1. 先に結論
| 知っておきたいこと | 資料の記述 |
|---|---|
| 上腕の中央部で傷害 | 下垂手:手首と指が下がった状態。手の甲などの感覚の障害もある |
| 肘の曲げる側で傷害 (後骨間神経麻痺) | 下垂指:手首は上がるが、指の付け根が伸ばせない。感覚の障害はない |
| 原因 | けが、骨折、圧迫、ガングリオンなどの腫瘤、神経炎、運動のしすぎ など |
| 治療 | 外傷や腫瘤によるものは早期に手術。原因が明らかでないものは保存的治療で、3か月ほど様子を見る |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
橈骨神経麻痺は、神経がどこで傷害されたかによって、手首まで下がるのか(下垂手)、指だけが下がるのか(下垂指)、感覚の障害があるのかが変わります。日本整形外科学会は、骨折や脱臼などの外傷や腫瘤によるものは早期に手術が必要としています。詳しくは整形外科医に相談してください。
2.【核心】下垂手と下垂指——傷む場所で症状が変わる
| 下垂手 | 下垂指 | |
|---|---|---|
| 傷害される場所 | 上腕の中央部 | 肘の曲げる側(後骨間神経) |
| 手首 | 上げられない(背屈できない) | 上げられる(背屈は可能) |
| 指の付け根の関節 | 伸ばせない | 伸ばせない |
| 見た目 | 手首と指が下がる | 指だけが下がる |
| 感覚の障害 | ある:親指・人さし指・中指の背側を含む手の甲から、前腕の親指側 | ない(運動神経だけが傷害された場合) |
出典:日本整形外科学会「橈骨神経麻痺」をもとに整理。
下垂手でも、指の第1関節と第2関節は伸ばすことができるとされています。
また、前腕から手首にかけての親指側をけがなどで傷めた場合は、けがの部位によっていろいろな感覚の障害が起こります。前腕から手の甲の親指側、親指・人さし指・中指の背側の感覚の障害が生じますが、下垂手にはなりません。
3. なぜ起こるのか
| 傷害される場所 | 原因と仕組み |
|---|---|
| 上腕部 | 開放創や挫傷(けが)、上腕骨骨折や上腕骨顆上骨折などの骨折、圧迫など。上腕の中央部では、橈骨神経が上腕骨のすぐ後ろを通るので、外からの圧迫を受けやすく、骨折などで引っ張られたり、つぶれたり、切れたりしやすい |
| 肘(後骨間神経) | ガングリオンなどの腫瘤、腫瘍、モンテジア骨折(尺骨の骨折と橈骨頭の脱臼)などの外傷、神経炎、運動のしすぎによる絞扼性の神経障害など。後骨間神経は、フロセのアーケードという回外筋(筋肉)の入口の狭いトンネルに入るため、その部分は移動性がなく障害を受けやすい |
出典:日本整形外科学会「橈骨神経麻痺」の「原因と病態」をもとに整理。
日本整形外科学会は、神経炎で麻痺を起こすこともあるとしています。
4. 診断
- 上腕の中央部の傷害では、下垂手と上記の感覚障害がみられる。神経が傷害された部分をたたくと、その神経が受け持つ範囲に痛みが広がる(ティネル徴候)があれば、傷害部位が確定できる
- 後骨間神経麻痺は、下垂手とは感覚の障害がないことで診断できる
- 確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査、超音波検査などを必要に応じて行う
出典:日本整形外科学会「橈骨神経麻痺」の「診断」をもとに整理。
しびれる場所による見分け方は手根管症候群の記事で、小指と薬指がしびれる場合は肘部管症候群の記事で書いています。
5. 治療——3か月ほど様子を見ることも、早く手術が必要なことも
| 状態 | 治療 |
|---|---|
| 骨折や脱臼などの外傷、腫瘤によるもの | 早期に手術が必要 |
| 原因が明らかでないもの、回復の可能性のあるもの | 保存的治療:局所の安静、薬の内服、必要に応じて装具、運動療法など |
| 3か月ほど様子を見て全く回復しない、麻痺が進行する | 手術が必要になる |
| 神経損傷がある | 神経剥離、神経縫合、神経移植などの手術 |
| 神経の手術で回復の望みが少ない | 腱移行手術(ほかの筋肉で動かすようにする手術) |
出典:日本整形外科学会「橈骨神経麻痺」の「治療」をもとに整理。
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 上腕の中央部で傷害されると下垂手(手首と指が下がる・感覚の障害あり)
② 肘の曲げる側で傷害されると下垂指(指だけが下がる・感覚の障害なし)
③ 上腕では神経が骨のすぐ後ろを通るため、圧迫や骨折で傷害されやすい
④ 外傷や腫瘤によるものは早期に手術。原因が明らかでないものは保存的治療
⑤ 3か月ほど様子を見て全く回復しない、または麻痺が進むときは手術
6. よくある質問
下垂手と下垂指はどう違いますか?
日本整形外科学会によると、下垂手は手首を上げることと指の付け根の関節を伸ばすことができなくなり、手首と指が下がった状態です。下垂指は手首を上げることはできますが、指の付け根の関節を伸ばせず、指のみが下がった状態です。
しびれなどの感覚の障害はありますか?
学会によると、上腕の中央部で傷害されて下垂手になる場合は、親指・人さし指・中指の背側を含む手の甲から前腕の親指側に感覚の障害が生じます。肘の曲げる側で後骨間神経が傷害されて下垂指になる場合は、感覚の障害はありません。
原因は何ですか?
学会によると、上腕部ではけが、上腕骨の骨折、圧迫などで生じます。後骨間神経麻痺はガングリオンなどの腫瘤、腫瘍、外傷、神経炎、運動のしすぎによる絞扼性の神経障害などで生じます。
どんな治療をしますか?
日本整形外科学会によると、骨折や脱臼などの外傷や腫瘤によるものは早期に手術が必要です。原因が明らかでないものや回復の可能性のあるものは、局所の安静や薬の内服、装具などの保存的治療をし、3か月ほど様子を見て全く回復しないものや麻痺が進行するものでは手術が必要になります。
参考にした主な資料
- 日本整形外科学会「橈骨神経麻痺」