1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 全身性強皮症の軽いタイプ | 病名は似ているが、まったく異なる別の病気。医療従事者でも混同していることがある |
| いずれ全身性強皮症になる | 移行することはない。まれに両方が同じ人に起こる(合併)ことはある |
| 抗核抗体が陽性なら膠原病になる | 限局性強皮症では陽性はよくあることで、膠原病の合併を心配することはない |
| 妊娠・出産はあきらめるべき | 妊娠や出産に影響することは一般的にない。ただし約30%で抗リン脂質抗体が陽性になり、その場合は産科と連携する |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
単に「強皮症」と言われたら、全身性か限局性かを主治医に確認してください。そして頭や眉に病変があり活動性がある場合は、学会は脱毛を進ませないため、できるだけ早く治療を始める必要があるとしています。
2. どんな症状か——見た目はとても多彩
日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aによると、限局性強皮症は「限局した領域の皮膚に境界明瞭な硬化が出現する病気」です。
- 頭、顔、手足、体幹など、全身のどの部位にも出る
- 形は円形〜楕円形、線状〜帯状などさまざまで、大きさも数cmから数10cmまである
- 硬くなった皮膚はやや光沢を帯び、黄色みがかって見えることが多い。茶色っぽく見えることもある。全体や縁が淡い紅色になり、わずかに熱をもつこともある(炎症を反映)
- 自覚症状がまったくないものから、ピリピリした痛み、衣類とこすれるだけでヒリヒリと強く痛むものまである
- 頭皮や眉などの毛のある部分に出ると、多くの場合脱毛を伴う
さらに学会は、硬さはあまり目立たず、茶色っぽくなる(色素沈着)、白く色が抜ける(色素脱失)、皮膚が薄くなる(萎縮)だけの病変もあり、見た目は極めて多彩だとしています。
病変は主に皮膚に出ますが、ときに深いところまで及び、脂肪組織(皮膚が少しへこむ)、筋膜・筋肉・腱・関節(突っ張る感じ、関節が動かしにくい)、神経(しびれや痛み)に病変が及ぶことがあります。
3.【核心】全身性強皮症とは、まったく別の病気
学会は、この点を「最も重要な点」として詳しく説明しています。
「限局性強皮症と全身性強皮症は病名が似ていますが、全く異なる別の疾患です。」(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「限局性強皮症」Q3)
| 限局性強皮症 | 全身性強皮症 | |
|---|---|---|
| 侵されるところ | 皮膚のみ(深いところに及ぶことはある)。内臓病変は伴わない | 皮膚と、肺・心臓・消化管などの内臓 |
| 分類 | 膠原病の範疇には入らない(膠原病類縁疾患) | 膠原病 |
| 手指 | 手指の硬化はなく、レイノー現象などの血管の異常もない | 皮膚の硬化は指から始まり、体の中心に向かって進む。レイノー現象や手指の潰瘍 |
| 生命予後 | 良好 | 内臓病変により影響する |
出典:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「限局性強皮症」Q3をもとに整理
全身性強皮症には、皮膚の硬化が肘より先にとどまる「限局皮膚硬化型全身性強皮症」というタイプがあり、名前が似ているため、限局性強皮症がしばしば全身性強皮症の軽いタイプと誤解されます。学会は、限局性強皮症が全身性強皮症に移行することはないとしています(まれに、両方が同じ人に起こる合併はある)。全身性強皮症については全身性強皮症の記事で書いています。
4. 3つの病型
| 病型 | 資料の記述 |
|---|---|
| 斑状強皮症 | 1〜数個の円形〜楕円形の、境界のはっきりした病変が、体幹や手足に散らばって出る |
| 線状強皮症 | 線状〜帯状の病変が、主に手足と頭頸部に出る。しばしば深いところ(脂肪組織、筋膜、筋肉、腱、骨・関節、神経)に及ぶ。おでこから前頭部に縦に出るものは、剣で切られた傷のように見えるので剣創状強皮症と呼ばれ、皮膚のへこみと脱毛を伴うことが多い |
| 汎発型限局性強皮症 | 斑状と線状の病変が全身に多発する。直径3cm以上の病変が4つ以上あり、体を7つの領域に分けたとき2つ以上の領域にある場合 |
5. 原因と、抗核抗体
学会によると、原因はまだ明らかになっていませんが、病変の特徴的な分布や、血液検査で抗核抗体が高い頻度で見つかることから、次のような仕組みが推測されています。
- 私たちの皮膚は、発生の過程で「ブラシュコ線」という線状〜帯状の領域に分かれていて、領域ごとにごくわずかな遺伝子の違いがある(体細胞モザイク)
- ふだんはこの違いは異物とは認識されないが、外傷、放射線照射、やけど、外科的処置、ワクチン接種などをきっかけに免疫が活発になると、その違いが異物として認識されることがある
- その結果、ブラシュコ線の領域ごとに自分の免疫に攻撃され(自己免疫)、硬化や萎縮が起こる
抗核抗体は46〜80%程度で陽性になり、病変の範囲や重症度に比例して陽性率が高くなります。ただし学会は、限局性強皮症は自己免疫疾患の一つなので陽性はよくあることで、膠原病の合併を心配することはないとしています。
- 健康な人に比べると、ほかの自己免疫疾患を合併する頻度は高い。最も多いのは慢性甲状腺炎(橋本病)で、はるかに少ないが関節リウマチなどの膠原病もある
- レイノー現象、関節痛、原因のはっきりしない発熱が続くなど、気になる症状があれば主治医に伝える
- 遺伝はしない。ただし自己免疫疾患の家族歴が多いことが知られていて、自己免疫疾患になりやすい体質は遺伝する可能性がある
6. 頭の脱毛は、早めの治療を
学会によると、頭や眉など毛のある部分に出た限局性強皮症では、脱毛を伴うことが多くあります。
「この脱毛は瘢痕性脱毛と言い、毛を作る細胞が破壊されてしまうことが原因のため、一度毛が抜けてしまうと永久脱毛となり、治療しても毛は生えてきません。」(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「限局性強皮症」Q10)
治療で脱毛斑にまばらに毛が生えることもありますが、これは壊されずに残った毛を作る細胞が働きを取り戻したためと考えられています。そのため学会は、毛のある部分の病変に活動性がある場合は、脱毛を進ませないために可能な限り早く治療を始める必要があるとしています。円形脱毛症など、ほかの脱毛との違いは円形脱毛症の記事でも触れています。
7. 妊娠・出産への影響
学会は、限局性強皮症が妊娠や出産に影響することは一般的にないとしています。そのうえで、次の点を挙げています。
- 約30%程度で抗リン脂質抗体が陽性になる。この抗体は血液検査で調べられる
- 陽性の場合、習慣性流産の原因になる可能性がある。出産年齢の女性で事前に陽性が分かっている場合は、妊娠が分かった時点で産科と連携して慎重に経過を見ていく
- まれに、妊娠をきっかけに症状が悪化することがある。妊娠中も経過を慎重に見ていく
抗リン脂質抗体と流産の関係は流産と不育症の記事で書いています。
8. 経過と、頭頸部・小児で気をつけること
学会は、少しずつ進むよりも、再発を繰り返しながら階段状に範囲が広がる場合が多いとしています。特に小児期に始まった線状強皮症は再発率が高いとされています。
- 頭頸部の限局性強皮症では、脳病変(てんかん、片頭痛、神経痛、麻痺、けいれんなど)、目の症状、歯の症状を合併することがある。自覚症状がないまま潜んでいて、あとから出てくることもあるので、診断時に検査を受け、異常がなくても定期的に診察を受ける
- 小児の手足の線状強皮症では、成長障害を伴うことがある(たとえば片方の脚が数センチ短くなる)。治療で進行を抑えることができ、脚の長さの差には装具で補う。下肢に出た場合は整形外科で脚の長さの差を調べてもらう
9. 検査と治療
学会によると、病変の広がりは造影MRIとドップラー超音波で調べ、特に骨への広がりまで正確に評価できる点で造影MRIが優れています。治療を決めるうえで重要なのは、病気の活動性があるかどうかを正確に判断することです(新しい病変や拡大、赤み、皮膚温の上昇などで判断)。
| 状況 | 資料に挙げられている治療 |
|---|---|
| 活動性があり、斑状強皮症 | 一般に局所療法。ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、光線療法など |
| 活動性があり、治りにくい斑状・線状・汎発型 | 全身療法。ステロイドの内服や点滴(パルス療法・入院)、免疫抑制薬の内服など |
| 活動性がない | 残った機能障害や見た目の問題に対して、理学療法や美容外科的手術。手術後に活動性が再び出ることもあるので、十分落ち着いてから手術に踏み切るのが適切 |
受診・相談したいとき(資料にあるもの)
・皮膚の一部が硬くなってきた、色が変わってきた、へこんできた
・頭や眉の病変で脱毛が進んでいる(できるだけ早く治療を)
・限局性強皮症と診断されていて、レイノー現象、関節痛、続く発熱などがある(主治医に伝える)
・抗リン脂質抗体が陽性と分かっていて、妊娠した(産科と連携)
・子どもの脚の線状強皮症(整形外科で脚の長さの差を確認)
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 限局性強皮症は皮膚の一部が硬くなる病気。内臓は侵さず、生命予後は良好
② 全身性強皮症とはまったく別の病気で、移行することはない
③ 抗核抗体の陽性はよくあること。気になる症状があれば主治医に
④ 頭の脱毛は永久脱毛になるので、活動性があれば早めに治療
⑤ 妊娠・出産への影響は一般的にないが、抗リン脂質抗体が陽性なら産科と連携
10. よくある質問
限局性強皮症とは、どんな病気ですか?
日本皮膚科学会によると、限られた範囲の皮膚に境界のはっきりした硬化が出る病気です。全身のどこにでも出て、形や大きさ、色は多彩です。内臓の病変は伴わず、膠原病の範疇には入りません(膠原病類縁疾患)。生命予後は良好です。
全身性強皮症の軽いものですか?
学会によると、病名は似ていますが、まったく異なる別の病気です。全身性強皮症に移行することもありません。全身性強皮症には「限局皮膚硬化型」というタイプがあり、名前が似ているため混同されやすく、医療従事者でも混同している場合があるとされています。
抗核抗体が陽性でした。膠原病になりますか?
学会によると、限局性強皮症は自己免疫疾患の一つなので、抗核抗体が陽性になるのはよくあることで、膠原病の合併を心配することはありません。ただし、ほかの自己免疫疾患(最も多いのは橋本病)を合併する頻度は高いので、レイノー現象や関節痛、続く発熱など気になる症状があれば主治医に伝えてください。
頭の脱毛は、治療で元に戻りますか?
学会によると、この脱毛は毛を作る細胞が壊される瘢痕性脱毛で、一度抜けると永久脱毛となり、治療しても毛は生えてきません。残った細胞が働きを取り戻してまばらに生えることはあります。そのため、活動性がある場合はできるだけ早く治療を始める必要があります。
妊娠・出産に影響はありますか?
学会によると、一般的にはありません。ただし約30%で抗リン脂質抗体が陽性になり、陽性の場合は習慣性流産の原因となる可能性があるので、妊娠が分かった時点で産科と連携して慎重に経過を見ます。まれに妊娠をきっかけに悪化することもあります。
自然に良くなりますか?
学会によると、海外のデータでは3〜5年で約50%の人で病気の活動性がなくなると報告されています。一方で、長く落ち着いていたあとに再発することもあり、再発を繰り返しながら階段状に範囲が広がる場合が多いとされています。特に小児期に始まった線状強皮症は再発率が高いとされています。
参考にした主な資料
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「膠原病と類縁疾患——限局性強皮症」(Q1〜Q15)