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MEDICALLY REVIEWED BEAUTY & HEALTH
体型と代謝

フレイル
——5項目のうち3つ以上で該当。適切な介入で元の状態に戻れる「可逆性」があります

親の歩くスピードが遅くなった。最近、なんとなく疲れやすく、体重も減ってきた——そんなときに知っておきたい言葉が「フレイル」です。
理学療法ガイドライン第2版によると、フレイルは加齢に伴うさまざまな機能の変化や予備力の低下によって、健康障害に弱くなった状態です。元気な状態(ロバスト)と、要介護状態の中間にあたり、転倒、入院、要介護、死亡などのリスクが高まります。
ただし、フレイルは一度そう判定されても悪化の一途をたどるわけではなく、適切な介入によって元の状態に戻る可能性があります。
5項目のチェックと、運動・栄養の推奨を整理します。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年10月22日 読了:約9分

1. 先に結論

よくある思い込み資料の記述
年をとって弱るのは仕方がないフレイルは適切な介入によって元の状態(ロバスト)に戻る可能性がある。この「可逆性」が重要
フレイルは筋力の問題だけ体の問題だけでなく、うつ症状などの心の問題や、閉じこもりなどの社会的な問題を含む
体重が減るのはいいこと6か月で2〜3kg以上の体重減少は、フレイルの5項目のひとつ
運動ならどれでも同じガイドラインは、筋トレ・有酸素運動・バランス運動・歩行や体操・それらの組み合わせ・運動と栄養の併用をそれぞれ条件付きで推奨

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

フレイルは「戻れる」状態です。5項目のうち1〜2つ当てはまる「プレフレイル」の段階から、運動と栄養を見直すことが、要介護を遠ざける第一歩になります。

2.【核心】5項目でチェックする(J-CHS基準)

ガイドラインは、フレイルのスクリーニングにJ-CHS基準を使うことを推奨しています。次の5項目のうち、3項目以上当てはまるとフレイルと判定します。

フレイルの5項目(J-CHS基準) 理学療法ガイドライン第2版 第20章のアルゴリズムをもとに整理 項目 当てはまる目安 ① 体重減少 6か月間で2〜3kg以上の体重減少がある ② 活力低下 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする ③ 活動量減少 軽い運動・体操も、定期的な運動・スポーツもしていない ④ 握力低下 女性18kg未満、男性28kg未満 ⑤ 歩行速度低下 歩く速さが1.0m/秒未満 0項目 ロバスト(健常) 1〜2項目 プレフレイル 3項目以上 フレイル 対象は65歳以上の高齢者。ガイドラインは国際的な定義に合わせ60歳以上を高齢者としている 出典:理学療法ガイドライン第2版 第20章「フレイル」(日本予防理学療法学会)をもとに作図

握力は「測定」、そのほかの4項目は質問で判定します。

ガイドラインには、25項目の質問でみる基本チェックリスト(8項目以上でフレイル)も載っています。運動、栄養、口の機能、閉じこもり、認知、うつ症状まで含めて、生活全体を確かめる質問票です。握力の測り方や、サルコペニア(筋肉の衰え)との関係についてはサルコペニアの記事で書いています。

3. フレイルには3つの側面がある

ガイドラインは、フレイルは2014年に日本老年医学会が提唱した考え方で、筋力低下などの身体的な機能低下だけでなく、うつ症状などの精神心理的な問題や、閉じこもりなどの社会的な問題を含む多面的な概念だとしています。

側面含まれるもの
身体的フレイルロコモティブシンドロームやサルコペニアなど、運動器の機能低下
精神心理的フレイル高齢期のうつ症状、軽度認知障害(MCI)など
社会的フレイル閉じこもり、経済的な困窮など

これらは歯車のように影響し合うとされています。たとえば、配偶者や親しい友人を失って外出が減り閉じこもりがちになる(社会的)と、認知機能の低下やうつ傾向が生じ(精神心理的)、活動の少ない状態が続いて筋力が落ちる(身体的)——という流れです。

ガイドラインはまた、低栄養やサルコペニアがフレイルの進行の土台になり、食欲低下→食べる量の減少→体重減少→筋力低下→活動量の低下……と悪循環する「フレイルサイクル」を紹介しています。口や飲み込む機能の低下が低栄養のリスクになりうることから、オーラルフレイルという考え方にも注目が集まっているとしています(→口の健康の記事)。

4. どのくらい多いのか

5. フレイルが続くと、何が起こるか

ガイドラインは、フレイルであることが、将来のさまざまな好ましくない結果につながることを多くの研究から紹介しています。

結果資料で紹介されている報告
死亡メタ解析で、フレイルは死亡のハザード比1.83
入院フレイルだけでなく、プレフレイルも入院のリスクと関連
日常生活動作の低下買い物や外出などの手段的ADLの低下とは、オッズ比11.75と強い関連
転倒・骨折55歳以上の女性48,636人の研究で、フレイルは1年間の転倒(オッズ比1.68)・骨折(オッズ比1.46)と関連
認知症フレイルと認知症の発症との関連も報告されている

転倒と骨折については骨粗鬆症の記事、認知症については認知症の予防の記事で書いています。

6. ガイドラインの6つの推奨

ガイドラインは、60歳以上のフレイルの高齢者に対して、次の6つをいずれも「条件付きで推奨」しています。根拠の強さはいずれも「D(非常に弱い)」です。

#推奨(理学療法ガイドライン第2版 第20章)
1抵抗運動(筋力トレーニング)を行うことを条件付きで推奨
2有酸素運動を行うことを条件付きで推奨
3バランス運動を行うことを条件付きで推奨
4歩行もしくは体操を行うことを条件付きで推奨
5これらを組み合わせたマルチコンポーネント運動を行うことを条件付きで推奨
6運動と栄養の併用介入を行うことを条件付きで推奨

ガイドラインのアルゴリズムでは、筋力が落ちていれば抵抗運動、移動する力が落ちていれば抵抗運動か有酸素運動、持久力が落ちていれば有酸素運動、バランスが落ちていればバランス運動を選び、複数の機能が落ちている場合はマルチコンポーネント運動、低栄養が疑われる場合は栄養療法との併用を選ぶとされています。運動のしやすさも考えて選ぶことが勧められています。たんぱく質についてはたんぱく質の記事、歩数については座りすぎと歩数の記事で書いています。

7.【内科医の視点】「戻れる」うちに気づく

内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。ガイドラインが強調しているのは、フレイルの「可逆性」です。介入によって身体機能や日常生活動作がよくなったという報告は多く、転倒や要介護状態の発生を抑えたという報告もあるとされています。

そのためには、まず気づくこと。5項目は、家族でも確かめられる内容です。「最近やせた」「疲れやすい」「歩くのが遅くなった」と感じたら、体重や握力、外出の回数を一緒に見てみてください。持病がある方が運動を始めるときの注意は持病がある人の運動の記事で書いています。

8. 相談したほうがよいとき

医療機関や地域の窓口で相談したいとき

・5項目のうち1つ以上当てはまる(プレフレイル・フレイルの可能性)

・6か月で2〜3kg以上、意図せず体重が減った

・この1年で転んだ、転ぶのが不安

・固いものが食べにくくなった、お茶や汁物でむせる

・外出が減った、気分が沈む、物忘れを指摘された

最後に、この記事の要点をもう一度。

① フレイルは、元気な状態と要介護の中間。適切な介入で元に戻れる

② 体重減少・疲れやすさ・活動量の減少・握力低下・歩く速さの低下のうち3つ以上でフレイル

③ 地域の高齢者の11.2%。年齢とともに増え、女性で高い傾向

④ 体・心・社会の3つの側面が影響し合う

⑤ 運動(筋トレ・有酸素・バランス・歩行や体操・組み合わせ)と運動+栄養が推奨されている

9. よくある質問

フレイルとは何ですか?

理学療法ガイドライン第2版によると、フレイルは2014年に日本老年医学会が提唱した考え方で、加齢に伴うさまざまな機能の変化や予備力の低下によって、健康障害に弱くなった状態です。筋力低下などの体の問題だけでなく、うつ症状などの心の問題や閉じこもりなどの社会的な問題を含みます。元気な状態と要介護状態の中間にあたります。

フレイルかどうか、自分で確かめられますか?

ガイドラインは、J-CHS基準によるスクリーニングを推奨しています。6か月で2〜3kg以上の体重減少、わけもなく疲れたような感じ、軽い運動や定期的な運動をしていない、握力の低下(女性18kg未満・男性28kg未満)、歩く速さの低下(1.0m/秒未満)の5項目のうち、3項目以上でフレイル、1〜2項目でプレフレイルと判定します。

フレイルになったら、もう元には戻れませんか?

ガイドラインによると、フレイルは一度判定されてもその後悪化の一途をたどるわけではなく、適切な介入によって元の状態に戻る可能性があります。介入によって身体機能や日常生活動作がよくなったという報告は多く、転倒や要介護状態の発生を抑えたという報告もあるとされています。

どんな運動がすすめられていますか?

ガイドラインは、60歳以上のフレイルの高齢者に対して、抵抗運動(筋力トレーニング)、有酸素運動、バランス運動、歩行または体操、これらを組み合わせたマルチコンポーネント運動、運動と栄養の併用介入を、いずれも条件付きで推奨しています。根拠の強さはいずれも非常に弱いとされています。

フレイルは女性に多いのですか?

ガイドラインによると、身体的フレイルの有病率は一般に年齢とともに増え、女性で高い傾向にあるといわれています。わが国では、J-CHS基準による複数のコホートを統合した分析で、地域に住む高齢者のフレイルの有病率は11.2%と報告されています。

参考にした主な資料

凪
なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した内容は、理学療法ガイドライン第2版(2021年)にもとづくもので、公開時点の情報です。推奨の根拠の強さはいずれも「非常に弱い」とされています。持病がある方や痛みがある方は、運動を始める前に医師に相談してください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。