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体型と代謝

手首の骨折(橈骨遠位端骨折)
——女性は男性の3.2倍、冬に多い。ギプス中も指は動かして

凍った道や段差で転び、とっさに手をついた。その瞬間に起こりやすいのが、手首の骨折(橈骨遠位端骨折)です。
この骨折は、女性が男性の約3.2倍。年齢とともに増え、70歳以上の女性では若い人の17.7倍になります。起こる場所は屋外、季節は冬が多いとされています。
理学療法ガイドライン(第2版)は、ギプスで固定している間も、肩・肘・指を動かすことを提案しています。ある研究では、固定中から指を動かした人で指の関節が固まったのは12.5%、固定を外してから動かした人では78.6%でした。
そしてもう一つ。閉経後の女性の手首の骨折は、骨粗鬆症のサインであることがあります。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年10月19日 読了:約9分

1. 先に結論

よくある思い込み資料の記述
手首の骨折は、転び方が悪かっただけ閉経後の中年以降の女性では、骨粗鬆症で骨が脆くなっているので、簡単に折れます(日本整形外科学会)
ギプスの間は、腕ごと安静にしておく固定期間中の上肢や手指の関節可動域運動を行うことを提案(理学療法ガイドライン)
リハビリは通院しないと意味がない運動療法の実施を提案。患者教育(自宅練習の指導)でも同様の効果が期待できる
骨がつけば、それで終わり指のしびれ、腱の断裂、指のむくみと強い痛みなど、合併症がある。そして骨粗鬆症の検査につなげたい

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

手首の骨折で大切なのは、固定中から、医師の指示の範囲で肩・肘・指を動かすこと。そして、転んだ程度で手首が折れた方は、骨折が落ち着いたら骨密度の検査を受けることです。

2. どんな骨折か:転んで手のひらをついたとき

前腕(ひじから手首まで)には、親指側の橈骨(とうこつ)と小指側の尺骨の2本の骨があります。橈骨が手首のところ(遠位端)で折れるのが、橈骨遠位端骨折です。

「転倒して手掌をついた際に起こる骨折で、骨折の中で最も頻度の高いものの1 つであり、全骨折の10%程度を占める。」(理学療法ガイドライン 第2版 第10章)

日本整形外科学会の解説では、症状を次のように説明しています。

ガイドラインは、この骨折が10歳前後の子どもと、骨粗鬆症のある高齢者に多いとしています。若い人ではスポーツ中の事故で起こることが多く、中高年以降では転んだときに手をついて起こるのが典型です。

3.【核心】女性・高齢・冬に多い

手首の骨折は、どんな人に、いつ多いか わが国の調査(理学療法ガイドライン 第2版 第10章の疫学) 男女の比 男性 1 女性 3.2 70歳以上 (若い人と比べて) 男性 2倍 女性 17.7倍 ・原因は「立った姿勢からの転倒」が最多(49〜77%) ・場所は屋外、季節は冬が多い ・80歳を超えたあたりがピーク。利き手かどうかで差はない 発生は、人口1万人あたり10.9〜14人(全年齢) 出典:理学療法ガイドライン 第2版 第10章(橈骨遠位端骨折の疫学的特徴)をもとに作図

男女比は「男性:女性=1:3.2」。70歳以上の倍率は、それぞれ同じ性別の若い人との比較です。

「立位からの転倒が最多であり、原因の49~77%を占める。受傷場所は屋外、受傷時期は冬季が多いことも特徴である。」(理学療法ガイドライン 第2版 第10章)

ガイドラインは、高齢者の四大骨折(大腿骨頸部骨折・脊椎圧迫骨折・上腕骨近位端骨折・橈骨遠位端骨折)の一つであり、女性に多いこと、骨粗鬆症を伴う高齢者では、わずかな外力でも容易にこの骨折を生じることを書いています。これから冬に向かう時期は、とくに足元に気をつけたい骨折です。

4. 治療の流れ:整復・ギプス・手術

段階資料の記述
診断X線(レントゲン)で骨折を確認。関節の中まで折れているかを正確に知るにはCTが必要
整復と固定痛みをとってから、ずれた骨を元に戻す(整復)。ずれないときはギプスやギプスシーネで固定。外固定の期間はおおむね4〜6週間
手術整復できない、またずれてくるおそれがある場合など。ロッキングプレートで固定すると、早くから手首を動かせる
高齢者の場合保存療法(ギプス)も手術も選択肢。活動性が高い高齢者には手術が選ばれる傾向

ガイドラインによると、手のひら側からプレートで固定する方法(掌側ロッキングプレート)が広く普及してから、術後は早くから運動を始めるのが主流になっています。関節の中まで折れている場合や骨がもろい場合でも、術後は外固定をせず、翌日から関節を動かし始めて良好な成績が出ているとされています。どの治療が合うかは、骨折の形や年齢、生活の様子をふまえて整形外科医が判断します。

5. ギプス中も、肩・肘・指は動かす

「外固定期間中の介入により拘縮予防や早期回復が期待できるため、上肢や手指の関節可動域運動を行うことを提案する。」(理学療法ガイドライン 第2版 第10章 CQ1・ステートメント)

「拘縮(こうしゅく)」とは、関節が固まって動きにくくなることです。ガイドラインは、治療中に肩や手指の拘縮が起こることがあるとして、固定している間も手首以外の関節を動かすことを提案しています。

ガイドラインが紹介している研究結果
受傷後早く(平均4.5日)から肩・肘・指を動かした人と、ギプスを外してから動かした人指の拘縮:早く動かした人12.5%、外してから動かした人78.6%
肩・肘の拘縮:早く動かした人には起こらず、外してから動かした人で14.3%
ギプスで治療中に、けがをしていない側の手首・指の筋力や関節の運動をした人骨折後12週で、けがをした側の握力と関節の動く範囲が、運動しなかった人より改善していた

反対側の手を鍛えると、けがをした側にもよい影響があった——というのは、意外に感じる方も多いかもしれません。

ただし、この問いでガイドラインが正式に評価した研究は1つだけで、その研究では握力や関節の動きに有意な差は出ておらず、根拠の確実性は「非常に弱い」とされています。一方で、治癒の妨げや炎症の悪化といった害の報告はなく、益が害を上回ると判断されています。動かしてよい範囲は骨折の状態によって違うので、必ず主治医の指示の範囲で行ってください。

6. リハビリは、通院でも自宅練習でも

「橈骨遠位端骨折患者に対して運動療法を実施することは、臨床成績の改善を認めることから実施を提案する。また、患者教育においても同様の効果が期待できる。」(理学療法ガイドライン 第2版 第10章 CQ3・ステートメント)

ここでいう「患者教育」は、運動の内容を理解して自分で実施できるように指導することです。ガイドラインが評価した2つの研究では、理学療法士による運動療法と患者教育のあいだに有意な差はありませんでした。プレート手術後の研究では、自宅練習の指導を受けたグループのほうが握力や手首の動きがよかったという報告もあります。

一方、理学療法士が関わったグループでは患者さんの満足度が高かったことも書かれています。通院するか、自宅練習を中心にするかは、医師の診断・指示で決まります。自宅で行う場合も、教わった運動を、教わったとおりに続けることが大切です。

手術後の運動療法についても、ガイドラインは実施を提案していますが、効果的な開始時期については文献が少なく判断が困難としています。また、骨のつきが遅い場合の超音波療法や電気刺激療法も「提案」ですが、効果の検証は今後も必要とされています。

7. 知っておきたい合併症

ガイドラインは、この骨折の合併症として次のものを挙げています。

合併症資料の記述
神経の障害正中神経が最も多い。受傷時の圧迫のほか、あとから手根管症候群を起こすこともある。正中神経が圧迫されると、親指から薬指の感覚が障害される(日本整形外科学会)
腱の断裂親指を伸ばす腱(長母指伸筋腱)の断裂が最も多い
反射性交感神経ジストロフィー不完全な整復や、不必要に広い範囲・長期間の固定で、指のむくみ、関節拘縮などを起こす。運動で著しい痛みを訴える
尺骨突き上げ症候群骨がずれたままつくと、橈骨が短くなって小指側の骨が相対的に長くなり、手首を小指側に曲げたときの痛みなどが起こることがある

骨折のあとに指のしびれが続く場合は、手根管症候群の記事も参考にしてください。

8.【内科医の視点】手首の骨折は骨粗鬆症の合図

内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。日本整形外科学会の解説は、この骨折について次のように書いています。

「特に閉経後の中年以降の女性では骨粗鬆症で骨が脆くなっているので、簡単に折れます。」(日本整形外科学会「橈骨遠位端骨折」)

理学療法ガイドラインも、骨粗鬆症を伴う高齢者では、わずかな外力でも容易にこの骨折を生じるとしています。骨粗鬆症の記事で書いたとおり、転んだ程度で折れた骨折は、次の骨折のリスクが高いサインと受け止めてください。

手首の骨折で整形外科にかかったら、骨がついたあとに骨密度の検査について相談してみてください。そして、転ばないための筋力やバランスを保つことも大切です(→サルコペニア、骨密度と骨活)。

9. 受診・相談したほうがよいとき

整形外科を受診したいとき

・転んで手をついたあと、手首に強い痛みがあり、すぐに腫れてきた

・手首がフォークを伏せたような形に変形している、手に力が入らない

・手首のけがのあと、指がしびれる

治療中・治療後に主治医に相談したいとき

・固定中に、指のむくみや、動かしたときの強い痛みが続く

・骨折のあと、指のしびれが続く、親指が伸ばせない

・転んだ程度で折れた。骨密度の検査を受けたい

最後に、この記事の要点をもう一度。

① 手首の骨折は、転んで手のひらをついたときに起こる。全骨折の10%程度

② 女性は男性の3.2倍、70歳以上の女性は若い人の17.7倍。屋外・冬に多い

③ 外固定はおおむね4〜6週間。固定中も肩・肘・指を動かすことを提案

④ リハビリは運動療法を提案。自宅練習の指導でも同様の効果が期待できる

⑤ 合併症は、指のしびれ・腱の断裂・指のむくみと強い痛みなど

⑥ 閉経後の女性では、骨粗鬆症の合図。骨密度の検査を

10. よくある質問

転んで手をついたあと手首が腫れています。骨折でしょうか?

日本整形外科学会は、手首の骨折(橈骨遠位端骨折)の症状として、手首の強い痛みと短時間のうちに出る腫れ、手のひらをついて転んだあとのフォークを伏せたような変形、手に力が入らないこと、指のしびれを挙げています。骨折かどうかはX線検査で確認するので、整形外科を受診してください。

手首の骨折は、なぜ女性に多いのですか?

理学療法ガイドライン第2版によると、わが国の調査で男女比は1対3.2と女性に多く、70歳以上の女性では若い人の17.7倍になります。日本整形外科学会は、閉経後の中年以降の女性では骨粗鬆症で骨が脆くなっているので簡単に折れると説明しています。

ギプスで固定している間は、腕を動かさないほうがいいですか?

理学療法ガイドライン第2版は、外固定の期間中に、拘縮の予防や早期回復が期待できるとして、肩・肘や手指の関節可動域運動を行うことを提案しています。根拠の確実性は非常に弱いとされています。動かしてよい範囲は骨折の状態で異なるため、主治医の指示に従ってください。

リハビリに通えない場合、自宅での運動でも大丈夫ですか?

理学療法ガイドライン第2版は、運動療法の実施を提案したうえで、運動の内容を理解して自分で実施できるよう指導する患者教育でも同様の効果が期待できるとしています。通院するかどうかは医師の診断・指示で決まるため、自宅で行う運動の内容は主治医やリハビリの担当者に確認してください。

手首の骨折のあと、骨粗鬆症の検査を受けたほうがいいですか?

日本整形外科学会は、閉経後の中年以降の女性では骨粗鬆症で骨が脆くなっているので手首の骨が簡単に折れると説明しています。理学療法ガイドライン第2版も、骨粗鬆症を伴う高齢者ではわずかな外力でもこの骨折を生じるとしています。転んだ程度で折れた場合は、骨密度の検査について主治医に相談してください。

参考にした主な資料

凪
なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した内容は、理学療法ガイドライン第2版(2021年)と日本整形外科学会の解説にもとづくもので、公開時点の情報です。骨折が疑われる場合は整形外科を受診してください。固定中・治療後の運動は、骨折の状態によって動かしてよい範囲が異なるため、必ず主治医の指示に従ってください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。