1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| ステロイドは薄く少しだけ塗るもの | 1FTUを用いた量は少し多いと感じるが、たっぷり塗ることで十分な効果が得られる。少なすぎると、長い期間塗らないといけなくなることがある |
| 多く塗るほど早く良くなる | 塗る回数が少ないと十分な効果が得られず、回数が多いと副作用が出ることもある。説明された回数を守る |
| 2本出たら、ステロイドを先に塗る | とくに説明がなければ、面積の広い保湿剤から先に。先にステロイドを塗ると、塗る必要のない部分まで広がり副作用が起きる可能性がある |
| 軟膏もクリームもよく擦り込む | ステロイドなど多くの軟膏やクリームは擦り込まずに「塗布」する。擦り込むのは保湿剤や筋肉痛の消炎鎮痛剤 |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
塗り薬は、決められた回数を守り、たっぷり(1FTU=両手のひら分)塗ります。2本あれば保湿剤が先、ステロイドは後から病気の部分だけ。わからないときは、医師や薬剤師に確認してください。
2. 軟膏とクリームの違い
| 種類 | 資料の記述 |
|---|---|
| 軟膏 | 水が含まれていない。冬は硬くなりやすい |
| クリーム | 水が含まれ、油ときれいに混ざっている(乳化)。塗りやすく、べたつかない。軟膏より吸収されやすく早く効果が出るが、汗で流れやすい |
夏などべたつきが強く感じられる場合には、使用感を考えて軟膏からクリームに変えることもあるとされています。ただし、薬の名前に「〜軟膏」と書いてあっても、クリームであることもあります。
3.【核心】塗る量・回数・順番
1FTU(finger tip unit)は、本来ステロイドの軟膏やクリームを塗るときの量です。塗る量が制限されている薬もあります。
「1FTUを用いた塗る量は少し多いなと感じると思いますが、軟膏やクリームはたっぷり塗ることで十分な効果が得られます。」(日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 皮膚科領域の薬の使い方」Q3)
塗る回数
- 外用剤は塗る回数が決まっている。医師や薬剤師から説明された回数をきちんと守る
- アトピー性皮膚炎のステロイド外用薬は一般に1日1〜2回。症状が良くなれば1日1回、さらに良くなれば1週間に2、3回などの場合もある
- スキンケアの保湿剤も1日1〜数回塗る薬が大部分で、1日1回より2回や3回塗ったほうがより効果が得られる
- 夜だけ塗る薬や、2日に1回の薬もある。時間や日数を守らないと副作用が起きやすくなる
乾燥肌やかゆみと保湿剤の塗り方については乾燥肌とかゆみの記事、アトピー性皮膚炎の治療についてはアトピー性皮膚炎の記事で書いています。
4. 塗り方——「塗布」と「塗擦」
| 塗り方 | 資料の記述 |
|---|---|
| 塗布(とふ) | 優しく伸ばして塗るだけ。ステロイド外用剤など多くの軟膏やクリームはこちら。擦り込まない |
| 塗擦(とさつ) | 擦り込む方法。保湿剤や、筋肉痛に使う消炎鎮痛剤は擦り込むように塗る。強く擦り込みすぎると皮膚を傷めるので、優しく繰り返し塗り込む |
冬に気温が下がると、とくに軟膏は硬くなりやすい傾向があります。硬いまま無理に塗ると、塗りにくいだけでなく、皮膚を傷めたりかゆみの原因になったりするため、手のひらや手の甲に取って少し温めてから使うよう勧められています。
5. 使用期限と、衛生的な使い方・保管
- 使用期限は数年間と長い。チューブのキャップと反対の端に書いてある
- チューブの先端を直接患部につけて絞り出すと、細菌が先端に残って汚染され、使えなくなることがある
- 使う前に手を洗い、指などに絞り出してから塗る。綿棒で取って塗るとより衛生的
- 大部分は室温保存(1〜30℃)。夏に30℃を超える場合は冷蔵庫へ。ただし0℃以下で凍ると使えなくなる薬もあるので、冷気の吹き出し口を避ける
- 夏の車内に放置すると溶けて使えなくなる。一度溶けたものは、冷やして硬くなっても使わない
- 使用方法や保存方法がわからなくならないよう、使ったら薬の袋に戻して保存する
水虫の薬に多い液剤やスプレーはアルコールを含むものが多く、床に垂れたり、薬のついた手でメガネやボールペンを触ったりすると塗装が剥がれることがあります。新聞紙の上で使い、使ったらすぐ手を洗い、火のそばで使ったり保存したりしないよう注意が必要です。
6. 市販薬と処方薬、かぶれへの注意
病院で処方される薬が、町の薬局でも買える場合があります。ただし、処方薬とまったく同じものだけでなく、ほかの成分が加わっているものもあります。たとえば水虫の塗り薬では、かゆみ止めや炎症を和らげる成分が追加されていることがあり、人によってはかぶれることがあります。
「軟膏やクリームでかぶれた経験のある方は、薬局で成分がまったく同じものを購入して下さい。」(日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 皮膚科領域の薬の使い方」Q7)
- 塗り薬で最も多い副作用の一つは、かぶれ(接触皮膚炎)
- 有効成分だけでなく、軟膏やクリームを作る添加物でも起きることがある。そのため、違う薬でもかぶれることがある
- かぶれたら、何の薬だったかを記録しておくと原因の成分がわかりやすくなる
- ジェネリック医薬品は添加物がそれぞれ違うので、切り替えるときは注意する
- 使用中にかぶれなどが出たら、すぐに受診する
かぶれ(接触皮膚炎)については接触皮膚炎の記事、水虫については水虫の記事で書いています。
7.【内科医の視点】わからなければ、医師か薬剤師に聞く
内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。資料は、塗る回数、塗る量、順番、塗り方、保管、液剤の成分など、ほとんどの項目で、わからない場合は医師や薬剤師に確認するよう繰り返しています。薬をもらうたびに、回数と量と順番を確認してください。
もう一つは量です。資料によると、1FTUの量は「少し多い」と感じるものの、たっぷり塗ることで十分な効果が得られ、少なすぎると長い期間塗らないといけなくなることがあります。薄く塗りすぎないことも大切です。
ご家族のとこずれ(褥瘡)に軟膏を塗るときの手順はとこずれ(褥瘡)の記事で書いています。
8. 受診・相談したいとき
皮膚科を受診・医師や薬剤師に相談したいとき
・塗り薬を使っていてかぶれ(赤み・かゆみ・ぶつぶつ)が出た(すぐに受診)
・塗る回数・量・順番の説明を受けていない、忘れてしまった
・ジェネリック医薬品や市販薬に切り替えたい
・チューブの使用期限が記号で書かれていて読めない
最後に、この記事の要点をもう一度。
① クリームは水を含み塗りやすく早く効果が出るが汗で流れやすい。軟膏は水を含まない
② 量は1FTU=人差し指の第一関節まで=約0.5g=両手のひら。たっぷり塗る
③ 回数は説明どおり。多すぎても少なすぎてもよくない
④ 順番は保湿剤が先、ステロイドは後から病気の部分だけ(説明がなければ)
⑤ 先端を患部につけない、夏の車内に置かない、かぶれたら記録してすぐ受診
9. よくある質問
塗り薬はどのくらいの量を塗ればいいですか?
日本皮膚科学会によると、目安は1FTU(finger tip unit)で、人差し指の先端から第一関節までチューブから絞り出した量が約0.5g、これが両方の手のひらに塗る量にあたります。5gの小さいチューブでは2回絞り出して約0.5gです。少し多いと感じても、たっぷり塗ることで十分な効果が得られるとされています。ただし塗る量が制限されている薬もあるので、不明な場合は医師や薬剤師に確認してください。
保湿剤とステロイドはどちらを先に塗りますか?
日本皮膚科学会によると、医師から順番の説明がなければ、一般に塗る面積の広い保湿剤を先に塗り、後からステロイド外用剤を湿疹など病気の部分だけに塗ります。先にステロイドを塗ってから保湿剤を塗ると、ステロイドが塗る必要のない部分まで広がり、副作用が起きる可能性があるとされています。
軟膏とクリームはどう違いますか?
日本皮膚科学会によると、クリームには水が含まれていて油ときれいに混ざっており、軟膏には水が含まれていません。クリームは塗りやすくべたつかず、軟膏に比べ吸収されやすいため早く効果が出ますが、汗で流れやすい欠点があります。
古い塗り薬はいつまで使えますか?
日本皮膚科学会によると、軟膏やクリームの使用期限は数年間と長く、チューブのキャップと反対の端に書いてあります。ただし、チューブの先端を直接患部につけて絞り出すと細菌で汚染されて使えなくなることがあり、夏の車内に放置して溶けたものは使えません。保管は大部分が室温(1〜30℃)です。
処方された塗り薬と同じものを薬局で買ってもいいですか?
日本皮膚科学会によると、処方薬が町の薬局でも買える場合がありますが、まったく同じものだけでなく、ほかの成分が加わっているものもあります。軟膏やクリームでかぶれた経験のある方は、薬局で成分がまったく同じものを購入するよう勧められています。
参考にした主な資料
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」:「皮膚科領域の薬の使い方」Q1〜Q11