1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 水ぶくれがたくさん出るなら、うつる病気では | 類天疱瘡はどのタイプもうつらない。ただし、破れたところに細菌がつかないよう清潔にする |
| 高齢者の病気は、治療が難しい | 高齢者に発症した場合は比較的容易にコントロールできる傾向がある。ただし高齢者はステロイドの飲み薬の副作用が出やすく、慎重な治療が必要 |
| 落ち着いてきたら、薬は自分の判断で減らしてよい | 飲み薬を自己判断で変えたりやめたりすると、急に水ぶくれが再発することがある |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
水疱性類天疱瘡は、わずかな外からの力が当たるところにも水ぶくれができることがあります。学会は、絆創膏を皮膚に直接貼らず、病変全体をガーゼで包み、その上から絆創膏やネットで固定すること、手足や肘・膝をぶつけないこと、擦れる下着や服、きついベルトを避けることを挙げています。
2. 類天疱瘡とは——自分の皮膚に対する抗体
日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aによると、類天疱瘡は次のような病気です。
- 血液中の抗体は、本来はウイルスや細菌などに反応して感染を防ぐタンパク質。ところが時に、自分の組織に反応する抗体(自己抗体)ができて、自分の組織を傷つける病気がある。これらをまとめて自己免疫疾患という
- 類天疱瘡では、表皮と真皮の境目にある基底膜部に対する自己抗体ができる。これが基底膜に結合して、表皮と真皮の接着が悪くなり、水ぶくれ(水疱)ができる
- 天疱瘡とあわせて、自己免疫性水疱症とも呼ばれる
- どうして特定の人に自己抗体ができるのかは、はっきりしていない
学会は、最近は類天疱瘡の原因も少しずつ明らかになり、治療法も進歩して、治癒に至ることもあるとしています。そのうえで、きちんとした検査で確実な診断をつけ、より良い治療を行っていく必要があるとしています。
3. 種類と、かかりやすい人
| 病型 | 資料の記述 |
|---|---|
| 水疱性類天疱瘡 | 類天疱瘡でもっとも患者さんが多い病型。高齢者に多く、年齢的には60歳以上、特に70〜90歳台。まれに18歳以下の若い人や子どもにもみられる。日本の高齢化で、さらに多くの患者さんがいると考えられる |
| 粘膜類天疱瘡 | 口や目などの粘膜を中心に症状が出る |
| 後天性表皮水疱症 | 自己抗体の標的が、水疱性類天疱瘡と異なる |
出典:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「類天疱瘡(水疱症)」Q2をもとに整理。この3つは厚生労働省の指定難病に認定されています。
このほか、まれな病型として、妊娠性類天疱瘡、抗p200類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、線状IgA水疱性皮膚症、IgM類天疱瘡があります。
4. 原因——糖尿病の薬との関係も
学会によると、水疱性類天疱瘡は、表皮と真皮の境の基底膜にある接着のための構造(ヘミデスモソーム)を作るタンパク質、BP180とBP230に対する抗体ができることで起こります。病気の勢いは、水ぶくれの数や、血液中の抗体の量を参考にして決めます。
学会は、薬との関係についても書いています。
- 疫学調査では、2型糖尿病の治療薬であるDPP-4阻害薬を飲んでいる糖尿病の患者さんで、水疱性類天疱瘡の発症頻度が比較的高いことがわかっている。ただし、詳しい因果関係は不明
- 免疫チェックポイント阻害薬の治療を受けているがんの患者さんでも、発症頻度が比較的高いことがわかってきている
5. 症状
| 病型 | 症状 |
|---|---|
| 水疱性類天疱瘡 | 全身のあちこちに、かゆみを伴う赤い斑点(紅斑)と、大きくパンパンに張った、破れにくい水ぶくれができる。水ぶくれが破れたあとはただれ(びらん)になる。時に口の中にもただれができる |
| 粘膜類天疱瘡 | 口の中を中心に、目、鼻の中、のど、陰部、肛門などの粘膜に水ぶくれやただれができる。口だけ、目だけに症状が出る人もいる |
| 後天性表皮水疱症 | 肘や膝など外からの刺激を受けやすいところに水ぶくれをくり返し、赤みが少ないタイプと、水疱性類天疱瘡のように水ぶくれと赤みの両方がみられるタイプがある |
出典:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「類天疱瘡(水疱症)」Q4をもとに整理。
学会によると、類天疱瘡はどのタイプもうつりません。ただし、水ぶくれが破れてできたただれに細菌がつくと、傷の回復が遅れることがあるので、清潔にする必要があります。
なお、日本皮膚科学会の皮膚科Q&A「とびひ」は、高齢者のとびひでは水疱性類天疱瘡などとの区別が必要なこともあるとしています(とびひの記事)。
6. 検査
- 局所麻酔をして、病気の皮膚の一部を切り取る皮膚生検を行う。顕微鏡で見ると、表皮の下に水ぶくれができている(表皮下水疱)
- 切り取った皮膚で蛍光抗体直接法という検査を行うと、基底膜部に抗体(IgG)と補体(C3)がついているのがわかる
- 採血で、BP180に対する自己抗体などを調べることもできる。BP230や7型コラーゲンに対する自己抗体を調べる方法は保険適用外
7. 治療と、ステロイドの副作用
| 資料の記述 | |
|---|---|
| 軽症の水疱性類天疱瘡 | まず強力なステロイドの塗り薬や、テトラサイクリン系の抗生剤(ドキシサイクリンやミノサイクリン)、レクチゾールの飲み薬。ミノサイクリンにニコチン酸アミドの飲み薬を併用することもある。これらで悪化する場合はステロイドの飲み薬 |
| 中等症以上の水疱性類天疱瘡 | ステロイドの飲み薬が中心。中等量で有効なことが多い。なかなか落ち着かない場合は、重い天疱瘡と同様の治療(ステロイドパルス療法、免疫グロブリン大量静注療法、免疫抑制剤の併用、血漿交換療法の併用)。飲み薬の代わりに、強力なステロイドを全身に塗る治療もある |
| 粘膜類天疱瘡 | 軽症ではステロイドのうがい(口の中の病変に)や塗り薬、テトラサイクリン系の抗生剤、レクチゾールの飲み薬。症状が強いときや口以外の粘膜にも症状があるときはステロイドの飲み薬 |
| 後天性表皮水疱症 | 水疱性類天疱瘡とほぼ同様。テトラサイクリン系の抗生剤はあまり使われず、コルヒチンが使われることがある |
出典:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「類天疱瘡(水疱症)」Q7をもとに整理。薬の量は主治医の判断によります。
学会は、ステロイドの飲み薬の副作用として、満月様顔貌(顔が丸くなる)や体重増加をはじめ、高血圧、糖尿病、高脂血症、消化性潰瘍、不眠、骨粗鬆症、白内障、緑内障、大腿骨頭壊死、ニキビなどを挙げています。
- 消化性潰瘍の予防に、プロトンポンプ阻害薬が使われることがある
- 骨粗鬆症の予防薬を併用する
- 糖尿病、高コレステロール血症、高血圧を起こすため、定期的な検査を行う
- 多量のステロイドが長く続く場合や免疫抑制剤を使う場合は、感染症の合併にも注意する
学会は、こうした副作用は高齢者に起こりやすいと考えられるため、高齢者に多い水疱性類天疱瘡では特に注意する必要があるとしています。ステロイドと骨については骨粗鬆症の記事でも書いています。
8.【核心】経過と、日常生活の注意
学会によると、経過は次のとおりです。
- 天疱瘡と比べると、水疱性類天疱瘡のほうが比較的早期に寛解(症状が落ち着いた状態)になることが多い
- 高齢者に発症した場合は、比較的容易にコントロールできる傾向がある。ただし高齢者ではステロイドの飲み薬の副作用が出やすいので、慎重な治療が必要
- 若い人に発症した水疱性類天疱瘡は治療が難しい傾向があるが、最終的にすべての治療をやめても皮膚の病変が出ず、治癒したと考えられる患者さんも多い
- 粘膜類天疱瘡や後天性表皮水疱症も、治療で症状をコントロールできることが多いが、通常は長期間の治療が必要
「最終的に全ての治療を中止しても皮膚病変は出現せず、治癒したと考えられる患者さんも多くおりますので、期待して治療を継続して頂きたいと思います。」(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「類天疱瘡(水疱症)」Q9)
学会は、日常生活の注意として次の点を挙げています。
| 資料の記述 | |
|---|---|
| 薬 | 飲み薬を自己判断で変えたりやめたりすると、急に水ぶくれが再発することがある。主治医の指示を守り、飲み忘れがないようにする。副作用の徴候があるときは、すぐに主治医に知らせる |
| 家族 | 治療には家族の理解や協力も必要。診断が確定して治療を始めるときには、身近な家族にも病気の性質や治療などについて説明がある |
| 皮膚を守る | わずかな外からの力が当たるところにも水ぶくれができることがある。絆創膏は直接貼らず、病変全体をガーゼで包み、その上から絆創膏やネットで固定する。手足や肘、膝をぶつけないようにし、擦れる下着や服、きついベルトは避ける |
出典:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「類天疱瘡(水疱症)」Q10をもとに整理。
9. 医療費の助成
学会によると、水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症は厚生労働省の指定難病に認定されていて、医療費の助成を受けることができます。病気ごとに認定基準があり、主治医の診断にもとづいて都道府県に申請し、認定されると「特定医療費(指定難病)受給者証」が交付されます。詳しくは難病情報センターのホームページで確認できます。
10. 受診したいとき
資料にあるもの
・全身のあちこちに、かゆみを伴う赤い斑点ができた
・大きくパンパンに張った水ぶくれができた。破れたあとがただれている
・口の中や目などの粘膜に、水ぶくれやただれがある
・類天疱瘡の治療中に、副作用の徴候がある(すぐに主治医へ)
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 類天疱瘡は、自分の皮膚に対する抗体で水ぶくれができる病気。うつらない
② いちばん多い水疱性類天疱瘡は60歳以上、特に70〜90歳台。かゆみを伴う赤い斑点と、パンパンに張った破れにくい水ぶくれ
③ 糖尿病の薬(DPP-4阻害薬)を飲んでいる人で発症頻度が比較的高い。詳しい因果関係は不明
④ 高齢者は比較的容易にコントロールできる傾向。ただしステロイドの副作用に注意し、薬を自己判断でやめない
⑤ 絆創膏は直接貼らず、ガーゼで包んでから固定。指定難病で医療費の助成がある
11. よくある質問
類天疱瘡とはどんな病気ですか?
日本皮膚科学会によると、表皮と真皮の境目にある基底膜部に対する自己抗体ができ、表皮と真皮の接着が悪くなって水ぶくれができる病気です。天疱瘡とあわせて自己免疫性水疱症とも呼ばれます。どうして特定の人に自己抗体ができるのかは、はっきりしていません。
類天疱瘡はうつりますか?
学会によると、類天疱瘡はどのタイプもうつりません。ただし、水ぶくれが破れてできたただれに細菌がつくと、傷の回復が遅れることがあるので、清潔にする必要があります。
どんな人がかかりやすいですか?
学会によると、もっとも多い水疱性類天疱瘡は高齢者に多く、60歳以上、特に70〜90歳台にみられます。まれに18歳以下の若い人や子どもにもみられます。DPP-4阻害薬を飲んでいる糖尿病の患者さんや、免疫チェックポイント阻害薬の治療を受けているがんの患者さんで、発症頻度が比較的高いことがわかっています。
治療はどうなりますか?
学会によると、軽症の水疱性類天疱瘡では強力なステロイドの塗り薬や、テトラサイクリン系の抗生剤などの飲み薬を使います。中等症以上ではステロイドの飲み薬が中心です。高齢者ではステロイドの副作用が出やすいので、慎重な治療が必要とされています。
日常生活で気をつけることはありますか?
学会によると、飲み薬を自己判断で変えたりやめたりすると急に水ぶくれが再発することがあるので、主治医の指示を守ります。わずかな外力でも水ぶくれができることがあるため、絆創膏は直接貼らずに病変全体をガーゼで包み、その上から絆創膏やネットで固定します。擦れる下着や服、きついベルトは避けます。
医療費の助成はありますか?
学会によると、水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症は厚生労働省の指定難病に認定されていて、医療費の助成を受けることができます。主治医の診断にもとづいて都道府県に申請し、認定されると受給者証が交付されます。
参考にした主な資料
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「類天疱瘡(水疱症)」(Q1〜Q11)