1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 良いマットレスを使えば、体位変換はいらない | 褥瘡予防マットレスを使っている間も、体位変換は必要。角度や頻度は看護師に聞く |
| 傷がなければ大丈夫 | 傷がなくても赤くなっているときは要注意。体位変換後も同じ場所の赤みが続く場合は、皮膚の奥の血管が壊れ始めているかもしれない |
| 傷はしっかり消毒する | 消毒薬の殺菌作用は数分しか持たず、メリットもあまりない。入浴してシャワーでしっかり洗浄するのが良い |
| 食品用ラップで覆えば、乾かずに良い | 浸出液が漏れないようにすると感染の危険性が高くなる。主治医の許可があったときのみ可能とガイドラインに明記されている |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
寝たきりの方は、1日1回、骨の出た場所に赤みがないか見てください。赤みが体位変換後も続く、傷のまわりが急に赤くなった、高熱が出たといったときは、看護師や主治医にすぐ連絡を。マットレスや手当ての方法は、まず看護師に相談しましょう。
2. 褥瘡になりやすい部位と、状態
骨が変形している場合は、思わぬ場所が褥瘡になることもあるとされています。
- 寝たきり、けが、麻痺などで自分で体を動かしづらいときになりやすい
- 寝たきりでも、自分で寝返りができる場合はなりにくい
- 病気や栄養などの関係で痩せて骨が飛び出てくると、なりやすい
3.【核心】予防——寝返り・栄養・体位変換・マットレス
| 予防 | 資料の記述 |
|---|---|
| 自力で動ける状態 | リハビリなどで、できるだけ自力で動ける(寝返りがうてる)状態を維持・拡大するのが重要 |
| 栄養 | 栄養をしっかり取って、筋肉・皮下脂肪が痩せ細らないようにする |
| 体位変換 | 寝たきりになったら、同じ場所に体重がかからないよう頻回に体の向きを変える。2時間以内の体位変換が推奨されている。体の状態が悪いと1時間同じ体勢でも褥瘡ができることがある |
| マットレス | 柔らかいマットレス(エアーマットレス、ウレタンフォームマットレスなど)で圧迫を軽減する。最適なものは体の状態で違うので、まず看護師などに相談。介護保険を利用して安くレンタルすることもできる |
「重要なのは、仙骨部など、体の一部だけに体重がかかった状態が続かないようにすることです。」(日本皮膚科学会「皮膚科Q&A とこずれ」Q3)
日本皮膚科学会は、1時間ごとの体位変換は自宅でも病院でも不可能なので、柔らかいマットレスで圧迫を軽減する必要があるとしています。そのうえで、褥瘡予防マットレスを使っている間も、体位変換は必要です。
4. 早期発見——1日1回、骨の出た場所を見る
「1日1回、骨の飛び出た場所(Q1参照)を見てください。傷がなくても、赤くなっている時は要注意です。」(日本皮膚科学会「皮膚科Q&A とこずれ」Q4)
体位変換のあとも同じ場所の赤みが続く場合は、皮膚の奥の血管が壊れ始めているかもしれないので、主治医や看護師に相談するよう勧められています。
5. 家での手当て——消毒より洗浄、軟膏とガーゼ
- 消毒:消毒薬の殺菌作用は数分しか持たない。使って悪いことはあまりないが、メリットもあまりない
- 洗浄:入浴してシャワーでしっかり洗浄するのが良い。毎日の入浴が無理なら、ペットボトルにぬるま湯を入れたものなどで洗う
- 石けん:傷の周囲は石けんで洗ってよい。傷全体に使ってよいかは、傷の状態と石けんの種類によるので主治医と相談
- 軟膏:洗ったあと、傷全体が覆われるように塗る。薬局で売っている使い捨ての滅菌されたへらや、熱湯で滅菌したスプーンを使うこともできる。深い傷は奥まで詰める。軟膏の種類は傷の状態で変える必要があるので主治医と相談
- ガーゼ・ドレッシング材:軟膏のあとにガーゼを当てる。クッション機能のある被覆材(ドレッシング材)も薬局などで買えるが、傷の状態による当たり外れが大きいので必ず主治医に相談
手当てをする人の手については、ごく浅い傷なら素手でもよいとされています。一方、深い傷や、浅くても浸出液が出ている傷は細菌感染している可能性があるため、使い捨ての薄い手袋を使うよう勧められています。滅菌手袋である必要はなく、使い捨て手袋がなければ、小さな食品用の袋に手を入れて代わりにしてもよいとされています。使ったあとは、傷に触った面を内側にしてひっくり返し、ゴミ箱に捨てます。
この章で扱った使い捨ての薄い手袋です。日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aは、深い傷や浸出液が出ている傷の手当てでは、使い捨ての薄い手袋を使うよう勧め、滅菌手袋である必要はないとしています。
※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。ここで紹介しているのは、ショーワグローブのニトリル製の使いきり手袋(パウダーフリー・左右兼用・Mサイズは全長24.0cm・1箱100枚)です。販売ページの使用上の注意では、体質によってはかゆみ・かぶれ・発疹などが起こることがあり、異常を感じたら使用をやめて医師に相談すること、とされています。皮膚科Q&Aのとおり、使ったあとは傷に触れた面を内側にしてひっくり返し、ゴミ箱に捨ててください。手袋は傷の手当ての道具で、軟膏やドレッシング材の選び方は主治医に相談してください。
塗り薬の扱い方(清潔な取り出し方、保管)については塗り薬の正しい使い方の記事も参考にしてください。
6. 食品用ラップで覆うのは危険
「特に食品用ラップなどで、浸出液(『傷からしみ出る体液』)が漏れないようすると感染の危険性が高くなります。このやり方は主治医の許可があった時のみ可能と、日本皮膚科学会ガイドライン、日本褥瘡学会ガイドラインに明記されています。」(日本皮膚科学会「皮膚科Q&A とこずれ」Q6)
傷を乾かさないように覆う方法は、切り傷やすり傷の手当てでも知られています(→切り傷・すり傷と破傷風)。しかし褥瘡では、浸出液を閉じ込めると感染の危険が高くなるため、自己判断で行わず、主治医の許可を得てください。
7.【内科医の視点】「栄養」も褥瘡の予防に入っている
内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。資料は褥瘡の予防として、体位変換やマットレスと並べて、栄養をしっかり取って筋肉・皮下脂肪が痩せ細らないようにすることを挙げています。病気や栄養の関係で痩せて骨が飛び出てくると褥瘡になりやすいためです。食事量が減ってきた、体重が落ちてきたといった変化は、主治医に伝えてください。
もう一つは、寝返りがうてる状態を保つことです。資料は、寝たきりでも自分で寝返りができる場合は褥瘡になりにくいとしています。筋肉の衰えやフレイルについてはサルコペニアの記事とフレイルの記事で書いています。
8. 急いで連絡したいとき
すぐに主治医に連絡したいとき(資料の記述)
・赤くなった範囲が広い(お尻全体など)
・急に高熱が出てきた(細菌感染が全身に広がっている可能性)
看護師に連絡したいとき(資料の記述)
・傷のまわりが急に赤くなってきた
・浸出液が急に増えた(細菌感染が進んでいる可能性)
・体位変換のあとも、骨の出た場所の赤みが続く
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 仙骨・腸骨・坐骨・大転子・背骨・肩甲骨・踵・後頭部がなりやすい場所
② 予防は寝返り・栄養。寝たきりなら2時間以内の体位変換と柔らかいマットレス(介護保険でレンタル可)
③ 1日1回、骨の出た場所を見る。赤みは要注意
④ 消毒よりシャワーで洗浄。軟膏やドレッシング材は主治医と相談
⑤ 食品用ラップで覆うのは主治医の許可があるときだけ
9. よくある質問
とこずれはどこにできやすいですか?
日本皮膚科学会によると、普通の骨の形の人が仰向けに寝ると、腰骨中央(仙骨)、腰骨横(腸骨)、臀部(坐骨)、大腿横(大転子)、背骨、肩(肩甲骨)、踵、後頭部に体重がかかり、これらの部位が褥瘡になりやすいとされています。骨が変形している場合は、思わぬ場所が褥瘡になることもあります。
体位変換はどのくらいの間隔で行えばいいですか?
日本皮膚科学会によると、2時間以内の体位変換が推奨されています。ただし体の状態が悪いと1時間同じ体勢でも褥瘡ができることがあり、柔らかいマットレスで圧迫を軽減する必要があります。マットレスを使っている間も体位変換は必要で、角度や頻度は看護師に聞くよう勧められています。
褥瘡予防のマットレスはどう選べばいいですか?
日本皮膚科学会によると、エアーマットレスやウレタンフォームマットレスなど、体の状態によって最適なものが異なるため、まず看護師などに相談するのが良いとされています。介護保険を利用して安くレンタルすることもできます。
褥瘡の傷は消毒したほうがいいですか?
日本皮膚科学会によると、消毒薬の殺菌作用は数分しか持たず、使って悪いことはあまりないもののメリットもあまりありません。むしろ入浴してシャワーでしっかり洗浄するのが良く、毎日の入浴が無理な場合はペットボトルにぬるま湯を入れたものなどで洗浄するのが良いとされています。
食品用ラップで傷を覆ってもいいですか?
日本皮膚科学会によると、食品用ラップなどで浸出液が漏れないようにすると感染の危険性が高くなります。このやり方は主治医の許可があったときのみ可能と、日本皮膚科学会と日本褥瘡学会のガイドラインに明記されているとしています。
参考にした主な資料
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」:「とこずれ(褥瘡)」Q1〜Q8