて徐々に強度を高めるのがポイントだとしています。筋肉の衰えについてはサルコペニアの記事で書いています。
もう一つは杖です。資料は「心理的抵抗がなければ」と前置きしたうえで杖を勧めています。杖の種類や長さ、使い方は、主治医や理学療法士と相談してください。
8. 受診したいとき
整形外科を受診・相談したいとき
・立ち上がりや歩き始めに脚の付け根が痛む
・靴下が履きにくい、足の爪が切りにくい、正座が難しい
・痛みで夜目が覚める、常に痛む
・子どもの頃に股関節の病気(発育性股関節形成不全など)を言われたことがある
・保存療法を続けても痛みが取れない(手術の時期の相談)
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 変形性股関節症は女性に多く、発症は平均40〜50歳。子どもの頃の股関節の発育の問題が主な原因
② 最初は立ち上がり・歩き始めの脚の付け根の痛み。靴下や爪切りがしにくくなる
③ 負担を減らして大事に使う:使い方の工夫、痛み止めは限定的に、体重、杖
④ 水中歩行や水泳。運動療法と生活指導の併用が条件付き推奨(身体機能のため)
⑤ 保存療法で進行は止めにくい。手術の時期を逃さない
9. よくある質問
変形性股関節症はどんな人に多いですか?
日本整形外科学会によると、患者さんの多くは女性で、その場合の原因は、発育性股関節形成不全の後遺症や股関節の形成不全といった子どもの頃の病気や発育障害の後遺症が主なもので、股関節症全体の80%といわれています。理学療法ガイドラインによると、日本での発症年齢は平均40〜50歳です。
最初はどんな症状が出ますか?
日本整形外科学会によると、最初は立ち上がりや歩き始めに脚の付け根に痛みを感じます。進行すると痛みが強くなり、常に痛む、夜寝ていても痛むこともあります。日常生活では、足の爪切りや靴下を履くことがしにくくなったり、正座が難しくなったりします。
杖を使ったほうがいいですか?
日本整形外科学会は、変形性股関節症と診断されたらまず負担を減らして大事に使うことが大切だとし、心理的抵抗がなければ杖の使用も勧めています。過体重があればダイエットも考えるよう勧めています。
どんな運動がいいですか?
日本整形外科学会によると、痛みがあると歩かなくなり筋肉が衰えるため、できれば水中歩行や水泳(平泳ぎを除く)を週2、3回行うと理想的です。運動療法は痛みを誘発する可能性があるので、慎重に始めて徐々に強度を高めることがポイントとされています。理学療法ガイドラインは、運動療法と生活指導の併用を条件付きで推奨しています。
手術はいつ考えればいいですか?
日本整形外科学会によると、保存療法でも症状が取れない場合に手術を考え、初期なら自分の骨を生かす骨切り術、変形が進んでいれば人工股関節手術の対象になります。理学療法ガイドラインは、保存療法で病態の進行を抑止することは困難で、手術を選ぶ時期を逃さないことが重要だとしています。
参考にした主な資料
- 日本整形外科学会「変形性股関節症」
- 日本理学療法学会連合「理学療法ガイドライン第2版 第11章 股関節機能障害」(変形性股関節症)