1. 先に結論
| 知っておきたいこと | 国民生活センターの資料 |
|---|---|
| 除毛剤とは | 医薬部外品。チオグリコール酸カルシウムなどの還元剤で、毛髪のケラチンタンパク質の結合を切断し、毛髪を軟化して除去する。化学的に毛髪や皮膚に作用するため、人によっては炎症を起こすことがある |
| 危害の相談 | 738件。皮膚障害が約98%。男性は顔面・頭部が約41%で最多 |
| 表示の調査(10銘柄) | 商品本体、パッケージ、取扱説明書の表示で「顔」に使用できる銘柄はなかった。使用前テストは10銘柄すべてに記載 |
| 定期購入 | 危害相談のうち、通信販売での定期購入に関する相談が約74%(548件) |
| アドバイス | 使用部位を表示で確認する。まず1回分を購入し、使用前テストで肌に合うか確認する。異常が出たらただちに使用を中止する |
出典:国民生活センター「除毛剤の使用による顔などの皮膚障害に注意!」報道発表資料(2019年12月19日)をもとに整理。
2. 除毛剤とは——毛を化学的に軟らかくして除去する
国民生活センターの資料によると、腕の毛、脚の毛やワキ毛などを除去する商品には、次の2種類があります。
| 種類 | 国民生活センターの記述 |
|---|---|
| 除毛剤 | 化学的作用によって毛髪を軟化して除去するもの。チューブタイプやスプレータイプの除毛クリームなど |
| 脱毛剤 | 物理的に毛髪を抜いて除去するもの。脱毛テープや脱毛ワックスなど |
出典:国民生活センター「除毛剤の使用による顔などの皮膚障害に注意!」(2019年12月19日)。危害の相談は、除毛剤に関するものが大半を占めていた。
- 除毛剤は、医薬品医療機器等法上の医薬部外品
- 毛髪を構成するケラチンタンパク質の結合を、チオグリコール酸カルシウムなどの還元剤で切断し、毛髪を軟化して除去する
- 還元剤の働きを効果的にするため、pHは11〜13程度のアルカリ性の商品が多い。クリーム状、ペースト状、泡状のものがある
- 使い方は、除毛したい部位に毛が覆われるくらいの厚さ(1〜3mm程度)に塗り、5〜10分程度放置した後、脱脂綿やティッシュ、木べらなどで取り除き、湯水などで洗い流す
- 除毛剤の生産量は、2014年の186tから2018年には1,153tに増えている
3. 危害の相談——738件の内訳
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)には、2014年度以降(2019年10月31日までの登録分)、除毛剤などを使ったところ、赤み、かゆみ、痛み、腫れ等が出たという危害情報が738件寄せられています。
| 項目 | 国民生活センターの記述 |
|---|---|
| 危害の内容 | 皮膚障害が724件で約98% |
| 危害の程度 | 「医者にかからず」が約89%。治療期間が1カ月以上のものが2件 |
| 性別・年代 | 男性は208件で20歳代が最多(68件)。女性は502件で40歳代が最多(157件)。男性がヒゲを除去するために使い、顔などに皮膚障害を負った事例が増加傾向 |
| 危害部位(男性) | 顔面・頭部 約41%、脚 約36% |
| 危害部位(女性) | 腕・手 約53%、脚 約32% |
| 購入した時期 | 春から夏(3〜8月)がほとんどだが、秋から冬も70件。年間を通して購入されている |
出典:国民生活センター「除毛剤の使用による顔などの皮膚障害に注意!」(2019年12月19日)図4〜6と本文。割合は不明・無回答等を除いた件数に対するもの。
4.【核心】表示の調査——「顔」に使える銘柄はなかった
国民生活センターは2019年9〜11月、インターネットショッピングモールの売れ筋ランキングの高い除毛剤10銘柄(主に男性用と思われるもの5銘柄、主に女性用と思われるもの5銘柄)の表示を調べました。いずれも、医薬部外品の有効成分はチオグリコール酸カルシウムでした。
| 調べたこと | 結果 |
|---|---|
| 「顔」への使用 | 商品本体、パッケージ及び取扱説明書の表示で、「顔」に使用できる銘柄はなかった |
| 「デリケート部分」への使用 | 使用できるもの4銘柄、使用できないもの4銘柄、記載のないもの2銘柄 |
| ウェブサイトとの違い | 商品本体等と発売元のウェブサイトとで、「デリケート部分」の記載が異なるものが2銘柄。ショッピングモールの表示でも、「ヒゲ」や「デリケート部分」は使用できるとしながら、商品本体等では「顔」は使用できないとしたものなどがあった |
| 放置する時間 | 5〜10分程度が9銘柄、10分程度が1銘柄。使用部位ごとの目安を定めた銘柄はなかった |
| 使用前テスト | 使用前に少量を試す「使用前テスト」は10銘柄すべてに記載。かゆみや赤みなどが出た場合は使用しない旨も記載 |
| 異常が出たとき | 腫れ、かゆみ、赤み、刺激、色抜け(白斑)、黒ずみなどの異常が出たら、使用を中止し、皮膚科専門医等に相談することを勧める旨が10銘柄すべてに記載 |
| 成分量とpH(測定) | チオグリコール酸カルシウム量は10銘柄すべて7.0%以下、1%水溶液のpHは11〜12。男性用と女性用で大きな差はなかった |
出典:国民生活センター「除毛剤の使用による顔などの皮膚障害に注意!」(2019年12月19日)の調査の章をもとに整理。
国民生活センターは、危害相談のうち男性では顔面・頭部が最多になっていることから、ヒゲの除去に使っていて、商品の「用法・用量」や「使用上の注意」に基づいて使っていない可能性があるとしています。
5. 報告された事例
| 事例 | 相談の内容(国民生活センターの資料から) |
|---|---|
| ①顔に使った (20歳代女性) | 顔に1回使ったところ、肌に合わず、毛穴が赤くなり、かゆみも出た。医師からはクリームが原因だろうと言われ、薬を処方された。解約しようとすると、2回目の代金と正規料金との差額で合計約10,000円を請求された |
| ②ヒゲに使った (10歳代男性) | ヒゲの除毛がしたくて購入し、使って顔がカサカサになった。「首から下」に使用できると表示されていたが、同時に「全身分」の表示もあった。定期購入だと理解せずに申し込んでいた |
| ③デリケート部分に使った (40歳代女性) | 広告にはデリケート部分に使用可能と記載があったと思うが、記憶はあいまい。使うと肌が赤くなりヒリヒリし、発疹も出た。解約しようとすると「5回継続が条件の定期コース。規定回数購入後でないと解約不可。」と言われた |
| ④脚に使った (20歳代男性) | 脚に使ったら皮膚が赤くなった。皮膚科で、除毛クリームを使わない方がいいと言われた。業者に解約したいと伝えたが、その程度では解約できないと言われた |
出典:国民生活センター「除毛剤の使用による顔などの皮膚障害に注意!」(2019年12月19日)主な事例1〜4をもとに要約。
国民生活センターは、「全身用」という表示をみて顔に使用できないものを使って危害を負った事例(事例②)や、広告の表示の記憶があいまいなまま、デリケート部分に使って危害を負った事例(事例③)があるとしています。
6. 専門家のコメント——顔と陰部には使うべきでない
資料には、藤田医科大学ばんたね病院 総合アレルギー科の鈴木加余子准教授のコメントが載っています。要点は次のとおりです。
- 除毛剤の有効成分のチオグリコール酸塩は、ケラチンタンパク質の結合を切断して毛を軟化するため、パーマ液にも使われている。pH10以上になると毛髪を切断する
- pHが12.5でチオグリコール酸の含有量が5%以内の場合、1回の使用時間が10分以内で1週間に1度であれば、皮膚の表層より深くは浸透しないといわれている。しかし10分以上使うと皮膚に浸透し、皮膚のケラチンタンパク質がダメージを受ける可能性がある
- ヒゲを剃った際にできた細かい傷がある場合や、口へ入るおそれがあることを考えると、顔には除毛剤を使用すべきではない
- 陰部は皮膚が薄く刺激によるダメージを受けやすく、膣や肛門に入る可能性もあるので、除毛剤の使用は適切ではない
- 医薬部外品は、成分だけでなく用法・用量も含めて安全性の承認をとっている。取扱説明書等のとおり使用前テストを行ったうえで、使用可能とされている部位にのみ使うことが大切
- 就寝前に使って赤み、ほてり、かゆみ、痛み、腫れ等が出て、翌日になっても症状が続く場合などは、皮膚科医を受診する
化粧品などで起きるかぶれの種類と、原因の調べ方は接触皮膚炎(かぶれ)の記事で書いています。
7. 定期購入の解約トラブル
国民生活センターによると、除毛剤などの危害情報の中には、総額数万円の定期購入契約のため解約したいという相談が多数みられます。
- 危害情報738件のうち、通信販売での定期購入に関する相談が548件(約74%)。特に2017年度以降、多くの割合を占めている
- 購入契約金額は1万円以上5万円未満が約64%。一方、すでに支払った額は1,000円未満が約47%、1,000円以上1万円未満が約45%
- 医療機関で除毛剤を使わないよう診断され、その旨を事業者に伝えても解約できないという相談もある(事例④)
- 除毛剤は人によっては炎症を起こすことがあるため、1回目の使用で肌に合わなかった場合などに、定期購入の解約トラブルに発展するおそれがある
8. 国民生活センターのアドバイス
- 使用部位を表示で確認する:医薬部外品は、医薬品医療機器等法に基づき、定められた用法・用量で承認されている。商品本体等に記載された「用法・用量」や「使用上の注意」で使用部位を確認して、正しく使う
- まず1回分を購入し、使用前テストをする:有効成分のチオグリコール酸カルシウムは、人によっては肌に炎症を起こすことがある。定期購入では解約のトラブルが多いため、まず1回分を購入し、「使用前テスト」で肌に合うか確認したうえで使う
- 異常が出たら、ただちに中止する:使用中、使用後に、肌に赤み、かゆみ、痛み、腫れなどの異常があらわれたときは、ただちに使用を中止して、症状の程度によっては皮膚科医を受診する。その際は使っていた商品を持参する
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 除毛剤は、毛のタンパク質の結合を切断して除去する医薬部外品。人によっては炎症を起こす
② 危害の相談は738件で、皮膚障害が約98%。男性は顔面・頭部が最多
③ 売れ筋10銘柄に、「顔」に使用できる銘柄はなかった。ウェブサイトと表示が違うものもあった
④ まず1回分を購入し、使用前テストで肌に合うか確認する
⑤ 異常が出たらただちに中止し、症状の程度によっては商品を持って皮膚科へ
9. よくある質問
除毛クリームを顔やヒゲに使ってもいいですか?
国民生活センターが売れ筋の除毛剤10銘柄を調べたところ、商品本体、パッケージ及び取扱説明書の表示で「顔」に使用できる銘柄はありませんでした。資料に載った専門家のコメントでも、ヒゲを剃った際の細かい傷や口へ入るおそれを考えると、顔には除毛剤を使用すべきではないとされています。
デリケート部分に除毛クリームを使ってもいいですか?
国民生活センターの調査では、デリケート部分に使用できるものが4銘柄、使用できないものが4銘柄、記載のないものが2銘柄で、ウェブサイトと商品本体で記載が異なるものもありました。専門家のコメントでは、陰部は皮膚が薄くダメージを受けやすいため、除毛剤の使用は適切ではないとされています。
除毛クリームを使う前に、何をすればいいですか?
国民生活センターは、商品に記載された用法・用量や使用上の注意で使用部位を確認し、まず1回分を購入して、使用前テストで肌に合うか確認してから使うよう呼びかけています。使用前テストは、調査した10銘柄すべてに記載されていました。
除毛クリームで肌が赤くなったら、どうすればいいですか?
国民生活センターは、肌に赤み、かゆみ、痛み、腫れなどの異常があらわれたときは、ただちに使用を中止して、症状の程度によっては皮膚科医を受診し、その際は使っていた商品を持参するよう呼びかけています。
参考にした主な資料
- 国民生活センター 報道発表資料:除毛剤の使用による顔などの皮膚障害に注意!(2019年12月19日)