1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| とびひのときはお風呂に入れないほうがいい | 発熱などがなければ入浴させ、泡立てたせっけんでそっと洗う。湯船には入らずシャワーがよい |
| 一度かかれば、もうかからない | 細菌が原因なので免疫はできず、何回でもかかる |
| プールの水でうつる | プールの水ではうつらないが、触れることで悪化させたり人にうつしたりする恐れがあるので、完全に良くなるまでプールは禁止 |
| とびひは子どもだけの病気 | まれに大人もなる。かさぶた型は小児より成人に多い |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
とびひは、かきむしったところのしみ出た液や水ぶくれの中身で、次々にうつります。学会は、鼻の入り口に原因の細菌がたくさんいるので鼻をいじらないこと、爪を短く切る、手を洗うことが大切だとしています。
2. どうしてなるのか——かき壊しと、鼻の入り口
日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aによると、とびひは次のようにして起こります。
- あせも・虫刺され・湿疹などをひっかいたり、転んでできた傷に細菌が入ったりして(二次感染)とびひになる
- 鼻の穴の入り口には様々な細菌が住みついている。幼児・小児で鼻を触るくせがあると、鼻の周りから始まったり、その手であせもや虫刺されをひっかいてとびひになったりする
3. 2つのタイプ——水ぶくれ型とかさぶた型
| 水疱性膿痂疹(水ぶくれ型) | 痂皮性膿痂疹(かさぶた型) | |
|---|---|---|
| 原因菌 | 黄色ブドウ球菌。菌が作る毒素が皮膚の細胞どうしのつなぎ目を壊し、水ぶくれができる | 溶連菌(A群β溶血性連鎖球菌) |
| 多い人・時期 | 乳幼児・小児。特に初夏から真夏に多い | 季節にはあまり関係なく、小児より成人に多い。アトピー性皮膚炎などに合併することが多い |
| 症状 | かき壊したところのまわりに小さな水ぶくれができ、周りが赤くなる。中身は次第に膿になり、簡単に破れて皮膚がむける。中身やしみ出た液で周囲へ広がる | 赤く腫れたところに小さな膿疱ができ、厚いかさぶたになる。炎症が強く痛む。発熱、リンパ節の腫れ、のどの痛みを伴うこともある |
出典:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「とびひ」Q2〜Q7をもとに整理。とびひの多くは水ぶくれ型です。
アトピー性皮膚炎についてはアトピー性皮膚炎の記事で書いています。
4. 治療
学会によると、治療は次のように行います。
- 水ぶくれ型:抗菌薬の塗り薬を塗り、全体をガーゼで覆い、1日1〜2回取り替える。ごく軽い場合は塗り薬で済むが、通常は抗菌薬の飲み薬を一緒に使う。大きな水ぶくれは、中身が周りにつかないように出す
- なかなか良くならないときは、抗菌薬に耐性のある菌(耐性化)のことがあるので、菌の種類と使える薬を調べる検査をしておくとよい
- とびひはかゆみが強いので、かゆみ止め(抗ヒスタミン薬)を飲んでかきむしらないようにし、広がるのを抑えることも大切
- かさぶた型(溶連菌):抗菌薬を飲むか、重い場合は点滴で全身に使う。重い溶連菌の感染では、まれに腎臓の障害を伴うので尿の蛋白のチェックが必要
5.【核心】家でのケア——入浴と洗い方
学会は、とびひのときの入浴について次のように書いています。
「とびひを発症させてしまった場合も、発熱などの全身症状がない限り、入浴させ、泡だてたせっけんで病変部をそっと丁寧に洗い流します。」(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「とびひ」Q9)
- 病変部は洗ってかまわない。せっけんも使ってかまわない。せっけんを泡立てて、そっと洗う
- 入浴は病変部を清潔にするのに必要だが、湯船には入らず、シャワーがよい
- きょうだいがいる場合は、ほかの子どもたちのあとで入浴させるほうがよい
- 入浴後は、しみ出た液などが周りにつかないように、軟膏を塗り、ガーゼなどで覆う
- わきの下はあせもができやすいので、ていねいにそっと洗う
6. 予防——鼻・爪・手洗い
学会は、予防として次の点を挙げています。
- 特に夏は入浴し、皮膚を清潔にする
- 鼻の入り口はブドウ球菌などの細菌の温床。子どもには鼻の穴に指を突っ込まないように教える
- 手洗いを励行し、爪を短く切り、かきむしって皮膚を傷つけないようにする
細菌が原因なので、ウイルスの病気と違って免疫はできません。皮膚のバリアが壊れてブドウ球菌や溶連菌に感染すると、何回でもとびひにかかります。
7. プールと、登校・登園
| 資料の記述 | |
|---|---|
| プール | プールの水ではうつらないが、触れることで症状を悪化させたり、ほかの人にうつしたりする恐れがあるので、完全に良くなるまで禁止(日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会の統一見解) |
| 登校・登園 | 学校保健安全法の「学校感染症、第三種(その他の感染症)」。医師に診てもらって治療し、病変部をガーゼや包帯できちんと覆って露出していなければ、学校を休む必要はない。ただし病変が多い・広い、全身症状がある場合は休ませるほうがよい |
水ぼうそうなど、子どもの発疹が出る感染症とプールの関係は発疹が出るウイルス感染症の記事で書いています。
8. まれな合併症と、大人のとびひ
学会によると、ふつうのとびひはその部分だけの病気ですが、まれに全身に影響する状態があります。
- ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS):とびひの原因の黄色ブドウ球菌が作る毒素で、皮膚がやけどのようにむけてしまう。乳児・小児に多い。早く見つけて治療を始めれば、重症にならずにすむ
- 敗血症:アトピー性皮膚炎の人にとびひが合併した場合、特に溶連菌によるとき、菌が血液に入って高熱が出て、重い状態になることがある
- 腎臓の障害:溶連菌によるとびひでは、まれに腎臓の障害を伴うことがある。良くなってからも数週間は皮膚科に通い、尿の蛋白を調べてもらう
とびひは通常は子どもに多い病気ですが、まれに大人もなります。かさぶた型は年齢に関係なく起こり、水ぶくれ型もまれに成人に起こります。学会は、特に高齢者は皮膚が薄く傷つきやすく、バリア機能が落ちているため細菌に感染しやすいとしています。高齢者では、大きな水ぶくれができる水疱性類天疱瘡などとの区別が必要なこともあります。
9. 受診したいとき
資料にあるもの
・虫刺されやあせものかき壊しのまわりに、水ぶくれやジクジクが広がってきた
・赤く腫れて厚いかさぶたができ、痛む(発熱、リンパ節の腫れ、のどの痛みを伴うことも)
・皮膚がやけどのようにむけてきた
・アトピー性皮膚炎があり、とびひに高熱が加わった
・薬を使ってもなかなか良くならない
最後に、この記事の要点をもう一度。
① とびひはブドウ球菌や溶連菌による皮膚の感染症。かき壊しや鼻の入り口から始まる
② 多いのは子どもの水ぶくれ型。かさぶた型は成人に多く、アトピー性皮膚炎に合併しやすい
③ 発熱がなければシャワーで、泡立てたせっけんでそっと洗う。洗ったあとは軟膏とガーゼで覆う
④ 予防は鼻をいじらない・爪を短く・手洗い。免疫はできず何回でもかかる
⑤ プールは完全に良くなるまで禁止。きちんと覆っていれば学校を休む必要はない
10. よくある質問
とびひとは何ですか?
日本皮膚科学会によると、正式な病名を伝染性膿痂疹という、ブドウ球菌や溶連菌などの細菌による皮膚の感染症です。接触でうつり、火事の飛び火のようにあっという間に広がることから、とびひと呼ばれています。あせもや虫刺され、湿疹のかき壊しや傷から始まります。
とびひのとき、お風呂に入ってもいいですか?
学会によると、発熱などの全身症状がない限り入浴させ、泡立てたせっけんで病変部をそっと丁寧に洗い流します。湯船には入らずシャワーがよく、きょうだいがいる場合はほかの子のあとで入浴させます。入浴後は軟膏を塗ってガーゼなどで覆います。
プールに入ってもいいですか?
学会によると、プールの水ではうつりませんが、触れることで症状を悪化させたり、ほかの人にうつしたりする恐れがあるので、プールや水泳は完全に良くなるまで禁止とされています。
学校や保育園は休むべきですか?
学会によると、医師に診てもらって治療し、病変部をガーゼや包帯できちんと覆って露出していなければ、学校を休む必要はありません。ただし、病変が多い・広い場合や全身症状がある場合は、休んで治療することが必要になることがあります。
一度かかれば、もうかかりませんか?
学会によると、とびひは細菌が原因なので、ウイルスの病気と違って免疫はできず、何回でもかかります。皮膚を清潔にする、傷つけない、爪を短く切る、手をよく洗うなどの予防が重要です。
大人もとびひになりますか?
学会によると、通常は子どもに多い病気ですが、まれに大人もなります。厚いかさぶたができるタイプは小児より成人に多く、アトピー性皮膚炎に合併しやすいとされています。高齢者は皮膚が薄くバリア機能が落ちているため、細菌に感染しやすいとされています。
参考にした主な資料
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「とびひ」(Q1〜Q18)